サーコワクチンを有効に利用するために

今現在、サーコウイルスのワクチンは3社から販売されています。
母豚用が1社、子豚用が2社から販売されています。昨年10月に1社から追加販売されたこともあり、多くの農場では、昨秋からの接種が開始されていることと思います。
又、昨年の春頃に最初に販売された1社からのワクチンを入手できた農場は、肥育舎から出荷までの経過をたどって、一旦のワクチン評価が出ている頃ではないかと思います。

さて、それでは、昨春からサーコウイルスワクチンを使用された皆さんの農場ではどう言う反応を示しているのでしょうか。効果が出ている?、まったく無反応?、逆影響になった?どれに当てはまりますか?。ほとんどの農場では効果があったと答えていると思いますが、効果があまり出ていない農場が存在している事も事実です。
(実際に接種した80%近くの農場は効果を認めているが、少なくとも20%近くの農場は無反応が存在していると言われている)

今回販売されたサーコウイルスのワクチンは、弊社から見ても優秀なワクチンの1つだと思っています。ただ、今後の利用に対する考え方次第では、短期間での効果の発現に留まってしまう農場と、将来に亘って効果の発現が持続できる農場とに明暗が分かれる気がしています。
今回は現場で起こっているサーコウイルスワクチンに関する勘違いと、有効に活用するための方法等について考えて行きたいと思います。

効果が出ている農場のポイント
サーコウイルスが中心になって疾病感染症が起こっている農場。
②分娩舎での母豚の状態(成績)、子豚の状態(成績)が悪くなかった農場。
③ワクチン接種と同時に罹患豚の淘汰も実施している農場。
④基本的な疾病対策、飼養管理を確立している農場(大規模ウインドレス舎に多い)
⑤あまり衛生的ではないが、子豚の飼養頭数がさほど多くない農場(小規模開放舎に多い)

効果が見えない農場のポイント
①サーコウイルス以外の疾病感染が強い農場。
②サーコワクチン接種時期と他のプログラムとの問題。
③サーコワクチン接種前の他の疾病の感染状況。(PRRS、コクシジウム、レンサ球菌、浮腫病を含む大腸菌感染症、他)
④離乳子豚舎、子豚舎に罹患子豚の存在が多い農場。(淘汰や場合によっては一斉接種も必要)
⑤種豚群の免疫レベルのばらつき、種豚群の疾病感染状況。
⑥サーコワクチン接種時期の不適(移行抗体の消失時期の確認ができていない)

あぶない考え方-サーコウイルスワクチン接種開始直後の誤った選択-
①急なワクチン利用の中止。(マイコワクチン、ヘモワクチン等)
②急な薬剤及び機能性資材(生菌剤、有機酸、オリゴ糖、他)利用の中止。
③急な飼料内容の変更。(糞尿の増加から選択)
④清掃管理の中止。(洗浄・消毒・乾燥・空舎)

ワクチンの効果を損失させないためのポイント(成績の良い農場の選択)①サーコウイルスワクチンを接種してから最低1年間は現状のプログラムを大きく変えることなく実施する。
②サーコウイルスワクチンを接種後半年~1年後に現状のプログラムの無駄を再確認して、新しいプログラムの構築を行う。
③自農場の元々の弱点が解っていて、サーコウイルスワクチン以外の飼養管理技術も有効に実施している。
④サーコウイルスワクチンを接種した後の目標設定(成績を改善するポイント)がきちんと提示されている。

サーコウイルスワクチンに期待する効果(順不同)①事故率の減少。(子豚舎だけでなく、肥育舎の事故率も重要)
②ヒネ子豚、虚弱子豚の減少。
③飼料要求率の改善。
④出荷日齢短縮。
⑤出荷枝重量の増加。
⑥治療薬の使用量の減少。
⑦総合的な衛生費の減少。(ワクチン・薬剤・資材等)

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飼料分析肥料分析検便検査PCV2・サーコウイルスPRRSウイルス

レジオネラに関する群馬県の動向

05年11月25日に「群馬県公衆浴場等レジオネラ対策検討委員会」が開かれ、レジオネラ症に関する条例案について話し合いがなされました。その結果は、浴槽水においては

①検査頻度は循環型・毎日完全換水型にかかわらず年1回以上

レジオネラ菌の数値は100ミリリットルあたり10未満

③上記の数値を「検査基準」から「管理目標」に緩和

④酸性泉の温泉(草津・万座等)は年1回以上の検査を免除

⑤検査費用は業者負担

衛生管理者講習会の実施(任意)

