さらに、水自体が定期的に検査をして問題のない状態でも水の使い方によってさまざまな汚染の原因となります。水は、汚れを落とすとともに、汚れを落とした水や滞留した水によって他の物を再汚染させる危険性があります。
例えば、よく食堂などでボウルをシンクの下に保管しているのをよく見かけます。シンク内で食器を洗えば、その食器はキレイになりますが、下に置いてあるボウルはシンクを伝わって落ちた水や床に落下し跳ね返りにより付着した水により汚染されます。つまり同じ水を通して洗浄と汚染が同時に行われています。水が汚染を拡散させるという観点から、学校調理場では以前のウエットシステムからドライシステムに変更してきています。
水は、生命にとって欠かせないものであると同時に、生命を脅かす存在にもなります。食品事業者は再度水について確認してみましょう。
水って安全?①
水は私たちの生活に欠かせないものです。食品関係の会社にとっても水は、飲用・食品への添加・洗浄とさまざまな用途に使用されています。水は、安全という認識はありませんか。水は取扱を誤ると多大な事故につながります。実際、水道事業者によって管理している水道でも、フェノール類や油などの化学物質の混入やクリプトスポリジウムや赤痢菌による集団食中毒を起こしています。最近でも猪苗代町で患者数71人となったカンピロバクターによる食中毒が起きました。この原因は、塩素投入口の詰まりにより、塩素消毒が十分でなかった可能性があったということでした。
食品関係の多くの会社では、多量の水を使用するため水道水に加え、地下水を使用しているところもあります。そのため、地下水を使用している会社は自分自身で管理しなければならないため、専門の業者が管理している水道水よりも多くの危険性を含んでいます。
その要因は、①浅い井戸のため地下水自体が汚染されている。②消毒装置は設置されているが、目詰まりなどにより消毒液が送られていない。③消毒装置は正常に作動しているが、消毒液の濃度が規定に達していない。④貯水槽自体が汚染されている。です。
しかし、群馬県の条例で、①水質検査を年1回以上行う。②常に正常に作動しているかどうかを点検すること。③貯水槽は、定期的に清掃すること。と明確に記載されています。つまり管理者自体がその条例の内容を知らないため、検査・確認を怠り上記のような不具合が生じてしまいます。
「ふきん」や「ダスター」の管理②
そこで「ふきん」「ダスター」の取り扱いに関して見直す必要性が大いにあると言えます。まず、「ふきん」「ダスター」の洗浄に関して言えば、単に洗剤がけで「ふきん」「ダスター」を洗っても細菌は残存します。洗浄・すすぎ・消毒・乾燥を行ったものでなければ、「ふきん」「ダスター」が細菌汚染源となるのです。
また、一般に「ふきん」「ダスター」の寿命は約一ヶ月と言われています。古くなると吸水性が高くなっても、放水性が低下し、繊維の中で細菌が増殖しやすくなります。また、臭いも発しやすくなります。その状態で使用すると、場所によっては手の数千倍以上の細菌が存在し、どんなに手洗いしても汚染の連鎖をシャットアウトする事ができません。
家庭とは異なり、その使用回数もかなりの数となりますので、サイズは大き目、用途別に色分けし、枚数を決めてサイクル使用する事が重要となります。「ふきん」「ダスター」は取り扱いに注意しないと手同様に移動する汚染源になりかねないので、管理の徹底が工場・厨房の衛生を左右します。よって、工場や厨房の工場や厨房では従事者の手洗い教育と同時に「ふきん」「ダスター」の管理についても見直す必要があると思います。
「ふきん」や「ダスター」の管理①
食中毒の原因は、大きく分けると食材由来、従事者由来、設備・施設由来が挙げられます。設備がきちんと完備され、施設が最新で、清掃が良くても食中毒を起こしてしまいます。それは従事者の意識に問題があるからです。
