急増!!連鎖球菌

先日、若い養豚生産者の方と知り合う事があり、熱く自分の農場の事について語ってもらいました。
知り合った場所が忘年会の宴席だったのですが、料理もそっちのけで農場の展望を語るその姿勢に、いつの間にか私も引き込まれて、食事後の温泉でも裸のお付き合いをしながら色々お話をさせていただきました。

その中で、肉豚の急死が散発して悩んでいる様子でした。ご本人はApp(胸膜肺炎)を疑い、数ヶ月前からAppワクチンの接種を開始したとの事。
しかし、肉豚の急死は改善しないままで本人としても「気持ち悪い」状況みたいでした。
そこまで悩まれているのであればと、まずは農場で散発している事故の『本当の敵』を知ることから始めてみたら・・・とご助言させていただきました。

その2日後、私に電話が掛かってきました。温泉で言った事を覚えていてくださって病性鑑定を実施したいと依頼を受けました。その日に農場にお伺いし死亡豚の解剖をしたところ敗血症を疑う内臓所見でした。そして3日後に連鎖球菌(Streputococcus Suis)が検出された旨をご報告。そして生産者の方と一緒に連鎖球菌対策を構築し、今はその『本当の敵』と闘う準備をしているところと思います。

私は、関東を担当しているのですが、やはり豚丹毒と連鎖球菌でお困りの養豚場は多いように感じます。
まずは自農場にあったワクチンプログラムと薬剤プログラムの構築が急務と思います!!

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飼料分析肥料分析検便検査PCV2・サーコウイルスPRRSウイルス

密かに進行中?-見直してみよう!コクシジウム感染症-

近年は飼料代金の高騰、ワクチン関係の充実、ポジティブリスト制度等の関係も有り、農場での薬剤の使用量が減少して来ています。又、薬剤を使用して絶大な効果があった以前とは異なり、病原性の強いウイルスや薬剤耐性を持った細菌群等による複合感染症の出現も、養豚現場での薬剤の効果を鈍らせて、薬剤に頼っていた養豚業界の再編を後押ししているものと思います。
安心、安全な豚肉を生産する上で、なるべく薬剤に頼らない養豚経営を目指す事は大変良い事なのですが、近頃は薬剤を使用する時は無造作且つ無神経に使用し、薬剤を中止する時には考えなしに行う農場が見られる事に、一抹の不安を感じています。

さて、この事も有り、私は各地の農場へ伺っていて思う事があります。
飼養母豚数の増加や畜舎設備の老朽化、管理者の高齢化、使用飼料の能力減、使用水の水質悪化、使用敷材の不衛生化等によるものなのかは明確でありませんが、今まではたいして何も気にもしなかった疾病群の感染が増加しているのでは?と感じています。

今回はその中の一部の事例を紹介しようと思います。

皆さんの農場で中々治癒出来ない、下痢症状、衰弱症状、関節炎症状、又はそれらが伴う死亡事故等の発生は無いでしょうか。もし当てはまる症状がある場合については、コクシジウム感染症の存在も疑って見て下さい。
このコクシジウム感染症には、アイメリア属(Eimeria)9種、イソスポラ属(Isospora)3種、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)2種が存在します。

Isospora suisは哺乳子豚に重篤な下痢を起こす病原体で、その発生は生後5~14日目(近年は3日目での発生報告もある)にほぼ限定されます。

Eimeriaは離乳直後の子豚に多く発生し、下痢症状やカタル性腸炎等が認められます。

Cryptosporidiumは、豚での発病はまれで、哺乳類に共通に感染する2種類によって下痢症状が発生することが発見され、人畜共通感染病として注目されています。

コクシジウムに感染、発症すると、体力.抵抗力が著しく失われ、他の疾病との混合感染を助長し、様々な合併症を引き起こしやすくなります。
最も相性が良いものとすれば、豚の下痢症や出荷遅延、腸廃棄等に関与するクロストリジウム感染症が知られています。