と報告されました。群馬県全体でレジオネラ症対策に関する動きがあった、という事です。ただしこの報告上の管理方法はあくまで最低限必要なものであり、これだけではどうしても不足な部分があります。レジオネラ菌の発生・増殖を防ぐために必要な管理方法として

①循環ろ過装置はろ過能力の高いものを使用し、週1回以上の消毒を行う。

②浴槽消毒用の塩素を使用する。塩素は時間、温度によって減少するのでその都度補充する。泉質の都合で塩素消毒ができない場合、オゾン殺菌・紫外線殺菌を行う。

③集毛器は毎日清掃する。

水質検査は循環式の場合できれば年2回以上行う。

⑤上記に加え、独自の管理方法(検査頻度を増やす、清掃方法を確立する等)を設定・実行する。

等があります。温泉施設の方に限らず、自宅の浴槽が循環式の方も参考にしてみて下さい。食の安全とはテーマが異なりますが、「決して人ごとではなく、油断していると恐ろしい事故につながる」「普段から衛生管理をしっかりしていれば、充分防げるものである」という点では食品衛生と同じです。実際当社でも食品に関する衛生と同様に浴槽に関する衛生管理にも力を入れております。

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レジオネラ菌検査ノロウイルス検査食品アレルギー・アレルゲン検査
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豚インフルエンザ/新型インフルエンザとは

<豚インフルエンザ/新型インフルエンザ>
人のインフルエンザウイルスにはA,B,Cの3つの型があり、A型は更に3つの亜型に分かれます。この3つの亜型のうちの2つが過去に人から豚に感染し、豚の間に定着したものと考えられています。その豚の間で馴化したものが豚型インフルエンザの豚型と香港型ウイルスです。
 
*人以外、A型インフルエンザとしては表面タンパクのHとNの抗原性の組み合わせにより多種の亜型に分類されます。

<豚に限定して感染する>つまり、豚インフルエンザは、A型インフルエンザによって起こる豚の呼吸器病です。豚インフルエンザウイルスは年間を通して豚間での感染を引き起こしていますが、豚から人への感染は一般的にはありません。豚に馴化しているため豚型インフルエンザと呼ばれ、容易に人への感染を引き起こしません。

<人への感染>今までの人への感染は豚への接触が濃厚であった場合が原因となっていました。
今回、メキシコで流行している豚インフルエンザはH1N1/豚型で、人で流行するH1N1/ヒト型(Aソ連型)とはH及びN型は一致していますが、全く異なった抗原性を有する別タイプの株です。インフルエンザウイルスはH及びN型が一致したとしても同一のタイプとは断定できません。ほとんどの場合が、変異を繰り返した別タイプの株であることから、毎年製造される人用のインフルエンザワクチンにあっても流行を見据えたうえで慎重に株が選択されている状況からもその変異の速さが伺えます。

<豚インフルエンザの感染例>
日本では、豚インフルエンザに感染した人の例はありませんが、これまで確認された人の事例のほとんどは、感染した豚に直接関与した場合によるものです。
つまり、通常は人には感染しません。しかし、散発的には過去にも豚インフルエンザの人への感染が発生しています。例えば、1988年にアメリカの養豚場で流行した豚インフルエンザが複数の人に感染が広がった例が報告されています。過去の記録ではアメリカにおいて1~2年で1例程度の発生報告が、あるとの事です。

<感染経路>
今回、人から人へ感染しているとすれば季節性のインフルエンザの感染経路と同様、咳やくしゃみによる飛沫が原因で感染しているものと思われます。

<パンデミック>
パンデミック(世界的な大流行)とは、人から人へ容易に感染が広まる新しい抗原性を有するウイルスによるものです。今回、メキシコで流行が始まった豚インフルエンザに関し、WHOは世界的大流行を意味する警戒度をフェーズ6に引き上げました。

<豚インフルエンザの種類>
現時点で判明している豚インフルエンザはH1N1、H1N2、H3N2及びH3N1の4種類です。

<豚肉は安全か?>豚インフルエンザは、豚肉や豚肉の加工品を食べても感染するものではありません。
輸入品(食品)に対する対応は、特に必要ないと考えられます。インフルエンザウイルスは、通常の環境中で長期間生存しませんし、豚肉や加工食品に高濃度でインフルエンザウイルスが付着することは考えづらく、万一、ウイルスが付着していたとしてもインフルエンザウイルスは熱に弱く、加熱調理することで死滅します(中心温度71℃で死滅)。また、加熱は不十分であったとしてもインフルエンザウイルスは酸に弱いことから胃酸で死滅する可能性が高いと思われます。インフルエンザウイルスは咳やくしゃみによる飛沫が原因で呼吸器粘膜から感染するものであって経口感染(口から入る)するものではないからです。

