2008年12月1日、新しいオーエスキー病対策要領が施行されました。オーエスキー病の清浄化達成を平成22年度と定め、養豚農家の抗体検査を実施し、浸潤地域においてはワクチンの全頭接種推進に取り組んでいます。清浄化には、ワクチン接種の徹底、定期的なモニタリング検査、陽性豚の淘汰、陰性豚の導入などが必要となります。撲滅には個々の農場の取り組みだけでなく、地域一丸となった取り組みが重要となります。撲滅による経営改善や地域的なまとまりなど、多くのメリットもあります。個々の農場に合ったワクチネーションを行うために、日齢別の抗体検査を受けるようにしましょう。
弊社で衛生管理指導を行っている群馬県の農場では、2009年3月の時点で母豚及び肥育豚でほぼ全頭が野外抗体陽性であったが、抗体検査結果を基にしたオーエスキー病対策の徹底後、約半年で母豚以外は野外抗体陰性となり、AD撲滅に向けて順調に進んでいるところです。
急増!!連鎖球菌
先日、若い養豚生産者の方と知り合う事があり、熱く自分の農場の事について語ってもらいました。
知り合った場所が忘年会の宴席だったのですが、料理もそっちのけで農場の展望を語るその姿勢に、いつの間にか私も引き込まれて、食事後の温泉でも裸のお付き合いをしながら色々お話をさせていただきました。
その中で、肉豚の急死が散発して悩んでいる様子でした。ご本人はApp(胸膜肺炎)を疑い、数ヶ月前からAppワクチンの接種を開始したとの事。
しかし、肉豚の急死は改善しないままで本人としても「気持ち悪い」状況みたいでした。
そこまで悩まれているのであればと、まずは農場で散発している事故の『本当の敵』を知ることから始めてみたら・・・とご助言させていただきました。
その2日後、私に電話が掛かってきました。温泉で言った事を覚えていてくださって病性鑑定を実施したいと依頼を受けました。その日に農場にお伺いし死亡豚の解剖をしたところ敗血症を疑う内臓所見でした。そして3日後に連鎖球菌(Streputococcus Suis)が検出された旨をご報告。そして生産者の方と一緒に連鎖球菌対策を構築し、今はその『本当の敵』と闘う準備をしているところと思います。
私は、関東を担当しているのですが、やはり豚丹毒と連鎖球菌でお困りの養豚場は多いように感じます。
まずは自農場にあったワクチンプログラムと薬剤プログラムの構築が急務と思います!!
おまえもか?
顔写真付き野菜
最近、顔写真付き野菜が農産物直売所やスーパーなどの一角を占めるようになってきた。収穫時の写真をみると、作っている人のシワの一本一本に苦労が見えたし、どんな人が作っているのかが分かるだけで安心感があった。
ほとんどの農家が「まじめ」に作っている中、一部の仲卸が自己の利益のために偽装を考える・・・・・・・。
こんな構造が見えてたまらない。
このことにより全体が「悪」のイメージとなってしまうのである。
一生懸命に作っている人を利用し、これは儲かると感じた人たちが顔写真を逆手に取った偽装を行う。
報道を見たとき、「おまえもか」と思った。
偽装表示や賞味期限
メディアの報道の中では、「食の安全」を脅かすメーカーのずさんな体制とよく報じられています。一部の大腸菌群の検出事件は除き、報道の「食の安全」の脅かしというよりは、ほとんどの事件が「ごまかし」や「詐欺」の類です。
一連の事件は実際に健康被害を訴える消費者が現れているわけではありませんので、「ごまかし」や「詐欺」といような行き過ぎた営利主義的なメーカーの商売モラルの低さを露呈しているに過ぎません。
賞味期限に関しても、消費者の立場からすれば「この期限を過ぎた物は、メーカー側は保証しませんので廃棄してください。」というような感覚で捉えている期間をメーカー側が勝手に期限を付け替えて再販しているのですから、消費者が怒るのも当然です。
しかし、大方のメーカー経営者側からすれば「期限を過ぎても味も変わらなければ、危険性もないものと考えているから期限の張り替えによって期限を延期したところで消費者に不利益を被らせる事はない」と考えており、そもそもその事(張り替え)自体を「ごまかし」であると認識していなかったのではないでしょうか。
