食品問題と報道について

2006年米国産牛が輸入解禁になったかと思えば、すぐに輸入禁止となった。「米農務省の監察官事務所によるBSE(牛海綿状脳症)対策監査で、米国内の食肉処理施設がBSE感染の兆候とされる歩行困難牛(へたり牛)20頭を原因不明のまま食肉処理していたことが分かった。歩行困難牛は食肉処理が禁じられており、米国のずさんな体制が新たに発覚したことで、日本の消費者の不安がさらに高まるのは必至。特定危険部位の混入で再停止された米国産牛肉の輸入の再開時期に影響しそうだ。」と報道された。

ずさんな体制化にありながらも輸出体制をとった米国とそれを見抜けずにして輸入しようとした日本が検査発覚を境に輸入を停止という事件。報道を見た人は実際に狂牛病で牛が倒れるシーンが画面に無くとも脳裏に浮かぶ筈である。私も報道を目にする度に思い起こされ不安になる。同時にいつも不安な状況にさせる報道がいくらかでも安心させるような報道には出来ないものかという思いになる。

この思いは単に事件の解決だけを祈る思いでなく、報道の方法に改善の余地はないかという思いである。「食」に関わる報道は、対岸の火事的事件とならずに各々の生活に降りかかっている事が多い。だから、他の事件報道とは異なり、事件の成り立ちや状況・結果だけにとどまらずに、その報道を目にした時にどのような心境になり、どのような影響が出るかを配慮する事が重要と思われる。

通常の事件ではほとんどが必要の無い配慮かもしれないが、生活に密接度が濃くなり専門知識を必要とされる事件ほど見る人、聞く人の知識や先入観で事件の受け捉え方が変わり、事件とは関係のない犠牲者を生む(風評被害)事があるように思える。

数年前のBSE問題では経営を止めた「生産農家」や倒産した「焼肉店」もあったし、BSEに限らずほうれん草事件や鳥インフルエンザの報道に関しても同様に思えた。今後もこのような問題はますます増大し、世の中を不安に陥れると思うが、国を相手にした消費者にとっての正義のヒーロー的報道だけでなく、その流通の過程(農場から食卓まで)をきちんと踏まえたなかで報道の在り方をきちんと見直して欲しい。

食品検査食品分析残留農薬
レジオネラ菌検査ノロウイルス検査食品アレルギー・アレルゲン検査

ポジティブリストについて

残留農薬などのポジティブリスト制とは、「基準が設定されてない農薬等が一定量以上含まれる食品の流通を原則禁止する制度」のことです。以前の制度では、農薬、飼料添加物及び動物用医薬品のうち、241の農薬と29の動物薬に残留基準が設定されており、残留基準を超えている食品の流通は禁止されていますが、その中に含まれない農薬等に関しては、たとえ食品に残留していても基本的に流通の規制はありませんでした。

ポジティブリスト制はこれまでに基準のなかったものに対して基準を設定し、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとの区別を明確にします。流通するすべての食品に関して農薬、動物用医薬品、飼料添加物の残留による人々の健康被害を保護する目的があるのです。

残留農薬の分析は、「個別分析法」と言って膨大な時間と手間を要するものでした。しかし、数百種類ある農薬の残留を試験するのには、全く対応が出来ません。そこで「ポジティブリスト制」に対応するために、現在では「多成分一斉分析法」という方法を取り入れている検査機関が増えています。

農薬の基準値の設定や検査方法の確立など移行期間までに解決しなければならないことが多々あると考えられますが、行政と食品関連業者、そして検査機関がそれぞれの役割を認識し対応していかなければ「人々の健康被害を保護する」という目的を達成することはできないのです。

食品検査食品分析残留農薬
レジオネラ菌検査ノロウイルス検査食品アレルギー・アレルゲン検査

記録の付け方

近年食品業界でもISO9001やISO22000を取得している企業が増えています。大半の取得された企業は、外部に対しての信頼を得て取引を優位にしています。しかし、大半の企業はそこまでです。つまり、取得することにより企業本来の基盤をよりよく改善し、熟成させている企業は無いに等しい、と感じられます。このままでは、大半の企業が取得した場合、『外部に対しての信頼』という優位性は薄れていくでしょう。

