農薬の毒性、危険性は?

前回のコラム → 「残留農薬とは?

前回のコラムで、農薬(農薬に使用される化学物質)がどれだけ、
身近な存在であるか、わかっていただけたと思います。

しかし、残留農薬についての健康被害はそこまで神経質になって身構え、用心する必要はありません。
なぜ、そこまでは残留農薬を気にする必要が無いのか、今回のコラムで説明いたします。

残留農薬は人間にとっても毒?

残留農薬の人への毒性は正直「低い」

虫や草を殺してしまう農薬、さも危険で人間に対しても害を及ぼすと容易に想像できますが、
実際はそうでもありません。その理由を箇条書きにしたいと思います。

・ そもそも体のつくりが虫や草と違う

なぜ殺虫剤は虫を殺すことができるのでしょうか?考えてみてください。
一例として、りんご等に使用される「シフルベンズロン」という農薬、
これは、昆虫の「脱皮」を阻害して、結果、死に至らしめます。
哺乳類はもちろん昆虫のように脱皮はできませんので、
人間に対して同様の効果は無いと言ってよいでしょう。
虫にしかない気門(息をする穴)を詰まらせて、殺虫する農薬も存在します。

除草剤も同様、「グリホサート」という農薬は、すべての草木に
共通する性質の「光合成」を阻害し、結果、草木を枯らします。
哺乳類は光合成できませんので・・・(以下略)

このように農薬としての効果を発揮する場所、科学的な用語で「作用点」というのですが、
毒性が作用する所が異なれば人間にとっては同様の効果がないという結果を得ることができます。

また、昆虫と人間の体の大きさの違いも重要な要因です。
体格の大きさ(スケール)が全く違う為、人間にとっては極微量で
すぐに代謝で無毒化できても虫は代謝する前に死亡する(または代謝する
機構を持たないので死亡)という要因もあります。

・ 農薬の新規登録の際に、厳しい毒性検査等の基準がある。

現在、日本では新しい農薬を開発した際、登録申請検査が義務となっています。
仮に害虫、雑草に対して劇的に効果のある農薬を開発したとしても、
安全性に関する様々な検査を行って、国から登録許可が下りなければ、
商品として販売することも、流通させることもできないのです。
下記リンクから新規農薬の登録申請に必要な試験についての情報
を得ることができます(農林水産省ホームページ))

 → 「農薬の登録申請に係る試験成績について

試験の内容を抜粋すると、薬の効果に関する試験の他に、
薬害(周辺に与える影響)についての試験、毒性に関する試験、
残留性に関する試験の4つの分類に分かれていて、
毒性に関する試験は急性経口毒性試験をはじめとする28の試験が
記載されています。

つまり、日本では法整備が進んでいて、そもそも一定の使用条件において
安全であると確認された農薬しか使用できないということです。

また、農薬使用後、食品として流通する際にもポジティブリスト制度により、
基準値を超過する農薬が検出された食品の流通が禁止されております。

そこまで安全なら心配する必要はないという事?

世の中に100%安全なものは無いのが実状

残留農薬についての健康被害は神経質になって身構え、用心する必要はありません
と書きましたが、全く注意しなくてよいというわけではありません。
世の中に100%安全なものは無いというのが現状だと思います。
逆に残留農薬が健康被害を与えてしまう可能性がある例を次に箇条書きにします。

・ 意図的な混入、使用許容量を超えた不適切な使用方法による残留

上記の農薬登録の為の試験を通過させるため、基本農薬は
撒いた瞬間から分解・飛散して残らないように設計されています。
ただしそれは用法用量を守って正しく使われた時です。
間違った使い方をした場合は健康被害を被ることがあります。
前回のコラムからわかるように農薬は誰でも扱えるので
言葉を返せば誰でも加害者になりうるという事にもつながります。
市販のスプレー缶殺虫剤など、説明書を読まないで使用している
人も多いのではないでしょうか?

・ 薬剤・物質との組み合わせで副作用が出ることもある

通常使用した場合の安全性試験は行ったうえで登録はされていますが、
それですべてを網羅できている訳ではありません。
撒かれている農薬はだいたい低濃度なので通常は問題がありませんが、
たとえば風邪で抗生物質を飲んでいる場合、何らかの形で大量の
農薬用抗菌剤を接種してしまうと、組み合わせで効果が出過ぎてしまったり、
逆に薬の効果がなくなってしまったり、予想外の事態が起こる場合もあります。
かなり特殊な例ですが、「ディート」という虫よけ用の成分と「ガス兵器の解毒薬剤」は
は単独使用では問題ないのに複合使用で神経症状が起こると報告されています。

・ 化学物質過敏症など体質的な問題により症状が出る場合がある

これも稀ですが、化学物質過敏症などでアレルギー症状が出る場合があります。
また、「農薬は毒」という強迫観念により症状が出る場合もあるそうです。

参考までに、農薬による健康被害の症状の一例をあげると、頭痛、めまい、
吐き気、手足のしびれ、視力低下、食欲不振、注意力低下など神経症状が
中心ですが、農薬を一度に大量摂取したり慢性的に浴びたりしなければ、
ここまでの症状が現れることはない農薬物質がほとんどです。
発癌性などが疑われている物質もありますが、現在使用登録されている物質は、
発癌性を示す有効なデータがあまり無いのが実状です。

農薬とどのように接すれば良いのか?

農薬の事を知り、適切に使う事が大切

話を総合すると、農薬は適切に使えばほとんどの場合安全に使用することが
できるので、場合に応じて有効に使っていただきたいと思います。

農薬の健康被害から身を守る方法としては、
・ 信頼できる生産者が作った物やきちんと検査されて安全が証明されている信頼できる食べ物を買う。
・ 家庭用殺虫剤など生活圏で農薬をむやみに使用しすぎない。
・ 農薬を怖がらず、多少は食べて平気くらいの心の余裕があっても大丈夫。

いかがでしょうか?
農薬の毒性、危険性について理解を深めることができたでしょうか?
我々検査機関は、たとえ99%安全だとしても残りの1%の危険をなくすために、
農薬の検査を行っています。少しでも危険の可能性があるならば、
弊社の農薬検査担当まで、どうぞお気軽にお問い合わせください。
適切な項目の検査で白黒はっきりさせ、安心していただく為のご提案をいたします。


※ 残留農薬の検査に関する詳細はこちら ※

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