1月に入り寒さも厳しい季節となりました。豚は汗腺の発達が悪く、呼吸と皮膚から水分を蒸発させて放熱します。豚の熱放出は、約20%が床への熱伝導、約40%が空中への放出であるといわれています。寒い時期に熱の放出を防ぐ対策がされないと、体熱維持のために飼料効率が悪くなるので、すきま風の防止や断熱など寒さ対策をしっかり行い、温湿度管理を徹底しましょう。
今後の養豚管理について。‐HACCP取り組み前の準備‐
HACCP(ハセップ)とは、 Hazard(危害)Analysis(分析)Critical(重要)Control(管理)Point(点)の頭文字をとった略称で、わが国では危害分析重要管理点と訳されています。近年の“食”に対する一連の事件や報道からも注目されているシステムで、養豚業界でも近い将来には重要な位置を占めるようになってくると思われます。
最近は各地域でハセップの講習会が盛んに行われており、講習を受けられた生産者も多いのではないかと思います。今回は養豚生産において重要になる明確、明瞭、安心、安全な食の生産と、それらをいつでも行える心と現場の準備について考えていきたいと思います。
HACCPの起源と目的
1960年代に米国が行なった月面探索を目的とするアポロ計画を進める中で、宇宙食の安全性の確保のために開発。食の安全性を保証する目的で、食品自体の安全性を確保するために行なう衛生管理方式。
HACCPのシステム
食品の生産段階から最終製品までの全工程において、①危害の原因となる原材料又は工程を特定し(危害分析HA)、②危害の発生を防止するための管理基準を設定し(重要管理点CCP)、③手続きに従って重要管理点の監視と記録を行なうことによって危害の発生を防止し、④管理手続きの厳守状況を確認し、食品の安全性を確保するという一連のシステムで形成。
トレーサビリティーとHACCP
トレーサビリティー⇒生産履歴 輸送履歴 加工履歴 輸送履歴 陳列履歴⇒安心。
HACCP⇒生産管理.検査 輸送管理 加工管理.検査 輸送管理 陳列管理.検査⇒安全。
今後の健康管理、疾病対策の考え方
今までは疾病発生後の治療(対処療法)に追われていましたが、これからは疾病を発生させない事前の対応(治療回数の減少、敵を作らない予防衛生管理)が重要。
健康管理、疾病対策の失敗と考え方
失敗例①薬剤:無目的、無考察、多量、多数の薬剤の使用。
失敗例②設備:畜舎構造と設備への不満、言い訳。補修や設備改善の不備。
失敗例③人材:上司、部下、同僚等への愚痴、不平、不満。
失敗例④飼料:飼料内容の未確認。摂取状況の未確認。取り扱いの不備。飼料からの疾病感染。
失敗例⑤飲水:摂取状況の未確認。高圧、低圧による不備。水質検査の未実施。飲水からの疾病感染。
失敗例⑥種豚:種豚の能力(長所、短所)を正確に把握していない。初回交配までの未経産管理を重要視していない。更新、淘汰のバランスが乱れている。
失敗例⑦雄豚:導入先が不規則。生後5~6ヶ月齢頃の導入ではなく、いきなり8ヶ月齢を超える大きさの導入が頻繁。自家更新による劣性遺伝。雄豚への駆虫、疾病対策が行われていない。
実践する健康管理、疾病対策(順不同)
①清潔な飼養環境の提供。(塵埃の汚染を軽減し、適度な湿度を保つ)
例えば種豚舎⇒母豚は全過程の80%近くを種豚舎で過ごす。この時期を分娩舎なみの衛生レベルを保つことが出来れば種豚能力の安定に繋がる。今現在の疾病はほとんどが母子感染で成立。
②過換気(過度の換気量)の改善。
特に子豚舎。導入直後の多すぎる換気量(急な稼働、急な風当たり、乾燥、低温状態等)、この時期は湿度も基準にして管理する事が重要。
③酸素供給量(新鮮空気)の改善。
特に肥育舎。呼吸量が多くなり、食欲が増して増体が加速する時期なのに、十分な量の良い空気が提供されておらず、飼料要求率の悪化、出荷遅延等に繋がる。
④塵埃(飼料ホコリ、糞塵等)汚染の軽減。
病原菌や病原ウイルスは、そのまま剥き出しで存在しているのではなく、媒体となる塵埃(飼料ホコリ、糞塵等)中に多量に存在。
⑤カビ毒への対応。
カビ毒による、繁殖障害、下痢症状、皮膚炎症状、関節炎、股開き等は増加傾向。
⑥飼料管理。