このことは、クレームが生じ、原因究明のため記録書を確認させていただいたときによく感じます。このような企業には共通して取得して数年経っているのに、記録書の更新が無い、さらに、追跡調査を行ってみても、追跡できないという問題が発生しています。

理由として、記録者からは『作業が大変な上に書類がたくさんあって大変だ』という言葉をよく聞きます。その理由にISO取得には、コンサルタント会社が入って指導してくれますが、実際はISOそのものの専門であって、それぞれの企業の専門ではないということを忘れてはいけません。どうしても、取得時には、企業として運用する上で過剰な記録書が出てしまいがちですが、実際に運用するうえで、不備、過剰があれば自らで常時改善していかなくてはなりません。

また記録書を改善しても、記録者にその記録する意味を理解させていないことも問題です。記録者は、『書くこと』が仕事になってしまい、不適合が発生してもそのまま記録し、原因の究明や改善はされないままになっています。書類には、『不適合の場合は、上司に報告すること』と記載があり、また、確認印まで押してあるにもかかわらずです。確認者も『確認する』ための捺印ではなく、『捺印が仕事』になっているために生じた問題です。

これらの発生を防ぎ、ISO本来の目的である経営基盤の改善・熟成、ひいては顧客要求を満たすためには、まず経営者自らが、なぜこの記録書が必要なのか、この記録書によって会社内外で起こっている事故に対して、追跡調査できるかなど常に問題意識を持ち続け、自らの強いリーダーシップで、継続的な改善を実行し、その重要性を全社員が認識できるような社内コミュニケーションの活性化を実現していくことが重要です。

食品検査食品分析残留農薬
レジオネラ菌検査ノロウイルス検査食品アレルギー・アレルゲン検査

偽装表示や賞味期限

メディアの報道の中では、「食の安全」を脅かすメーカーのずさんな体制とよく報じられています。一部の大腸菌群の検出事件は除き、報道の「食の安全」の脅かしというよりは、ほとんどの事件が「ごまかし」や「詐欺」の類です。

一連の事件は実際に健康被害を訴える消費者が現れているわけではありませんので、「ごまかし」や「詐欺」といような行き過ぎた営利主義的なメーカーの商売モラルの低さを露呈しているに過ぎません。

賞味期限に関しても、消費者の立場からすれば「この期限を過ぎた物は、メーカー側は保証しませんので廃棄してください。」というような感覚で捉えている期間をメーカー側が勝手に期限を付け替えて再販しているのですから、消費者が怒るのも当然です。

しかし、大方のメーカー経営者側からすれば「期限を過ぎても味も変わらなければ、危険性もないものと考えているから期限の張り替えによって期限を延期したところで消費者に不利益を被らせる事はない」と考えており、そもそもその事(張り替え)自体を「ごまかし」であると認識していなかったのではないでしょうか。

これは私のイメージですが、「食難時代(戦争時・戦争直後)の経験」とか「食糧自給率問題(輸入主体の食糧確保)」を取り上げ、業界の中で横行している期限によって設定している賞味期限の超過より、食品を廃棄する事こそが「悪」であると主張するメーカーの経営者は実際に多いのではないでしょうか。

それであれば、尚更、業界で横行している短い期限設定よりもきちんと科学的な根拠(微生物検査や自社内モニターによる官能検査)に基づき期限設定をすれば必然と期限は長くなると思います。大体において、食品の保存技術は冷蔵、冷凍、缶詰、レトルト殺菌、真空包装、脱酸素剤などと如何に食品寿命を延命するかに投じてきた長い歴史があるではありませんか。

私自身も、折角食せる製品を「印字ミス」等で保健所に摘発され、製造記録等でそれをトレースすれば、それがミスであるかどうかが判明する食品を、ろくに調べもせずに「廃棄命令」の一言で解決している現場を目にすれば「勿体無い」と感じます。「廃棄」が勿体無いと感じるのは誰もが一緒であると思いますし、「資源の無駄な損失」であると思います。だからこそ、きちんと科学的な根拠に基づいたデータにより、自社で作られた製品は他社よりも衛生的に秀でた物である事をきちんとアピールすれば、業界の考え方や意識も変わり、消費者イメージも変わるのではないでしょうか。