クロストリジウムは常在細菌の部類に入り、常に腸管にいてストレスや条件が重なる時に異常に増殖し、発病します。
どちらにしても昔はサルファ剤等の薬剤によるコクシジウム感染症の予防や治療がなされていましたが、今はほとんどの農場でこの手の薬剤の利用は見かけなくなっています。又、他にコクシジウムが増加した要因としては、長年に渡る敷地内(土壌中)での増殖、オガ屑等の敷材中への混在や繁殖、地下水への混入(汚染)も、農場でのコクシジウム感染症の発生を助長していると思います。

今までの常識や、事故が起こっている場所のみに囚われず、広い視野と知見で事故原因をさぐる努力をする事は、農場側や私たち指導する側の両方で必要になる事と思います。

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サーコワクチンの現状レポート、今後の課題について

昨年から販売が開始されたサーコウイルスワクチンですが、現状では不足気味であったワクチンも解消され、ワクチン自体が手に入らずに苦慮していた農場もなくなったと聞いています。
ただ、効果が現われている農場毎でもその成績改善率に格差があったり、効果の発現が少ない農場も存在したりしていますので、まだまだ検討が必要な様です。
今回はそうした状況もあり、これからの寒く厳しい季節を迎える前に、早い時期に接種を行う事が出来た農場の現状、問題点、将来の課題等を検案しながら、接種し始めの農場や、これから開始しようと考えている農場へ、少しでも役立てられるようなポイントを探って行きたいと思います。

サーコワクチンの接種効果として期待するもの。(順不同)
①事故率の軽減。
②ヒネ化率の軽減。(虚弱、衰弱、ひね発生の軽減)
③飼料要求率の改善。(無駄になっている飼料の改善)
④出荷日齢の短縮。
⑤1母豚当たりの生産成績の向上。(出荷枝肉重量としての増加)
ポジティブリスト制度、トレーサビリティー制度、HACCP(ハセップ)等を念頭に置いた薬剤の使用量や治療回数の軽減。
⑦ワクチンプログラムの簡素化。(将来的に)

現状のワクチン接種プログラムの一例

ベーリンガー社(子豚用)のワクチンを使用している場合。
パターン①子豚群のみ接種。生後3週齢頃の毎回接種。

メリアル社(母豚用)のワクチンを使用している場合。
パターン①種豚群のみ接種。交配前 の未経産時期に1~2回接種。初回は分娩8~7週前、4~3週前の接種。その後は分娩3週前毎回接種。

インターベット社(子豚用)のワクチンを使用している場合。
パターン①子豚群のみ接種。生後3週齢頃 の毎回接種。

サーコウイルスワクチン接種のポイント

ベーリンガー社(子豚用)のワクチンを使用している場合。
ポイント
①子豚への接種時期。分娩舎で作業者が抱いて丁寧に接種する事が重要。ストレスが2回以上重なる時期の接種は避ける。(移動と離乳、去勢と他のワクチン等、ただし、単体の作業時はその時期に組み入れる事はOK、農場毎に相談は必要)
②接種時期の子豚の状態。早期のPRRS感染、下痢症状(大腸菌、クロストリジウム、コクシジウム等)等はワクチン効果を妨げるばかりか、逆影響にもなりかねない。
③接種時のリアクションは少ない。

メリアル社(母豚用)のワクチンを使用している場合。
ポイント
①未経産豚(交配前)の接種を忘れない事。 この時期に接種されることで、その後のワクチン効果が左右されるといっても過言ではない。
ただし、他のワクチンの接種状況もあるので、プログラムは良く話し合って決める。馴致の面や今までの経緯から見ても、鼻炎系ワクチンと同様に早い時期の接種が有効。
②移行抗体価で防御するワクチン。分娩舎の泌乳状況が悪い農場では要注意。
③オイルワクチンなので取り扱いには注意。
④PCV2の感染(被害)が肥育期に多い農場の場合、効果が出にくいので注意。

