ヒスタミン中毒

ヒスタミン食中毒とは、鮮度が低下したことによりヒスタミンが多く蓄積された魚介類やその加工品を喫食した直後に発生するアレルギー様食中毒で、その多くは集団給食施設や飲食店などで発生しています。原因物質がヒスタミン(化学物質)であるため、化学性食中毒に分類されています。しかし実際には、ヒスタミンは魚肉中に多く含まれているアミノ酸の一種である遊離ヒスチジンをヒスチジン脱炭酸酵素を有する微生物によって生成されます。このような生成過程からみると、ヒスタミン食中毒は細菌性食中毒に分類されるべきものと考えてもよいでしょう。

ヒスタミン産生菌には中温域で発育する菌のほかに、10℃以下でも発育する低温性菌が存在するため、低温で流通している魚介類・加工品においても食品衛生上重要視すべき菌と考えたほうがよいでしょう。
ヒスタミンによる食中毒はほとんどが魚介類によるものです。イワシ、マグロ、カジキ、ブリ、アジ等一般にヒスチジンを多く含む赤身の魚やその加工品が原因となります。摂食直後~1時間ぐらいで、顔面の紅潮、発疹、頭痛、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢等の症状をおこします。症状は比較的軽く、通常6~10時間で回復しますが、重症の場合には呼吸困難や意識不明になることもあるといわれています。諸外国に比べて、魚を食する習慣のある日本では、ヒスタミン食中毒を起こす機会は多いと考えられますが、食品中のヒスタミンは法規制されていません。米国では水産物に対しヒスタミンの管理が義務付けられています。

ヒスタミンは熱で分解されにくいため、加熱処理により菌は死滅したとしても、一度産生、蓄積されたヒスタミンを取り除くことは困難です。また、腐敗により産生されるアンモニアなどと違い、外観の変化や悪臭を伴わないため、食品を喫食する前に汚染を感知し回避することは非常に困難です。 
それが近年の不正表示事件がきっかけとなり、見直しされたばかりです。改正のポイントは「消費者が不利益を被らないように、消費者に向けたきちんとした情報の提示」です。そこで「賞味期限」に関しては、まず語句が統一され(食品衛生法では、品質保持期限という用語であった)、定義も「定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいう。ただし、当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるものとする。」と定められました。これは供給者の需要者に対する保証期間と捉えられ、供給者が自由に定められます。ただし、期限を定める際には品質を保つ根拠を科学的に検証し、それに準じて定める事が必要とされています。そこで供給者が科学的に検証された期限を逸して、それ以上の賞味期限を表示した場合なら法的に問題があることになります。

予防には食品の保全に注意を払うことが最も大切です。特に夏の時期、買った魚はその日のうちに食べ、仮に残った場合でも冷蔵庫内での長期保存を避け、速やかに冷凍するよう心がけてください。

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レジオネラ菌検査ノロウイルス検査食品アレルギー・アレルゲン検査

群馬県食品自主衛生管理認証制度②

食の安全性確保の取組みとして「群馬県食品自主衛生管理認証制度」を皆様に紹介しました。その括りにソフト面を重点においた制度なので、より多くの企業にチャレンジして頂き、より多くの企業に認証して頂きたいと記載しましたが、弊社もこの制度に「群馬県指定審査機関第1号」として群馬県より2月25日付で指定を受け、審査機関として関わらせて頂きます。

制度の特徴や内容は以前にも簡単に紹介しましたが、対象施設が13施設(漬物製造施設、こんにゃく製造施設、めん類製造施設、そうざい製造施設、菓子製造施設、豆腐製造施設、飲食店(一般)、飲食店(弁当)、飲食店(旅館)、給食施設、食肉処理・食肉販売施設、魚介類販売施設及び乳類販売施設:順次拡大予定です)であり、認証取得のメリットとしてまず第一に食中毒事故の軽減が挙げられます。

群馬県食品自主衛生管理認証制度は、中小事業者が取り組みやすいように基準設定も設備等のハード面よりも規程や記録といったソフト面を重視していることが特徴ですから、HACCPと比較すると施設面や維持に関するコストは低コストとなります。また、民間審査機関の加入により、審査・認証を行う費用(料金は各審査機関が県に申請した額となります)も競争化により低減し、指導(審査機関のコンサルタントは可能です)といったサービス面でも充実すると思われます。