給餌器の種類と数の選択、給餌場所、給餌状況、腐敗等のチェック。
⑦飲水管理。
給水器の種類と数の選択、給水場所、給水状況のチェック、水質検査の実施。
⑧光線管理。
光線管理は、繁殖成績、食欲、日々の管理作業等に対して重要。
⑨ボディコンディション管理。
適正なボディコンを持った母豚は、手間の掛からない、安定した繁殖成績を農場にもたらしてくれる存在。
⑩豚に掛かるストレスの改善。
人や豚に与えている無駄な“ストレス”を如何に少なく出来るかが重要。
⑪適正な薬剤プログラムの選定。
費用対効果の選定。コンプライアンス(法令順守)を厳守した使用。
⑫管理・作業の日々の確認。
“見る”から“観る”への意識改革。常に目的を持ち、疑問に思い、知恵を働かせる事が重要。
食品検査|食品分析|残留農薬|畜産|豚病気|鶏病気|牛病気
レジオネラ菌検査|ノロウイルス検査|食品アレルギー・アレルゲン検査
飼料分析|肥料分析|検便検査|PCV2・サーコウイルス|PRRSウイルス
yuuichi-kikuchi
ちょっとした勘違い。-駆虫プログラムの注意点-
近年は昔と異なって衛生状態が良くなったこともあり、各農場で皮膚炎症を起こしている種豚や子豚は見られなくなりましたが、近頃ちらほらですがまた発生が目立って来ているように感じます。
原因としては飼料の栄養バランスの乱れや、炎症などが起こりやすい品種の存在、妊娠期間の清掃不備、近年の異常気象による乾燥環境などがあげられますが、
意外に駆虫対応プログラムの勘違いや失敗が原因になっていることも考えられます。
今回は駆虫プログラムを的確に実施していると安心していた農場の一例を基に、実際に起こった外部寄生虫汚染(疥癬)と内部寄生虫汚染(回虫)について、その発生原因と対応について考えていきたいと思います。
外部寄生虫汚染(疥癬)が発生した農場の概要
①400頭一貫経営の農場、飼養品種はLW、外部導入システム。
②イベルメクチン製剤(注射薬)を使用。
③種豚舎、分娩舎の衛生状態には特に問題が見られない。
外部寄生虫汚染(疥癬)の発生原因として考えられること
①イベルメクチン製剤(注射薬)の注射量不足。体重1kg当たり0.03mlの接種量が必要だが、飼養している種豚の体格が良いのにも関わらず、1回の接種量が5ml/頭になっていた。
②雄豚への接種が行なわれていなかった。
③導入豚(♂、♀)への接種が行なわれていなかった。
外部寄生虫汚染(疥癬)の対応として行ったこと
①イベルメクチン製剤(注射薬)の注射量の再考。
導入時:4ml/頭。初産母豚:6~7ml/頭。経産母豚:7~8ml/頭。雄豚:8~9ml/頭。※あくまでも対象豚の大きさ(体重)から換算することが必要。
②雄豚への接種を実施。導入時に1回接種、その後は淘汰するまで年間2回以上の接種。
③導入豚(♂、♀)への接種を実施。導入後早い時期に1回接種。
内部寄生虫(回虫)が発生した農場
①300頭一貫経営の農場、飼養品種はLW、外部導入システム。
②イベルメクチン製剤(プレミックス)を使用。
③種豚舎、分娩舎の衛生状態には特に問題が見られない。
内部寄生虫汚染(回虫)の発生原因として考えられること
①イベルメクチン製剤(プレミックス)の投薬期間の不備。分娩舎入舎時(分娩予定の3~5日前平均で入舎)での1回投薬法で実施していた。
②雄豚への実施がされていなかった。
③導入豚(♂、♀)への実施がされていなかった。
内部寄生虫汚染(回虫)の対応として行ったこと
①イベルメクチン製剤(プレミックス)の使用プログラムの再考。
導入時:導入後早い時期に7日間のトップドレスにて投薬。
母豚:分娩4週前~3週前の7日間、トップドレスにて投薬。又、非生産母豚の存在
があるので、11月頃の年1回で7日間のみ、種豚群全体にトップドレスによる投薬を追加実施。
雄豚:1回7日間で年間2回以上、トップドレスにて投薬。
②種豚群のプログラムが一順する間、子豚へのイベルメクチン製剤(注射薬)を使用した防除プログラムを実施。※離乳時頃に全頭接種。
総括