インターベット社(子豚用)のワクチンを使用している場合。
ポイント
①子豚への接種時期。分娩舎で作業者が抱いて丁寧に接種する事が重要。
ストレスが2回以上重なる時期の接種は避ける。(移動と離乳、去勢と他のワクチン等、ただし、単体の作業時はその時期に組み入れる事はOK、農場毎に相談は必要)
②接種時期の子豚の状態。早期のPRRS感染、下痢症状(大腸菌、クロストリジウム、コクシジウム等)等はワクチン効果を妨げるばかりか、逆影響にもなりかねない。
③接種時のリアクションが発現する可能性があるワクチン。
生後3週齢以内の分娩舎で接種される分にはさほどの心配はないが、生後5週齢以降での接種を余儀なくされる農場では接種時の工夫が必要。

ワクチン効果の発現で地域性があるのか?効果が現われにくい農場の現状は?
この様な質問はこの頃多く受けますが、地域による効果の発現状態に格差はないものと思います。
もしそれらが発生する可能性があるとしたら、扱う人間側の意識によるものと、環境差による効果発現の格差は存在していると思います。
ポイント

①飼養する環境差。(隣同士が密集している地域と、隣りが5~10キロメートルも離れている場所等での飼養条件差)

②飼養密度。(1豚房に飼養されている豚の数と接触回数)

③糞尿処理に対する意識と設備の格差。(糞処理と尿処理に余裕があるところは改善が早い傾向にあり、余裕が無いところは効果の発現後、新たな被害が再発生する危険性がある)

④使用飼料のレベルの格差。(今までの経営が影響していると思われる使用配合飼料の栄養性・吸収性の格差、様々な機能性サプリメント資材の利用格差等は、サーコウイルスワクチンでは解決出来ないヒネ・虚弱や疾病群(浮腫病、レンサ球菌感染症、グレーサー病、大腸菌感染症、ローソニア感染症、サルモネラ感染症、コクシジウム感染症、マルベリーハート等)の発生が見られる危険性がある)

⑤使用意識の問題。使用後半年から1年間は最低でも今現在の農場プログラム(ただし、ある程度間違いが無いプログラムだった場合)に追加する形でサーコウイルスワクチンを接種している農場と、使用直後から農場プログラムを変更する主体性の無い農場では効果の発現に格差が生じる危険性がある。

⑥サーコウイルスワクチン接種前の子豚の状態。(サーコウイルスワクチン接種前に子豚が何らかの疾病感染・発病をしていた場合は効果の発現に格差が生じる危険性がある)

サーコウイルスワクチンを組み入れた管理プログラムの考え方
サーコウイルスのワクチン接種を行う事により、今現在行っている管理プログラム(ワクチンプログラムを含む)の再編成を行う必要があります。あまり考えていない農場も多くありますが、結構悩んでいる農場も見受けられます。

ポイント
①全てのワクチンは副作用の発現を持ってる事を踏まえる。
②サーコウイルスとストレスの関係は密接。
③実際には、使用するサーコウイルスワクチンの特徴を良く理解した後、同時期や、近い日齢で接種されてしまう他のワクチンや抗生物質、その前後期間で行う作業管理等に至るまで良く話し合い、なるべく副作用(人間にも、豚にも)が発生しない様にプログラムを組み合わせる。

今後危惧される課題
①新たな疾病の発生。(元々感染はしていて発生もあったが、目立たなかった疾病や症状)
例:大腸菌関連疾病(浮腫病を含む)、レンサ球菌感染症、グレーサー病、パスツレラ感染症、コクシジウム感染症、サルモネラ感染症(特にコレラスイス )、クロストリジウム感染症、ローソニア感染症、コリネバクテリウム感染症、ヘモフィルス感染症、PRRS(PRDC)、マルベリーハート、関節炎症状、皮膚炎症状等。