その他にも制度に関するコンサルタントを含め、県中小企業パワーアップ資金の融資対象となります。一昔前であれば、「衛生」を企業の売り出し文句として差別化を図るなどとは考えられませんでしたが、食の安全が揺らぎ、市場が低迷し、激安ブーム等により市場価格の底が見える最中では、絶好の「売り」になると思われます。

すでに東京都など周辺の自治体では、同じような制度が実施されており、東京都の制度はかなり普及していることから制度として成功しているのではないかと思われます。群馬県はその成功例を参考に制度が設置されましたので、認証を受ける食品関係業者にはかなりの期待が持てそうです。申請の申し込みは、弊社に直接連絡して頂ければ担当者が対応しますので、皆様からのご連絡を心からお待ち申し上げております。

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群馬県食品自主衛生管理認証制度①

群馬県は食の安全性確保の取組みとして「群馬県食品自主衛生管理認証制度」を創設しました。この制度は、食品関連施設が取り組んでいる自主的衛生管理を群馬県が指定した第三者機関が審査し、群馬県が定める基準を満たしている施設に認証し、公表するというものです。私もこの基準を設定するに当たり、「群馬県食品自主衛生管理認証制度基準設定専門委員会」のメンバーとして参加し、基準設定に取り組んでまいりました。

食品会社の衛生管理認証制度といえば、「総合衛生管理製造過程承認制度」(日本版HACCP)がありますが、この制度(食品衛生法において、製品の規格基準や製造における規格基準が定められた食品<乳・乳製品、食肉製品、容器包装詰加圧加熱殺菌食品、魚肉練り製品、清涼飲料水>を対象に承認する制度)とは異なり、県で定める管理運営基準の上乗せ基準(自主衛生管理認証の基準)を満たす施設の自主的な衛生管理の取組みを評価するもので、県内の多くの業種(漬物製造、こんにゃく製造、めん類製造、そうざい製造、菓子製造、豆腐製造、飲食店、給食施設、食肉処理、食肉販売、魚介類販売及び乳類販売施設)に対して対象範囲とされています。

そして、あくまで消費者の選択を促す制度である事が目的です。認証制度の受ける側と与える側という観点から考えると「バランス」という問題が制度内容のキーポイントとなります。衛生管理に関して「これを行えば絶対に・・・」という制度は世の中に存在しません。

事故確率の軽減対策は予防となりますが、どんなに追及しても事故の可能性が0%にはなりません。過去には承認施設が大きな食中毒事故を起こし、国の承認制度のあり方にまで問題とされたことがありました。その為、その事故以後の承認に関しては承認審査員達の審査も厳しくなり、承認制度自体も高い壁となったと耳にしています。

こうなると、数多くの施設がチャレンジすることは望めないし、承認を与える側も承認を与えた施設が事故を起こされると困った事態に陥る事が想定されれば、必然的に厳しくせざるを得なくなる事が想像されます。今回の制度は、多くの業種に範囲が広げられ、多くの施設に認証を受けて頂きたいと設定されています。多くの企業の衛生管理の取組みを評価し、県民に対して広くアピールする事で消費者の購買基準のひとつになることが、この制度の成功であると思います。その為にも、より多くの企業にチャレンジして頂き、より多くの企業に認証して頂きたいと望んでおります。

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手洗い及び手袋の重要性

効果的な手洗い方と手指に存在する細菌についてご説明させて頂きます。

まず、手指に生存している細菌には、通過細菌と常在細菌に大きく分けられます。通過細菌は、一般的には黄色ブドウ球菌や緑濃菌などの汚染菌にあたります。従業員の取扱によって引き起こされる食中毒の発生原因は、通過細菌によるものです。常在細菌は、表皮ブドウ球菌などで、感染防御として働くことが知られています。一方、免疫力の落ちた方の感染症の原因菌にもなりうるという報告もあります。

