「ノーアウト満塁 !」 主審の声がグラウンドに響き渡った。
犬のジョンは大好きなお兄ちゃんの応援で、お母さんに抱っこされながら グラウンドベンチ横の応援席にいた。
今日は6年生のお兄ちゃんにとって最後の試合、なんとこの試合に勝てばお兄ちゃんの小学校のチームは初優勝になる。最終回1点差でお兄ちゃんのチームはリードしているものの大ピンチ。当然、経験したことの無いプレッシャーで選手達は皆浮き足立っている。
ジョンは応援しつつ昨日の夕飯のことを思い出していた。
「あなたでしょ!」「ボクじゃないよ!」お母さんとお兄ちゃんのやり取り。
お母さんが大切にお世話していた花壇のお花が折れたのは、お兄ちゃんがバットで素振りをしていたからだ、と思い込んでお兄ちゃんを叱っていたのだ。本当はジョンが虫を追いかけて花壇に入ったときに折ってしまったのだ。
ジョンはそのことが気になって夕食のエサも食べられなかった—–
ジョンはグラウンドを見ると、三塁を守っているお兄ちゃんの横に石が落ちているのを見つけた。お兄ちゃんは緊張しているのか石にはまったく気が付いていない。
「もしあそこにボールが飛んできたらイレギュラーして—–」
ジョンは嫌な予感がした、と同時に三塁ベースあたりに虫が飛んできているのを見つけた。
「よし、今だ!」
抱っこされているお母さんから飛び降りてグラウンドめがけて必死に走り、虫を追いかけるふりをして石をそれとなくファールグラウンドに出したのだ。
「タイム! 犬をグラウンドに入れたらダメじゃないか!」
審判に怒られ、引き取りに来たお母さんにも怒られた。でもジョンは怒られても平気、本当は昨日お母さんに怒られるべきだったので当たり前と思っている。
ジョンはグラウンドの外に出されてフェンス越しに応援することになった。
プレー再開後、ジョンの予想が当たった、痛烈なゴロが石のあったあたりに飛んできた。イレギュラーしないのでお兄ちゃんは倒れ込みながら必死にグローブを伸ばしキャッチ、三塁ベースにタッチして1アウト、すぐに立ち上がってホームに投げると、余裕でホームインできるだろうと思っていた三塁ランナーがびっくりしたようにホームベース前で立ち止まってしまい、キャッチャーにタッチされ2アウト、そして一塁ランナーが三塁めがけているのを見てキャッチャーから三塁のお兄ちゃんにボールが渡りタッチアウト。なんとトリプルプレーでゲームセット! お兄ちゃんの小学校チームが初優勝に輝いた!
フェンスの外にいるジョンは大きくしっぽを振って、吠えまくっていた
「お兄ちゃんおめでとう! 昨日はごめんなさい!」と
