男性のトリコモナスの症状は?感染原因から予防策まで解説

トリコモナス症

トリコモナスは、主に性行為によって感染する性感染症で、男性にも感染します。男性の場合は無症状のことが多く、感染していても本人が気づかないままパートナーへ感染させてしまう可能性があります。

症状が出る場合は、感染の可能性がある性行為から通常5日〜28日程度で、尿道や陰茎まわりに下記のような症状がみられることがあります。

  • 排尿時や排尿後の痛み・灼熱感
  • 尿道や陰茎の内側のかゆみ・違和感
  • 尿道からの分泌物
  • 射精後の痛み・違和感

ただし、男性のトリコモナスは、症状が出ないまま経過することもあります。そのため、「症状があるかどうか」だけでなく、「感染の可能性がある性行為があったか」「パートナーがトリコモナスと診断されていないか」を確認することが大切です。

心当たりがある場合は、症状がなくても性交渉を控え、性病検査で感染の有無を確認しましょう。すでに症状がある場合や、陽性者との接触がある場合は、泌尿器科・性感染症内科などの医療機関で検査・治療について相談することが大切です。

当記事では、男性がトリコモナスに感染した場合の症状から、感染の原因・放置するリスク・疑われる場合の対処法について、実際にトリコモナスなどの性病検査を実施している会社の立場で解説していきます。

目次

男性のトリコモナスの症状

男性のトリコモナスは、感染していても無症状のことが多い性感染症です。

実際に、米国の公衆衛生機関であるCDCは、トリコモナス感染者全体の約70%は症状がないと説明されています。

この数値は男性だけを対象にしたものではありませんが、検査現場でも「症状はないがトリコモナスに感染していないかを確認したい」という方から性病検査の依頼を受けることは少なくありません。

そもそもトリコモナスは、「トリコモナス原虫」という寄生虫が原因で起こる感染症です。性行為などによってトリコモナス原虫が性器に接触すると、男性では尿道で感染が起こることが多いとされています。

男性のトリコモナスでみられる主な症状は、下記のとおりです。

  • 排尿時や排尿後に痛み・灼熱感が出る
  • 尿道や陰茎の内側にかゆみ・違和感が出る
  • 尿道から分泌物が出る
  • 射精後に痛みや違和感が出る
□筆者からのひとこと

男性のトリコモナスでは、症状の強さだけで感染を判断しないことが大切です。検査では、はっきりした排尿痛や分泌物がある方だけでなく、「少しムズムズする」「違和感が続く」「パートナーが感染した」といった理由で検査を受ける方もいます。


症状が軽い、または症状がない場合でも、感染の可能性がある性行為に心当たりがあるときは、自己判断せず検査で確認しましょう。

排尿時や排尿後に痛み・灼熱感が出る

男性がトリコモナスに感染して症状が出る場合、排尿時や排尿後に「しみる」「熱い」「ヒリヒリする」といった痛みを感じることがあります。尿道で炎症が起きると、尿が通る刺激によって痛みや灼熱感が出やすくなるためです。

具体的には、「尿を出し始めたときに尿道の内側がしみる」「排尿の終わりごろにヒリつく」「トイレの後もしばらく尿道に熱っぽい違和感が残る」といった症状として自覚されることがあります。強い痛みではなく、「少ししみる」「なんとなく熱い感じがする」程度にとどまることもあります。

このような痛みは一時的に軽くなったり、日によって気になり方が変わったりすることもあります。症状が弱いからといって感染していないとは判断できないため、性行為の後から違和感が続く場合は注意が必要です。

尿道や陰茎の内側にかゆみ・違和感が出る

男性のトリコモナスでは、尿道や陰茎の内側にかゆみ、ムズムズ感、刺激感のような違和感が出ることがあります。強い痛みというよりも、「尿道の中がかゆい」「陰茎の奥がムズムズする」「何となく落ち着かない感じがある」といった症状です。

この違和感は、排尿時だけでなく、何もしていないときに気になることもあります。下着に触れているときや、歩いているとき、入浴後などに尿道の内側が軽く刺激されるように感じる場合もあります。

また、トリコモナスの症状は強く出続けるとは限りません。かゆみや違和感が一時的に軽くなったり、日によって気になり方が変わったりすることもあります。

「少し違和感があるだけ」「今はおさまっているから大丈夫」と自己判断せず、性行為の後から尿道や陰茎の内側に違和感が続く場合は注意が必要です。

尿道から分泌物が出る

男性のトリコモナスでは、尿道から分泌物が出ることがあります。分泌物とは、尿や精液とは別に尿道口から出てくる液体のことで、下着に付着して気づいたり、尿道口に少量の液体がにじんでいることで気づいたりします。