糞尿処理の不具合。
例:豚の在庫の増加と飼料摂取量の増加による糞尿の増加と処理能力の悪化。地域環境と地域住民との関係悪化。

③人材の確保と作業能力の限界。
例:豚が死ななくなることによって、死亡していた時の搬出作業や、治療等の手間が無くなり、作業的には楽にはなりますが、今後は生きている子豚をちゃんと生産過程に乗っけていくための管理技術とそれに伴う人材や設備が必要になります。
人は仕事が忙しくなると1つ1つの仕事を丁寧には行わず、何%か手を抜き始めてしまいます。従来何気なく行ってきた”作業”ではなく、本当の意味での”管理技術”が求められる様になって行きます。

④使用飼料の変化、飲水設備の変化。
 例:事故率の改善とヒネ化率の改善で豚の在庫が増加すると、必然的に糞尿の処理量が多くなり、その処理能力が問われることになります。
糞処理設備や浄化槽設備の充実を図れば良いですが、そうは出来ない農場が多いのも現実です。そこで取られる方法として、使用する飼料を糞尿の発生量の少ない飼料へ変更することが多く見られますが、これは、各々の飼養条件や保有疾病等を良く考慮して工夫しないと、逆に成長が抑制されたり、疾病感染の助長を招いてしまう危険もあります。

⑤飼養密度の増加。
例:事故率の改善とヒネ化率の改善によって子豚舎、肥育舎の飼養頭数が増加すると、今までは発生が無かった(気が付かなかった)細かい疾病や症状が発生する様になります。一番気を付けたいのは肥育舎です。実際に今までこの業界を震撼させてきた疾病群の初期の感染源は肥育期になってる事が多いのです。(例えばオーエスキー)肥育舎の豚の飼養頭数が多くなればなるほど、初めは小さかった疾病感染の火種が気が付いたら大きな火事や震災にまで膨れあがってしまう危険性があります。今まで事故率が高かった農場は、逆に肥育舎での成績は良かったと言う農場が多く見られます。疾病は一群の飼養頭数×接触回数×空気密度×管理技術によって増幅して行きます。この事を良く踏まえて、肥育舎で新たな疾病の火種を作らないようにする意識が重要になると思います。

⑥管理技術の置き去り。 例:今まで何を行っても事故の改善が見えなかった農場が、サーコウイルスワクチンの接種を行っただけで、今まで死んでいた子豚が死ななくなったとしたら、完全に勘違いを起こしてしまう危険があります。
今までがんばって助言してきた周りの同業者、友人、業界関係者等との接点が途切れてしまい、極端な人は洗浄・消毒・乾燥といった基本の管理まで中止したり、給餌器や給水器の掃除や衛生も怠ったりしてしまっています。
マイコワクチンやヘモワクチン、薬剤や機能性資材(栄養剤、生菌剤、サプリメント等)に至る他の疾病対策の商品の使用もサーコウイルスワクチンの接種と同時に中止したりしてしまっています。
この手の農場は今さら何をいっても管理技術(お金の掛かる事、面倒な事等)には耳を貸さない傾向になってしまいます。

将来に向けた課題

サーコウイルスワクチンの接種によって効果が発現出来た農場では、その各々の農場で持っていた疾病感染レベルに必ず変化が生じて来ます。
ただし、その変化はかなり低いレベルから現われる事になりますので、『①発見出来ない農場』、『②発見しても無視してしまう農場』、『③発見後から対応を組む農場』、『④最初から発生の危惧を予期して、発生前から取り組みを行う農場』に分かれてしまう可能性があります。
サーコウイルスワクチンによって効果の発現があった農場の中でも、上記に分けた内の③、④(特に④)を行おうとしている農場は少ないのが現状だと思います。
出来れば読者の皆さんの農場では③、④の意識を持って貰えるとうれしいです。
サーコウイルスワクチンについては今後も徹底した調査が必要と感じています。今後サーコウイルスワクチン接種群が冬季の厳しい季節を迎えますので、これらの状況も良く見極めて、生産者に役立つアドバイスを今後も行っていきたいと思います。

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薬剤耐性の危険性を把握しよう!!

