飼料中のアミノ酸について

飼料中のアミノ酸

動物のからだを構成するたんぱく質は20種類のアミノ酸から出来ており、そのうち数種のアミノ酸は動物体内では必要量が合成されないことから、配合飼料で補う必要があります。これらのアミノ酸は必須または不可欠アミノ酸と呼ばれており、表1に示す通り、動物種と成長段階によって異なります。動物の成長に適した飼料を給与するためには、飼料のアミノ酸含量を知ることが重要であり、アミノ酸検査は重要な情報源となります。

遊離アミノ酸との違いはこちらです → 『味に関わるおいしい話③ アミノ酸 (タンパク質構成アミノ酸と遊離アミノ酸) について

表1 畜産動物の必須アミノ酸 (アミノ酸ハンドブックより抜粋)

アミノ酸ヒト
子豚母豚雌鶏子牛泌乳牛(参考)
アルギニン
ヒスチジン
イソロイシン
ロイシン
リジン
メチオニン
フェニルアラニン
スレオニン
トリプトファン
バリン
グリシン
セリン
システイン
チロシン
アラニン
アスパラギン酸
グルタミン酸
プロリン
アスパラギン
グルタミン


アミノ酸の桶の理論

図1のように、一つの必須アミノ酸を一つの板にみたてた桶に例えて考えると、左の桶はすべての板のバランスが良く、縁いっぱいまで水を貯めることが出来ます。それに対して右の桶は、板が最も低いリジンの高さまでしか水が貯まりません。つまり、アミノ酸含有量が一つでも少ないとそれだけのタンパク質しか生成できないことを示します。これをアミノ酸の『桶の理論』と呼びます。バランスの良いアミノ酸は、飼料を配合するうえで重要なファクターとなります。


図1 アミノ酸の桶の理論の模式図 (味の素株式会社HPより抜粋)


飼料中のアミノ酸の環境への影響

一般的に使用される穀類や油粕類などほとんどの植物性飼料原料において、必須アミノ酸のリジンやメチオニンが不足しています。例えば、リジンを比較的豊富に含む大豆粕 (2.7~2.9%) に比べ、トウモロコシや小麦 (0.22%、0.3%) などは少量しか含んでいません。他の過剰なアミノ酸は家畜に利用されることなく、窒素化合物として排泄されます。この窒素化合物からアンモニアが生成され悪臭の原因となり、土壌や表層水、地下水の汚染につながります。そこで、飼料にリジンやメチオニンなど不足するアミノ酸を添加することでアミノ酸バランスが改善し、飼料中のたんぱく質が効率よく利用されるのに加え、総窒素排泄量を約3割低減することができ、土壌・水質への負荷が軽減されます。


まとめ

アミノ酸バランスの良い配合飼料は、家畜の栄養改善や成長促進に重要な役割を果たしています。またそれだけでなく、家畜のたんぱく質吸収率が上がることで窒素排出量が減少し、窒素化合物による環境負荷の軽減にも大きく寄与しています。

弊社では飼料中のアミノ酸総量を検査する事で、飼料中のアミノ酸バランスを評価することが出来ます。アミノ酸バランスの良い配合飼料の作製、ひいては家畜の成長促進や環境負荷の軽減に役立てられます。
検査の相談等もお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

飼料のアミノ酸分析はこちらです→ 『加水分解アミノ酸検査 (18種)
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<参考文献>
1.味の素株式会社HP 『飼料用アミノ酸基礎知識』
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/business/basic.html
2.味の素株式会社HP 『食肉生産を支えるアミノ酸』
https://www.ajinomoto.co.jp/amino/himitsu/shokuniku.html
3.アミノ酸ハンドブック 味の素株式会社編
4.江崎グリコ株式会社HP 『アミノ酸スコアとは。スコアが高い食品はどれ?』
https://cp.glico.jp/powerpro/amino-acid/entry37/

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