ノロウイルスについて②

冬になると猛威を振るい、私たちを悩ませるウイルスがあります。1、2月をピークに発生し、年間にしても発生件数はいつも上位、患者数はトップに位置するノロウイルスです。高齢者福祉施設の連続集団発生で、死者が出ましたので世間的にもその名を耳にする機会が多いと思います。このウイルスは未解明なところが多く、現在、厚生労働省のQ&Aによると感染経路はほとんどが経口感染と言われており、汚染された貝類(カキ、大アサリ、シジミ、ハマグリ等)を生あるいは加熱不足の状態で食した場合、感染した食品取扱者を介して汚染した食品を食した場合、患者の糞便や嘔吐物からの二次感染及び人同士の接触機会が多い場所での人から人への直接感染があります。

このウイルスを失活化するためには加熱処理が有効で、食品の中心温度が85度以上で1分間以上の加熱を行えば感染性はなくなるとされています。先に未解明なところが多いと述べましたが、ノロウイルスには多くの遺伝子の型があり、培養した細胞及び実験動物でウイルスを増やすことが出来ない事から、ウイルスを検査(分離して特定する)することが困難なことにその理由があります。また、困ったことに食品中に含まれるウイルスを検出することが特に難しく、食中毒の原因究明や感染経路の特定が困難です。

食中毒なのか、感染性胃腸炎(ノロウイルスによる感染症)なのか、原因究明・衛生指導に悩ます存在です。現在、レストラン等で食事し、ノロウイルスが原因で多数発症した場合や食品中や調理者の検便から検出された場合は食中毒。患者の検便のみの検出の場合は、人から人への感染による感染症扱いというケースをよく耳にします。何れにせよ、感染した場合、高齢者や乳幼児では致命的な結果にもなりかねないことから、基本の手洗い、器具の洗浄・消毒、食品の衛生的な取り扱いや十分な加熱、便や嘔吐物の適切な処理等の徹底が感染あるいは食中毒の予防のポイントとなります。

食品検査|食品分析|残留農薬|飼料分析|肥料分析|家畜病性鑑定|

食品の異物混入とその対応

年間を通じての依頼件数が決して少なくない検査の一つに、混入異物の鑑定というのがあります。一般的に業界で言う「異物」とは、生産、貯蔵、流通の過程での不都合な環境や取り扱いによって、食品中に侵入したあらゆる外来物を言います。ただし、外来物以外でも製造や保存過程において、内部に発生した固形物なども「異物」としての取り扱いを受けます。つまりは正常な製品と比較して異なるものが混入しているように判断された場合に「食品の異物混入」となります。

具体的に「異物」となりうるものには、どのようなものがあるのでしょうか。特に件数として多いのは、髪の毛や昆虫などですが、その他にも動物・鳥類の体毛、動物由来の排泄物、種子、植物の断片(木片、わらくず、もみがら等)、繊維など、小石・土砂、ガラス・陶磁器・セメント・金属・プラスチック・ゴムなども異物混入の事例として発生しています。

実際に異物混入があった場合(クレーム、社内発見に関わらず)、製造者の対応としては、

(1)『何であるかの確認』

(2)『なぜ混入したかの原因調査』

(3)『混入原因を排除するための対策の立案』

(4)『対策の実施』

という手順になるかと思われます。弊社のような検査会社が携わるのは、(1)『何であるかの確認』という部分になりますが、その後の(2)、(3)、(4)の手順に頭を悩ませている製造業者の方は多いことかと思います。そして、クレーム先に何であったか、その原因と対策を報告、とその時点で終わってしまうことが多いのではないでしょうか。

時間が無い、人がいない、お金が無いなどが対策の実施が出来ない理由であると思われますが、何度も同じような異物混入が発生すれば、その分だけ信用低下に繋がり、悪循環に陥ってしまうことでしょう。長期的な視点で考えれば、混入異物が発生した時に良いチャンスと捉え、その原因排除の対策を主軸として品質管理を考えるということが必要になるかと思われます。

現在の食品業界は「安全・安心・おいしい」ということが大前提であると考えられています。食品の安全に関して連日報道される昨今、一歩先を見据えた品質管理体制が益々重要となっていくでしょう。

食品検査|食品分析|残留農薬|飼料分析|肥料分析|家畜病性鑑定|

食品表示について

食品表示
2007年は大手食品メーカーの賞味期限切れ原材料使用事件から始まり、食肉会社の食肉偽装事件と食品会社の不祥事が続きました。このような不祥事が起こる度に、食品会社の倫理的な問題が問われていますが、その事件の違反がどのような法律に対しての違反であるのかをお付き合いのある食品会社に尋ねても明確に答えが出る人は数多くありません。

答えが出ない人の多くは、規模的に従業員が数人から数十人といった範囲で、取引先が数少ない下請け的な仕事が業務の大半を占める会社がほとんどです。答えられなかった会社が悪質でデタラメな作業をしているかといえば、そうではありません。