これは私のイメージですが、「食難時代(戦争時・戦争直後)の経験」とか「食糧自給率問題(輸入主体の食糧確保)」を取り上げ、業界の中で横行している期限によって設定している賞味期限の超過より、食品を廃棄する事こそが「悪」であると主張するメーカーの経営者は実際に多いのではないでしょうか。
それであれば、尚更、業界で横行している短い期限設定よりもきちんと科学的な根拠(微生物検査や自社内モニターによる官能検査)に基づき期限設定をすれば必然と期限は長くなると思います。大体において、食品の保存技術は冷蔵、冷凍、缶詰、レトルト殺菌、真空包装、脱酸素剤などと如何に食品寿命を延命するかに投じてきた長い歴史があるではありませんか。
私自身も、折角食せる製品を「印字ミス」等で保健所に摘発され、製造記録等でそれをトレースすれば、それがミスであるかどうかが判明する食品を、ろくに調べもせずに「廃棄命令」の一言で解決している現場を目にすれば「勿体無い」と感じます。「廃棄」が勿体無いと感じるのは誰もが一緒であると思いますし、「資源の無駄な損失」であると思います。だからこそ、きちんと科学的な根拠に基づいたデータにより、自社で作られた製品は他社よりも衛生的に秀でた物である事をきちんとアピールすれば、業界の考え方や意識も変わり、消費者イメージも変わるのではないでしょうか。
牛の採血は命がけ
食中毒予防3原則について
温度湿度があり、栄養が加わると、カビや細菌は短時間で発育します。全てのカビや細菌が我々を脅かす存在ではありません。当然人々に役立つカビや細菌も多いのですが、梅雨時期から夏場にかけて食べ物に生えてくる細菌は食中毒の原因となる事が多いので注意が必要となります。
わが国での食中毒は食中毒菌や食中毒菌の出す毒素に汚染された食品を食べることなどによって起こる中毒症状が多く、微生物の中でも細菌が原因となる「細菌性食中毒」は高温多湿の梅雨期から9月にかけてはもっとも発生が増える時期です。
また微生物の中でもウイルスが原因となる「ウイルス性食中毒」(主にノロウイルス)は冬場の12月から2月にかけてもっとも発生が増える時期です。全国の保健所に届けられる食中毒は年間約2000件、患者数は約2万~3万人です。年々、衛生好きなこの国では除菌等の衛生グッズや衛生環境は年々向上しているはずなのに、食中毒の発生や患者数がほとんど横ばいなのは、食品の大量生産と流通規模の拡大と深い関わりがあります。
ごく一部の家畜が保有している病原菌や一部地域の細菌性やウイルス性の病気が交通の発達により、あっという間に世界中に拡散してしまうからです。食糧の多くを海外からの輸入に頼っている日本では、食品といっしょに、海外の食中毒菌が輸入されるケースもめずらしくありません。
技術が進歩する一方、技術への過信から生じる、保存管理などのミスが落とし穴になることもあります。さらに、調理済み食品の普及により、いつでもどこでも食事ができるため、手洗いの習慣に対する意識が薄れてきたことも原因のひとつとされています。
一般的に食べ物に微生物が生育し食中毒になるのを防ぐ方法を、「食中毒予防3原則」といい、微生物を「付けない・増やさない・殺す」ことを言います。この食中毒予防3原則をどのように守るかを要とした「食中毒予防の6ポイント」を厚生労働省は平成9年に通知文書を出しています。食中毒菌は、水や土、動物など我々の身の周りのどこにでも存在しています。しかも、繁殖しても臭いや味には影響しないため、その食品が安全かどうかを判断するのはなかなか困難です。そこで食中毒を予防するために、食中毒予防3原則を守り、実施することが大切となります。
病原性大腸菌O157について
1982年にアメリカで発見されたのが最初で、日本では1996年に発生し、ニュースにも取り上げられたので覚えている方も多いと思います。大腸菌は人や動物の腸内や土壌中など環境中に広く分布し、ほとんどは無害ですが中には人に対して病原性を持つものがあり、これを病原性大腸菌と呼んでいます。さらに病原性大腸菌の中でも出血を伴う腸炎を引き起こす毒素を産生する腸管出血性大腸菌があり、O157はこれに該当します。
