性行為の翌日に喉が痛いと感じた場合、「風邪をひいたのか、性病に罹ってしまったのかどっちか分からない…」と悩む方も多いかと思います。
喉の痛みはオーラルセックスなどを介して感染する性病(性感染症)が原因となるケースもあります。
厚生労働省や国立感染症研究所の報告でも、オーラルセックスによる咽頭感染が確認されています。
特に性感染症である咽頭クラミジアや咽頭淋病などは、初期症状が風邪と非常に似ており、自覚症状が乏しいまま進行してしまうことも少なくありません。
症状が続く場合は「風邪だから大丈夫」と自己判断せず、性病の可能性も踏まえて検査・受診を検討することが大切です。
この記事では、性行為後に喉が痛い時に疑うべき病気や性病と風邪症状の違いなどを解説していきます。
性行為後に喉が痛いのは風邪?性病?
性行為をした翌日や数日後に「喉が痛い」と感じると、多くの方は「風邪をひいたのかな、相手から移されたのかな?」と考えがちです。
性病の知識が乏しい方だとなおさら、風邪薬を飲んで放っておけば治るかも?と安易に考えてしまうこともあります。
しかし注意しなくてはならないのが、風邪と同じような症状を示す性病(性感染症)も存在するということ。
冒頭でもお伝えした通り、オーラルセックスを介して感染する咽頭クラミジアや咽頭淋病などは、風邪の症状と見分けがつきにくいのが特徴です。
風邪であれば自然に治ることも多いですが、性病は放置すると慢性化や他の部位への感染拡大につながるため、、症状が軽度であっても検査をして治療することが重要です。
風邪と性病を判断する症状の違い
風邪と性病の症状はよく似ており、自己判断が難しいです。
一般的に注目されやすいのは「症状がどのくらい続くか」「抗生物質で改善するか」という点です。
風邪は通常1週間前後で自然に軽快し、抗生物質は効きません。一方で、多くの細菌性の性感染症は治療をしない限り長引き、抗生物質が有効という特徴があります。
しかし、例外も存在します。
例えばHIVの急性期症状は、ウイルスによるものであるため抗生物質は効かず、しかも数週間以内に自然に治まってしまいます。同様に、ヘルペスもウイルス感染であるため抗生物質は無効です。
つまり、「症状の期間」と「薬の効き目」だけで風邪と性病を完全に見分けることはできません。
風邪と性病の判断に重要なのは、症状の持続期間や薬の反応だけではなく、発疹やリンパ節の腫れなどの特異的症状、そして性交渉歴といった要因を総合的に考えることです。
喉の痛みが長引く場合や、心当たりのある行為があった場合は自己判断に頼らず、必ず医療機関で検査を受けることが望ましいでしょう。
項目 | 風邪 | 性病(咽頭クラミジア・咽頭淋病・梅毒・ヘルペス・HIVなど) |
---|---|---|
発症時期 | ウイルス感染後1〜3日で発症することが多い | 性行為から数日〜数週間後に発症するケースがある |
喉の痛み | 数日〜1週間で軽快しやすい | 軽度の違和感から強い痛みまで幅広く、数週間以上続くこともある |
発熱 | 37〜38℃程度(微熱〜高熱)を伴うことが多い | 無症状〜高熱まで幅広い。梅毒・HIV急性期では発熱を伴うこともある |
咳・鼻水 | よく見られる(風邪の主要症状) | ほとんど見られない。出ても軽度 |
喉の赤み・腫れ | よく見られる(急性咽頭炎など) | 性病でも見られる。淋病は強い腫れ、クラミジアは軽度の赤みが多い |
膿の付着 | まれ。溶連菌感染症など一部で見られる | 咽頭淋病では膿の付着が典型的 |
自然治癒 | 数日〜1週間で改善しやすい | 細菌性性病(淋病・クラミジアなど)は自然治癒しにくい。ウイルス性(HIV・ヘルペス)は抗生物質が無効で、自然軽快しても再発や進行のリスクあり |
進行 | 放置しても通常は自然に改善する | 放置すると慢性化・進行し、合併症や全身感染の原因となる |
風邪は通常、鼻水や咳など呼吸器症状を伴うことが多く、時間の経過とともに改善するケースが一般的です。一方、性病では喉のみに症状が出ることが多く、風邪のような鼻水や咳は出にくい傾向にあります。
また、風邪は免疫によって自然に治癒するケースが多いのに対し、性病は自然治癒が難しく、抗菌薬などの適切な治療を受けなければ長期化・重症化するリスクがあります。
風邪の定義とは?
