新規遺伝子型ノロウイルスは大流行するのか!

最近、様々なメディアで「今年の冬は新型ノロウイルスが大流行する」と報じているニュースを目にします。なぜ、大流行すると予想されているのでしょうか?それには、理由があります。昨年3月に川崎市健康安全研究所へ搬入されたウイルス性感染性胃腸炎の糞便検体についてノロウイルスの遺伝子配列を解析したところ、国内では初めてのGⅡ.17型が検出されました。この新規GⅡ.17型は中国や台湾でも流行していることが報告されています。昨シーズンは関東近隣の自治体において流行していたところ、今年に入って三重県でも検出が確認されました。全国的に広がっていることが想像されます。また、2006年(平成18年)に大流行したノロウイルスは、GⅡ.4型で、国内でも海外でも今まで流行の大半を占めている「型」でした。そのGⅡ.4型の占める割合がGⅡ.17型へと急激に変わり、今年の2月以降は大半がGⅡ.17型で占めるようになりました。このように主要流行株(「型」)の入れ替わりは、2006年以降、私たちが初めて経験する大きな変化であり、今年の10月以降の新規型ノロウイルスの動向には細心の注意が必要になることから、報じられているのです。

ノロウイルスの分別は複雑で、まず、5つのグループ(遺伝子群)が存在し、ヒトに感染するのは、そのうち、3グループ(GⅠ、GⅡ及びGⅣ:GⅣの感染例は報告がないので、実質は2グループ)です。GⅠは9種類、GⅡは22種類の遺伝子型に分類されます。更にノロウイルスの遺伝子の組み換えは頻繁に起きるので、変異しやすいことも分別の複雑さに輪を掛けています。

上記のような複雑な分別をもつノロウイルスの検査には、幾つかの方法があります。リアルタイムPCR法、LAMP法、イムノクロマト法及びELISA法等です。それぞれの検査には特徴があるのですが、その前に、ウイルスの特徴を知る必要があります。ウイルスは自分自身では増殖出来ず、生きた細胞内で自己複製を作りながら増えることです。その為、ウイルスの量を表現するには、遺伝子コピー数(複製数)で表現します。検査方法の特徴として、感度と所要時間がよく取り上げられます。感度は、コピー数と関連があります。感度が良いものは、コピー数が少なくても検出でき、感度の低いものは、ある一定量以上のコピー数が必要となります。検査の所要時間については、感度の良い(少ないコピー数から検出できる)検査には、時間も要します。ある一定量以上のコピー数がある状況では、簡易検査で判定が可能であり、所要時間も短時間で済ますことができます。

今回の新規遺伝子型ノロウイルス「GⅡ.17型」の検査について、現状の市販されている簡易検査キットでは、従来の型「GⅡ.4型」で判定できる量で、判定できないことがあるそうです。(コピー数が108以上でも検出できない場合がある。)新たなキットの販売があるまでは、検査方法の選択にも十分な配慮が必要となりそうです。

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