近頃サーコワクチンの使用等によって全体的な事故率の軽減が見込めるようになってきましたが、その一方で、レンサ球菌、大腸菌、コリネ、レプトスピラ、サルモネラ等の細菌性の疾病の増加が問題になって来ています。
豚の体力が回復し、関与する疾病の複雑性が少なくなってきたこともあり、現場サイドでの薬剤の効果がはっきり見えるようになっている傾向もあります。
しかし、このことがあってか以前よりも薬剤の使用量や使用薬剤の種類が増加してきています。
今後新たな疾病群の発生、強い細菌群の育成、事故率の増加、食品事故の発生等を起こさないようにするためにも、生産現場での薬剤の有効的な利用方法について考えていきたいと思います。

薬剤の有効的な利用とその考え方。
①薬剤プログラムの選定。必要な薬剤と不必要な薬剤の選定。
②農場の状況によっては、未経産豚、種豚(♂♀)への対応が重要。ここの対応が以外に行われていない。
③担当者は副作用の存在も知る事が重要。
 薬品の種類によっては、嘔吐、震え、貧血(造血作用低下)、流産、腎・肝機能低下等が起こる事がある。
 投薬量が多い場合や多薬剤の組合せにも注意。相乗効果だけではなく拮抗作用も強い。
④担当者は必ず目的を持って利用する。
 使用理由を曖昧にはしない事。
⑤薬剤の血中濃度は期待ほど持続しない。
 投薬終了後の消失は早い。遅れた治療や早めの予防投薬等は無駄になってしまう事が多い。
⑥薬剤効果は諸条件によって上下する。
 健康状態、投薬方法(飼料、飲水、強制経口、腹腔内、皮下、筋肉)、投薬期間(連続、間歇、トップドレス)、投薬濃度、接種針、保管方法、丁寧さと雑さ。
⑦薬剤毎に耐性菌出現が容易なものと耐性菌が出現しにくいものがある。低濃度投薬、規定濃度以上の高濃度投薬、長期間の投薬等は耐性菌出現の温床になる。 
⑧薬剤の不用意な組合せはしない。
 多薬剤としての使用は、相乗効果だけではなく拮抗作用も起こる危険性がある。

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サーコワクチンを有効に利用するために

今現在、サーコウイルスのワクチンは3社から販売されています。
母豚用が1社、子豚用が2社から販売されています。昨年10月に1社から追加販売されたこともあり、多くの農場では、昨秋からの接種が開始されていることと思います。
又、昨年の春頃に最初に販売された1社からのワクチンを入手できた農場は、肥育舎から出荷までの経過をたどって、一旦のワクチン評価が出ている頃ではないかと思います。

さて、それでは、昨春からサーコウイルスワクチンを使用された皆さんの農場ではどう言う反応を示しているのでしょうか。効果が出ている?、まったく無反応?、逆影響になった?どれに当てはまりますか?。ほとんどの農場では効果があったと答えていると思いますが、効果があまり出ていない農場が存在している事も事実です。
(実際に接種した80%近くの農場は効果を認めているが、少なくとも20%近くの農場は無反応が存在していると言われている)

今回販売されたサーコウイルスのワクチンは、弊社から見ても優秀なワクチンの1つだと思っています。ただ、今後の利用に対する考え方次第では、短期間での効果の発現に留まってしまう農場と、将来に亘って効果の発現が持続できる農場とに明暗が分かれる気がしています。
今回は現場で起こっているサーコウイルスワクチンに関する勘違いと、有効に活用するための方法等について考えて行きたいと思います。