外部寄生虫汚染(疥癬)が発生した農場や、内部寄生虫汚染(回虫)が発生した農場において、今回提示した対応を行って貰ったところ、どちらの農場でも顕著に改善が認められました。今回のようなちょっとした勘違いは、折角使用している薬剤自体の無駄にも繋がり、“費用対効果”が薄れてしまいます。今後はこのような勘違いが起こらないように、さらなる確認と説明を行っていきたいと思います。
食品検査|食品分析|残留農薬|畜産|豚病気|鶏病気|牛病気
レジオネラ菌検査|ノロウイルス検査|食品アレルギー・アレルゲン検査
飼料分析|肥料分析|検便検査|PCV2・サーコウイルス|PRRSウイルス
yuuichi-kikuchi
豚丹毒
群馬県内での豚丹毒の発生は2008年に急増し、と畜場での心内膜炎型の摘発増加と強毒株による敗血症型の流行がみられました。豚丹毒の原因菌は、豚以外の健康な動物にも感染し、自然界にも広く分布しています。健康な豚の扁桃、胆嚢、腸管、皮膚などからも分離されることがありますので、ワクチン接種の効果を高めるため、日常の良好な飼養管理と衛生管理を徹底し、発生予防に努めましょう。豚丹毒の治療にはペニシリン系薬剤の投与が有効ですが、投与量は通常の10倍量が必要とされているので用量に注意が必要です。また、豚丹毒を疑うような突然死した豚は病性鑑定を受けるようにしましょう。斃死豚は速やかに豚舎から運び出し、集積場は野生動物が侵入しないような対策をとりましょう。集積場や豚舎の周囲に石灰を散布することも侵入防止に効果的です。
農水副大臣
あんまり、副大臣について気にしたことがないのですが、最近はよく耳にするようになりました。
農林水産副大臣 山田正彦さん。
わたし初めて副大臣のブログとか拝見しちゃいました。
戸別保障制度について意見を述べられている動画が掲載されていたり、とても参考になりました。
でも、一番親しみを覚えたのは、なんと副大臣は以前に養豚業をしていたとの事!!
これには、わたしの周りの養豚家さん達も同意見みたいです。
生産現場を理解した方が農業政策に携わっている事はうれしいことです。
先週以下の記事を目にしました。
豚価低迷で経営難に陥っている養豚農家への追加支援策を検討していた農水省は15日、地域肉豚(肉豚価格差補てん緊急支援特別対策事業)を補完する形で、枝肉1kg当たり20円(1頭当たり約1,500円)を上限とする緊急支援対策の実施を発表した。追加支援策は、肉豚の省令価格(肉豚生産における物財費相当)が440円を下回った場合、その差額の2分の1相当を補てんする仕組み。来年1~3月に出荷される分が対象で、農畜産業振興機構を通じて毎月支払われる予定。生産者の負担は全く無く、所要額は35億円が見込まれている。
生産現場は厳しい状況です。
一刻も早く畜産業界に「光」が欲しいです。
ヤマダ
寄生虫のたいさく。
近年は昔と異なって衛生状態が良くなったこともあり、各農場で皮膚炎症を起こしている種豚や子豚は見られなくなりましたが、近頃ちらほらですがまた発生が目立って来ているように感じます。
原因としては飼料の栄養バランスの乱れや、炎症などが起こりやすい品種の存在、妊娠期間の清掃不備、近年の異常気象による乾燥環境などがあげられますが、意外に駆虫対応プログラムの勘違いや失敗が原因になっていることも考えられます。
今回は駆虫プログラムを的確に実施していると安心していた農場の一例を基に、実際に起こった外部寄生虫汚染(疥癬)と内部寄生虫汚染(回虫)について、その発生原因と対応について考えていきたいと思います。
外部寄生虫汚染(疥癬)が発生した農場の概要
①400頭一貫経営の農場、飼養品種はLW、外部導入システム。
②イベルメクチン製剤(注射薬)を使用。
③種豚舎、分娩舎の衛生状態には特に問題が見られない。
外部寄生虫汚染(疥癬)の発生原因として考えられること
①イベルメクチン製剤(注射薬)の注射量不足。体重1kg当たり0.03mlの接種量が必要だが、飼養している種豚の体格が良いのにも関わらず、1回の接種量が5ml/頭になっていた。
②雄豚への接種が行なわれていなかった。
③導入豚(♂、♀)への接種が行なわれていなかった。
外部寄生虫汚染(疥癬)の対応として行ったこと
①イベルメクチン製剤(注射薬)の注射量の再考。
