TOF-MSによる成分差異解析について

はじめに

成分差異解析は問題が発生した水や食品に含まれる成分についての成分を測定し、正常品の成分と比較する事で、差となる成分を解析し原因究明に繋げるための検査です。
測定機器としてLC-(Q)TOF/MSを用い、成分の精密質量数を測定し解析を行います。

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LC-(Q)TOF/MSについて

TOF/MSは物質の質量によって同じ力をかけた場合に移動する速度が異なる事を利用して質量による分離と測定を行う方法です。

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導入部で測定する成分をイオン化し、装置に導入し一定の電圧をかけて加速しフライトチューブ内を飛行させ、検出器に到達するまでの時間を正確に測定し、精密質量数を求める事が出来ます。飛行距離が長くなるほど質量を分けられる性能が上がります。弊社に導入している装置では反射部がありフライトチューブの中を反射して検出器に到達する機構を持っています。

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また、イオン化方式によっても測定出来る化合物が変わります。弊社ではESI方式を採用しています。ESIとは簡単に説明しますと成分を試薬と共に高電圧をかけたニードルに通して噴霧する事によりイオン化させてイオン化した成分を取り出す方法です。
ソフトなイオン化と言われており、測定範囲は下図の通り中極性~高極性、分子量としては100~1000程度の成分を測定する事が可能です。

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測定の流れについて

まずは異常品と正常品を分析して下図の①と②のデータを得ます。
どちらのデータにも無数のスペクトルデータが含まれており、この状態で原因となる成分を探す事は難しい状態です。
そこで①の成分から②の成分を測定機能にて成分を差し引きます。
そこで得られたデータは③となり、本分析の結果としては差異が無いという結論が得られます。
差異成分が検出された場合には精密質量数情報より原子の組み合わせを推定し、混入物の推定を行います。

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測定可能な化合物の例

測定出来る化合物の範囲としては原理部分で述べた通り、中極性~高極性、分子量としては100~1000程度の成分となります。
測定する事が出来ない成分の例は無機物(一部の薬や消毒剤等)、塩素化合物(消毒剤や一部の農薬類)、タンパク質、揮発性物質(異臭成分等)が挙げられます。


異臭検査との違い

異臭検査についても比較検査をして成分の違いから原因究明に繋げるための検査ですが、分析装置や手法が異なる事から測定範囲が異なります。
異臭検査については揮発性成分の測定を得意としている事からカビ臭や劣化臭をはじめとした様々な臭い成分を測定する事が可能です。
(詳細は異臭検査についてのコラムについても掲載しておりますので観覧頂けますと幸いです)
→ 異臭検査についてのコラムはこちら


原因究明へのアプローチ方法

例えば食品に問題があり、薬品の様な味がしたという場合でも状況や食品の状態により
適切な検査が異なる場合があります。

  • 食品の劣化の可能性が高い場合、発酵により発生する成分が等の原因となる可能性があり異臭検査による検査の方が原因究明に繋がる可能性が高いです。
  • 医薬品の混入が疑われる場合には本検査の方では多くの医薬品成分を特定できるため原因究明に繋がる可能性が高いです。
  • お問い合わせ頂く際には可能な限り状況についても併せて相談頂く事でより適切な検査がご案内可能となります。


    最後に

    異常となる原因は無数に存在しますが、弊社では問題解決のために様々技術を駆使して原因究明の一助となる様、検査体制を構築しております。
    お困りごと等ございましたら弊社までご相談下さい。

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