分泌物の量は多いとは限らず、少量だけ出ることもあります。たとえば、「朝起きたときに下着に薄いシミがついている」「尿道口が少し湿っている」「透明や白っぽい液体がにじむ」といった状態です。強い痛みを伴わず、分泌物だけが気になるケースもあります。

また、分泌物は常に出続けるとは限らず、時間帯や体調によって気づきやすさが変わることもあります。性行為の後から、尿道口の湿りや下着の汚れが気になる場合は、トリコモナスによる症状の一つとして注意が必要です。

射精後に痛みや違和感が出る

男性のトリコモナスでは、射精後に尿道や陰茎の内側に痛み・熱っぽさ・違和感が出ることがあります。

具体的には、「射精した後に尿道の奥がしみる」「陰茎の内側がヒリヒリする」「しばらく熱を持ったような感覚が残る」といった症状です。痛みが強く出るというよりも、「射精後だけ違和感がある」「時間がたつとおさまるが、毎回気になる」といった形で自覚されることもあります。

この症状は、排尿時の痛みと同じく、尿道に炎症が起きていることで感じやすくなります。性行為や射精の後から尿道・陰茎の内側に違和感が続く場合は、トリコモナスの症状の一つとして注意が必要です。

男性がトリコモナスに感染する原因・経路は?

男性がトリコモナスに感染する主な経路は、トリコモナスに感染している相手との性行為です。とくに男性の場合、女性との膣性交によって、相手の膣分泌液などに含まれるトリコモナス原虫が尿道口に接触し、感染につながることがあります。

トリコモナス原虫は、感染している人の膣や尿道などに存在します。そのため、男性側に症状が出るかどうかにかかわらず、感染している相手と性器が接触すれば、男性の尿道に原虫が入り込む可能性があります。

男性がトリコモナスに感染する原因として考えられる行為は、下記のとおりです。

  • コンドームを使用せずに膣性交をした
  • トリコモナスに感染している相手と性器が接触した
  • 相手に自覚症状がない状態で性行為をした
  • 治療前、または治療が完了していない相手と性行為をした
  • 洗浄していない性具を共用した

なお、男女ともに無症状のことも多いことから、「相手に症状がなかったから感染していない」とは判断できません。感染している本人が気づかないまま、性行為によって相手にうつしてしまうこともあります。

□筆者からのひとこと

トリコモナスについては、タオルや浴槽など性行為以外を介した感染の可能性が指摘されることもあります。実際に、性行為以外での感染について触れた報・論文もあるため、「性行為以外では絶対に感染しない」とまでは言い切れません。


一方で、公的機関ではトリコモナスの主な感染経路は性行為と説明されています。そのため、成人男性がトリコモナス感染を疑う場合、まず確認すべきなのは、感染の可能性がある性行為やパートナーの感染状況です。

性行為の心当たりがない場合でも、排尿時の違和感や尿道のかゆみなどが続くときは、自己判断で「感染していない」と決めつけず、検査で確認することが大切です。

男性のトリコモナスの症状がみられるまでの潜伏期間

男性のトリコモナスで症状が出る場合、感染の可能性がある性行為から5日〜28日程度が潜伏期間の目安です。

ただし、男性の場合は、性行為から1か月ほど経っても自覚症状が出ないことがあります。男性のトリコモナスは無症状のまま感染しているケースがあるため、症状が出ない期間だけを根拠に「感染していない」と判断するのは避けましょう。

男性がトリコモナスを放置するリスク

男性のトリコモナスは無症状のことが多いですが、だからといって放置してよい感染症ではありません。

男性のトリコモナスでは、自然に感染が消える可能性も否定することはできません。しかし、米国の公衆衛生機関であるCDCでは、治療しないトリコモナス感染が数か月から数年続く可能性があると説明されています。

