浮気をしていないのにクラミジアに感染してしまう場合はある?性行為なしで感染するケースも解説

クラミジア感染症は、正式にはクラミジア・トラコマチスという細菌によって起こる性感染症(STI)の一つです。日本では毎年数万人規模で新規患者が報告されており、特に10〜30代の若年層に多く見られます。

 

クラミジアの感染経路は、ほとんどが性行為による粘膜接触です。性行為以外が原因でクラミジアに感染するケースもあるとはいえ、基本的には性行為が原因になります。

 

そのため、浮気が原因でクラミジアに感染してしまう可能性は否定できませんが、かといってクラミジアに感染する原因のすべてが浮気であるとも断言できません。

 

クラミジアは感染しても自覚症状が出ないケースが7〜8割を占めるとされており、感染していることに気づかないまま放置されることが多い病気です。そのため、知らないうちにクラミジアに感染していたパートナーから感染してしまうケースも決して無視はできないほどの確率で起こり得るのです。

 

実際に、「浮気をしていないのにクラミジアの感染が見つかった」という声を見かけることはあります。確かに性行為による感染が圧倒的に多いのが実情ですが、かといって「クラミジアは浮気の決定的な証拠になる」とも言い難いのです。

 

なお、インターネットなどでは、「性行為以外が原因でクラミジアに感染するのか」という意見もみられます。具体的には下記などが原因と疑われることもありますが、医学的にはほぼ起こり得ないと考えて良いでしょう。

 

  • タオルや下着の共用
  • トイレの便器や便座
  • キスやハグなどの日常的なスキンシップ
  • 手指を介した感染

 

当記事では、浮気以外にクラミジア感染の原因について解説していきます。

 

目次

浮気以外でクラミジアに感染する原因

クラミジアは基本的に性行為で感染する病気ですが、「浮気ではないのに感染していた」というケースも現実には十分起こり得ます。まずは浮気以外でクラミジアに感染する可能性があるケースをまとめましたので参考にしてみてください。

 

  • 自身が過去に感染していたが無症状で気づかなかった
  • パートナーが過去に感染していた
  • 過去に行った性病検査の結果が誤りだった
  • 性器以外から感染した

 

浮気以外でクラミジアに感染する原因としては、「自身が以前より感染していたことに気づいていなかった」「パートナーが過去に感染していた」「過去の検査結果自体が誤りだった」というケースが考えられます。

 

自身が過去に感染していたが無症状で気づかなかった

クラミジアは感染者の7〜8割が無症状とされており、感染してから数週間〜数か月は無症状で経過することが多く、数年間気づかないまま体内に菌を持ち続けていたケースも報告されています。

 

特に女性では気づかないまま長期間体内に菌を持っているケースが少なくありません。そのため、「最近クラミジアに感染した」ではなく、過去に感染していたものが検査で初めて判明した可能性があるのです。

 

たとえば、数年前に交際していた相手からクラミジアが感染していたが、症状がなかったため放置されていたケースが考えられます。場合によっては感染から数年経過しており、結婚や妊娠のタイミングで検査を受けた際に初めて陽性が判明したというケースもあり得るのです。

 

パートナーが過去に感染していた

前述の通り、クラミジアは感染しても症状が出ないまま長期間潜伏することが多いです。そのため、自身に心当たりがなくても、実はパートナーが過去に感染していて、それが無症状のまま残っていた可能性も0ではありません。

 

本人も自覚がなければ検査を受ける機会もなく、感染を抱えたまま現在の関係に至り、性行為を通じてパートナーへうつしてしまうことがあります。

 

たとえば、学生時代や以前の交際相手との関係の中で感染していたものの、症状が出なかったため放置されていたというケースを想定します。数年後に結婚や妊娠をきっかけに受けた検査で、初めて感染が明らかになることも考えられるのです。

 

この場合、発覚のタイミングが現在になっただけであり、必ずしもクラミジア感染の原因が浮気とは限らないのです。

 

過去に行った性病検査の結果が誤りだった

クラミジアの検査は非常に精度が高いとされますが、それでも100%ではありません。とくに感染直後には「ウィンドウ期」と呼ばれる期間があり、この時期に検査を受けると体内に菌がいても検出できず、陰性と判断されてしまうことがあります。

 

つまり、「検査で陰性だったから絶対に感染していない」とは言い切れないのです。

 

たとえば、交際を始めた際に二人で性病検査を受け、「どちらも陰性」と診断されて安心していたケースを考えてみましょう。

 

実際にはどちらかが感染直後で、まだ菌量が少なく検査に反映されなかった可能性があります。その後、数週間や数か月が経過し、再検査をしたときに初めて陽性が判明することもあるのです。

