母豚飼料へのL-カルニチン添加による母豚と子豚の成績への効果

(ピッグジャーナル2015年4月号掲載) 

母豚飼料へのL-カルニチン添加による母豚と子豚の成績への効果 
Effect of L-carnitine in sow diets on performance of sows and piglets 

 1.序論

 過去の研究で、母豚の飼料にL-カルニチンを添加することによって母豚の生産性と子豚の発育を良くすることが示されている。本研究の目的は、高い生産性をもつ母豚とその子豚に対するL-カルニチンの効果を調査することである。


  2.材料と方法

 繁殖豚(オランダランドレース×オランダラージホワイト)50頭を2群に分け、2産以上になる9ヵ月間観察した。
コントロール群(以下、C群)はL-カルニチンを添加しない妊娠-授乳期用飼料を、L-カルニチン添加群(以下、LC群)は妊娠-授乳期用飼料に50mg L-カルニチン/kgを添加した飼料をそれぞれ給与した。飲水は自由給水とした。
子豚は生後20~26日齢まで人工乳を自由給餌とした。
交配舎への移動日、分娩舎への移動日、1産目および2産目の分娩日に体重(以下、BW)と背脂肪の厚さ(以下、BFT)を測定した。BFTは最後肋骨上で超音波測定し、左右5cmの中央値をとった。母豚における飼料摂取量も測定した。
総産子数と離乳子豚数、そして出生時、12日齢、19日齢および離乳時の体重を測定した。さらに、離乳から発情までの期間と再発情した母豚数を記録した。 


 3.結果
  
 すべての生産ステージにおいて、母豚の飼料摂取量とBWは、L-カルニチンによる影響を受けなかった。授乳中の背脂肪の厚みの損失は、両方の産歴でLC群が少なかった。LC群における1産目の母豚の離乳から発情までの期間は、C群に比べて有意に短縮した(5.2日間 vs 7.7日間)。一方、2産目での期間は類似していた。
 1腹あたりの離乳子豚数は1産目ではLC群のほうがC群に比べて高かった(11.4 頭vs 10.7頭)。同時に、淘汰した子豚の割合がLC群で低かった(8.9% vs 15.2%)。特に、生存の見込みがなく淘汰した子豚の数は母豚にL-カルニチンを給与することにより減少した(2頭 vs 11頭)。
 
pig journal 2015年4月号_図1.png
4.考察
 
 この研究の目的は、母豚の生産性の向上に対するL-カルニチンの影響を評価することであった。低い生産性を示した過去の研究と対照的に、(1)治療が必要な子豚の数は変化がなかった。(2)L-カルニチンは脂肪と炭水化物の代謝に重要な役割をすることが知られている。これは自身の体重増加と子豚の発育に十分な栄養を必要とし、さらに強い代謝ストレスがかかりやすい初産において高い効果が認められたことを説明できるかもしれない。また、脂肪代謝の改善は授乳時の背脂肪の損失を減らし、またLC群で離乳から発情までの期間を短縮させた1つの理由となるだろう。搾乳牛においてもL-カルニチン添加による代謝負荷の減少が確認されている。
 LC群での高い離乳子豚数は、主に子豚の淘汰数を減少によるものであった。L-カルニチンは(3)出生前の改善効果を示すだけでなく、(4)生後の早期筋線維形成も改善した。LC群の母豚の乳はC群の母豚の乳に比べて有意に多くカルニチンを含んでおり、LC群の母豚から生まれた子豚の成長をより良くする結果となった。
 結論として、L-カルニチンは特に強い代謝ストレスがかかる初産の豚において、母豚の生産性と子豚の成長を改善するのに有効な成分であることが示された。


  5.一言
 
 L-カルニチンを給餌することによって、繁殖成績への有効性を確認し、さらに本論文から2産よりも初産においてより有効であることがわかった。育成で気にかけることの多い初産から効果が認められる点をみると、L-カルニチンの研究の動向は養豚に携わる人には注目すべきと思われる。 

Proceedings of the 23rd IPVS Congress,Cancum,Mexico-June 8-11,2014 P.680

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