手洗い方法は、

①水で手をぬらし石けんをつける。

②指、腕を洗う。特に、指の間、指先をよく洗う(30秒程度)。

③石けんをよく洗い流す(20秒程度)。

④使い捨てペーパータオル等でふく(タオル等の共用はしないこと)。

⑤消毒用のアルコールをかけて手指によくすりこむ。

(①から③までの手順は2回以上実施する。)【大量調理施設衛生管理マニュアルより】

食品会社等で作業をされた方は、爪ブラシが使用されていないことに気がつきましたか?爪ブラシは、爪の間などの汚れをかき出すのに効果的です。一方、爪ブラシが原因で、食中毒が拡散したり、手荒れの原因になったりもしています。それは、爪ブラシの不衛生な共用や、硬いブラシにより皮膚を傷つけることにより生じています。そのため、爪ブラシを使用する場合は、衛生的に使用し、用途に応じた使用が必要です。

ある食品工場で手洗い講習を行い、上記手洗い後に、培地に直接接触される方法により、手指の細菌検査を行ったことがあります。結果は、手洗い前後、細菌数は変わりませんでした。これは、手洗いをすることにより、通過菌は除去できたが、主要な常在細菌を除去することは出来なかったためです。

食中毒には、食中毒菌が出す毒素等により起こるものと、細菌が増殖することによる食中毒があります。上記検査の結果から、常在細菌が食品に移行し、増殖し腐敗につながる可能性もあります。以上のことから、食中毒を効果的に防止するため(常在菌を食品に移行させない)には、手指の洗浄とともに、手袋を着用し作業することが重要となります。

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中国でまたメラミン混入

中国で製造されたアイスクリームなどの乳製品で、またもやメラミンが検出された。2008年のギョウザ事件から丸2年が経過する中での発覚である。
業者が原料として購入したミルク粉にメラミンが混入していたとの報道であるが、前回の事件でも原因究明がなされないままの状態が続いている。
中国製品は不安が残るが、2年前の事件を知ってか知らぬのか、中国食品の需要は徐々に回復しているとのことです。
デフレ、残留農薬、危険・・・・・・・・・・ではあるが、中国食品は「安い」・・・・考えさせられるナ~。

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先週の食中毒情報(厚労省発表)

1/18から1/24までにあった食中毒情報(厚労省発表)より

ノロウイルスに関する事例20件
カンピロバクターに関する事例4件
腸管出血性大腸菌に間する事例3件

まだまだノロウイルスの季節です。ウイルス疾患は元気になったと思っても体の中に潜伏していてしばらくは体外に排出されています。ゆっくりあせらずに。

周りの環境を変えるにはまず自分から変わってみましょう・・・
なんて簡単にはいきませんね

<星刻>

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消費者の選択

数年前に中国産ギョーザの農薬入り事件報道により、中国産食品の農薬分析依頼が相次いだ。一連の報道によって、中国産食品に対する不信感が招いた結果であると思われます。このように輸入食品に関しての問題は、報道がある度に関心が高まり、同時に消費者に対し不信感を募らせます。

しかし、どんなに不信感を抱いたところで、現状、わが国が中国を含めた諸外国に依存しないで食糧を賄うことは不可能です。農林水産省の調べでは、カロリーベースでわが国の食糧自給率は39%であり、群馬県の食糧自給率は34%と全国よりも下回っています。

つまり、食品の61%は輸入に頼っているわけで、どんなに輸入先の問題を取り上げたところで「もう明日から輸入しませんよ。」とは言えない事情にあります。また、輸入品食品の中でも落花生、ニンニク、キノコ類、蛤及びわかめ等はほとんどが中国産です。わが国に距離的に近く、資源が豊富な中国は当然ながらわが国にとっても依存度の高い国と言えます。

ここで一連の報道から情報を得ている消費者にとってはジレンマが生じるのでしょう。私が思うに、食品に対して国産信仰者の多いわが国では原材料に「国産○○」と表示されていると、それだけで安心に思う人が多いのではないでしょうか。

しかし、実際の国産原材料を使用した食材は数量的に非常に少ない。それにも関わらず、「安く入手したい」と思うのが消費者の更なる欲求でしょうが、食品全体からすると数量割合の少ない国産原材料は当然、価値が上がります。

そもそも、どんなに輸入品を敬遠しても消費者の安値を求めた結果が、労働賃金が日本よりも低い諸外国で加工し、輸入する結果になったといえます。逆に言えば、「安くて、国産○○だけを使用した食品」なんて都合のよい物は存在しないのです。そろそろ消費者も「水」や「医療」等で抱いている「安くて安心・安全」のようなわが国の印象を食品すべてに求めてはいけないのではないでしょうか?