今回取り沙汰されている食品衛生法やJAS法の改正されている内容について詳しく知らないのです。多くの企業は各業界団体や取引先から情報を入手しているケースが多く、逆に業界団体に属していなく取引先も決まった範囲の物流会社が中心であると外からの情報入手が遅れてしまいます。

悪質に法律違反しているのではなく結果的に違法となる行為が存在する訳です。その原因は恐らく行政側に複雑な食品の流通をきちんと把握している人は少なく、外からの情報入手が少ない会社は食品に関わる全ての法律をきちんと把握している人が少ないことにあると思います。

このような問題を軽減させるには、従来の協会団体や量販店に向けた通知やインターネットによる通知手段だけではなく、直接告知するような行政側の努力が最善なのではないかと思います。また、法律自体も食品衛生法やJAS法のように一つの表示に対して互いに部分的に関わった複雑な体系にせずに、統合できるところは統合するようにした方が良いと思います。

食肉会社の食肉偽装事件直後に、ある協会団体が食肉会社の調査にのり出し、悪質な不適正表示はなかったと農林水産省に報告しながらも現行のJAS法では業者間取引は表示義務の対象外であるので、農林水産省は適用範囲の拡大を検討しているという内容の記事を読みました。JAS法では業者間取引は表示義務の対象外でも食品衛生法では対象範囲になっています。

なぜ、食品衛生法で対象範囲であるのにJAS法でも規制しなければいけないのかが良くわかりませんが、法律を複雑にしている原因であるには違いありません。現行の法律では、業務間の不備な表示は食品衛生法違反であるがJAS法違反ではないという場合もあるわけです。当然、状況によってはJAS法だけが関わっている場合もあるわけです。このように表示一つにしても全体像を把握するにはかなり勉強しなくてはなりません。よって、事件を減らすにしても行政等による法律等の周知の徹底や法律自体もわかりやすいように統合していくべきであり、そう簡単に解決が付かず、いくつもの難関があると思います。

食品検査|食品分析|残留農薬|飼料分析|肥料分析|家畜病性鑑定|

食品アレルゲン

食品アレルギー

食品回収情報に目を通すと、その理由・原因として「アレルギー物質表示欠落のため」「アレルギー物質混入の疑いあるため」などが挙げられているのを良く見ます。今回は、「食品アレルギー」そのものについて簡単に解説をしたいと思います。

そもそも、アレルギーとは、免疫反応が特定の抗原に対して過剰に起こることをいいます。免疫反応とは、体の中で異物(抗原)が入ってくると、これに対して排除しようとする働きにより、抗体が作られるというものです。

ごく身近な例では、アレルギー性鼻炎(花粉症)やアトピー性皮膚炎などがあります。花粉症では、植物の花粉が異物(抗原)となって、発作性反復性のくしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみなどの一連の症状を引き起こすこととなります。つまり、食品アレルギーでは、食品に含まれる成分が異物(抗原)となって、何らかのアレルギー症状が出ることを言います。

アレルギー物質の表示に関して食品製造業に携わる方にとっては、食品の表示に係る法令などが一元化されていないことが、混乱を招くとともに表示欠落を理由・原因とする製品回収が起こる一因になっていると感じるかもしれません。

しかしながら、食品アレルギーの中には、アナフィラキシーショックを起こして命にかかわるようなこともあります。すなわち、アレルギー物質表示の怠りや製品への混入によって、重篤な健康被害を起こし、非常に痛ましい事故が起こりうる可能性も秘めているのです。これらのことも含め、食品製造業界の様々な問題がクローズアップされる現代では、食品製造業者皆様の理解と努力が益々重要となっていくことになるかと思われます。

食品検査|食品分析|残留農薬|飼料分析|肥料分析|家畜病性鑑定|

PCV2とPRRS-リアルタイムPCR検査例

<PCV2-リアルタイムPCRとPRRS-リアルタイムPCRの検査例>

A農場: PCV2ワクチンを接種後、事故率が20%から15%と改善がいまひとつでした。下記はワクチン接種前のPCV2とPRRSの血清中ウイルス量をリアルタイムPCRで検査したものです。PRRSも高く推移しているため、PCV2だけ抑えても顕著な改善が見られないことが推測できます。

食品検査|食品分析|残留農薬|飼料分析|肥料分析|家畜病性鑑定|

炭水化物と食物繊維と糖質の関係について

炭水化物と食物繊維と糖質の関係は?
炭水化物は、全量から水分,たんぱく質,脂質,灰分の合計を引いた値として求められます(「差し引きによる炭水化物」と呼ばれる)。
これは、栄養表示基準と五訂日本食品標準成分表の両方でそう定義されています。
栄養表示基準では、炭水化物の値からさらに食物繊維の値を引いたものを糖質としています。
五訂日本食品標準成分表の項目に糖質はないので、こちらには糖質は登場しません。
四訂では炭水化物の内訳が繊維と糖質という表記でした。

・炭水化物(g/100g)= 100-(水分(g/100g)+たんぱく質(g/100g)+脂質(g/100g)+灰分(g/100g))
・糖質(g/100g)= 炭水化物(g/100g)-食物繊維(g/100g)

食品分析|食品検査|残留農薬

豚の体重測定

昨日は、久しぶりに豚の体重測定をしました。10kgから20kgの仔豚を御姫様ダッコして量ります。たかだか約300頭を量っただけなのですが、今日になったら筋肉痛です。
まだまだ若い者には負けないつもりでしたが、体力の衰えを感じました。
来週は、子牛(300kg)の試験なので、週末にゆっくり休んで体力の回復をしないと・・・・・?