 

このように過去の検査結果が誤りだった場合、「当時は陰性だったのに今は陽性ということは浮気をしたのでは?」と誤解されるかもしれません。しかし実際には、検査の限界による偽陰性が原因である可能性があり、浮気に結びつかない可能性もあるのです。

 

性器以外から感染した

クラミジアは「性器に感染する病気」というイメージが強いですが、実際には咽頭(のど)や直腸にも感染することがあります。オーラルセックスやアナルセックスを通じて粘膜に菌が入り込むことで、性器以外の部位からも感染が広がるのです。

 

たとえば、パートナーの咽頭にクラミジアが存在していた場合、本人はのどの痛みもなく全く自覚がないままオーラルセックスを行い、そこから性器に感染してしまうことがあります。

 

また、咽頭クラミジアは無症状のことが多く、通常の風邪と区別がつかないため、気づかないまま性行為を繰り返すことで感染が拡大してしまうリスクがあるのです。

 

このように、性器以外の部位が感染源となる場合は、本人にもパートナーにも浮気の自覚はなくても感染が判明することがあります。

 

性行為以外が原因でクラミジアに感染することはほぼない

性感染症であるクラミジアは、基本的にセックスやオーラルセックス、アナルセックスなどの性行為によってのみ感染すると考えられています。

 

とはいえ、「日常生活の中で性行為以外に感染することは絶対にない」と言い切れないのもまた事実です。そのため、インターネットなどでは、性行為以外でクラミジアに感染する原因として下記のようなものが挙げられることもあります。

 

  • タオルや下着の共用
  • トイレの便器や便座
  • キスやハグなどの日常的なスキンシップ
  • 手指を介した感染

 

なお、性病検査などを行う弊社は、実際の臨床報告や感染者データなど、信頼できる根拠をもとに情報を発信しています。弊社としては上記について医学的には現実的な感染経路とは言えないと考えているのが前提です。

 

ただし、「絶対にない」とは断定できないため、世間一般で話題になるケースを取り上げてここからは説明していきます。

 

タオルや下着の共用

クラミジアに感染した人の分泌液が付着したタオルや下着をすぐに他人が使用した場合、理論上はクラミジアが移る可能性があります。

 

しかし、クラミジアは体外で長く生存できないため、通常の生活で感染が成立することはほぼありません。「同じタオルを使っただけで感染した」という事例は、医学的にも確認されていません。

 

トイレの便器や便座

「トイレの便座から感染するのでは?」と不安に思う人もいるかもしれませんが、乾燥した環境ではクラミジア菌は短時間で死滅します。そのため、便座や便器を介してクラミジアに感染する可能性はほぼ0とされています。

 

実際に、世界的にも便座からのクラミジア感染の報告は見られません。

 

キスやハグなどの日常的なスキンシップ

クラミジアは唾液でうつることはないため、キスや日常的なハグ・スキンシップで感染することはありません。

 

咽頭クラミジアは存在しますが、これはオーラルセックスを介した感染であり、通常のキスでは成立しないと考えられています。

 

手指を介した感染

性器に分泌液が付着した手で目や性器などの粘膜に触れれば、理論上はクラミジアに感染する可能性はあります。

 

ただし、手洗いをすればすぐに菌は落ちますし、体外での生存時間も短いため、現実的な感染経路とは考えにくいです。

 

パートナーと性病検査の結果が異なった場合の原因は?

カップルや夫婦で一緒に性病検査を受けたときに、「片方が陽性、片方が陰性」という結果になるケースもあるかもしれません。この場合、浮気が原因と考えるかもしれませんが、他の理由があることも考えられます。

 

原因 解説
感染のタイミング 感染直後に検査を受けると「ウィンドウ期」に当たり、陰性と出る場合がある
自然治癒 片方は感染していたが治癒して陰性に戻り、もう片方だけ陽性と出るケース
検査方法や部位の違い 採取部位(尿・咽頭・膣など)や検査精度の違いにより結果に差が出ることがある
偽陰性 検査精度の限界により、実際には感染しているのに陰性と判定されることがある

 

まず考えられるのは、感染のタイミングや検査の時期のずれです。

 

クラミジアには「ウィンドウ期」があり、感染直後は検査で検出できないことがあります。そのため、片方は陽性、もう片方は陰性という不一致が起こり得ます。

 

また、クラミジアは自然治癒する場合もあるため、過去に感染していた相手がすでに治ってしまい、検査で陰性になる一方、自分だけが陽性と出ることもあります。

 

さらに、検査方法や採取部位によっても検出精度が異なるため、結果に差が出ることがあります。

 