O157の原因と特定あるいは推定されたものは国内では、井戸水、牛肉(牛レバー)、ハンバーグ、サラダ、キャベツ等、食品がほとんどですが、動物と接触した事により感染したり、ハエから検出された例もあります。2004年には厚生労働省によって腸管出血性大腸菌の総数で全国で夏場を中心に16件の報告がありました。
O157の恐ろしさは発症のしやすさと症状の重さにあります。O157は食品1g中約100個の菌量で発症すると言われ、吐き気、嘔吐、激しい下痢、血便、発熱等を引き起こし、乳幼児の場合死に至る事もあります。
このようにO157は恐ろしい食中毒菌ですが対策をしっかり行う事により充分予防可能です。予防方法として
①調理場に害虫を侵入させない。
②調理前後に調理器具、作業員の手指は充分に洗浄、消毒をする。
③調理用水は上水道水を使用する。井戸水を使用する場合、定期的に水質検査・塩素消毒をする。
④サラダ等生で食べる製品は専用の調理器具を使用する。食材そのものも充分に洗浄する。
⑤加熱は中心まで充分にする(特にハンバーグ等挽肉製品)。
⑥残った食材はすぐに冷蔵庫にしまい、少しでもあやしいと思ったら食べずに捨てる。
等があります。
食中毒とその防止について
今回は食中毒とその予防法について説明します。皆さん「食中毒」と聞くとどんなことを思い浮かべますか?「ものを食べて体調を悪くする」といった答えが多いのではないでしょうか?じつはほぼ正解で、食中毒菌や食中毒菌が作った毒素、ウイルス、その他の有害、有毒なものを含む食べ物を食べると発生する症状のことを言います。
主な症状は胃腸炎(下痢、腹痛、吐き気など)ですが、発熱など風邪に似た症状の場合もあります。食中毒菌を含む食べ物を食べてもすぐに症状がでず、数時間後に症状が出る場合もあります。食中毒菌やウイルスが食べ物についていても、見た目やにおい、味で判別することはできません。
食中毒は大きく次のように分けられます。
一つ目は「細菌・ウイルスによるもの」で実に全食中毒の90%以上を占めます。さらに細菌・ウイルスの中でもサルモネラ・ノロウイルス・カンピロパクターの3つで2006年の患者数別食中毒の約80%を占めたそうです。他の代表的な食中毒を発生させる細菌・ウイルスには、黄色ブドウ球菌、病原性大腸菌(O26、O157など)、腸炎ビブリオ、セレウス菌などがあります。
二つめは「自然毒によるもの」です。ふぐ・きのこなど有毒物質を誤って食べてしまうことで発生するもので、割合は少ないけれど死者がでる場合もあります。
三つ目は「化学物質によるもの」です。水銀、砒素などの有毒物質が付着している食物を食べることで発生します。
細菌やウイルスによる食中毒は、次の三つのことを守れば防ぐことができます。
一つ目は「つけない」です。代表的なものに、調理器具はしっかり洗浄・消毒する、冷蔵庫内では互いに汚染しないように肉・魚と野菜を分けて保管する、調理前には必ず手を洗うなどがあります。
二つ目は「増やさない」です。代表的なものに、食品は室温で放置せずに冷蔵庫で保存する。手早く調理し、早めに食べる、等があります。細菌が増えるための条件は「水分・温度・栄養」です。逆にいえばこの三つを遠ざければいい訳です。
三つめは「殺す」です。加熱することでほとんどの食中毒菌は死にます。大切なのは、中心までしっかりと加熱することです。
以上三つの事をしっかり守って、食中毒が起こらないよう心掛けましょう。
密かに進行中?-見直してみよう!コクシジウム感染症-
近年は飼料代金の高騰、ワクチン関係の充実、ポジティブリスト制度等の関係も有り、農場での薬剤の使用量が減少して来ています。又、薬剤を使用して絶大な効果があった以前とは異なり、病原性の強いウイルスや薬剤耐性を持った細菌群等による複合感染症の出現も、養豚現場での薬剤の効果を鈍らせて、薬剤に頼っていた養豚業界の再編を後押ししているものと思います。
安心、安全な豚肉を生産する上で、なるべく薬剤に頼らない養豚経営を目指す事は大変良い事なのですが、近頃は薬剤を使用する時は無造作且つ無神経に使用し、薬剤を中止する時には考えなしに行う農場が見られる事に、一抹の不安を感じています。
さて、この事も有り、私は各地の農場へ伺っていて思う事があります。
飼養母豚数の増加や畜舎設備の老朽化、管理者の高齢化、使用飼料の能力減、使用水の水質悪化、使用敷材の不衛生化等によるものなのかは明確でありませんが、今まではたいして何も気にもしなかった疾病群の感染が増加しているのでは?と感じています。