導入時:4ml/頭。初産母豚:6~7ml/頭。経産母豚:7~8ml/頭。雄豚:8~9ml/頭。※あくまでも対象豚の大きさ(体重)から換算することが必要。
②雄豚への接種を実施。導入時に1回接種、その後は淘汰するまで年間2回以上の接種。
③導入豚(♂、♀)への接種を実施。導入後早い時期に1回接種。
内部寄生虫(回虫)が発生した農場
①300頭一貫経営の農場、飼養品種はLW、外部導入システム。
②イベルメクチン製剤(プレミックス)を使用。
③種豚舎、分娩舎の衛生状態には特に問題が見られない。
内部寄生虫汚染(回虫)の発生原因として考えられること
①イベルメクチン製剤(プレミックス)の投薬期間の不備。分娩舎入舎時(分娩予定の3~5日前平均で入舎)での1回投薬法で実施していた。
②雄豚への実施がされていなかった。
③導入豚(♂、♀)への実施がされていなかった。
内部寄生虫汚染(回虫)の対応として行ったこと
①イベルメクチン製剤(プレミックス)の使用プログラムの再考。
導入時:導入後早い時期に7日間のトップドレスにて投薬。
母豚:分娩4週前~3週前の7日間、トップドレスにて投薬。又、非生産母豚の存在があるので、11月頃の年1回で7日間のみ、種豚群全体にトップドレスによる投薬を追加実施。
雄豚:1回7日間で年間2回以上、トップドレスにて投薬。
②種豚群のプログラムが一順する間、子豚へのイベルメクチン製剤(注射薬)を使用した防除プログラムを実施。※離乳時頃に全頭接種。
総括
外部寄生虫汚染(疥癬)が発生した農場や、内部寄生虫汚染(回虫)が発生した農場において、今回提示した対応を行って貰ったところ、どちらの農場でも顕著に改善が認められました。今回のようなちょっとした勘違いは、折角使用している薬剤自体の無駄にも繋がり、“費用対効果”が薄れてしまいます。今後はこのような勘違いが起こらないように、さらなる確認と説明を行っていきたいと思います。
yuuichi-kikuchi
ワクチントラブルの回避。
人や豚にも疲れが見えてきて、体調を崩しやすい季節になりました。
今回はそんな様々なトラブルの中からワクチン接種に関する事故について考えて見たいと思います。
さて皆さんはワクチン接種から派生してしまう勿体無い事故があるのをご存知でしょうか?。意外に思うかもしれませんが、これらのトラブルは年々増加傾向にあります。
このワクチン接種に関するトラブルは気にしていない農場が多く、又ワクチン接種後の豚の体調確認も行っていない農場が多く見られますので注意が必要です。
下記にポイントを記載しますので、思い当たる点等がありましたら自分の農場で良く確認して見て下さい。
ポイント①副反応の種類について。(担当者は把握しておく事が必要です)
⇒発熱、食欲停滞、接種患部の腫脹、軟便、下痢、嘔吐、低熱、再発、不受胎、流産、白子、増体不良、事故等。
ポイント②副反応が強く豚に何らかのストレスが与えられた時に派生しやすい疾病。
⇒大腸菌関係疾病(早発性下痢症、浮腫病)、スス病(黄色ブドウ球菌感染症)、コリネ感染症(関節炎、皮膚腫瘍病変)、レンサ球菌感染症(関節炎、神経症状、突然死)、PRRS、サーコ等。
ポイント③ワクチン接種後は副反応が起こることが当たり前と思っている?。
⇒異物を体内に接種するのですから副反応は起こりますが、必ずしも表れた方が良いとは言えません。実際に重要なのはその表れ方になります。ワクチン接種後に成果が見える場合と見えない場合での副反応の出現には明らかに差が見られます。(前者は軽く、後者は重い事が多い)
ポイント④新しいワクチンを採用する場合、若齢母豚・弱子豚への接種時等は注意が必要。
⇒ワクチン接種日、接種日から2日間、接種後3日目~7日目位までの体調面の観察、ワクチン接種後の効果確認(成績改善)が必要。
ポイント⑤オイルアジュバント系統のワクチンに感受性が強い農場が存在。
⇒農場毎の条件下で合うワクチン、合わないワクチンが存在。自農場の豚の状況は常に確認し、把握しておく事が必要。
ポイント⑥飼養している種豚の系統でも左右される。
⇒ハイブリッド系、SPF系の使用農場、成績の良い農場でも注意が必要。
ポイント⑦母豚のワクチン接種が分娩予定日の4週前~2週前の間に集中している。
