【PFAS】暮らしの中のQ&A(食品編)

はじめに

前回の【PFAS】暮らしの中のQ&A(フッ素コーティング製品及び水質編)ではフッ素コーティング製品及び水質に関してのQ&Aを掲載させていただきました。
今回のコラムでは暮らしの中のQ&A(食品編)についてご説明させていただきます。
 

暮らしの中のQ&A(食品編)

Q1:PFASがヒトの体の中に入ると、どのような影響が生じますか?

A1:食品安全委員会で、PFOS、PFOA及びPFHxSの3物質を対象として食品健康影響評価を海外の評価機関等による評価書を参考に、(1)肝臓への影響、(2)脂質代謝への影響、(3)甲状腺機能と甲状腺ホルモンへの影響、(4)生殖・発生への影響、(5)免疫への影響、(6)神経への影響、(7)遺伝毒性、(8)発がん性の8つのエンドポイント(有害影響を評価するための指標)についてそれぞれ検討しています。
 
これらのエンドポイントのうち、PFOSについてはラット2世代生殖・発生毒性試験でみられた2世代目の児動物における体重増加抑制を、PFOAについてはマウス生殖・発生毒性試験でみられた胎児の前肢及び後肢の近位指節骨の骨化部位数減少、雄の児動物の性成熟促進を採用し、それぞれ耐容一日摂取量(TDI)として20 ng/kg体重/日を設定しました。PFHxSについては、評価を行う十分な知見は得られていないことから、現時点では指標値の算出は困難であると判断しています。
 
なお、当該評価書において、食品安全委員会は「現時点の情報は不足しているものの、通常の一般的な国民の食生活(飲料水を含む)から食品を通じて摂取される程度のPFOS及びPFOAによっては、著しい健康影響が生じる状況にはないものと考える」との見解を示しております。
 
一方、PFOS 及び PFOA をはじめとする PFAS については、健康影響に関する情報が不足しており、不明な点等は多いことも考慮して、
 

  • まずは、今回設定した TDI を踏まえた対応が速やかに取られること
  • PFAS にばく露され得る媒体(飲料水、食品等)における濃度分布に関するデータの収集を早急に進めること
  • その調査結果等をもとに、高い濃度が検出された媒体に対する対応を一層進めることが重要と評価しています。※
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    ※ 引用文献;
    「有機フッ素化合物(PFAS)」の評価に関する情報 | 食品安全委員会 – 食の安全、を科学する
     

    Q2:どのような食品にPFASは含まれていますか?

    A2:農林水産省が平成24~26(2012~2014)年度に実施したトータルダイエットスタディ※でどのような食品群にPFOS、PFOAが含まれるか調べたところ、限られた情報ではありますが、当時の結果では、魚介類、藻類、肉類に含まれていました。ただし、どのような食品にPFOSやPFOAといったPFASが含まれているのかについては、情報やデータが
    不足しています。
     
    ※広範囲の食品を小売店等で購入し、必要に応じて摂食する状態に加工・調理した後、食品群ごとに消費量に応じて混合し、対象とする化学物質を分析し、食品群ごとに化学物質の平均含有濃度を算出、平均的な化学物質の消費量を推定する手法。
     

    Q3:日本人は水や食品を通してどれくらいPFASを摂取しているか?

    A3:農林水産省が平成24~26(2012~2014)年度に実施したトータルダイエットスタディでどのような食品群にPFOS及びPFOAが含まれるか予備的に調べたところ、限られた情報ではありますが、日本人の食生活において1日あたりのPFOSの平均的な推定摂取量は、体重1kgあたり0.60~1.1 ngの間に、PFOAの平均的な推定摂取量は、体重1kgあたり0.066~0.75 ngの間にあると推定されていました。ただし、調査点数が少なくデータが不十分であること、調査実施当時の分析技術では、PFOS及びPFOAの食品中の濃度と比較して検出下限(LOD)及び定量下限(LOQ)が高く、LOD未満又はLOQ未満の分析値が多かったことから、推定値の範囲が大きく、不確実性があることに留意が必要です。
     
    こうした状況も鑑み、農林水産省では令和6年度から国産の農畜水産物を対象としたPFASの含有実態調査を実施し、品目ごとの濃度分布についてのさらなる知見やデータの集積に努めます。
     

    Q4:PFASに関し、国内で流通している食品を食べても大丈夫か?

    A4:食品安全委員会は、「まずは、今回設定したTDIを踏まえた対応が速やかに取られることが重要」であり、「PFASにばく露され得る媒体(飲料水、食品等)における濃度分布に関するデータの収集を早急に進め、その調査結果等をもとに、高い濃度が検出された媒体に対する対応を一層進めることが必要である。」としています。
    一方で、「現時点の情報は不足しているものの、通常の一般的な国民の食生活(飲料水を含む)から食品を通じて摂取される程度のPFOS及びPFOAによっては、著しい健康影響が生じる状況にはないものと考える」としています。
     
    これらの評価内容を考慮すると、通常の一般的な食生活ではPFOS及びPFOAを心配する
    必要はないものの、今後、国や自治体等による実態調査の結果、PFAS濃度が非常に高い食品の存在が明らかとなった場合は、耐容一日摂取量(TDI)と比較して個別に対応を検討していく必要があると考えます。農林水産省では、引き続き農畜水産物中のPFASについて知見の集積を進め、関係省庁や自治体と連携して対応していくとしております。
     

    Q5:PFASに関し、食生活で気を付けることはあるか?

    A5:食品安全委員会が取りまとめた食品健康影響評価書、及び同委員会が公表している「「有機フッ素化合物(PFAS)」評価書に関するQ&A(2024年6月25日)」によると、通常の一般的な国民の食生活から食品を通じて摂取される程度のPFOS及びPFOAによっては、著しい健康影響が生じる状況にはないものと考えられ、PFOS、PFOA等のリスクを過剰に懸念して食生活を変更することには、栄養学的な過不足をもたらす等の新たな異なるリスクをもたらすおそれがある、との見解が示されております。こうした見解を受け、農林水産省としては様々な産地で収穫・水揚げされた、様々な品目を摂取する等、引続きバランスよく摂取していただくことがまずは重要と考えております。
     

    Q6:食品に含まれるPFASに関してどのような調査・研究をしていますか。また、これまでに得られた成果は何ですか?

    A6:農林水産省では、令和3年度から4年度にかけて水産物中のPFOS・PFOAの含有実態調査を実施したほか、令和6年度には国産の農畜水産物を対象に食品中のPFASの含有実態調査を実施しました。この他、農地土壌や農業用水、食品中のPFASの一斉分析法の開発、農業環境から農産物への移行、蓄積等に関する研究も進めているところです。こうした調査・研究を通じて得られた知見は、農林水産省のホームページ等に順次掲載し、本Q&Aも充実していきます。
     
    次回、【PFAS】水質管理目標設定項目の検査方法(LC/MS/MS法)~
    についてご説明させていただきます。
     
    参考文献;
    農林水産省ホームページ:食品中のPFASに関するQ&A
    >>食品中のPFASに関するQ&A:農林水産省
     
    弊社では飲料水及び河川水等のPFOS及びPFOA検査を行っております。お気軽にお問い合わせください。
    PFAS検査・分析・費用について(有機フッ素系化合物) | 食環境衛生研究所
     
     

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