<予防>
予防としてはマスクの使用、手洗い、うがいなどです。
豚インフルエンザの人用ワクチンは開発されていませんが、豚用のワクチンは以前から販売されており、熱心な養豚家では接種を済ませています。

<治療薬>
4種類の承認された抗インフルエンザウイルス薬があります。

※注意
*インフルエンザは未解明な部分が多数あることから、今後徐々に解明されていくことにより、上記内容や状態が急速に変わることがあります。

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薬剤投薬の妙。

薬剤試験で効果がある薬剤を使ったのに効かないと言った話が良くあります。
実際に現場では様々な要因があり使用薬剤の効果が表れにくい場合もありますが結構それ以外の原因もある様に思います
今回見直してほしい投薬方法はトップドレス投薬(手ぐれ投薬になります。
トップドレス投薬に関しては特に問題があるわけではありません。トップドレス投薬を行うにはその農場の給餌器の形状を確認する必要があります。
昔はドライフィード給餌器(大型)が主流だった事もあり一度に多くの飼料中に薬剤を混合させることが出来ましたが今日流行っているウエット給餌器では薬剤の混合がまばらになりやすく数頭にしか薬剤が当たらないことが多く見られます。これではまったく関係のない元気な豚が薬剤を食べてしまい実際に食べて欲しい豚への対応が出来ていません
疾病の対応を行う上での薬剤投薬であるのならば飼料中へ均等に混合される方法で行うのが良いと思います。方法としてはブレンドフィーダーでの添加や飼料タンクへの投薬(予備攪拌が行えればベスト)などがあります。

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繊細な豚の話

とある農場から肺炎症状の相談を受けました。
農場概要:150頭一貫経営。分娩舎ゾーン(約0~60日齢1ライン)、子豚舎ゾーン(約60~90日齢2ライン)、肥育舎前期ゾーン(約90~120日齢1ライン)、肥育舎後期ゾーン(約120~出荷1ライン)。16頭/房の同一グループで出荷まで飼養。
状況:肥育舎前期ゾーンの約100日齢頃に決まって肺炎症状(咳き込み、へコへコ症状)が発生している。秋季頃から発生が目立っている。PRRSは陰性、ヘモフィルスも落ち着いている農場。
考えられる事:①各ゾーンで環境面の問題点は見えるが一番気にかかるのは子豚舎ゾーンと肥育舎前期ゾーンの環境較差乾燥と隙間と低温②移動回数の多さによる③各ゾーンの飼料ラインの関係もありその都度異なる移動日齢。
考察:ここの農場は肥育舎前期ゾーン以外でも環境面の不備は散見されるがその他のゾーンでは豚の体調変化はそれほど見られない。一番気になるのが子豚舎ゾーンと肥育舎ゾーンの環境較差ただし、勘違いしてはいけないのは乾燥、隙間、低温が直接豚の体調変化に影響しているわけではない。(段階的に慣れさせた上で氷点下の雪のもと完全放牧飼養している農場が存在する)今回のことで再認識させられたのは以前いた場所と移動後の場所の環境較差が激しいほど豚の体調が崩れやすいことである。

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APP15型と思われる菌株を分離

アクチノバシルス・プルロニューモニエ(APP15型)
国内の養豚場からActinobacillus pleuropneumoniae血清型15と思われる株を分離しました。
従来APPは14型(13,14型はバイオタイプ2型、5型のみa,bの亜型がある)までの報告でしたが新たにオーストラリアにおいて血清型15が提唱されました。
今回、オーストラリアより分与していただいた15型を用いて免疫血清を作成し、国内で分離され、未同定だった菌株について型別判定したところ関東地方において15型と思われる菌株がありました。
この菌株の薬剤感受性を行ったところペニシリン系、キノロン系、クロマイ系、セフェム系に高い感受性を示した。テトラサイクリン系、マクロライド系、アミノグリコシド系、ST合剤は耐性を示した。
今回、15型が分離同定されたことから本血清型は国内において広く浸潤していることが示唆された。

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2-クロロエタノールが食品に残留?