今後の消費者の選択は、数少ない「国産○○」の食品を求めるならば、高い値で買えば良いし、安さを求めるならば、数量の多い輸入品を選べば良いのです。「安くて、数量の少ない国産○○のみ使用」のような無理な要求は、販売者を通してメーカーやその先の原材料供給者や農水産業者の経営をどんどん圧迫させてしまいます。これでは更に食糧自給率を減らす事を招き、消費者のジレンマは今以上に膨れ上がるのではないでしょうか?

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ISO 22000 について

ISO 22000 について
未だ後をたたない食中毒事故、異物混入事件や不正添加物の使用など食品業界において食品の安全管理の必要性が増大しています。HACCPの導入や各業界・団体や都道府県が薦めるHACCPを基本とした自主管理認定制度を取得などにより安全管理を高める企業も増えてきています。HACCPは、以前のできあがった最終製品の一部を検査することで安全性を確認していたものとは異なり、食品の原材料の入荷から製造・出荷にいたる生産工程に対して、微生物的・化学的・物理的な危害分析(Hazard Analysis)をし、その結果に基づき危害防止のための重要管理点(Critical Control Point)を設定することにより食品の安全を確保するシステムです。

しかしこのシステムは、生産工程のみの仕組みであり、経営者の関与や責任、全社での部門間の関係や製品の流通段階における対応など管理面での不明確な部分がありました。また、国際化に伴い原料や添加物などの輸入及び輸出の増大により食品の安全管理システムの国際的な整合化をとる必要性が高まってきました。

国際規格であるISO22000はこのような背景のもと誕生しました。ISO22000の特徴は、ISO9001(品質全体を対象とした国際規格)とHACCPを合わせた規格ではなく、HACCPを取り入れた食品安全のみを対象とした独立した規格です。食品安全への危害は、フードチェーンのどの過程でも生じる可能性があるため、適用範囲は、フードチェーンに属する組織(飼料生産者、一次生産者、食品製造者、輸送及び保管業者、下請負業者、機械・洗浄剤・添加物の生産業者やレストランなどのサービス提供者等)と範囲が非常に広がっています。

この規格は前提条件プログラム(PRPs)とHACCPによる食品安全の実施方法を中心として、この実現に必要な経営者の責任、資源の運用管理、システム全体の検証及び改善が規定されています。今なお世界中に蔓延しつつある鳥インフルエンザやそれに対する不認可ワクチンの使用、不正農薬使用や遺伝子組み換えなど科学の進歩とともに様々な食品への不安を増加させる事故・事件が相次いでいます。このような今後起こりうる未知なる事象や既存の不安材料に対してリスクの最小化や継続的・効果的に改善する一つの方法として検討してはいかがでしょうか。

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食品をより安全にするための5つの鍵

2006年に世界保健機関(WHO)が「Five Keys to Safer Food Manual(食品をより安全にするための5つの鍵マニュアル)」を出版しています。食品衛生の基本的な知識や行動を普及するために作られたものです。食品衛生知識の理解と行動ができないために発生する「食中毒」については、設備などが十分とは言えない発展途上国のみならず、本邦においても年々減少の傾向にあることはなく、日々の生活において非常に身近な問題のひとつです。そこで、上述の「5つの鍵」をベースに置いた「家庭で出来る食中毒予防の注意事項」を取り上げようと思います。

第1の鍵:清潔に保つ

「清潔に保つ」とは正しい手洗い・調理器具の洗浄消毒の実施、ねずみ、昆虫などを食材や調理場から守るということです。食中毒の原因となる微生物はそのままでは目に見えません。食材と場所、人を洗浄・消毒などによって、常に清潔に保つことが重要です。