⇒分娩前に近ずくにつれて母豚の体には負担が掛かってきます。分娩前に集中するワクチンは母体だけでなく、子豚への負担も増加する危険性があります。
ポイント⑧ワクチン接種の間隔が短い。
⇒1日間隔、2日間隔、3日間隔等、できれば7日間程度のインターバルは必要。
ポイント⑨使用するワクチンの組み合わせや種類によっては優先順序が存在する。
⇒オーエスキー、PRRS、サーコ等のウイルス系のワクチンは他のワクチンとの間隔をずらす。未経産時期の鼻炎系統・肺炎系統のワクチンは早い時期に接種する等。
ポイント⑩未経産時期のワクチン接種が行われていない。
⇒妊娠期間中が初接種になると副反応が出やすい。
ポイント⑪離乳、移動、飼料の切り替え等、ストレスが2回以上集中する時期に接種されている。
⇒ストレス感作が重なると副反応が出やすい。
ポイント⑫虚弱子豚、弱子豚、体調不良(種豚、子豚)へのワクチン接種を強行している。
⇒健康状態でないとワクチン効果は表れにくい。
ポイント⑬一斉接種の時、全ての種豚に強行接種している。
⇒ワクチンによっては分娩舎近くで接種してはいけないもの、分娩予定日の3週前~予定日まで・交配後~交配後3週目頃までは外した方が良いものも存在する。
ポイント⑭ワクチン接種日の設定が月に1回か2回のペースになっている。
⇒副反応の少ない農場は週に1回、月に3回以上のペースでワクチン接種を行なっている。
実際に農場にて大変な思い(作業時間の増加、衛生費の向上、ストレスの増加等)で予防接種をしています。成績を向上させて事故の軽減にも繋がらなくてはいけないワクチン接種が、かえって豚の体調を低下させてしまい、悪影響に陥いらせているとしたら大変残念です。ワクチントラブルを起こさないように管理しましょう。
yuuichi-kikuchi
オーエスキー病
2008年12月1日、新しいオーエスキー病対策要領が施行されました。オーエスキー病の清浄化達成を平成22年度と定め、養豚農家の抗体検査を実施し、浸潤地域においてはワクチンの全頭接種推進に取り組んでいます。清浄化には、ワクチン接種の徹底、定期的なモニタリング検査、陽性豚の淘汰、陰性豚の導入などが必要となります。撲滅には個々の農場の取り組みだけでなく、地域一丸となった取り組みが重要となります。撲滅による経営改善や地域的なまとまりなど、多くのメリットもあります。個々の農場に合ったワクチネーションを行うために、日齢別の抗体検査を受けるようにしましょう。
弊社で衛生管理指導を行っている群馬県の農場では、2009年3月の時点で母豚及び肥育豚でほぼ全頭が野外抗体陽性であったが、抗体検査結果を基にしたオーエスキー病対策の徹底後、約半年で母豚以外は野外抗体陰性となり、AD撲滅に向けて順調に進んでいるところです。
急増!!連鎖球菌
先日、若い養豚生産者の方と知り合う事があり、熱く自分の農場の事について語ってもらいました。
知り合った場所が忘年会の宴席だったのですが、料理もそっちのけで農場の展望を語るその姿勢に、いつの間にか私も引き込まれて、食事後の温泉でも裸のお付き合いをしながら色々お話をさせていただきました。
その中で、肉豚の急死が散発して悩んでいる様子でした。ご本人はApp(胸膜肺炎)を疑い、数ヶ月前からAppワクチンの接種を開始したとの事。
しかし、肉豚の急死は改善しないままで本人としても「気持ち悪い」状況みたいでした。
そこまで悩まれているのであればと、まずは農場で散発している事故の『本当の敵』を知ることから始めてみたら・・・とご助言させていただきました。
その2日後、私に電話が掛かってきました。温泉で言った事を覚えていてくださって病性鑑定を実施したいと依頼を受けました。その日に農場にお伺いし死亡豚の解剖をしたところ敗血症を疑う内臓所見でした。そして3日後に連鎖球菌(Streputococcus Suis)が検出された旨をご報告。そして生産者の方と一緒に連鎖球菌対策を構築し、今はその『本当の敵』と闘う準備をしているところと思います。
私は、関東を担当しているのですが、やはり豚丹毒と連鎖球菌でお困りの養豚場は多いように感じます。
まずは自農場にあったワクチンプログラムと薬剤プログラムの構築が急務と思います!!