従事者が「なぜそれをしないといけないか?」「それをしなければどうなるのか?」がきちんと理解していることが重要となります。そこで従事者に対する衛生教育がポイントとなります。一般的に家庭での食品衛生も工場の食品衛生も基本は一緒なので、実施するに当たって難しい事が要求されることはありません。しかし、家庭ではきちんと実施されているのに、工場や厨房で実施されていない一例として、「ふきん」「ダスター」の取り扱いが挙げられます。
誰が想像しても「ふきん」「ダスター」は、拭いたり、擦ったりすることでその対象をきれいにするために使用するものです。ところが工場や厨房の「ふきん」や「ダスター」の取り扱いは、家庭で言えば「雑巾」に当たります。この状況ではどの工場や厨房も力を入れて行っている「手洗い」も、「ふきん」「ダスター」に触れた瞬間に雑菌だらけとなり、行為そのものが無意味なものになってしまいます。
食品の異物混入について②
これらの中には、必ずしも有害と言えないものも含まれますが、正常な食品と比較して異なるわけですから、その製造や保存の過程に何らかの問題点があることを示し、有害ではないから問題は無いだろうと言うことは出来ないのです。具体的な例を挙げると、ある食品に髪の毛が混入していた場合、混入後に加熱殺菌などがされている製品であれば、髪の毛を原因とする微生物の増殖は考えにくいですし、髪の毛を口にしたところで病気になることは、まずないでしょう。
しかし、いくら病気にならないからといって、食品から髪の毛が出てくることに不快感を抱かない方は、いないのではないでしょうか?また、髪の毛の混入を許した生産ラインで、より危険性の高い異物混入が発生することは、大いに考えられることです。
現在の食品業界は「安全・安心・おいしい」ということが大前提であると考えられています。異物混入に対しては、どの会社の品質管理部門も頭を悩ませていることかと思いますが、もしも自分が食べたときに・・・という消費者の側に立った考え方を、従業員に徹底し、一つでも異物混入を減らす努力をしなければならないのではないでしょうか。
食品の異物混入について①
春先になるにつれ、弊社への依頼件数が多くなる検査の一つに、混入昆虫の鑑定というのがあります。実際的には、建造物の密閉性が高くなっていることや、餌となる食品などが豊富にある状況から、年間を通して昆虫混入の危険性は一定の水準を保っていると考えられますが、やはり気温が上昇してくる春先から夏、秋にかけて昆虫全般の出現率、混入の危険性は高いようです。
昆虫の混入も含めて、一般的に業界で言う「異物」とは、生産、貯蔵、流通の過程での不都合な環境や取り扱いによって、食品中に侵入したあらゆる外来物を言います。ただし、外来物以外でも製造や保存過程において、内部に発生した固形物なども「異物」としての取り扱いを受けます。例えば、加熱の際にできる「こげ」やワイン中にできる「結晶」、そして、カビが増殖しコロニーを形成した状態で発見された場合などです。つまりは、正常な製品と比較して異なるものが混入しているように判断された場合に「食品の異物混入」となります。
さて、具体的に「食品異物」となりうるものには、どのようなものがあるのでしょうか。その具体的な分類を以下に示します。
①動物性異物;昆虫・クモ・ダニなど、動物・鳥類の体毛、動物由来の排泄物など
②植物性異物;種子、植物の断片(木片、わらくず、もみがら等)、繊維など
③鉱物性異物;小石・土砂など、ガラス・陶磁器・セメント・金属・プラスチック・ゴムなど
手洗いについて考える②
そんなことを考えはじめた頃、東京都の小学校で教員を含め417名のノロウイルスによる集団胃腸炎が発生した。調査の結果、体育館のモップからノロウイルスが検出され、体育館の床がウイルスに汚染されていたことがわかった。朝会で床に座っている際に手に付着し感染したと考えられている。感染経路は、床→手→口=感染ということである。手が感染経路になってしまった例である。
