第149会日本獣医学会(日獣)

目的

PCV2ワクチンの使用が全国的に浸透し、生産成績の改善に繋がってきてはいるが、依然事故率の減少、生産性の向上のみられない農場も存在する。理由は様々であると思うが、今回の試験ではその解明の一助とするべく、PCV2とPRRSVの関係に注目し、PCV2ワクチン接種後の農場の事故率改善状況と、 PCV2ワクチン接種前のPCV2量及びPRRSV量をリアルタイムPCR(qPCR)法により比較し、PRRSVにおけるqPCR法の有用性を検討した。


方法

PCV2ワクチン接種前の事故率が5%、10%、20%の各2農場で平成20年に採材した血清を用いた。それぞれの事故率の2農場は、ワクチン接種後に事故率が改善した農場と改善しなかった農場を選抜した。検体数は各農場で母豚6頭、30、60、90、120及び150日齢の肥育豚3頭ずつを基本とした。これらについてqPCR法により血清1ml中のPCV2量とPRRSV量を測定し、PCV2ワクチン接種後の事故率改善状況と比較した。


結果

PCV2ワクチン接種後に事故率が改善した農場について、事故率5%及び10%農場(それぞれA農場、B農場)においては、PRRSV量が30日齢または 60日齢においてピークを示すのに対し、PCV2量は90日齢以降においてピークを示した。また事故率20%農場(C農場)においても150日齢時を除くと、PRRSV量が30、60日齢で、PCV2量が90日齢でピークを示し、さらにPRRSV量が全体的に低く推移していた。一方、ワクチン接種後に事故率が改善しなかった農場について、事故率5%農場(D農場)においてはPCV2が全ての日齢において低く推移していた。また事故率10%及び20%農場(それぞれE農場、F農場)においてはPCV2量とPRRSV量の推移が類似していた。


総括

PCVPRRSグラフ

今回の試験で、PCV2ワクチン接種前のPCV2量とPRRSV量の日齢ステージごとの推移と、接種後の事故率改善状況の関連性について、以下のような可能性が示唆された。

事故率が改善した農場
PCV2量とPRRSV量の推移が逆転、あるいはPRRSV量が全体的に低く推移

事故率が改善しなかった農場
もともとPCV2量が低く推移(ワクチン接種必要性の疑問)、あるいはPCV2量とPRRSV量の推移が類似(ワクチン効果が出にくい?)

このことから、qPCR法によるPRRSVの定量は、PCV2量と比較することにより、PCV2ワクチン接種前後の事故率変化を判断する上で有用であるとともに、接種前の測定によりその農場でのPCV2ワクチン接種の必要性を検討する材料になりうると考えられた。

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