食品検査食品分析残留農薬
レジオネラ菌検査ノロウイルス検査食品アレルギー・アレルゲン検査

食中毒予防3原則について

温度湿度があり、栄養が加わると、カビや細菌は短時間で発育します。全てのカビや細菌が我々を脅かす存在ではありません。当然人々に役立つカビや細菌も多いのですが、梅雨時期から夏場にかけて食べ物に生えてくる細菌は食中毒の原因となる事が多いので注意が必要となります。

わが国での食中毒は食中毒菌や食中毒菌の出す毒素に汚染された食品を食べることなどによって起こる中毒症状が多く、微生物の中でも細菌が原因となる「細菌性食中毒」は高温多湿の梅雨期から9月にかけてはもっとも発生が増える時期です。

また微生物の中でもウイルスが原因となる「ウイルス性食中毒」(主にノロウイルス)は冬場の12月から2月にかけてもっとも発生が増える時期です。全国の保健所に届けられる食中毒は年間約2000件、患者数は約2万~3万人です。年々、衛生好きなこの国では除菌等の衛生グッズや衛生環境は年々向上しているはずなのに、食中毒の発生や患者数がほとんど横ばいなのは、食品の大量生産と流通規模の拡大と深い関わりがあります。

ごく一部の家畜が保有している病原菌や一部地域の細菌性やウイルス性の病気が交通の発達により、あっという間に世界中に拡散してしまうからです。食糧の多くを海外からの輸入に頼っている日本では、食品といっしょに、海外の食中毒菌が輸入されるケースもめずらしくありません。

技術が進歩する一方、技術への過信から生じる、保存管理などのミスが落とし穴になることもあります。さらに、調理済み食品の普及により、いつでもどこでも食事ができるため、手洗いの習慣に対する意識が薄れてきたことも原因のひとつとされています。

一般的に食べ物に微生物が生育し食中毒になるのを防ぐ方法を、「食中毒予防3原則」といい、微生物を「付けない・増やさない・殺す」ことを言います。この食中毒予防3原則をどのように守るかを要とした「食中毒予防の6ポイント」を厚生労働省は平成9年に通知文書を出しています。食中毒菌は、水や土、動物など我々の身の周りのどこにでも存在しています。しかも、繁殖しても臭いや味には影響しないため、その食品が安全かどうかを判断するのはなかなか困難です。そこで食中毒を予防するために、食中毒予防3原則を守り、実施することが大切となります。

食品検査食品分析残留農薬
レジオネラ菌検査ノロウイルス検査食品アレルギー・アレルゲン検査

病原性大腸菌O157について

1982年にアメリカで発見されたのが最初で、日本では1996年に発生し、ニュースにも取り上げられたので覚えている方も多いと思います。大腸菌は人や動物の腸内や土壌中など環境中に広く分布し、ほとんどは無害ですが中には人に対して病原性を持つものがあり、これを病原性大腸菌と呼んでいます。さらに病原性大腸菌の中でも出血を伴う腸炎を引き起こす毒素を産生する腸管出血性大腸菌があり、O157はこれに該当します。

O157の原因と特定あるいは推定されたものは国内では、井戸水、牛肉(牛レバー)、ハンバーグ、サラダ、キャベツ等、食品がほとんどですが、動物と接触した事により感染したり、ハエから検出された例もあります。2004年には厚生労働省によって腸管出血性大腸菌の総数で全国で夏場を中心に16件の報告がありました。

O157の恐ろしさは発症のしやすさと症状の重さにあります。O157は食品1g中約100個の菌量で発症すると言われ、吐き気、嘔吐、激しい下痢、血便、発熱等を引き起こし、乳幼児の場合死に至る事もあります。

