保温ばかりに気を取られていませんか

本格的な冬の到来です。昨年12月から、例年以上に大雪の影響を受けている地域が多くあります。
そんな寒い日が続く中、養豚農場にお邪魔すると、離乳舎や肥育舎で保温重視になってしまっている場面が多くあります。

カーテン下や豚舎入口近くの豚房の通路側に豚が寄っている場面に何度か遭遇しました。寄っている割に、寒さで毛並みが悪いわけではありません。そのような豚舎では、私もアンモニアガスの貯留や酸素欠乏により息苦しさを感じます。測定を行うと、温度は適正温度以上、湿度は60%以上、二酸化炭素濃度5,000ppmである農場が多々ありました。豚は、寒いから寄っているのではなく、新鮮な空気を求めて、カーテン下や豚舎出入り口から入ってくる空気を求めて集まっているようです。
急に寒くなり、豚への優しさから、ガスヒーターを使用したり、カーテンを閉め切るといった保温重視になってしまいます。ある一定の日齢までは保温は重要ですが、ガスヒーターは酸素を消費するため酸素欠乏になります。入気場所が少なく、排気ファンの回転数が低いと、もちろん酸素量が減り、二酸化炭素量が増えてきます。

週令に応じた適正な温度管理(表)を参考に換気を行なっていくことが大切です。養豚では、二酸化炭素濃度は2,000ppm以下と言われています。2,000ppm以上になると、ボーとして活力が低下してくると言われています。5,000ppm以上では、死につながってもおかしくありません。ちなみに、外気の二酸化炭素濃度は、450~500ppmが一般的です。

私が訪問している農場では、離乳舎は40日齢前後までが保温重視、それ以降は換気を取り入れてもらっています。肥育舎は、受入れから2週間程は保温、100~120日齢では換気重視になるように徐々に移行していくように説明しています。豚舎の構造、豚の発育に寄っても違いますので、豚の健康状態を見ながら調整し最適な環境作りを行なっていく必要があります。肥育豚は、脂肪がついてくると熱量も高くなります。ある程度の換気による寒さは耐えられる体になっています。豚を信じてあげることも大事です。その代わり、温度差と風当りはご法度です。冬は、昼間に温めすぎると、夜に温度が下がることで温度差が出来、呼吸器疾病や突然死などのリスクになります。可能な限り夜の低い温度に近づけた管理を行なうことをお勧めします。
これからの季節、保温ばかりに目を向けるのではなく、換気もしっかり行なって下さい。排気するだけでは新鮮な酸素の供給が出来ないため、新鮮な空気を取り入れることも必要です。入気口付近の寒い豚房があるようであれば、プラダンなどで天板を設置し、冷気からの逃げ場所を作ってあげて下さい。
コロナ禍で注目を浴びている二酸化炭素濃度測定器、私の仕事のお供になっています。農場の方に「見えるか化」出来て好評です。同じものを購入された方もいます。皆さんの農場で寄っている豚達は、寒いのでしょうか、新鮮な空気が欲しいのでしょうか。是非、皆さんも豚舎の温度、湿度、二酸化炭素濃度を測定して、豚が何を望んでいるのか、適切な環境作りが出来ているか確認してみて下さい。

週齢 温度 週齢 温度
1 30 7 22
2 28 8 20
3 26 9 20
4 24 10~11 20
5 24 12~16 18
6 22 17~21 16

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写真 暖かいはずのコンクリート床で寝ず、アミから入ってくる新鮮空気を求めて、アミの周りで寝ている豚がほとんどです。
(二酸化炭素濃度 約4,500ppm)

農畜産営業部
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