一般的に「せき・鼻水・喉の痛みが同時に、同じ程度に現れている状態」が風邪だとされます。さらに、この3つの症状のうちどれが最も強いかによって診断名が変わってきます。
- せきが強い → 急性気管支炎
- 鼻水が強い → 急性副鼻腔炎
- 喉の痛みが強い → 急性咽頭炎
つまり、せき・鼻水・喉の痛みがバランスよくそろっているときは、性病よりも風邪の可能性が高いと考えられるでしょう。
性病では起きにくい症状
咽頭クラミジアや咽頭淋病(淋菌感染症)では、せきや鼻水が出ることは非常にまれです。
多くの場合、喉の違和感や軽い痛みから始まり、風邪のように鼻水や強いせきが同時に出るケースは少ないのが特徴です。
溶連菌感染症との違い
喉の痛みが強いタイプの風邪、すなわち急性咽頭炎の一部に「溶連菌感染症」があります。この場合、以下の特徴が組み合わさって出現します。
- 38℃以上の高熱
- せきが出ない
- 前頸部(首の前側)のリンパ節が腫れて痛む
- 扁桃腺に白い膿が付着する
これら4つをすべて満たす場合は、性病よりも溶連菌感染症の可能性が高まります。
【喉の症状別】疑いのある性病
性病が喉に感染した場合、症状は一様ではなく、痛み・赤み・できものなど多様な形で現れます。
喉の痛み(咽頭痛)
性病によって喉に現れる症状の中でも代表的なのが「咽頭痛(喉の痛み)」です。ところが、その痛み方や強さには大きな幅があり、風邪や咽頭炎と間違いやすいのも特徴です。
性病ごとに見られる喉の痛みの度合いや特徴を解説していきます。
比較的軽度の痛み・違和感にとどまることが多い性病
軽度の咽頭痛は、風邪をひいたときの「イガイガ」「ヒリヒリ」に似ており、自覚しづらいことも少なくありません。以下の性病が代表的です。
■咽頭クラミジア
咽頭に感染しても無症状のケースが多いですが、発症すると「軽い喉のイガイガ感」や「何かが引っかかる感じ」が出ることがあります。痛みは強くないため、放置されやすいのが特徴です。
■咽頭淋病(淋菌感染症)
咽頭に淋菌が感染すると、軽い痛みから始まり、のちに腫れや膿が見られることもあります。ただし初期は「かすかに違和感がある」程度で済む場合も多く、風邪と間違えられがちです。
■HIV(急性期)
感染初期にみられるインフルエンザ様症状の一部として、軽い喉の痛みが出ることがあります。ただし「長く続く強い痛み」ではなく、数日~1週間程度で治まることが多いです。
強い咽頭痛を伴うことがある性病
「飲み込むのが辛い」「ズキズキして声を出すのも痛い」など、日常生活に支障をきたすほどの強い痛みが起きるケースもあります。
■咽頭ヘルペス
最も強い咽頭痛を引き起こしやすい性病の一つです。口腔内や喉の奥に水ぶくれや潰瘍ができるため、「鋭い痛み」「ズキズキした痛み」が続きます。特に食事や飲み込み時に激しく痛むのが特徴です。
■梅毒(第2期以降)
咽頭部に潰瘍や発疹ができる場合があり、その際には強い痛みを伴うことがあります。風邪や扁桃炎では見られない独特の粘膜の変化を伴う点が特徴的です。
喉の赤みや腫れ
■軽度の腫れ
咽頭クラミジアでは、軽度の赤みや腫れが長引くことがあります。大きな膿は出ないため、通常の咽頭炎と見分けがつきにくいです。
■強い腫れと膿
咽頭淋病では扁桃腺が赤く腫れ、表面に白い膿が付着することもあります。強い炎症反応を起こしやすく、喉の奥が見た目にも腫れ上がるのが特徴です。
喉のできもの
梅毒やヘルペスでは喉の粘膜に潰瘍や水ぶくれのような病変が出ることがあります。風邪ではこのような「できもの」ができることは少ないため、性病を疑うサインです。
■しこりや潰瘍
梅毒の初期には、喉や口腔内に硬いしこり(硬性下疳)が出現することがあります。
■水ぶくれや潰瘍
咽頭ヘルペスでは水ぶくれ状の発疹や痛みを伴う潰瘍が出現します。自然治癒は難しく、放置すると悪化や再発を繰り返すため、早期の受診が不可欠です。
咽頭痛から性病を疑う難しさ
