食品中のポリフェノール総量分析について

◆ポリフェノールとは
ポリフェノールとは、芳香環に結合した二つ以上の水酸基(フェノール性水酸基)を有した化合物の総称であり、その化学構造からフェノールカルボン酸類、フェノールアミン 類、フラボノイド化合物のアントシアニン類、フラボン類およびタンニン類などに大別されます1)。
また厚生労働省によると、ポリフェノールは抗酸化物質の一種で、活性酸素★の発生やその働きを抑制し、活性酸素そのものを取り除く物質とされています2)。さらに、ポリフェノールは、自然界に8000種類以上あると言われ、その種類によりさまざまな健康効果や美容効果が知られています。


★活性酸素とは、呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部が、通常よりも活性化された状態になることをいい、体内の他の物質と非常に反応しやすい性質を有します。そのため、外部から侵入してくる菌や微生物を排除してくれるなど、体の健康を守る免疫機能の一つとして働きます。しかし、過剰に増加した活性酸素が、正常な血管の内壁や内臓などを攻撃したり、細胞核のDNA(遺伝子)を傷つけたりし、多くの疾病の原因となることが知られています。


◆ポリフェノール摂取基準量について
近年の研究で、非栄養素であるポリフェノールは、脂質やタンパク質などの栄養素のように、体内へ取り入れるシステムがないためか、体内への吸収率は栄養素と比較すると低いことがわかっています。また、ポリフェノールは”渋味や苦味”成分として生体に認識されていますが、ポリフェノール作用発現メカニズムにおける脳-消化管軸の役割・機構は明らかになっていません。さらに、分子量や化学構造も様々で、8000種類以上もある化合物の集合体 “ポリフェノール”をひとくくりにして、その活性を議論することは妥当ではないこと3)、化合物によって適切な用量が存在することが示唆されている研究結果もあります4)。
以上のことからわかるように、ポリフェノールの1日の摂取基準量を定めることが難しいのが現状です。
また、ポリフェノールの特徴である抗酸化作用は、言い換えればポリフェノール自身が酸化されやすい=反応性が高いことに由来します。このポリフェノール自身の酸化のされやすさとそれに続く反応性の高さは、良い効果が得られる可能性だけではないことも考慮しておく必要があります5)。
以上のことから、製造・販売されている食品や私たちが食事からとっているポリフェノールの量を知ることは、食品を購入するお客様や私たち個人におけるポリフェノール摂取量の目安や適量を知る手助けとなるのではないでしょうか?

◆高カカオ=高ポリフェノールではない!?
最近注目を集めている高カカオチョコレートですが、『高カカオ=高ポリフェノール』ではないことにも注意が必要です。カカオ含有量を示す%表示(カカオ70%など)には、カカオバターも含まれます。カカオバターには、ほとんどポリフェノールは含まれません。『高カカオ=高ポリフェノール』と消費者が勘違いしやすい現在の表示から、今後は、カカオバターの割合やポリフェノール量の表示が必要になる可能性が高いと考えられます。

弊社では、これらの一助となるようポリフェノール総量として分析 を行っております。

分析依頼は下記まで▼

1)E. Haslam: Practical Polyphenolics; From Structure to Molecular Recognition and Physiological Action. Cambridge University Press ISBN: 9780521675598(2005)
2)厚生労働省「e‐ヘルスネット 抗酸化物質」
3)N. Aruga, M. Toriigahara, M. Shibata, T. Ishii, T. Nakayama & N. Osakabe. J. Funct Foods. 10, 355 (2014)
4)A. Saito, R. Nakazato, Y. Suhara, M. Shibata, T. Fukui, T. Ishii, T. Asanuma, K. Mochizuki, T. Nakayama, N. Osakabe.The impact of theaflavins on systemic-and microcirculation alterations: The murine and randomized feasibility trials.
5) J-STAGE ポリフェノール,化学反応を基盤とする機能性物質抗酸化反応から成分間反応まで/ 2020年10月15日

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