当社でも手指の拭き取り検査を実施している。手洗い前より手洗い後の結果が悪いことがよくある。手洗い順序はマニュアルどおり正確で、洗剤を使用しアルコールも噴霧している。いったい何が問題なのだろうか?それは手洗いにかける時間と洗うポイントにある。①洗う時間が少ない(数秒)ために雑菌が流されていない。②手の平と甲のみで指先や爪の間、指の間、親指の周り、手首、手のしわを注意して洗っていない。③アルコールを噴霧した後、手をばたばたさせ乾燥させるだけであり、アルコールの擦り込みが出来ていない、ことがいえる。
以上のことから、人間は無意識の状態下ではもちろん、正しく理解していなければ意識していてもノロウイルスやO157などの感染力の強いウイルスや細菌を容易に拡散させてしまうということを理解する必要がある。食品従事者はそれらから身を守るためにも普段から意識し、しっかり時間をかけて手を洗いましょう。
手洗いについて考える①
手洗いは、食中毒防止の基本となることは食品に携わっている人であれば誰もが理解していることある。みなさんは普段から手洗い出来ていますか?人の普段の無意識の手の行動について考えさせられた出来事があった。
HACCPの講習会に参加したときのことである。休憩の時間になると大抵の参加者はタバコを吸うか、トイレに行くかである。トイレに行き手を洗っていると、ある参加者が隣の水道の鏡の前に立ち、髪をセットしなおし、手を洗わずにそのまま出て行ってしまった。次の人は指先を少し濡らした程度で手を洗い終え行ってしまった。少し観察していたが実際に手をしっかり洗っていたのは、10人中2人だけだった。出席者はもちろん品質管理担当者、従業員を指導する立場の人である。他の講習会でも、やはり指先を少し洗って終える人が大半だった。自分も含めて、手洗いの重要性を指導していながら実際の生活では出来ていないと再認識させられた。
(続く)
キャンピロバクターについて②
それでは、「カンピロバクター」食中毒の予防対策には、どのような事柄が考えられるでしょうか?
大まかに言えば、食品の加熱と2次汚染の防止の徹底という一言に尽きます。鶏を例に考えると農場レベルでの衛生管理の徹底、菌定着の阻止、処理場内、カット工場内での器具やヒトを介した交差汚染の防止などが対応策として考えられます。しかしながら、鶏の場合、糞便による体表汚染が生じやすいことや、腸管などの破損が起こりやすいこと、皮付きで処理されることなど、牛・豚と比較して汚染の可能性が高く、新たな概念の微生物防御法の開発が待たれている状況のようです。
家庭・個人レベルの対策としては、基本的な衛生管理(十分加熱するなど)に注意し、生食などをなるべく避けるといった、対策が考えられます。冬の間は、比較的に発症件数は低いのですが、生肉などを取り扱う際には、十分意識して携わるように心がけましょう。
カンピロバクター食中毒について①
「カンピロバクター」は、ヒトの食中毒の原因として代表的な細菌の一つであるといえます。今回、「カンピロバクター」の話題を取り上げるのは、代表的な食中毒菌の中でも、取り分け本属菌による食中毒発生件数が増加傾向にあるからです。
代表的な食中毒菌としては、「サルモネラ属菌」「黄色ブドウ球菌」「腸炎ビブリオ」「病原性大腸菌」などが挙げられます。過去10年の国内における食中毒発生件数の推移を見ると、「カンピロバクター」の件数が増加傾向にあることがわかります。平成13年には、それまで最も多かった「サルモネラ属菌」を上回り、平成15年以降は常に第1位を占めています。
「カンピロバクター」と聞くと、まずは、鶏肉を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。確かに鶏料理を介した感染が最も多く、次いで、その他肉料理、牛レバー刺しとなります。但し、本属菌は、家畜、家禽、野生動物の消化管などに生息しており、河川や下水などからも検出されています。ヒトへは、菌に汚染された食品や飲料水を介して感染するほか、保菌動物との接触によっても感染するようです。このようにカンピロバクターは、環境中に広く分布しており、このことが制御を困難にしている原因の一つとして考えられています。又、本邦においては、食肉を生や不完全加熱調理のまま食べる習慣があるために、リスクは、ことさら高くなることと考えられています。