 プリマハム(株)によりますと、自社による自主検査において、串を使用した「串刺し商品」の一部から2-クロロエタノールが検出されたと発表がありました。
健康被害の届けはないが、商品の販売を停止し、自主回収をするとのことです。

2-クロロエタノールとは・・・・Wikipediaによりますと
「2-クロロエタノールは強い毒性を持ち、濃い蒸気を吸引すると死に至ることがある。また、2-クロロエタノールは皮膚より吸収され、中枢神経、循環器、腎臓あるいは肝臓に障害を引き起こす。2-クロロエタノールは肺や目に対して刺激性が強い。そして、引火や爆発の恐れがある。
2-クロロエタノールはエチレンと次亜塩素酸とから製造される。
2-クロロエタノールはおもに酸化エチレンの製造に利用され、他にも染料、医薬品、殺菌剤や可塑剤の合成原料として利用される。あるいはチオジグリコールの製造にも利用される。酢酸セルロースやエチルセルロース、繊維のプリント染料、脱蝋、ロジンの精製、松リグニンの抽出、ドライクリーニング等の溶媒としても利用される。」と記載されている物質です。

どれほどの2-クロロエタノールが竹串に残留していたかは不明ですが、いち早く回収するとは、さすがです。こういった事件が起きた時に、どの様に対応するかで会社の体質が分かると思います。
プリマハム(株)の職員の方々は大変でしょうが頑張ってください。

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豚丹毒を考える

近頃各地域で豚丹毒の発生が目立っています。飼料コストの上昇などが農場経営を圧迫し、農場衛生費の大幅な削減を余儀なくされていることも影響していると思いますが、不用意なワクチン接種の中止が豚丹毒に関わらず、様々な疾病発生のきっかけに繋がってしまいます。
また、実際に現場に伺い相談を受けたりしていると、これ以外の理由があるようにも感じられます。
撲滅出来ているようで出来ていない畜舎内(天井部、壁部、床部、給餌器周り、給水器周りなど)や畜舎廻り(土壌や井戸水など)への豚丹毒菌の存在や、豚丹毒ワクチンプログラム自体への勘違いもその1つと考えています。
今回は全国的にもその発生が増加傾向にある豚丹毒について、その発生原因と対応を含めて考えてみたいと思います。

豚丹毒とは
豚丹毒菌の関与で発生する人畜共通感染病(届出伝染病)。
症状は急性の敗血症型、亜急性の蕁麻疹型、慢性の心内膜炎型、慢性の関節炎型の4つに分別されます。
敗血症型、蕁麻疹型は発熱症状を示しますが、心内膜炎型、関節炎型は発熱症状は示しません。

発生が多い型は何か
近年の発生数で多くを占めているのは関節炎型、蕁麻疹型、敗血症型になります。

注意する点について
①蕁麻疹型は皮膚に特徴的な病変が起こり、発熱を伴う症状からも農場側で発見しやすいはずなのですが、何故か屠畜場にて発見されて屠畜できずに返されています。
出荷時点で皮膚の汚れが多い場合や、出荷時の確認の不手際などが重なるとこの手の失敗が起こるようです。
②関節炎型は農場の生活状態内ではほとんどが発見できない可能性があります。
関節部位の炎症はあるのですが、ほとんどの豚が不顕性感染で経過し、屠畜場へ出荷されてしまいます。
関節炎型は母子感染が主な感染経路になりやすく、蕁麻疹型や敗血症型が耐化したあとに発生が多発する可能性があります。
③敗血症型は全身のチアノーゼ、発熱、諸臓器の炎症等を引き起こし、急な死亡(突然死)に繋がるやっかいな存在です。今年の異常気象で動きやすくなってしまったのか発生数が急増しています。特に150日齢以降の出荷直前頃での発生が目立ってきています。
④ワクチンプログラムでは未経産豚及び種豚(♀、♂)へのワクチン接種を忘れてはいけません。
⑤生ワクチンは薬剤投薬プログラム次第では死滅してしまいます。
⑥不活化ワクチンは接種回数が少ない場合や接種漏れなどがある場合は効果が半減してしまいます。

生ワクチンが関与してしまう発生にも注意
特に関節炎型が屠畜場にて発見された場合、農場内で本当に関節炎型が蔓延しているのか否かを確かめることも必要です。
接種日齢を90日齢以降(100~130日齢頃)で行っていたり、1ドース以上のワクチン量が接種されていたりすると、体内で豚丹毒生ワクチンの菌株自体が残っていて、豚丹毒以外の関節炎症だったとしても、菌検査時点では豚丹毒菌が分離されてしまうことがあります。