91  豚疾病|牛疾病|鶏疾病|残留農薬|飼料成分分析|肥料成分分析

今日のできごと。

食環研の菊池です。今日がブログデビューです。たいしたことは書けませんが日々の出来事(失敗、良いこと)、お客さんの愚痴、悩み、相談事など書き込みたいと思っています。今日はある養豚農家さんで取り組みを行っている臭気対策相談に乗っていました。この農家さんは高速道路上のサービスエリアに面していてまじめで誠実な臭気対策の取り組みをおこなっています。現在まで行っている臭気対策はとある業者のオゾンシステムで糞尿処理設備に取り付けて行っているのですが高い値段やランニングコストの割にイマイチ上手くいっていません。そこで他のオゾンの専門業者に相談に乗ってもらい新たな対策を講じようとしているところです。私もアドバイザーで色々相談に乗っていますがこの業者のシステムはなんとコストも安く、とても理にかなっていることに感心しました。目からウロコです。簡単に書くと糞尿処理施設⇒入気・送風・吸気⇒水の反応⇒オゾン反応⇒木酢液反応⇒排気になります。今まで行ってきた①使用頭数の減少、②飼料のペレット化(熱処理)、③消臭生菌剤の使用と合わせてその効果を期待しているところです。今後もまじめな農家さんを応援していきたいと思います。ちなみに今日は夜の内に東京の大鳥居に向かいました。明日羽田から宮崎に講演会の講師で伺います。テーマはサーコウイルスを抑えた後の疾病についてです。頑張ってきます。
飼料成分分析|肥料成分分析|残留農薬

Aujeszky’s Disease

APVSにて発表しました。
Eradication of Aujeszky’s Disease from a Japanese farm using an adapted vaccination program

IntroductionSince 1991, we have been trying to eradicate Aujeszky’s Disease (AD). But, in Japan, vaccination is not compulsory, its use depends on a voluntary decision by veterinarians or farmers. We were asked to eradicate AD on one particular farm. We monitored the farm’s AD status by regularly examining serum samples for AD antibodies. Using these results, we recommended a whole herd vaccination program, advising on the choice of vaccine and its timing for piglets, sows and gilts. We finally succeeded in eradicating AD.

Materials and Methods
The farm: A typical Japanese 500-sow farrow-to-finish herd on a single site in the northern part of Japan.AD Neutralizing Test (NT): Serum samples were incubated for 1 hour with AD virus (200 TCID/ L). The maximum dilution was recorded for neutralization (CPE -ve) after five days incubation (37°, 5% CO2). Measurements >2 were taken to be positive, and those 2, negative. ELISA Test: The ADV (gI) ELISA Test Kit (IDEXX) was used which measured ADV infection, because the only vaccines available in Japan are marker vaccines. Vaccine: Porcilis Begonia, Suvaxyn Forte Vaccination Programs: Program 1. (between spring and autumn, 2005) Vaccination with AD live vaccine (gI-, tk-) Gilts: When acclimatized: 2 doses, 4 weeks apart Sows: All sows, one month before farrowing Piglets: Not vaccinated Program 2. (between autumn 2005 and summer 2006) Vaccination with AD live vaccine (gI+, tk-) Gilts: When acclimatized: 2 doses, 4 weeks apart Sows: All sows, 3 times per year, all at once Piglets: 2 doses at 60 and 90 days old Program 3. (from summer 2006 to present) vaccination with AD live vaccine (gI-, tk-) Gilts: Soon after arrival: 2 doses 4 weeks apart Sows: All sows, 3 times per year, all at once Piglets: Single dose at 90 days old

Results
Program 1: Only one sow was ELISA-positive, there were no other field infections in sows. But field infection was observed in pigs at 90, 120 and 160 days of age. Program 2: The number of AD-positive sows increased, and field infection was observed in pigs of all ages. The farmer considered that the program was failing, and asked us to improve it. Program 3: No rapid changes in field infection, but by the end of November 2008, most pigs were negative. There were only limited numbers of older sows showing AD infection.

Discussion
Though he was not confident at the start, the farmer became convinced that AD eradication was possible using this monitoring approach. Management measures, including the introduction of only AD-ve gilts, periodic monitoring and feedback to inform a proper vaccination program were effective in eradicating AD on this farm. Communication between farmer and consultant was the key to maintaining motivation. It has now been shown that, strongly motivated farmers in Japan can eradicate AD using an appropriate program of vaccination guided by regular disease monitoring.

shokukanken Y.K
食品検査食品分析残留分析|畜産豚病気鶏病気牛病気