異なる環境エンリッチメントの道具が離乳子豚の行動や皮膚病変に与える効果

(ピッグジャーナル2015年6月号記載)
The effet of different environmental enrichment materials on behavior and skin lesions of weaner pigs 

 

1. 序論
 

 EU動物福祉法案においては調査や試験のため離乳子豚の欲求を満たす環境エンリッチ
メントの道具を与えることが義務づけられている。コマーシャル農場において様々な環境エンリッチメント道具が用いられているが、離乳期における動物への利点に関して明白ではない。そこで本研究の目的は、活動時間において付加的な改善効果をもたらすエンリッチメントの道具の選別、皮膚病変への影響および長期間使用することによる一貫性の有無を確認することである。

 

2. 材料と方法
 

 環境制御された建物内で12個のスノコ豚舎にて飼育している28~56日齢の離乳子豚300頭を用いた。スノコ豚舎3ペンずつに同じ高さの壁に金属ラックを設置し、その中に麻ロープ、金属チェーン、切り株、藁をそれぞれにいれた。各道具の反応時間、横臥した豚、攻撃頻度、皮膚病変の程度を28日間の試験期間中に6度観察した。
 皮膚病変は、病変無:0、中程度:1、重度:2として頭、耳、頚、肩、体表、尾の各部位についてスコア化した。
 

3. 結果
 

 豚は42日齢までは麻ロープに対して高い反応性を示した(7%、P<0.001)。
しかし、離乳期の最終ステージにおいては急激に減少し、56日齢においては藁がとって代った。試験期間を通じて金属チェーン、切り株には低い反応性であった。
試験期間を通じて、全ての群で攻撃行動頻度は減少したが、離乳期の終わり近くまで、高い反応を示した麻ロープ、藁を与えた群においては高い頻度で皮膚病変が確認された。 特に、最も影響を受けた部位は耳と頚(それぞれ0.43、0.17、P<0.05)、重度の皮膚病変が高頻度に認められた(P<0.05)。横臥する豚の頭数に関しては、群間で有意な差はなかった。

 

4. 結論と考察
 

 今回試験に使用した道具の中で、金属ラックの中に麻ロープや藁をいれることがより豚をよりよく刺激することがわかった。
離乳初期および後期において、他の文献で藁が効果的であること報告されているが、離乳初期段階では、ロープのようなものに置き換えても有効あると考えられる。
 しかし、豚同士の階層的な競争に伴う皮膚病変へのリスクを考慮することが大切である。
道具の需要に対して、供給過多の場合攻撃性を増してしまう恐れがある。
プレゼンテーション1.jpgのサムネール画像
  表1:観察時にそれぞれの環境エンリッチメントで遊んでいる子豚の割合(%) 
 a.b.c:異符号間に有意差(P<0.05)

 

一言
 

 今回も引き続き、海外のアニマルウェルフェアに関する研究論文を紹介する。豚のペンに入れる道具によって反応に違いがあり、また日齢のよって反応する道具が変化する点が面白いところである。反応性が高い道具ほうが皮膚病変が高い頻度で認められたとの記載から、まだ研究の余地があるものと考えられる。 
 

Proceedings of the 23rd IPVS Congress, Cancun, Mexico – June 8-11, 2014 P.707

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