第2の鍵:生の食品と加熱済み食品とを分ける

生の食品には、危険な微生物が含まれている可能性があり、調理中に他の食品へ移行する可能性があります。食材ごとに包丁、まな板を使い分けるなどが重要なポイントとなります。生肉に触れた手指から移行する可能性もあるので要注意です。

第3の鍵:よく加熱する

適切な加熱により、多くの微生物を死滅させることができます。加熱が必要な食品は十分に熱を加えて、微生物を死滅させることが重要です。

第4の鍵:安全な温度に保つ
食品が室温で保存されていると、微生物が急速に増える可能性があります。温かい食品は熱い状態を保ったまま、調理済みの食品や生鮮食品などは冷たい状態を保ったままで保存をするのが、微生物の増殖を防ぐポイントとなります。

第5の鍵:安全な水と原材料を使う

原材料として、新鮮で良質な食材を使用すること、生で果物、野菜を食べるときは良く洗うことが、リスクを減らすポイントです。

以上の5つの鍵は、非常にシンプルで様々な人種、世代に理解しやすい内容となっており、個々人のリスクを減らすのは、ちょっとした知識と行動にあるのが解ると思います。この「5つの鍵」が食品衛生について家族間などでの話し合いのきっかけとなれば幸いです。

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食品に関わる法とモラル

当社のように食品衛生のコンサルタントを行っていると、法とモラルの間でどのように応対して良いのか困ってしまう事があります。ご存知のように食品に関わる法律は数多く、その指揮する省庁も厚生労働省や農林水産省等と分かれています。

最近は食品にまつわる事件が増加し、法律の見直しがされています。食品に対する消費者の関心の高まりは良い傾向にあると思っていましたが、法的な問題とモラル的問題をごちゃ混ぜにしている報道は視聴した人に対して火に油を注いでいるようで本質的な問題が浮き上がりにくくなっている悪い傾向にあると思います。
食品問題は視聴者がすべて被害になりうる訳で、企業に対しての制裁的な報道だけでなく問題の本質もきちんと報道しないと視聴者に誤解も多々生じるのではないかと思いました。世間を騒がした老舗菓子メーカーにおけるシュークリームの消費期限切れ原材料使用問題がまさにそれです。

賞味期限を含めた食品の表示に関しては、「食品衛生法」や「JAS法:農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」や「景品表示法」や「計量法」等の多くの法律が関わっており、それぞれの法律では最近まで整合性が取れておらず、用語や定義が統一されていませんでした。 
それが近年の不正表示事件がきっかけとなり、見直しされたばかりです。改正のポイントは「消費者が不利益を被らないように、消費者に向けたきちんとした情報の提示」です。そこで「賞味期限」に関しては、まず語句が統一され(食品衛生法では、品質保持期限という用語であった)、定義も「定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいう。ただし、当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるものとする。」と定められました。これは供給者の需要者に対する保証期間と捉えられ、供給者が自由に定められます。ただし、期限を定める際には品質を保つ根拠を科学的に検証し、それに準じて定める事が必要とされています。そこで供給者が科学的に検証された期限を逸して、それ以上の賞味期限を表示した場合なら法的に問題があることになります。

消費期限切れ原材料使用事件に関してはこれに該当するのだと思います。しかし、期限切れの原材料を製造側で使用しても問題がないと判断し、それを使用した加工品の賞味期限を科学的に検証して表示した際には法的に問題があると言えるのか?というと、どうなのでしょう。現行の法的な解釈だけではそこが難解です。
おそらく法的には問題がないと思えるからです。法とモラルのごちゃ混ぜ報道に関しては法的に問題がなくても、モラル的に問題とされる行為に当たるとすれば、使用する事は問題となると決定付けられました。そうすれば定義にあるような期限が切れても明らかに何の問題もない食品の存在は、モラル的に判断すると問題ある食品となります。モラルで判断という基準は何か釈然としない感があります。このようなケース、判断基準はやっぱり法的な根拠があったほうがベターだと思います。今後、食品に関する法律は、もっと解りやすく現代に即した実用的な法律にすべきではないのでしょうか?

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