そのため、「症状がないから治っている」「違和感が軽くなったから自然に治った」と判断して放置するのは危険です。

男性がトリコモナスを放置する主なリスクは、下記のとおりです。

放置するリスク 男性に起こり得ること
感染が長引く可能性がある CDCでは、治療しないトリコモナス感染は数か月から数年続く可能性があると説明されています。症状がない、または一時的に軽くなったとしても、感染がなくなったとは判断できません。
パートナーへ感染させる可能性がある 男性は無症状のことが多いため、自分では感染に気づかないまま性行為によってパートナーへ感染させる可能性があります。パートナーが治療しても、男性側が未治療のままだと再感染の原因になることもあります。
精巣上体炎・前立腺炎などにつながる可能性がある CDCでは、男性のトリコモナスで尿道炎、精巣上体炎、前立腺炎が起こることがあるとされています。陰のう周辺の痛み、下腹部の違和感、会陰部の重だるさなどがある場合は注意が必要です。
ほかの性感染症を見逃す可能性がある トリコモナスが疑われる症状は、クラミジアや淋菌感染症などでもみられます。トリコモナスだけだと思い込んで放置すると、別の性感染症の検査・治療が遅れる可能性があります。

トリコモナスは、症状の有無や症状が軽くなったかどうかだけでは感染の状態を判断できません。感染の可能性がある性行為があった場合や、パートナーがトリコモナスと診断された場合は、放置せずに検査で確認することが大切です。

男性のトリコモナスが疑われる時の対処法

男性のトリコモナスが疑われる時は、「まず検査で確認する段階」なのか、「医療機関で治療まで相談する段階」なのかを分けて考えることが大切です。

判断の基準になるのは、症状の強さだけではありません。「感染の可能性がある性行為があったか」「パートナーがトリコモナスと診断されているか」「自分に尿道や陰茎まわりの違和感があるか」などを基準に対応を決めます。

自覚症状がなく、陽性者との接触もはっきりしない場合は、まず性病検査で感染の有無を確認する方法があります。一方で、パートナーが陽性だった場合や、すでに症状が出ている場合は、検査だけで済ませず、治療の必要性も含めて医療機関に相談するのが適切です。

ここからは、自覚症状がない場合と、症状がある・陽性者との接触がある場合に分けて、男性のトリコモナスが疑われる時の対処法を解説します。

自覚症状がない:性病検査を受ける

自覚症状がない場合でも、トリコモナスへの感染が不安なときは性病検査で確認することが大切です。

男性のトリコモナス検査では、尿検体を使って調べる方法が一般的です。とくに、尿道にいるトリコモナス原虫を確認するため、尿の出始めの部分を採取して検査に用いることがあります。

また現在は、医療機関で検査を受ける方法だけでなく、検査キットを使って自宅で採取した検体を検査機関へ送る方法もあります。病院に行く時間が取りづらい方、受診に抵抗がある方、まず感染しているかを確認したい方にとって、検査キットは利用しやすい選択肢です。

ただし、検査キットはあくまで感染の有無を確認するための方法です。検査で陽性だった場合や、パートナーがトリコモナスと診断されている場合は、治療が必要になるため、泌尿器科や性感染症内科などの医療機関で相談しましょう。

□筆者からのひとこと

男性のトリコモナスは無症状が多いからこそ、感染していないかを検査することが大切です。

また検査は、感染しているかの不安を長引かせないためにも有効です。感染していなければ安心材料になり、感染していた場合は早めに治療へつなげられます。


とくにパートナーがいる場合、自分だけの問題ではなく相手への感染予防にも関わるため、迷っている段階で確認する意味は大きいです。

症状がある・陽性者との接触がある:医療機関で処置を受ける

排尿時の痛みや尿道の違和感などの症状がある場合や、トリコモナス陽性者との性的接触がある場合は、医療機関で検査・治療について相談しましょう。この段階では、感染しているかを確認するだけでなく、陽性だった場合にそのまま治療へつなげることが重要です。

トリコモナスは、医師の判断によりメトロニダゾールなどの薬で治療する性感染症です。市販薬で自己判断して治すものではないため、すでに症状が出ている場合や、パートナーが陽性とわかっている場合は、泌尿器科や性感染症内科などを受診しましょう。

また、陽性者との性的接触がある場合は、自分に症状がなくても感染している可能性があります。反対に、症状があるにもかかわらずトリコモナスが陰性だった場合でも、クラミジアや淋菌感染症など、ほかの性感染症や尿道炎の原因を確認する必要があります。

受診するまでの間や、治療が完了するまでは、性交渉を控えることも大切です。自分の症状を悪化させないためだけでなく、パートナーへの感染や再感染を防ぐためにも、医師の指示に従って対応しましょう。