このようにO157は恐ろしい食中毒菌ですが対策をしっかり行う事により充分予防可能です。予防方法として

①調理場に害虫を侵入させない。

②調理前後に調理器具、作業員の手指は充分に洗浄、消毒をする。

③調理用水は上水道水を使用する。井戸水を使用する場合、定期的に水質検査・塩素消毒をする。

④サラダ等生で食べる製品は専用の調理器具を使用する。食材そのものも充分に洗浄する。

⑤加熱は中心まで充分にする(特にハンバーグ等挽肉製品)。

⑥残った食材はすぐに冷蔵庫にしまい、少しでもあやしいと思ったら食べずに捨てる。

等があります。

食品検査食品分析残留農薬
レジオネラ菌検査ノロウイルス検査食品アレルギー・アレルゲン検査

食中毒とその防止について

今回は食中毒とその予防法について説明します。皆さん「食中毒」と聞くとどんなことを思い浮かべますか?「ものを食べて体調を悪くする」といった答えが多いのではないでしょうか?じつはほぼ正解で、食中毒菌や食中毒菌が作った毒素、ウイルス、その他の有害、有毒なものを含む食べ物を食べると発生する症状のことを言います。

主な症状は胃腸炎(下痢、腹痛、吐き気など)ですが、発熱など風邪に似た症状の場合もあります。食中毒菌を含む食べ物を食べてもすぐに症状がでず、数時間後に症状が出る場合もあります。食中毒菌やウイルスが食べ物についていても、見た目やにおい、味で判別することはできません。

食中毒は大きく次のように分けられます。

一つ目は「細菌・ウイルスによるもの」で実に全食中毒の90%以上を占めます。さらに細菌・ウイルスの中でもサルモネラ・ノロウイルス・カンピロパクターの3つで2006年の患者数別食中毒の約80%を占めたそうです。他の代表的な食中毒を発生させる細菌・ウイルスには、黄色ブドウ球菌、病原性大腸菌(O26、O157など)、腸炎ビブリオ、セレウス菌などがあります。

二つめは「自然毒によるもの」です。ふぐ・きのこなど有毒物質を誤って食べてしまうことで発生するもので、割合は少ないけれど死者がでる場合もあります。

三つ目は「化学物質によるもの」です。水銀、砒素などの有毒物質が付着している食物を食べることで発生します。

細菌やウイルスによる食中毒は、次の三つのことを守れば防ぐことができます。

一つ目は「つけない」です。代表的なものに、調理器具はしっかり洗浄・消毒する、冷蔵庫内では互いに汚染しないように肉・魚と野菜を分けて保管する、調理前には必ず手を洗うなどがあります。

二つ目は「増やさない」です。代表的なものに、食品は室温で放置せずに冷蔵庫で保存する。手早く調理し、早めに食べる、等があります。細菌が増えるための条件は「水分・温度・栄養」です。逆にいえばこの三つを遠ざければいい訳です。

三つめは「殺す」です。加熱することでほとんどの食中毒菌は死にます。大切なのは、中心までしっかりと加熱することです。

以上三つの事をしっかり守って、食中毒が起こらないよう心掛けましょう。

食品検査食品分析残留農薬
レジオネラ菌検査ノロウイルス検査食品アレルギー・アレルゲン検査

食中毒予防のポイント ~食中毒を如何に防ぐか~ つづき

2.食中毒を予防するには?家庭で食中毒が発生する場合の感染源は、主に食品に病原菌がいる場合と調理する人が病原菌を運んでくる場合の2通りがあります。いずれも、日頃からのちょっとした注意により食中毒は予防できると考えてよいでしょう。