このような状況に直面したときに大切なのは、二人で改めて再検査を受け、必要があれば一緒に治療を進めることです。性感染症は一人だけが治療しても再感染してしまう可能性があるため、必ずパートナーと同時に対応することが推奨されます。

 

クラミジアを放置するリスク

クラミジアの感染が疑われる場合、その原因の特定も大切ですが、今後の対応について考えることも重要です。クラミジア感染を放置してしまうことには、下記のようなリスクがあるためです。

 

リスク内容 具体例・影響
男女共通 慢性的な炎症や他の性感染症にかかりやすくなる ・尿道炎・膀胱炎の繰り返し
・HIV感染リスクの上昇
・パートナーへの感染拡大
女性特有 不妊症・子宮外妊娠・妊娠への悪影響 ・卵管が詰まって妊娠しにくくなる
・流産や早産のリスク
・新生児が結膜炎や肺炎を発症
男性特有 生殖機能や排尿への悪影響 ・精巣上体炎による不妊症
・前立腺炎・慢性尿道炎
・排尿痛や膿の長期化
・性機能低下

 

男女共通のリスク

クラミジアを放置すると、男女問わず慢性的な炎症が起こりやすくなります。

 

尿道炎や膀胱炎を繰り返すだけでなく、炎症で粘膜が傷つくことでHIVなど他の性感染症に感染するリスクが高まることが知られています。

 

また、自覚がないままパートナーにうつしてしまい、カップルや夫婦間で「感染と治療の繰り返し」に陥るケースもあります。これは身体的な負担だけでなく、精神的・関係性の面でも大きな影響を与えます。

 

女性に特有のリスク

女性がクラミジアを放置すると、子宮頸管から卵管、さらに骨盤内へと感染が広がり、骨盤内炎症性疾患(PID)を引き起こすことがあります。

 

この炎症が原因で卵管が詰まり、不妊症や子宮外妊娠のリスクが高まります。さらに、妊娠中にクラミジアに感染していると流産や早産の原因になるほか、出産時に赤ちゃんへ感染し新生児結膜炎や肺炎を起こすこともあります。

 

つまり、クラミジア感染の放置は将来の妊娠・出産に直接的な悪影響を与えるリスクがあるのです。

 

男性に特有のリスク

男性の場合、クラミジア感染の放置によって精巣上体炎を発症し、精子の通り道が炎症で塞がれることがあります。これにより不妊症の原因となるケースも報告されています。

 

また、前立腺炎や慢性尿道炎が長引き、排尿時の激しい痛みや膿が続くこともあります。さらに、炎症によるダメージが性機能の低下につながることもあるため注意が必要です。

 

よくある質問

性行為をしていないのに、クラミジアや他の性病にかかることはありますか?

クラミジアをはじめとする性感染症の多くは、性行為を介して感染します。日常生活で感染する可能性は医学的にはほぼゼロと考えられます。

 

ただし、以下のような性感染症は性行為以外でも感染することがあるとされています。

 

  • 梅毒:母子感染や輸血など、きわめて限られた経路で感染する可能性がある
  • HIV:母子感染・輸血・注射器の使い回しなどによる感染が報告されている
  • B型肝炎:血液や体液を介して性行為以外でも感染することがある

 

一方でクラミジアに関しては、性行為以外の感染はほぼ不可能と考えられています。

 

過去に陰性だったのに陽性になることはありますか?

はい、あります。

 

クラミジアには「ウィンドウ期」と呼ばれる期間があり、感染直後に検査を受けても陰性と出てしまうことがあります。

 

また、過去の検査で偽陰性だった可能性や、その後の行為で新たに感染した可能性も考えられます。検査は一度で安心せず、疑わしい行為から一定期間を空けて再度受けることが重要です。

 

まとめ

クラミジアは日本でもっとも多い性感染症のひとつですが、そのほとんどは性行為を通じて感染することが明らかになっています。「浮気以外で感染するのでは?」と不安になる方も少なくありませんが、日常生活の中で感染する可能性は医学的にほぼ否定されています。

 

ただし、過去に無症状で感染していたり、検査の結果が誤っていたりするケースもあり、「浮気が原因とは限らない」ことも事実です。感染経路が曖昧なまま放置してしまうと、不妊や妊娠・出産への悪影響など、将来的に深刻なリスクにつながるおそれがあります。

 

大切なのは、感染の原因を追及してパートナーを疑うことではなく、早期に検査を受け、必要があれば一緒に治療を行うことです。クラミジアは正しい治療で完治が可能な感染症です。不安を抱え込まず、専門の医療機関や性病検査サービスを活用し、安心できる生活を取り戻しましょう。

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この記事を書いた人

臨床検査技師
所属学会
・日本臨床衛生検査技師会
・日本性感染症学会

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