走査電子顕微鏡JSM-IT100を使用したカビ同定検査の開初

食環境衛生研究所には、走査電子顕微鏡JSM-IT100という高性能な顕微鏡があります。
一般的に顕微鏡というと、小学校などの理科の授業で、植物細胞の観察で使用した顕微鏡を思い浮かべる方も多いかもしれません。よく見かけるタイプの顕微鏡は 光学顕微鏡と呼ばれ、対物レンズと接眼レンズを利用して拡大し観察します。観察の際は1000倍程度まで倍率を変えることが可能です。走査電子顕微鏡は対象に電子線を照射して、反射した電子を検出器で補足して像を観察します。弊社の走査電子顕微鏡の倍率は、光学顕微鏡よりも大きい20000倍まで可能です。


↑デジタルマイクロスコープ(光学顕微鏡)


↑走査電子顕微鏡


ヒトの毛髪をそれぞれの顕微鏡で撮影した写真が以下の2枚です。 

↑光学顕微鏡で撮影した毛髪(200倍)

光学顕微鏡では、目で見ているものがそのまま拡大されている像になります。



↑走査電子顕微鏡で撮影した毛髪(1000倍)

走査電子顕微鏡を用いて撮影を行うと、図鑑で見るような像が観察できます。走査電子顕微鏡は光学顕微鏡よりも鮮明に撮影ができるため、キューティクルや毛髄質等がはっきりと観察できます。

弊社のカビ同定検査は、培養して現れたコロニーの色や大きさ、分生子などの特徴を観察して行っています。しかし、カビはコロニーが大きくなるまでに時間がかかるため、2週間程度の時間がかかる検査となっています。
そこで<走査電子顕微鏡を用いて、培養前のカビの特徴をまとめたデータベースを作成することで、迅速な同定を行えるように開発を進めています。


↑光学顕微鏡で撮影したアスペルギルス・ニガー(400倍)

この写真はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)というカビを光学顕微鏡(400倍)で撮影したものです。一般的な光学顕微鏡を使用すれば、カビであることは十分にわかる程度には観察が可能です。しかし、頂のうと呼ばれる丸い部分は観察できても、付着している胞子の形までははっきりと観察することは難しい場合があります。


↑走査電子顕微鏡で撮影したアスペルギルス・ニガー(600倍)

この写真は先程と同じカビを走査電子顕微鏡で撮影した写真です。走査電子顕微鏡では、頂のう部分に小さな胞子が数多く付着していることが観察できます。

↑走査電子顕微鏡で撮影したアスペルギルス・ニガー(10000倍)

この写真はアスペルギルス・ニガーの胞子を10000倍で撮影した写真です。連なっている丸いものが前の写真で小さい粒に見える胞子です。走査電子顕微鏡は光学顕微鏡では観察できない細部まで観察することができます。


↑走査電子顕微鏡で撮影したクラドスポリウム属(2000倍)



↑走査電子顕微鏡で撮影したアルタナリア属(5000倍)

今後もデータ収集を続けていき、走査電子顕微鏡を用いたカビ同定検査の開発を進めていきたいと思います。


『異物検査(カビ同定検査含む)』については、こちらをご確認ください。
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