男性のトリコモナスの予防方法

男性のトリコモナスを予防するには、トリコモナス原虫を尿道口に接触させる機会を減らすことが大切です。トリコモナスは主に性行為によって感染するため、感染している相手の分泌液や性器との接触を避けることが、基本的な予防につながります。

また、相手に症状がない場合でも感染していないとは言い切れないため、感染リスクを下げるには、性行為そのものを控えることや、不特定多数との性行為を避けることも重要です。

男性のトリコモナスを予防するための具体的な対策は、下記のとおりです。

予防方法 具体的な内容
性行為を控える 性感染症のリスクを避けるうえで、性行為をしないことは最も確実な予防方法です。感染が不安な相手や、感染状況がわからない相手との性行為は控えましょう。
コンドームを正しく使用する 膣分泌液や尿道分泌液との接触を減らすため、性行為の最初から最後までコンドームを使用します。WHOでも、コンドームを一貫して正しく使用することは、トリコモナスを含む性感染症の性的感染を防ぐ有効な方法とされています。
不特定多数との性行為を避ける 相手の感染状況がわからない性行為が増えるほど、トリコモナスに接触する機会も増えます。感染リスクを下げるには、性行為の相手を限定することも大切です。
パートナーが陽性の場合は性交渉を控える パートナーがトリコモナスと診断された場合は、治療が完了するまで性交渉を控えます。治療途中で性行為を再開すると、感染や再感染につながる可能性があります。
陽性だった場合はパートナーにも検査・治療を相談してもらう 自分だけが治療しても、パートナーが感染したままだと再感染することがあります。感染がわかった場合は、パートナーも検査・治療について医療機関に相談することが大切です。

予防で大切なのは、「症状がある相手を避ける」ことだけではありません。トリコモナスは無症状の人から感染することもあるため、相手に症状がない場合でも、感染リスクがないとは判断できません。

男性のトリコモナスに関するよくある質問

パートナーが感染している場合は自分も必ず感染しているのでしょうか?

パートナーがトリコモナスに感染していても、自分も必ず感染しているとは限りません。ただし、性行為によって感染する可能性はあるため、症状がない場合でも検査を受けることが大切です。

パートナーがトリコモナスと診断された場合は、「症状が出ていないから大丈夫」と判断せず、検査や医療機関への相談を検討しましょう。

トリコモナスに感染しているかは匂いでわかりますか?

トリコモナスに感染しているかどうかを、匂いだけで判断することはできません。女性では、トリコモナスによって魚のような匂いを伴うおりものがみられることがありますが、男性では匂いの変化だけで感染を判断するのは困難です。

また、匂いの変化があったとしても、トリコモナス以外の性感染症や別の原因が関係している可能性があります。

そのため、「匂いがないから感染していない」「匂いがあるからトリコモナス」とは判断せず、不安がある場合は検査で確認しましょう。

トリコモナスの検査はどのように行うのですか?

男性のトリコモナス検査では、主に尿を採取して感染の有無を調べます。検査を受ける方法には、医療機関で検査する方法と、自宅で検体を採取して検査機関へ送る検査キットを利用する方法があります。

検査キットを利用する場合は、自宅で採取した検体を郵送し、検査機関で確認された結果をWebなどで確認する流れが一般的です。病院に行く時間がない方や、まずは感染しているかだけを確認したい方にとって利用しやすい方法です。

まとめ

男性のトリコモナスは、感染していても無症状のことが多い性感染症です。症状が出る場合は、排尿時や排尿後の痛み、尿道や陰茎の内側の違和感、尿道からの分泌物、射精後の痛みなど、尿道・陰茎まわりにみられることがあります。

ただし、トリコモナスは症状だけで感染の有無を判断できません。症状がないまま感染が続くこともあり、本人が気づかないうちにパートナーへ感染させる可能性もあります。

また、症状が軽くなったとしても、自然に治ったとは判断できません。治療しないトリコモナス感染は数か月から数年続く可能性があるため、感染の心当たりがある場合やパートナーが陽性だった場合は、放置せずに検査で確認することが大切です。

自覚症状がない場合は性病検査で感染の有無を確認し、症状がある場合や陽性者との接触がある場合は、泌尿器科や性感染症内科などの医療機関で検査・治療について相談しましょう。

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この記事を書いた人

登録衛生検査所(群馬県第41号)
性病検査ラボ 臨床検査技師
所属学会
・日本臨床衛生検査技師会
・日本性感染症学会

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