自農場に合ったワクチンプログラムの実施がカギ
豚丹毒の発生については、地域の事情や諸状況によっても発生数が左右されることも事実です。
ワクチン接種を行なっていない農場のみに発生が集中していることはなく、真面目にワクチン接種を行なっている農場でもその発生が多発している事実にも着目しなくてはいけないと思います。
本当の意味で豚丹毒を防除できる管理プログラムやワクチンプログラムの構築が必要なのかも知れません。
菊池雄一

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ノロウイルスについて②

冬になると猛威を振るい、私たちを悩ませるウイルスがあります。1、2月をピークに発生し、年間にしても発生件数はいつも上位、患者数はトップに位置するノロウイルスです。高齢者福祉施設の連続集団発生で、死者が出ましたので世間的にもその名を耳にする機会が多いと思います。このウイルスは未解明なところが多く、現在、厚生労働省のQ&Aによると感染経路はほとんどが経口感染と言われており、汚染された貝類(カキ、大アサリ、シジミ、ハマグリ等)を生あるいは加熱不足の状態で食した場合、感染した食品取扱者を介して汚染した食品を食した場合、患者の糞便や嘔吐物からの二次感染及び人同士の接触機会が多い場所での人から人への直接感染があります。

このウイルスを失活化するためには加熱処理が有効で、食品の中心温度が85度以上で1分間以上の加熱を行えば感染性はなくなるとされています。先に未解明なところが多いと述べましたが、ノロウイルスには多くの遺伝子の型があり、培養した細胞及び実験動物でウイルスを増やすことが出来ない事から、ウイルスを検査(分離して特定する)することが困難なことにその理由があります。また、困ったことに食品中に含まれるウイルスを検出することが特に難しく、食中毒の原因究明や感染経路の特定が困難です。

食中毒なのか、感染性胃腸炎(ノロウイルスによる感染症)なのか、原因究明・衛生指導に悩ます存在です。現在、レストラン等で食事し、ノロウイルスが原因で多数発症した場合や食品中や調理者の検便から検出された場合は食中毒。患者の検便のみの検出の場合は、人から人への感染による感染症扱いというケースをよく耳にします。何れにせよ、感染した場合、高齢者や乳幼児では致命的な結果にもなりかねないことから、基本の手洗い、器具の洗浄・消毒、食品の衛生的な取り扱いや十分な加熱、便や嘔吐物の適切な処理等の徹底が感染あるいは食中毒の予防のポイントとなります。

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食品の異物混入とその対応

年間を通じての依頼件数が決して少なくない検査の一つに、混入異物の鑑定というのがあります。一般的に業界で言う「異物」とは、生産、貯蔵、流通の過程での不都合な環境や取り扱いによって、食品中に侵入したあらゆる外来物を言います。ただし、外来物以外でも製造や保存過程において、内部に発生した固形物なども「異物」としての取り扱いを受けます。つまりは正常な製品と比較して異なるものが混入しているように判断された場合に「食品の異物混入」となります。

具体的に「異物」となりうるものには、どのようなものがあるのでしょうか。特に件数として多いのは、髪の毛や昆虫などですが、その他にも動物・鳥類の体毛、動物由来の排泄物、種子、植物の断片(木片、わらくず、もみがら等)、繊維など、小石・土砂、ガラス・陶磁器・セメント・金属・プラスチック・ゴムなども異物混入の事例として発生しています。

実際に異物混入があった場合(クレーム、社内発見に関わらず)、製造者の対応としては、

(1)『何であるかの確認』

(2)『なぜ混入したかの原因調査』

(3)『混入原因を排除するための対策の立案』

(4)『対策の実施』

という手順になるかと思われます。弊社のような検査会社が携わるのは、(1)『何であるかの確認』という部分になりますが、その後の(2)、(3)、(4)の手順に頭を悩ませている製造業者の方は多いことかと思います。そして、クレーム先に何であったか、その原因と対策を報告、とその時点で終わってしまうことが多いのではないでしょうか。

時間が無い、人がいない、お金が無いなどが対策の実施が出来ない理由であると思われますが、何度も同じような異物混入が発生すれば、その分だけ信用低下に繋がり、悪循環に陥ってしまうことでしょう。長期的な視点で考えれば、混入異物が発生した時に良いチャンスと捉え、その原因排除の対策を主軸として品質管理を考えるということが必要になるかと思われます。

現在の食品業界は「安全・安心・おいしい」ということが大前提であると考えられています。食品の安全に関して連日報道される昨今、一歩先を見据えた品質管理体制が益々重要となっていくでしょう。

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