密かに進行中?-見直してみよう!コクシジウム感染症-
近年は飼料代金の高騰、ワクチン関係の充実、ポジティブリスト制度等の関係も有り、農場での薬剤の使用量が減少して来ています。又、薬剤を使用して絶大な効果があった以前とは異なり、病原性の強いウイルスや薬剤耐性を持った細菌群等による複合感染症の出現も、養豚現場での薬剤の効果を鈍らせて、薬剤に頼っていた養豚業界の再編を後押ししているものと思います。
安心、安全な豚肉を生産する上で、なるべく薬剤に頼らない養豚経営を目指す事は大変良い事なのですが、近頃は薬剤を使用する時は無造作且つ無神経に使用し、薬剤を中止する時には考えなしに行う農場が見られる事に、一抹の不安を感じています。
さて、この事も有り、私は各地の農場へ伺っていて思う事があります。
飼養母豚数の増加や畜舎設備の老朽化、管理者の高齢化、使用飼料の能力減、使用水の水質悪化、使用敷材の不衛生化等によるものなのかは明確でありませんが、今まではたいして何も気にもしなかった疾病群の感染が増加しているのでは?と感じています。
今回はその中の一部の事例を紹介しようと思います。
皆さんの農場で中々治癒出来ない、下痢症状、衰弱症状、関節炎症状、又はそれらが伴う死亡事故等の発生は無いでしょうか。もし当てはまる症状がある場合については、コクシジウム感染症の存在も疑って見て下さい。
このコクシジウム感染症には、アイメリア属(Eimeria)9種、イソスポラ属(Isospora)3種、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)2種が存在します。
Isospora suisは哺乳子豚に重篤な下痢を起こす病原体で、その発生は生後5~14日目(近年は3日目での発生報告もある)にほぼ限定されます。
Eimeriaは離乳直後の子豚に多く発生し、下痢症状やカタル性腸炎等が認められます。
Cryptosporidiumは、豚での発病はまれで、哺乳類に共通に感染する2種類によって下痢症状が発生することが発見され、人畜共通感染病として注目されています。
コクシジウムに感染、発症すると、体力.抵抗力が著しく失われ、他の疾病との混合感染を助長し、様々な合併症を引き起こしやすくなります。
最も相性が良いものとすれば、豚の下痢症や出荷遅延、腸廃棄等に関与するクロストリジウム感染症が知られています。
クロストリジウムは常在細菌の部類に入り、常に腸管にいてストレスや条件が重なる時に異常に増殖し、発病します。
どちらにしても昔はサルファ剤等の薬剤によるコクシジウム感染症の予防や治療がなされていましたが、今はほとんどの農場でこの手の薬剤の利用は見かけなくなっています。又、他にコクシジウムが増加した要因としては、長年に渡る敷地内(土壌中)での増殖、オガ屑等の敷材中への混在や繁殖、地下水への混入(汚染)も、農場でのコクシジウム感染症の発生を助長していると思います。
今までの常識や、事故が起こっている場所のみに囚われず、広い視野と知見で事故原因をさぐる努力をする事は、農場側や私たち指導する側の両方で必要になる事と思います。