効果が出ている農場のポイント
サーコウイルスが中心になって疾病感染症が起こっている農場。
②分娩舎での母豚の状態(成績)、子豚の状態(成績)が悪くなかった農場。
③ワクチン接種と同時に罹患豚の淘汰も実施している農場。
④基本的な疾病対策、飼養管理を確立している農場(大規模ウインドレス舎に多い)
⑤あまり衛生的ではないが、子豚の飼養頭数がさほど多くない農場(小規模開放舎に多い)

効果が見えない農場のポイント
①サーコウイルス以外の疾病感染が強い農場。
②サーコワクチン接種時期と他のプログラムとの問題。
③サーコワクチン接種前の他の疾病の感染状況。(PRRS、コクシジウム、レンサ球菌、浮腫病を含む大腸菌感染症、他)
④離乳子豚舎、子豚舎に罹患子豚の存在が多い農場。(淘汰や場合によっては一斉接種も必要)
⑤種豚群の免疫レベルのばらつき、種豚群の疾病感染状況。
⑥サーコワクチン接種時期の不適(移行抗体の消失時期の確認ができていない)

あぶない考え方-サーコウイルスワクチン接種開始直後の誤った選択-
①急なワクチン利用の中止。(マイコワクチン、ヘモワクチン等)
②急な薬剤及び機能性資材(生菌剤、有機酸、オリゴ糖、他)利用の中止。
③急な飼料内容の変更。(糞尿の増加から選択)
④清掃管理の中止。(洗浄・消毒・乾燥・空舎)

ワクチンの効果を損失させないためのポイント(成績の良い農場の選択)①サーコウイルスワクチンを接種してから最低1年間は現状のプログラムを大きく変えることなく実施する。
②サーコウイルスワクチンを接種後半年~1年後に現状のプログラムの無駄を再確認して、新しいプログラムの構築を行う。
③自農場の元々の弱点が解っていて、サーコウイルスワクチン以外の飼養管理技術も有効に実施している。
④サーコウイルスワクチンを接種した後の目標設定(成績を改善するポイント)がきちんと提示されている。

サーコウイルスワクチンに期待する効果(順不同)①事故率の減少。(子豚舎だけでなく、肥育舎の事故率も重要)
②ヒネ子豚、虚弱子豚の減少。
③飼料要求率の改善。
④出荷日齢短縮。
⑤出荷枝重量の増加。
⑥治療薬の使用量の減少。
⑦総合的な衛生費の減少。(ワクチン・薬剤・資材等)

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薬剤投薬の妙。

薬剤試験で効果がある薬剤を使ったのに効かないと言った話が良くあります。
実際に現場では様々な要因があり使用薬剤の効果が表れにくい場合もありますが結構それ以外の原因もある様に思います
今回見直してほしい投薬方法はトップドレス投薬(手ぐれ投薬になります。
トップドレス投薬に関しては特に問題があるわけではありません。トップドレス投薬を行うにはその農場の給餌器の形状を確認する必要があります。
昔はドライフィード給餌器(大型)が主流だった事もあり一度に多くの飼料中に薬剤を混合させることが出来ましたが今日流行っているウエット給餌器では薬剤の混合がまばらになりやすく数頭にしか薬剤が当たらないことが多く見られます。これではまったく関係のない元気な豚が薬剤を食べてしまい実際に食べて欲しい豚への対応が出来ていません
疾病の対応を行う上での薬剤投薬であるのならば飼料中へ均等に混合される方法で行うのが良いと思います。方法としてはブレンドフィーダーでの添加や飼料タンクへの投薬(予備攪拌が行えればベスト)などがあります。

