食品中のカビ毒について

2015年 今年の漢字「安」

 

 今年も残りわずかとなり、2015年の世相を表す漢字は「安」でした。

これは「安」全保障関連法案の審議で与野党が対立したことや、
テロ事件や異常気象等で人々が不「安」になる事件が多かったことが理由だそうです。 
食の「安」全面では異物混入や食中毒、残留農薬など様々で、
より食の生産から食卓までの安全性に関心が高まった年だったと思います。

 今回、食品の「安」全性に関する一つの危害要因であるカビ毒について、まとめてみました。
食品に付着しているカビや、発酵食品に用いられ暮らしを豊かにしてくれる
有用なカビなどについては身近に感じている人も多いと思いますが、
カビ毒についてはあまり知られていないのではないでしょうか。


カビ毒(マイコトキシン)とは

 カビ毒とは食物の生産段階や貯蔵段階において、カビが生産する化学物質で人や家畜の健康被害を及ぼすものをいいます。

 現在100種類以上のカビ毒が知られており、国内で消費されている農産物や食品を汚染する主なカビ毒は主に数種類が挙げられています。その構造や特徴については農林水産省のホームページを参照してください(いろいろなカビの基礎情報)。


食品中のカビ毒のモニタリング検査

 

 国内では気候や風土の理由からカビ毒を生産するカビはほとんど生息していないそうです。

また沖縄や九州の一部でカビ毒による被害が発見されていますが、汚染を拡大する強力なものではないため国産の農産物は比較的安心して良いのではないかという見解もあります。

 しかし私たちの食生活はほぼ輸入品に頼っているのが現状であり、
また国内においても最近の温暖化や異常気象等で気候が不「安」定であることから、
国内外の農産物のモニタリングが実施されています。
(農林水産:食品の安全性に関するサーベラス・モニタリング→有害物質のモニタリング結果)

 カビ毒は農作物をダメにしてしまうことの他に、人への健康被害も深刻です。
カビ毒の一つであるアフラトキシン類は、WHOによると人の肝臓に発がん性があるとし、摂取を可能な限り低減すべきと発表しています。また国際がん研究機関(IARC)ではカビ毒毎にがんリスクへの程度を分類化しています。
 現在、食品衛生法により総アフラトキシン(アフラトキシンB1、B2、G1及びG2の総和)を10 μg/kgを超えて含有する食品は第6条第2号に違反するものとして取り扱うとしており、より高感度な分析機器で測定することが求められているように思います。(参考 食品安全委員会 : 総アフラトキシンについて)


おわりに

 食品中にあるカビ毒はほとんど目視できません。さらにカビ毒は一般的に熱に強いため、調理や加工段階で分解することはほとんどありません。一度できたカビ毒は安定で、減毒や除去は非常に難しいです。
 そのため健康被害の発生を未然に防止することが重要で、汚染実態を把握し程度に応じて、生産段階や貯蔵段階において適切な対応が大切です。
 食品衛生に関するカビ毒は数多く存在し、今後新規項目や基準値が設けられると思います。
来年2016年も「安」全な食を考えていく中で、カビ毒についてもクローズアップしていきたいですね。

youtube