新型コロナウイルスワクチンについて① 新型コロナワクチンの種類と比較

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して世界中でワクチンが開発されています。
この感染症を予防するためのワクチン開発には、従来の製法だけでなく最新の技術が利用されていることが特徴的です。
まず、ワクチンにはどのような技術が用いられているのかをまとめました。

 

 

弱毒化
水ぼうそうに対するワクチンなどに利用されている技術です。
生きている病原体を、免疫反応が起こすことができ、且つ病原性を極力弱めた状態にして利用します。自然免疫と同じ流れで免疫反応が起きるため、1回の接種で持続性のある免疫が付与される場合が多いです。複数回接種や追加接種が必要な場合もあります。
生きている病原体を利用するため、免疫をつけたい病気の軽い症状がでることもあります。
不活化
インフルエンザワクチンなどに利用されている技術です。
病気を引き起こす菌やウイルスなどを熱や溶媒などを用いて病原性を持たないように処理したものを免疫源として利用します。病原体の形を保ったまま不活化された全粒子ワクチンと、病原体から抗原になる部分のみを取り出し精製して利用するスプリットワクチンがあります。不活化された病原体そのものは弱い免疫反応しか誘導しないことが多いため、その場合は免疫賦活剤(アジュバント)を用いて免疫誘導能を強化しなければなりません。
トキソイド
毒素が免疫付与に関与する場合、毒素の毒性をなくしたものを抗原として免疫をつけることができます。
破傷風のワクチンなどはこの技術を利用しています。
  組換えタンパク  
免疫をつけるための抗原タンパク質を菌や酵母などで発現させることにより、大量生産が可能な技術です。
様々なアジュバントと組み合わせることにより求める免疫反応を誘導できます。
植物などの可食物に抗原タンパク質を発現させることにより、食べることによる免疫付与も可能です。
この技術を利用するには、まず病原体がもつ免疫原性のあるタンパク質を特定しなければなりません。この技術を用いているものとして、B型肝炎に対するワクチンがあります。
   ウイルスベクター   
弱毒化または不活化したウイルスを運び屋(ベクター)として利用し、抗原として働く外来タンパク質を作らせる技術です。
これを体内に投与し免疫反応を起こします。ウイルスベクターや、細胞に取り込まれた遺伝子により病気等になることはありません。従来の液性免疫のみ誘導するワクチンと違い、強力な細胞性免疫を誘導できます。用いられるウイルスの例として、アデノウイルスがあります。ウイルスベクターに対する抗体が既にある場合は、効果を十分に発揮できません。エボラウイルスに対するワクチンに用いられている技術です。
DNA
古くから研究されてきた技術で、免疫を誘導したい抗原の情報を持ったプラスミドを利用します。低コストで安定、液性と細胞性免疫両方を誘導できます。ワクチンとして利用するDNAによって病気等になることはありません。投与方法によって投与量が変わります(数ng~数百μg)。タンパク質を作る上で転写・翻訳が必要なため、目的のものではないものが作られる可能性があります。この技術を利用したものとして、COVID-19ワクチンの開発以外ではジカウイルスワクチンが臨床試験段階までいっています。
mRNA
比較的新しく、COVID-19ワクチンで初めて実用化された技術です。ヒトの細胞が本来作ることのできない、病原体が持つ外来タンパク質の遺伝情報をもつメッセンジャーRNA (mRNA)を利用します。mRNAを鋳型として作られたタンパク質は抗原として働き、体内で免疫反応を起こし抗体が産生されます。mRNAワクチンは液性免疫だけでなく、細胞性免疫も活性化させます。従来のワクチンより低コストで、生産スピードが早いことが特徴です。mRNAは壊れやすいため、-80℃といった超低温での保存が必要です。

 

次に、現在世界各国で承認されているCOVID-19ワクチンの一部をご紹介します。

 

会社名 ワクチンの種類 生産・供給の見通し 承認有無 / 治験フェーズ 報告されている有効率 備考
ファイザー mRNA
2020年中に最大5000万回分、2021年末までに最大20億回分のワクチン生産の見込み
英・米・EUで承認(緊急使用)、国内治験を2020年10月から実施中、国内で承認済
治験において92.6%の有効率(2021年4月1日時点)
モデルナ mRNA
全世界に5~10億回分/年の供給を計画
米、EU、英で承認(緊急使用)、国内治験を2021/01から実施中、国内で承認申請中
治験において94%の有効率(2021年4月5日時点)
武田薬品が流通
アストラゼネカ ウイルスベクター
全世界に20億人分を計画
英、EUで承認、国内治験を2020年8月下旬から実施中、国内で承認申請中
治験において76%の有効率(2021年3月25日時点)
海外からの原薬供給・国内で製剤化血栓症リスクのためEU内で使用を見合わせる動きあり
ジョンソン&ジョンソン ウイルスベクター
2021年から大量供給(順次、世界で年10億
米・EUで承認、国内治験を2020/09から実施中
治験において66.3%の有効率(2021年4月13日時点)

 

 ※有効性については現在も新しい情報が出ているため、本内容とは異なる場合があります。

 

各社製品とも接種方法は筋肉内注射、接種回数は2回となっています。
ジョンソン&ジョンソン社製品については1回接種も可、とされています。

 

日本国内では、ファイザー社製品は現在政府主導のもと接種に使用されています。
また、モデルナ社・アストラゼネカ社製品は政府が供給を受ける契約を結んでおり、
現在薬事承認申請中となっています。

 

2021年4月現在、アストラゼネカ社ならびにジョンソン&ジョンソン社製品について、
これまで血栓症リスクが確認されています。
そのため、アストラゼネカ社製品についてはデンマークで接種中止、他EU加盟国で年齢制限付きの接種が実施されており、またジョンソン&ジョンソン社製品は米当局から調査終了まで接種の中断勧告がでています。

 

いろいろなワクチンが注目を浴びているため、私たちも十分理解して接種を受けたいものです。
次回は、現在開発中のワクチンについて情報をご提供します。

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