軽度の咽頭痛は風邪や扁桃炎と非常に似ているため、「喉の痛みだけで性病を疑う」のは困難です。
実際には、
- パートナーが性病に感染している
- 自分に下半身の性病症状(排尿時痛、分泌物など)がある
- 性交渉の後から喉の違和感が続いている
といった状況が「性病を疑うきっかけ」になることが多いです。
咽頭痛が続く場合、または通常の風邪薬で改善が見られない場合は、一般内科だけでなく性病科や耳鼻咽喉科での受診も検討すべきでしょう。
【喉に症状が出る性病一覧】潜伏期間や何科に受診すれば良いのか
喉に症状が出る性感染症はいくつもあります。それぞれ潜伏期間や症状の特徴、治療法が異なるため、受診する診療科選びも重要です。
一般的な内科や耳鼻咽喉科では性病を想定しないことが多く、正確な検査ができない場合があります。
診療科 | 対応可能な性病 |
---|---|
泌尿器科(男性) / 婦人科(女性) | クラミジア、淋病など |
皮膚科(性感染症外来あり) | 梅毒、ヘルペスなど |
性病科/性感染症専門クリニック | 性病全般に対応(咽頭ぬぐい液PCR検査など可能) |
咽頭クラミジアや咽頭淋病は「咽頭ぬぐい液のPCR検査」で診断します。
HIVが心配な場合は以下の検査先がありますので、自身の通いやすい場所で検査してもらいましょう。
- 感染症内科
- HIV専門外来(エイズ拠点病院)
- 保健所(匿名・無料検査あり)

咽頭クラミジア
クラミジア・トラコマティスという細菌が原因です。潜伏期間は1〜3週間程度で、喉の痛みや違和感が主な症状です。
自覚症状が乏しいことも多く、知らないうちに感染しているケースがあります。
治療は抗生物質(マクロライド系やテトラサイクリン系)で行います。感染経路は、オーラルセックスによって性器から喉へと感染するケースが最も多く、逆に喉から性器へ感染を広げる可能性もあります。
項目 | 内容 |
---|---|
症状 | 無症状が多いが、喉の痛みや違和感が持続する。 |
潜伏期間 | 1〜3週間程度。 |
放置リスク | 性器や眼にも感染を広げる恐れがある。 |
治療 | マクロライド系やテトラサイクリン系抗菌薬を内服。 |
咽頭淋病(淋菌感染症)
淋菌が原因で、潜伏期間は2〜7日ほどです。
強い咽頭痛、喉の赤み、白い膿の付着などが特徴で、風邪と間違えやすいでしょう。
抗生物質が効きにくい耐性菌も増えており、専門医の診断が欠かせません。感染はオーラルセックスを通じて起こり、性器から喉へ、喉から性器へと相互に感染する可能性があります。
項目 | 内容 |
---|---|
症状 | 強い咽頭痛、膿性分泌物、発熱。 |
潜伏期間 | 2〜7日。 |
放置リスク | 敗血症、関節炎など全身合併症を引き起こす可能性。 |
治療 | セフトリアキソン点滴が第一選択。耐性菌が問題となっており、自己判断での治療は危険。 |
梅毒
梅毒トレポネーマという細菌が原因です。咽頭にしこりや潰瘍ができることがあります。
潜伏期間は10〜90日(平均3週間)と長めで、発疹など全身症状に進行する前に早期発見が大切です。感染経路は挿入性交だけでなく、オーラルセックスやディープキスなどでも、病変部分が接触すると感染することがあります。
項目 | 内容 |
---|---|
症状 | 初期は喉に硬いしこり(硬性下疳)が出る。進行すると発疹や神経症状を伴う。 |
潜伏期間 | 3週間〜3か月。 |
放置リスク | 全身に広がり、神経梅毒や心血管梅毒を引き起こす。 |
治療 | ペニシリン系抗菌薬が有効。 |



咽頭ヘルペス
単純ヘルペスウイルスが原因で、潜伏期間は2〜10日ほどです。
喉に小さな水ぶくれや潰瘍ができ、強い痛みを伴うことがあります。
繰り返し再発することもあり、症状が出たら抗ウイルス薬による治療が必要です。オーラルセックスによって性器ヘルペスが喉に感染したり、口唇ヘルペスを持つ人とのキスによって感染する場合もあります。
項目 | 内容 |
---|---|