今回はその中の一部の事例を紹介しようと思います。
皆さんの農場で中々治癒出来ない、下痢症状、衰弱症状、関節炎症状、又はそれらが伴う死亡事故等の発生は無いでしょうか。もし当てはまる症状がある場合については、コクシジウム感染症の存在も疑って見て下さい。
このコクシジウム感染症には、アイメリア属(Eimeria)9種、イソスポラ属(Isospora)3種、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)2種が存在します。
Isospora suisは哺乳子豚に重篤な下痢を起こす病原体で、その発生は生後5~14日目(近年は3日目での発生報告もある)にほぼ限定されます。
Eimeriaは離乳直後の子豚に多く発生し、下痢症状やカタル性腸炎等が認められます。
Cryptosporidiumは、豚での発病はまれで、哺乳類に共通に感染する2種類によって下痢症状が発生することが発見され、人畜共通感染病として注目されています。
コクシジウムに感染、発症すると、体力.抵抗力が著しく失われ、他の疾病との混合感染を助長し、様々な合併症を引き起こしやすくなります。
最も相性が良いものとすれば、豚の下痢症や出荷遅延、腸廃棄等に関与するクロストリジウム感染症が知られています。
クロストリジウムは常在細菌の部類に入り、常に腸管にいてストレスや条件が重なる時に異常に増殖し、発病します。
どちらにしても昔はサルファ剤等の薬剤によるコクシジウム感染症の予防や治療がなされていましたが、今はほとんどの農場でこの手の薬剤の利用は見かけなくなっています。又、他にコクシジウムが増加した要因としては、長年に渡る敷地内(土壌中)での増殖、オガ屑等の敷材中への混在や繁殖、地下水への混入(汚染)も、農場でのコクシジウム感染症の発生を助長していると思います。
今までの常識や、事故が起こっている場所のみに囚われず、広い視野と知見で事故原因をさぐる努力をする事は、農場側や私たち指導する側の両方で必要になる事と思います。
サーコワクチンの現状レポート、今後の課題について
昨年から販売が開始されたサーコウイルスワクチンですが、現状では不足気味であったワクチンも解消され、ワクチン自体が手に入らずに苦慮していた農場もなくなったと聞いています。
ただ、効果が現われている農場毎でもその成績改善率に格差があったり、効果の発現が少ない農場も存在したりしていますので、まだまだ検討が必要な様です。
今回はそうした状況もあり、これからの寒く厳しい季節を迎える前に、早い時期に接種を行う事が出来た農場の現状、問題点、将来の課題等を検案しながら、接種し始めの農場や、これから開始しようと考えている農場へ、少しでも役立てられるようなポイントを探って行きたいと思います。
サーコワクチンの接種効果として期待するもの。(順不同)
①事故率の軽減。
②ヒネ化率の軽減。(虚弱、衰弱、ひね発生の軽減)
③飼料要求率の改善。(無駄になっている飼料の改善)
④出荷日齢の短縮。
⑤1母豚当たりの生産成績の向上。(出荷枝肉重量としての増加)
⑥ポジティブリスト制度、トレーサビリティー制度、HACCP(ハセップ)等を念頭に置いた薬剤の使用量や治療回数の軽減。
⑦ワクチンプログラムの簡素化。(将来的に)
現状のワクチン接種プログラムの一例
ベーリンガー社(子豚用)のワクチンを使用している場合。
パターン①子豚群のみ接種。生後3週齢頃の毎回接種。
メリアル社(母豚用)のワクチンを使用している場合。
パターン①種豚群のみ接種。交配前 の未経産時期に1~2回接種。初回は分娩8~7週前、4~3週前の接種。その後は分娩3週前毎回接種。
インターベット社(子豚用)のワクチンを使用している場合。
パターン①子豚群のみ接種。生後3週齢頃 の毎回接種。
サーコウイルスワクチン接種のポイント
ベーリンガー社(子豚用)のワクチンを使用している場合。
ポイント
①子豚への接種時期。分娩舎で作業者が抱いて丁寧に接種する事が重要。ストレスが2回以上重なる時期の接種は避ける。(移動と離乳、去勢と他のワクチン等、ただし、単体の作業時はその時期に組み入れる事はOK、農場毎に相談は必要)