1.夏場に注意! 病原菌のことから考えて、高温・多湿はもっとも繁殖しやすい環境です。また、食する者の立場から考えてみると、夏場は食品を加熱せずに口にする機会が多いと思われます。このことから、食中毒は季節と密接な関係がありますので、特に夏場には要注意して下さい。
2.生ものに注意!
細菌性食中毒の感染源となる食品の多くは、魚介類、肉類、卵等です。体の弱っているときや食品が新鮮でないときは生食を控え、きちんと加熱して食べるようにしましょう。
3.生鮮食品はできるだけ低温保存しましょう!
菌体増殖を防ぐには、低温冷蔵が基本となります。生鮮食品を購入した場合にはできるだけ早く食べるか、すぐに低温冷蔵するよう心がけましょう。
4.冷蔵庫の過信は禁物!
病原菌のほとんどが、10℃を越えると増殖しやすくなります。冷蔵庫に物を過剰に詰め込んでいたり、ドアを頻繁に開閉したりすると庫内の温度は上昇し、病原菌の増殖する環境になりますので注意しましょう。
5.傷のある手で調理をしない
傷口にいる黄色ブドウ球菌は食中毒の原因になります。手に傷のある場合にはできるだけ調理しないようにして下さい。
6.時間に注意!
細菌は驚くべき早さで短時間に増殖します。材料には発症するほどの菌の数がいない場合でも、調理途中に作業を中断して材料をそのままに放置したりすることによって増殖してしまいます。このようにどんなに新鮮な物を購入したからといっても短時間に調理し、その後もすぐに食しないことには発症は防げないことを念頭に置いて下さい。
7.手を洗いましょう
手は人間の部位の中で最も汚染されているものと考えて下さい。調理する前はもちろんのこと、生ものをさわった後にはこまめに石鹸で洗うことが大切です。食材を購入し、口にはいるまでの間にどれだけ手を洗っているかがポイントとなります。
8.調理器具類は清潔に
手と同様に食品に触れる物は常に清潔にしておくことが肝心です。まな板・包丁などは特に注意して下さい。生ものを扱った後でそのままにしておきますと、汚染を拡げる媒体にしかなりません。調理器具類は常に清潔にし、使い終わった後はきちんと消毒しておくことが重要です。

3.おわりに…
食中毒の原因菌は目に見えないものであるだけに、その対策には細心の注意を払わなければなりません。冷蔵庫の過信、材料の放置、賞味期限切れというようなことが、発症させるに十分な数まで病原菌を増大さてしまうことにつながるです。
しかし食中毒は、正しい知識と正しい処置があればそんなに恐れるほどのものではありません。いつも清潔にし、材料は新鮮なうちに調理し、出来上がったおかずはすぐに食する。不安なときには、食さないか、加熱するか、酢でしめたりというような工夫をする、というような誰もが知っていて家庭でも十分に対応できる極当たり前の知恵をもってすれば、少なくとも家庭内が原因の食中毒はなくすることができるわけです。
身のまわりのありとあらゆる所に細菌がいるわけですから、細菌と上手に付き合っていくにはどのようにすれば良いのかということが、食中毒の予防につながるのではないかと思います。そのことを踏まえて、もう一度御家族皆さんでよく考えてみてはいかがでしょうか。

食品検査食品分析残留農薬
レジオネラ菌検査ノロウイルス検査食品アレルギー・アレルゲン検査

食中毒予防のポイント ~食中毒を如何に防ぐか~

1.主な病原菌による食中毒食中毒の原因となる細菌は、とても多種類が存在します。はじめに、その主なものについて説明します。

>Ⅰ サルモネラ
現在日本でもっとも頻度が高く発生する食中毒のうちの1つです。
最近では、卵や牛乳が感染源と疑われるSE(サルモネラ・エンテリティディス;Salmonella enteritidis)という種のサルモネラによる食中毒が発生しています。
SEは卵を例にしますと、卵の殻に付着している場合(On egg )と卵の中に含まれる場合( In egg )があります。通常、In egg の場合で卵中のサルモネラの数は2~3個位と言われています。一般に、人間のサルモネラ感染による発症(食中毒)はその人の健康状態にもよりますが、サルモネラを1.0×105個(つまり、10,000個)以上体内に取り込んだときに起こります。
2~3個のサルモネラが発症する数にまで増えることがあるのは、卵の保存・取り扱いに問題があるからだと言えるでしょう。それはSEに限らず、サルモネラ全体において、もしくは食中毒全体において言えることなのかもしれません。
サルモネラは自然界で広範囲に分布しており、その伝播や侵入経路も多様です。そのことからも最近、急激に増大しているサルモネラ食中毒を防止するには、感染源として疑われる食品の保存・取り扱いに十分気を配る事が必要と言えます。
( 感 染 源 ) 肉類、卵、乳製品等
(潜伏期間 ) 4~48時間
( 症 状 ) 急な発熱、吐き気、嘔吐、腹痛、激しい下痢
( 予 防 法 ) 十分に加熱して調理する、卵などの低温保存、ネズミ・ゴキブリなどの駆除

