「トリコモナス」という言葉を耳にしたことはありますか?
トリコモナスは、性感染症のひとつです。 梅毒やクラミジア、淋病といった他の性感染症に比べて、あまり馴染みがないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、トリコモナスは性感染症の中でも一般的な病気です。
感染すると、女性は泡状で悪臭の強いおりものが増加、男性は尿道炎のような症状などがあらわれることがあります。
また、トリコモナスは感染しても、無症状であることが多いのも特徴です。
症状が出ていなくとも、放置することで様々な健康上の問題を引き起こす可能性があり、特に女性においては不妊や流産、早産の原因となることもあるため注意が必要です。
あまり馴染みがないかもしれませんが、身近な性感染症「トリコモナス」について、症状や感染原因、予防法など詳しく解説していきます。


トリコモナスは、どんな病気?
トリコモナスは、肉眼では見分けることのできない原虫(ゾウリムシのような微生物)が性器内に感染し、炎症を引き起こす性感染症です。
女性
膣への感染だけでなく、子宮の入口(子宮頸管)、膀胱、尿道にも感染が広がることがあります。
トリコモナス原虫が女性の膣に感染した場合、「トリコモナス膣炎」ともよばれます。
男性
尿道、前立腺、精のうなどに感染します。
トリコモナスの症状は?
トリコモナスは、無症状であることも多いため、感染が見過ごされやすく、知らないうちに他者へ広がってしまう原因となっています。
女性の症状
女性の場合、感染者の20〜50%が無症状といわれています。 症状が出る場合は、以下のような特徴が見られます。
- 泡状で悪臭の強いおりものの増加
⇒これらのおりものの増加は最も特徴的な症状です。 - 膣や外陰部の強いかゆみや痛み、ヒリヒリ感
- 排尿時の違和感や痛み
- 性交時の痛み
男性の症状
男性の場合、さらに無症状のことが多く、自覚症状が出ることは稀です。
症状が出る場合は、以下のような軽い症状が多いです。
- 尿道炎の症状(軽い排尿痛やかゆみ)
- 尿道からの分泌物(膿)
症状が他の性感染症(クラミジアや淋病など)と似ていることも多く、トリコモナスかどうかを自己判断するのは非常に難しいです。
トリコモナスの感染原因は?
トリコモナスの主な感染原因は、性行為です。
一方で、トリコモナスは湿った環境で比較的長く生存できることから、性行為以外の経路での感染も起こることがあります。
下着やタオル、浴槽、便器などからの感染です。
そのため、性行為経験のない人や、幼児や子供でも感染する可能性があります。
ただし、日常生活で過度に神経質になる必要はなく、タオルの共有は避けるなど、基本的な衛生習慣を心がけることが大切です。
トリコモナスは自然治癒する?放置すると?
トリコモナスは無症状であっても、自然治癒することはありません。
治療せずに感染を放置すると、男女ともに、深刻な健康問題につながることがあります。
男女ともに、早期に適切な治療を行うことが、健康を守る上で非常に重要です。
女性
感染が膣からさらに奥へ進み、子宮内膜炎や卵管炎を引き起こす可能性があります。
これらが原因で、不妊症や、流産、早産につながるリスクが高まることが知られています。
男性
尿道炎や前立腺炎の原因となり、排尿時の痛みや頻尿、射精時の違和感などが続くことがあります。
トリコモナスかもと思ったら
少しでもトリコモナス感染の可能性がある、または不安を感じたら、躊躇せずに検査を受けましょう。
検査は、医療機関や検査キットを使用して受けることができます。
医療機関
男性:泌尿器科、性病科を受診 女性:婦人科(産婦人科)、性病科を受診
検査キット
自宅で手軽に検査したい場合は、性感染症の検査キットを利用することも効果的です。
トリコモナスの治療法は?
トリコモナスの治療には、メトロニダゾールやチニダゾールなどの治療薬が使用されます。
抗原虫剤という原虫の感染に効果が高い薬で、一般的に7~10日間程度内服をします。
女性では、膣錠が使用される場合もあります。
トリコモナスの薬は、医師の処方箋がなければドラッグストアや薬局で買うことはできませんので、症状がみられる場合には、医療機関を受診しましょう。
トリコモナスの予防法は?
トリコモナスを予防するには以下の方法が効果的です。
- 性行為の際は、コンドームを正しく着用する 不特定多数との性的な接触を避ける
- 女性は生理中、特に注意する
- 濡れたタオルの共有はしない
- 「ピンポン感染」を防ぐため、パートナーと一緒に定期的な検査を受ける
⇒治療をしても、パートナーが未治療だと、性行為によって再び感染してしまう「ピンポン感染」が起こります。
少しでもトリコモナス感染の可能性がある、または不安を感じたら、躊躇せずに医療機関を受診しましょう。
犬や猫のトリコモナスは人間にも感染するのか?
犬や猫が感染するトリコモナス(主に腸トリコモナス)と、人間が感染するトリコモナス(膣トリコモナス)は、異なる種類の原虫です。
そのため、犬や猫の腸トリコモナスが人間に感染することはありません。
また、人間の膣トリコモナスが犬や猫に感染することはないため、ペットとの触れ合いは、トリコモナス感染症に罹るリスクはないと言えます。
まとめ
トリコモナスは原虫が性器内に入り込み炎症を起こす性感染症です。
女性の場合、トリコモナスが膣に感染した状態を「トリコモナス膣炎」ともよびます。
感染すると、女性はおりものが増加したり、膣や外陰部に強いかゆみや痛みが生じます。
男性の多くは無症状である場合が多いですが、軽い排尿痛やかゆみなど尿道炎のような症状が起こることがあります。
感染原因は主に性行為ですが、タオルの共有などを通しても感染することが稀にあるため、
性行為経験がない人や幼児、子供でも感染する可能性があります。
トリコモナスは自然治癒しないため、薬による治療が必要となります。
トリコモナスの予防には、性行為の際のコンドーム着用や、濡れたタオルの共有を避けることなどが効果的です。
トリコモナスは医療機関や検査キットを使用して検査することができます。
女性で「最近、おりものが増えたかも…」と感じたり、男性で「排尿痛やかゆみがあるな…」と感じるなど、少しでも気になる症状がある場合には、検査を受けるようにしましょう。
コメント