隆(たかし)は今朝もホウキとチリトリを持って事務所の前に出ている。
2年前に伯父である社長に招かれてこの会社に入社、その社長が2ヶ月前に長期入院の憂き目にあい、先輩社員からも推薦され30歳台の若さで社長に就任したのだ。
「おはようございます、今日も社長さん自らお掃除してえらいですね~。いつもウチの前も掃いてくださりすみませんね~。」お隣のお母様も外に出てきた。
「社員はみんな自分の仕事が忙しいので、僕が一番時間が取れるのです。」と隆。
「そうそう、この間社長さんからいただいたサンプルね、孫娘にあげたら全部お友達に配ったって言ってましたよ。」
近隣の方々とのコミュニケーション作りも欠かせない。
デスクに戻った。社長就任挨拶も一段落した中、隆にはいろいろな用件が待ち構えている。事務所の修繕工事の打ち合わせ、銀行との交渉、役所への提出書類の決裁、お客さまへのクレーム対応、協力会社への訪問、更には地域の祭礼の協賛企業としてイメージキャラクターとのポスター撮影など……
「他の会社の社長さん方はどんな仕事してるのかな……」隆はふと窓の外を見ながらつぶやいた。
午後、隆は休みを取り長男の通う幼稚園に向かっていた。妻が高熱で動けず、長男のお迎えと帰宅後に家事を行うために。
お迎え時間より早めに着いて、お世話になっている園長先生に挨拶しようと門をくぐると、お迎え前の遊びタイムで園児たちが思い思いに遊んでいる。そんな中、女の子の声が聞こえてきた「社長さん、こっち こっち!」隆は思わずあたりを見まわした。すると隆の長男がホウキとチリトリを持って女の子のもとに駆け寄ってきた。するともう一人の女の子からも「社長さん、こっちもね~」と。
隆に気付いた長男は「パパ、ぼく社長さんのおしごとしてるんだよ! あとね、おとなりさんのおうちの前もおそうじするんだ!」と満面の笑みでゴミを拾い始めた。
(このストーリーは当社とは全く関係ございません)