>Ⅱ 病原大腸菌O157 (腸管出血性大腸菌O157
平成8年5月に岡山県で発生した例を皮切りに、病原大腸菌O157による食中毒は日本中でますます広がりを見せ、世間の注目を集めています。
O157という名称は、O抗原と呼ばれる「菌体抗原を持つ大腸菌の体の部分」のうちの157番目という意味を持っています(ちなみに、O-157と表記されることもありますが、学術的にはO157の方が一般的です)。法定伝染病である赤痢に近い感染力を持っています。
通常の細菌性食中毒は細菌を100万個単位で摂取しないと感染しませんが、O157は約100個の菌量で症状が出るといわれています。
( 感 染 源 ) 肉類、乳製品等
(潜伏期間 ) 2~72時間
( 症 状 ) 腹痛、水様性の下痢、血便、固形物のない血性下痢(典型的な症状)、 
吐き気、嘔吐、発熱を伴うこともある
( 予 防 法 ) 食品は衛生的な取り扱いをする、十分に加熱して調理する、手を十分に洗う、
調理器具類は十分に消毒をする、感染者との混浴はしない、感染者の糞便に注意する

>Ⅲ 腸炎ビブリオ
腸炎ビブリオによる食中毒は、菌に汚染された魚介類を生で食べることによって起こります。
( 感 染 源 ) 生の魚介類
(潜伏期間 ) 6~24時間
( 症 状 ) 発熱、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢
( 予 防 法 ) 原因菌は真水に弱いので十分に水洗いする、食品の低温保存、十分に加熱して調理する

>Ⅳ 黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌は、切り傷・擦り傷にごく普通に繁殖します。調理する人の手などの傷口から、それが食品に入ることによって起こります。産出する毒は熱に強く、加熱してもなかなか失活(活動出来なくなること)しません。
( 感 染 源 ) 調理人の手指の化膿性炎症等
(潜伏期間 ) 3時間前後
( 症 状 ) 吐き気、嘔吐、下痢、短期間の発熱
( 予 防 法 ) 調理人の手指に化膿性炎症がある場合には直接食品に触れない、食品の低温保存

>Ⅴ ボツリヌス菌
頻度は少ないのですが、菌が猛毒を産出するため、細菌性食中毒の中でもっとも恐ろしいといわれています。
ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)は、大型の偏性嫌気性桿菌です。菌体の一端近くに卵円形の芽胞を形成します。産生する毒素タンパク質の免疫学的な違いによって、A~Gの7型に分類されています。A型およびB型ボツリヌス菌は、発芽の型で世界各地の土壌に分布しているます。海底や湖沼にはE型菌が棲息し、魚からも高い確率でE型菌が検出されます。

( 感 染 源 ) いずし、ハム、ソーセージ、辛子レンコン、真空パックの食品等
(潜伏期間 ) 4~36時間
( 症 状 ) 嘔吐、めまい、複視、呼吸困難、運動麻痺
( 予 防 法 ) 十分な手洗い、食品の低温保存、十分な加熱

>Ⅵ ウェルシュ菌
ウェルシュ菌による食中毒は、大量調理施設を中心に、大規模な発生を引き起こす場合があります。
ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)は、健康な人の大便の100%近くで検出されるありふれた菌です。家畜、家禽や魚の腸管内にも常在し、土壌、下水などの自然界にも分布しています。ウェルシュ菌は、人の腸管内で食中毒の原因物質であるエンテロトキシンという毒素を産生します。ウェルシュ菌が食品内で1.0×106個(つまり、100,000個)以上に増殖し、それを人が摂取してしまうと食中毒となります。