②接種時期の子豚の状態。早期のPRRS感染、下痢症状(大腸菌、クロストリジウム、コクシジウム等)等はワクチン効果を妨げるばかりか、逆影響にもなりかねない。
③接種時のリアクションは少ない。
メリアル社(母豚用)のワクチンを使用している場合。
ポイント
①未経産豚(交配前)の接種を忘れない事。 この時期に接種されることで、その後のワクチン効果が左右されるといっても過言ではない。
ただし、他のワクチンの接種状況もあるので、プログラムは良く話し合って決める。馴致の面や今までの経緯から見ても、鼻炎系ワクチンと同様に早い時期の接種が有効。
②移行抗体価で防御するワクチン。分娩舎の泌乳状況が悪い農場では要注意。
③オイルワクチンなので取り扱いには注意。
④PCV2の感染(被害)が肥育期に多い農場の場合、効果が出にくいので注意。
インターベット社(子豚用)のワクチンを使用している場合。
ポイント
①子豚への接種時期。分娩舎で作業者が抱いて丁寧に接種する事が重要。
ストレスが2回以上重なる時期の接種は避ける。(移動と離乳、去勢と他のワクチン等、ただし、単体の作業時はその時期に組み入れる事はOK、農場毎に相談は必要)
②接種時期の子豚の状態。早期のPRRS感染、下痢症状(大腸菌、クロストリジウム、コクシジウム等)等はワクチン効果を妨げるばかりか、逆影響にもなりかねない。
③接種時のリアクションが発現する可能性があるワクチン。
生後3週齢以内の分娩舎で接種される分にはさほどの心配はないが、生後5週齢以降での接種を余儀なくされる農場では接種時の工夫が必要。
ワクチン効果の発現で地域性があるのか?効果が現われにくい農場の現状は?
この様な質問はこの頃多く受けますが、地域による効果の発現状態に格差はないものと思います。
もしそれらが発生する可能性があるとしたら、扱う人間側の意識によるものと、環境差による効果発現の格差は存在していると思います。
ポイント
①飼養する環境差。(隣同士が密集している地域と、隣りが5~10キロメートルも離れている場所等での飼養条件差)
②飼養密度。(1豚房に飼養されている豚の数と接触回数)
③糞尿処理に対する意識と設備の格差。(糞処理と尿処理に余裕があるところは改善が早い傾向にあり、余裕が無いところは効果の発現後、新たな被害が再発生する危険性がある)
④使用飼料のレベルの格差。(今までの経営が影響していると思われる使用配合飼料の栄養性・吸収性の格差、様々な機能性サプリメント資材の利用格差等は、サーコウイルスワクチンでは解決出来ないヒネ・虚弱や疾病群(浮腫病、レンサ球菌感染症、グレーサー病、大腸菌感染症、ローソニア感染症、サルモネラ感染症、コクシジウム感染症、マルベリーハート等)の発生が見られる危険性がある)
⑤使用意識の問題。使用後半年から1年間は最低でも今現在の農場プログラム(ただし、ある程度間違いが無いプログラムだった場合)に追加する形でサーコウイルスワクチンを接種している農場と、使用直後から農場プログラムを変更する主体性の無い農場では効果の発現に格差が生じる危険性がある。
⑥サーコウイルスワクチン接種前の子豚の状態。(サーコウイルスワクチン接種前に子豚が何らかの疾病感染・発病をしていた場合は効果の発現に格差が生じる危険性がある)
サーコウイルスワクチンを組み入れた管理プログラムの考え方
サーコウイルスのワクチン接種を行う事により、今現在行っている管理プログラム(ワクチンプログラムを含む)の再編成を行う必要があります。あまり考えていない農場も多くありますが、結構悩んでいる農場も見受けられます。
ポイント
①全てのワクチンは副作用の発現を持ってる事を踏まえる。
②サーコウイルスとストレスの関係は密接。
③実際には、使用するサーコウイルスワクチンの特徴を良く理解した後、同時期や、近い日齢で接種されてしまう他のワクチンや抗生物質、その前後期間で行う作業管理等に至るまで良く話し合い、なるべく副作用(人間にも、豚にも)が発生しない様にプログラムを組み合わせる。
今後危惧される課題
①新たな疾病の発生。(元々感染はしていて発生もあったが、目立たなかった疾病や症状)
