PCB特措法(「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画」)の改訂について

PCBとは

Poly Chlorinated Biphenyl(ポリ塩化ビフェニル)の略称で、人工的に作られた、 主に油状の化学物質です。
熱で分解しにくく、かつ不燃性で電気絶縁性があり、安定である特徴があり、工業製品として様々な所で使用されてきました。
一方で生体に蓄積しやすく、かつ毒性がある事が分かり環境や人体に対して悪影響があるとして現在では昭和47年以降製造中止となっています。


カネミ油症事件について

PCBの毒性が社会問題化した事件であり、1968年にカネミ倉庫が製造する食用油にPCBが混入し、摂取した人々に甚大な被害を及ぼしています。
これをきっかけに政府の指示によりPCBの製造中止及び回収が指示されています。


ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法

PCBの毒性が周知されてからは民間主導で処理施設の設置を進めていましたが30年間以上処理されていない状況が続いていたことから平成13年にPCB特措法(ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法)が制定され、国が中心となって高濃度PCB廃棄物の処理を実施して来ました。


PCB特措法の改正

2016年の改正では高濃度PCB廃棄物の処分期限前の処分が義務付けられ、さらに届け出がされていない高濃度PCB廃棄物についての報告徴収や立ち入り調査の権限を強化する等のPCBに処分に対する規制を強める方向を打ち出しました。
反対に2019年の改正では高濃度PCB廃棄物の可燃性の一部が低濃度廃棄物に区分される事により処理費用の緩和や委託できる対象が拡大されています。
更に低濃度PCBに該当する廃棄物に該当するものに関しては処理期限が高濃度廃棄物よりも長い期限まで延長され、緩和されました(2027年3月末)。
具体的には可燃性の廃棄物(汚泥、紙くず、木くず、繊維くず、廃プラスチック等)は5000 mg/kgを超えて10000mg/kg以内のものが新たに低濃度PCBに区分される事となりました。
ただし、新たに低濃度PCB廃棄物に区分された以下可燃性廃棄物は1100℃以上で焼却処理を行なう必要があり(改正前の低濃度PCB焼却温度)、5000 mg/kg以下の物は850℃の以上で焼却処分に緩和されました。


PCB特措法の改正を踏まえた今後の動向

2019年の改正ではPCB濃度が5,000mg/kg 以下の汚染物について、これまで安全かつ円滑に処理が行われており、焼却処理の実績が蓄積されて来ました。
一方で、現在では塩化ゴム系の塗料に、可塑剤として PCB が使用されたものがあり、そうした塗料が塗られた橋梁等の塗膜の一部から高濃度 PCB 廃棄物が確認されております。
これらのPCB含有塗膜の調査が進捗することにより、今後、処理対象の塗膜の量が増加する可能性があることと、近年、PCBを使用した感圧複写紙や汚泥の存在が新たに発覚した事例があることが課題になっており、こうした汚染物にはPCB濃度が 5,000mg/kg から 100,000mg/kg 程度のものも含まれることが多い事から、これらの処理体制の構築に向け、実証試験を実施しその結果を踏まえ、無害化処理認定事業者において処理を行うこととした事が背景にあります。
これらの状況より今後は橋梁等で使用されている塗膜が低濃度PCB廃棄物に該当するかどうかの調査がさらに進んで行く事が考えらます。

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低濃度PCB検査について

低濃度PCB廃棄物に該当するかどうかの濃度確認には測定が必要となり、分析法についても環境省が示した公定法があります。
従来ではPCBはガスクロマトグラフ/電子捕獲検出器(GC/ECD)を用いた試験法が主でしたが、「塗膜くず」を対象にしたPCB試験においては塗膜くずに含まれる塩素化合物が測定を妨害する事からGC/ECDは不可となり、選択性が高いく高感度なガスクロマトグラフ/質量分析装置(GC/HRMS, GC/MS/MS, GC/MS)のみ使用が可能になっていることから対応が可能な検査機関の数も通常のPCB検査よりも少なくなります。
そのため通知法に対応して検査対応が可能な機関を見つけて置くことが重要となります。


『低濃度PCB検査』については、こちらをご確認ください。
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