( 感 染 源 ) スープ、カレー、シチュー、煮物、真空パックの食品等
(潜伏期間 ) 4~12時間
( 症 状 ) 腹痛、下痢
( 予 防 法 ) 調理後早めに食べること、食品の低温保存と再加熱

>Ⅶ セレウス菌
セレウス菌(Bacillus cereus)は土壌細菌の一種で、人の生活環境をはじめ、塵埃・汚水・河川などの自然界に広く分布し、各種食品からも多数分離されます。食物を汚染して腐敗・変敗を起こすことが古くから知られていましたが、1950年代以降、食中毒細菌とされるようになりました。
セレウス菌食中毒は下痢型と嘔吐型が認められています。セレウス菌食中毒の原因食品は、下痢型では調理肉・ソーセージなどの肉類加工食品や、各種スープ・バニラソースなどで、一方の嘔吐型では米飯や焼飯等の米飯類によるものが最も多いです。
セレウス菌の増殖を阻止するには、その性状・特性を十分把握しておくことが必要です。セレウス菌は芽胞を形成し、その芽胞は、1~59℃、pH4.35~9.30、水分活性(Aw)0.99以上で発芽し、熱抵抗性はD100値(100℃で菌数が1/10になる時間)1.2~8.0分で、缶詰食品中でも残存します。また、5~50℃、pH4.35~9.35、Aw0.912~0.95の範囲で発育し、ソルビン酸(0.2%濃度、pH6.6)で発芽は阻止され、次亜塩素酸ナトリウム(150µg/ml)で芽胞の90%は不活化されることも知られています。
次回は食中毒を防止するにはを予定

食品検査食品分析残留農薬
レジオネラ菌検査ノロウイルス検査食品アレルギー・アレルゲン検査

最近の食品問題で感じること

「水と安全がタダではなくなった我が国では、ただの食べる事さえも命がけになってしまうのでしょうか?」

すごくオーバーな言い方です。しかしながら、最近の食品関連の報道を見ていると、近い将来近所のスーパーで買う食材、レストランでの食事など、今まで何の疑問も抱かずに口にしてきた食品を、果たして『?』なしで食べることが出来るのだろうか?と思うことがあります。

非常に残念なことですが、最近「食品」というキーワードに一番相性が良いのは、「偽装」でしょうか。それとも「改竄」?ただし、これらの事項については全ての『原因』が製造者側にあるとは、言えない事柄もあるのではと感じます。

結果的に、法律を守らなかった製造者が法的な制裁を受けるのは当然のことで、『責任』を負うのは製造者です。しかし、その経緯を考えると行政の指導や対応、消費者の要求などの中に『原因』となる事柄が少なからずあったのではないかとも思えるのです。
こんなことを記載すると「社会のせいだ」と言って罪を認めない犯罪者の肩を持つような考えを感じさせてしまう可能性もありますが、決してそういう事ではありません。
『責任』も『原因』も全て製造者にあるような見解がなされていることが多いと感じるのです。現在の状況を具体的に「改善」するには、製造者の努力だけではなく、行政の指導やその方法自体の見直し、そして消費者が正しい知識を持った上で、要求を出すということもポイントであり、『原因』にスポットを当てることが重要であると思います。

全く違う業界の少し古い話になるのですが、「パソコンを使っている息子がコンピューターウイルスに感染しないか心配だ」といったクレームが、実際にあったようです。今では笑い話ですが、これに近い内容(知らないことから起こる不安)の事柄を食品関連のクレームでも耳にすることが少なくありません。不安を少しでも解消するには、どうしたら良いのだろうと考えるだけでも、より良い「食の安全・安心」に近づくと思います。

製造者・消費者・行政機関各々がより良い「食の安全・安心」に意識を持って取り組めるような状況を徐々にでも形成していくことに少しでも尽力が出来ればと、特に最近は感じるのです。

食品検査食品分析残留農薬
レジオネラ菌検査ノロウイルス検査食品アレルギー・アレルゲン検査