酸素水の飲水添加は豚の免疫活性を高め、サルモネラ・ティフィムリウム感染豚の免疫応答を促進させる

(ピッグジャーナル2014年7月号掲載)


酸素水の飲水添加は豚の免疫活性を高め、サルモネラ・ティフィムリウム感染豚の免疫応答を促進させる

Oxygenated Drinking Water Enhances Immune Activity in Pigs and Increases Immune Responses of Pigs during Salmonella Typhimurium Infection

1.背景

 1990年代初頭から、水道水に酸素を含ませる装置や酸素水は、特に欧米で商業的に生産され、販売されている。通常、水道水には約5~7mg/Lの溶存酸素が含まれているが、水道水の溶存酸素を、30~120mg/Lまで増加させることができる。
 酸素水を飲むことにより、免疫機能を高められる可能性があり、肥満や肝ジストロフィーなど、様々な疾患に対して効果があることが報告されている。
 酸素水を飲むことによってアルコールの解毒作用を促進することができることを実証した報告に基づき、著者らは、ブロイラーのヒナにサルモネラ・ガリナルムを実験的に感染させる試験を以前に実施し、酸素水を飲ませると生存率が高くなることを以前報告したが、豚に酸素水を飲ませることによる免疫学的数値への影響についてはデータ不足である。そこで今回は、酸素水を飲ませた豚にサルモネラ・ティフィムリウム(以下、ST)を感染させた場合、酸素水が豚にどのような影響を与えるかを確認した。

2.材料・方法

 サルモネラ陰性の3週齢の豚(平均体重7.59±0.56kg)10頭を導入し、無作為に5頭ずつ2群に分けた。
 対照群には、通常の水道水(溶存酸素量:5~7mg/L)を、試験群には、酸素水(溶存酸素量:38~45mg/L)をST感染前の25日齢から感染後7日まで自由飲水させた。ST 1×109cfuの菌量を人工的に感染させた。
 また、酸素水の免疫機能を確認するために血液をST感染前日、感染後3及び7日目に採取し、末梢血単球(以下、PBMC)を確認した。最終日に剖検し、腸間膜リンパ節からINF-γ及びTNF-αのmRNAの発現量を確認した。

3.結果および考察

 ST感染前のLPS誘導性PBMCは、対照群と比較して試験群が有意に高値を示した(図1a)。
 
図1a.jpg
 
 ST感染後の総白血球数、特にリンパ球及び単球は感染後3日目に試験群が有意に高値を示し(表1)、PBMCのIL-1β発現量もST感染前日、感染後3及び7日目で試験群が有意に高値を示した(図1b)。

図1b.jpg
 
 また、腸管膜リンパ節のINF-γ及びTNF-αのmRNAの発現量も、感染後7日目に試験群が有意に高値を示した(図1c)。
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 CD4+とD8+の比率もST感染前日に試験群が有意に高かった(図1d)。
図1d.jpg
 
 試験期間中、酸素水を飲ませた豚は、対照群の豚と比較して白血球数及びサイトカインの発現量は有意に高値を示した。基本的なメカニズムは明らかでないが、これらの効果は酸素を含ませた水が酸素ラジカルの発生または低酸素状態の軽減をもたらしたと推察される。
 本試験の結果から、酸素水を飲ませることによって、STに感染した豚の免疫応答が促進されることが示唆された。

4.一言

 今回は、酸素水を飲ませることによって、豚の免疫が強化されることが確認されたという報告であった。免疫が強化されるということは、サルモネラだけではなく、他の病原体に感染した場合も同様な効果が得られる可能性があり、事故率の改善につながることが期待され、とても興味深いものである。 

 

JUNG.B.G et al.J.Vet.Med.Sci.74(12):1650-1655,2012

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