例:大腸菌関連疾病(浮腫病を含む)、レンサ球菌感染症、グレーサー病、パスツレラ感染症、コクシジウム感染症、サルモネラ感染症(特にコレラスイス )、クロストリジウム感染症、ローソニア感染症、コリネバクテリウム感染症、ヘモフィルス感染症、PRRS(PRDC)、マルベリーハート、関節炎症状、皮膚炎症状等。
糞尿処理の不具合。
例:豚の在庫の増加と飼料摂取量の増加による糞尿の増加と処理能力の悪化。地域環境と地域住民との関係悪化。
③人材の確保と作業能力の限界。
例:豚が死ななくなることによって、死亡していた時の搬出作業や、治療等の手間が無くなり、作業的には楽にはなりますが、今後は生きている子豚をちゃんと生産過程に乗っけていくための管理技術とそれに伴う人材や設備が必要になります。
人は仕事が忙しくなると1つ1つの仕事を丁寧には行わず、何%か手を抜き始めてしまいます。従来何気なく行ってきた”作業”ではなく、本当の意味での”管理技術”が求められる様になって行きます。
④使用飼料の変化、飲水設備の変化。
例:事故率の改善とヒネ化率の改善で豚の在庫が増加すると、必然的に糞尿の処理量が多くなり、その処理能力が問われることになります。
糞処理設備や浄化槽設備の充実を図れば良いですが、そうは出来ない農場が多いのも現実です。そこで取られる方法として、使用する飼料を糞尿の発生量の少ない飼料へ変更することが多く見られますが、これは、各々の飼養条件や保有疾病等を良く考慮して工夫しないと、逆に成長が抑制されたり、疾病感染の助長を招いてしまう危険もあります。
⑤飼養密度の増加。
例:事故率の改善とヒネ化率の改善によって子豚舎、肥育舎の飼養頭数が増加すると、今までは発生が無かった(気が付かなかった)細かい疾病や症状が発生する様になります。一番気を付けたいのは肥育舎です。実際に今までこの業界を震撼させてきた疾病群の初期の感染源は肥育期になってる事が多いのです。(例えばオーエスキー)肥育舎の豚の飼養頭数が多くなればなるほど、初めは小さかった疾病感染の火種が気が付いたら大きな火事や震災にまで膨れあがってしまう危険性があります。今まで事故率が高かった農場は、逆に肥育舎での成績は良かったと言う農場が多く見られます。疾病は一群の飼養頭数×接触回数×空気密度×管理技術によって増幅して行きます。この事を良く踏まえて、肥育舎で新たな疾病の火種を作らないようにする意識が重要になると思います。
⑥管理技術の置き去り。 例:今まで何を行っても事故の改善が見えなかった農場が、サーコウイルスワクチンの接種を行っただけで、今まで死んでいた子豚が死ななくなったとしたら、完全に勘違いを起こしてしまう危険があります。
今までがんばって助言してきた周りの同業者、友人、業界関係者等との接点が途切れてしまい、極端な人は洗浄・消毒・乾燥といった基本の管理まで中止したり、給餌器や給水器の掃除や衛生も怠ったりしてしまっています。
マイコワクチンやヘモワクチン、薬剤や機能性資材(栄養剤、生菌剤、サプリメント等)に至る他の疾病対策の商品の使用もサーコウイルスワクチンの接種と同時に中止したりしてしまっています。
この手の農場は今さら何をいっても管理技術(お金の掛かる事、面倒な事等)には耳を貸さない傾向になってしまいます。
将来に向けた課題
サーコウイルスワクチンの接種によって効果が発現出来た農場では、その各々の農場で持っていた疾病感染レベルに必ず変化が生じて来ます。
ただし、その変化はかなり低いレベルから現われる事になりますので、『①発見出来ない農場』、『②発見しても無視してしまう農場』、『③発見後から対応を組む農場』、『④最初から発生の危惧を予期して、発生前から取り組みを行う農場』に分かれてしまう可能性があります。
サーコウイルスワクチンによって効果の発現があった農場の中でも、上記に分けた内の③、④(特に④)を行おうとしている農場は少ないのが現状だと思います。
出来れば読者の皆さんの農場では③、④の意識を持って貰えるとうれしいです。
サーコウイルスワクチンについては今後も徹底した調査が必要と感じています。今後サーコウイルスワクチン接種群が冬季の厳しい季節を迎えますので、これらの状況も良く見極めて、生産者に役立つアドバイスを今後も行っていきたいと思います。