症状 | 口腔や咽頭に水ぶくれ、強い痛み。再発を繰り返すことがある。 |
潜伏期間 | 2〜10日。 |
放置リスク | 再発を繰り返し生活の質を下げる。 |
治療 | 抗ウイルス薬(アシクロビルなど)の内服または点滴。 |
HIV/エイズ
HIV感染の初期(急性期)には、風邪やインフルエンザに似た症状が出ることがあります。喉の痛み、発熱、リンパの腫れが代表的です。潜伏期間は数週間〜数年と幅広く、早期発見にはHIV抗体検査が欠かせません。
感染は、挿入性交(膣・肛門)だけでなく、オーラルセックスでも粘膜や口腔内に傷がある場合は感染のリスクが存在します。
血液を介しての感染も起こるため、他の性感染症に比べて感染ルートが多いのが特徴です。
症状:感染初期にはインフルエンザ様の発熱や喉の痛みが出ることがある。その後は無症状期を経て免疫不全が進行する。
項目 | 内容 |
---|---|
潜伏期間 | 数週間で急性期症状、その後数年〜十数年で発症。 |
検査 | 性行為から4週間以降に抗原抗体検査が推奨される。 |
受診先 | 保健所の無料・匿名検査、感染症内科、HIV専門外来。 |
参考:エイズ予防情報ネット

その他の感染症
咽頭にはマイコプラズマ、ウイルス性咽頭炎なども感染します。これらは性病ではありませんが、性行為後のタイミングと重なることで誤解されやすいため注意が必要です。
症状が続く場合は、性病だけではなく幅広い検査を行うクリニックを受診することが安心です。
喉の痛みがあり、性病か風邪かわからない場合は?
喉の痛みが続くと「ただの風邪かな?」と思いがちですが、性病による咽頭感染の可能性も否定はできません。
特に、風邪と性病の症状は一部似ているため、自己判断だけで見極めるのは難しいのが現実です。
しかし、いきなり病院に行くのは恥ずかしい、時間が取れない、周囲に知られたくないと感じる方も多いでしょう。
そんなときに役立つのが、郵送型の性病検査キットです。
自宅で簡単に検体を採取でき、匿名性が高く、誰にも知られずに検査を受けられます。結果は数日で確認できるので、早い段階での安心につながります。


性行為の翌日に喉が痛い時のよくある質問
性器を舐めたら性病に感染する?
性器を舐めるなどの、オーラルセックスでも性病は感染します。クラミジアや淋病、梅毒、ヘルペス、HIVはいずれも口から感染する可能性があります。
性器と同じように咽頭も粘膜であり、細菌やウイルスの侵入経路となるため感染します。
性行為の翌日に喉が痛い時は性行為は控えた方がいい?
検査を受けて陰性が確認されるまでは性行為を控えるのが望ましいでしょう。もし感染していた場合、パートナーへ感染を広げてしまう恐れがあります。
症状が落ち着くまでは性行為を控え、医療機関での検査を受けることが望ましいでしょう。
キスで性病はうつる?
キスによって感染する可能性のある性病はいくつか存在します。
代表的なのは梅毒や咽頭クラミジア・咽頭淋病、そして口唇ヘルペスです。これらは唾液や粘膜の接触を通じて感染することがあります。
特に口内炎や出血がある場合はリスクが高まります。
一方で、HIVは通常のキスでは感染しないとされています。ただし、出血を伴う深いキスでは理論上のリスクが否定できません。
「キスだけだから大丈夫」とは限らないため、喉の違和感や痛みなどが続く場合には早めに検査することがおすすめです。

まとめ
性行為の翌日に喉が痛いという症状は、風邪であることもありますが、咽頭クラミジアや咽頭淋病、梅毒、咽頭ヘルペス、HIVなどの性感染症が原因である可能性も否定できません。特にオーラルセックスを行った直後に症状が出た場合は注意が必要です。
性感染症は早期発見・早期治療が重要です。喉の痛みや違和感が続く場合は自己判断せず、専門の医療機関で検査を受けることを強くおすすめします。
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