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繊細な豚の話

とある農場から肺炎症状の相談を受けました。
農場概要:150頭一貫経営。分娩舎ゾーン(約0~60日齢1ライン)、子豚舎ゾーン(約60~90日齢2ライン)、肥育舎前期ゾーン(約90~120日齢1ライン)、肥育舎後期ゾーン(約120~出荷1ライン)。16頭/房の同一グループで出荷まで飼養。
状況:肥育舎前期ゾーンの約100日齢頃に決まって肺炎症状(咳き込み、へコへコ症状)が発生している。秋季頃から発生が目立っている。PRRSは陰性、ヘモフィルスも落ち着いている農場。
考えられる事:①各ゾーンで環境面の問題点は見えるが一番気にかかるのは子豚舎ゾーンと肥育舎前期ゾーンの環境較差乾燥と隙間と低温②移動回数の多さによる③各ゾーンの飼料ラインの関係もありその都度異なる移動日齢。
考察:ここの農場は肥育舎前期ゾーン以外でも環境面の不備は散見されるがその他のゾーンでは豚の体調変化はそれほど見られない。一番気になるのが子豚舎ゾーンと肥育舎ゾーンの環境較差ただし、勘違いしてはいけないのは乾燥、隙間、低温が直接豚の体調変化に影響しているわけではない。(段階的に慣れさせた上で氷点下の雪のもと完全放牧飼養している農場が存在する)今回のことで再認識させられたのは以前いた場所と移動後の場所の環境較差が激しいほど豚の体調が崩れやすいことである。

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豚丹毒を考える

近頃各地域で豚丹毒の発生が目立っています。飼料コストの上昇などが農場経営を圧迫し、農場衛生費の大幅な削減を余儀なくされていることも影響していると思いますが、不用意なワクチン接種の中止が豚丹毒に関わらず、様々な疾病発生のきっかけに繋がってしまいます。
また、実際に現場に伺い相談を受けたりしていると、これ以外の理由があるようにも感じられます。
撲滅出来ているようで出来ていない畜舎内(天井部、壁部、床部、給餌器周り、給水器周りなど)や畜舎廻り(土壌や井戸水など)への豚丹毒菌の存在や、豚丹毒ワクチンプログラム自体への勘違いもその1つと考えています。
今回は全国的にもその発生が増加傾向にある豚丹毒について、その発生原因と対応を含めて考えてみたいと思います。

豚丹毒とは
豚丹毒菌の関与で発生する人畜共通感染病(届出伝染病)。
症状は急性の敗血症型、亜急性の蕁麻疹型、慢性の心内膜炎型、慢性の関節炎型の4つに分別されます。
敗血症型、蕁麻疹型は発熱症状を示しますが、心内膜炎型、関節炎型は発熱症状は示しません。

発生が多い型は何か
近年の発生数で多くを占めているのは関節炎型、蕁麻疹型、敗血症型になります。

注意する点について
①蕁麻疹型は皮膚に特徴的な病変が起こり、発熱を伴う症状からも農場側で発見しやすいはずなのですが、何故か屠畜場にて発見されて屠畜できずに返されています。
出荷時点で皮膚の汚れが多い場合や、出荷時の確認の不手際などが重なるとこの手の失敗が起こるようです。
②関節炎型は農場の生活状態内ではほとんどが発見できない可能性があります。
関節部位の炎症はあるのですが、ほとんどの豚が不顕性感染で経過し、屠畜場へ出荷されてしまいます。
関節炎型は母子感染が主な感染経路になりやすく、蕁麻疹型や敗血症型が耐化したあとに発生が多発する可能性があります。
③敗血症型は全身のチアノーゼ、発熱、諸臓器の炎症等を引き起こし、急な死亡(突然死)に繋がるやっかいな存在です。今年の異常気象で動きやすくなってしまったのか発生数が急増しています。特に150日齢以降の出荷直前頃での発生が目立ってきています。
④ワクチンプログラムでは未経産豚及び種豚(♀、♂)へのワクチン接種を忘れてはいけません。
⑤生ワクチンは薬剤投薬プログラム次第では死滅してしまいます。
⑥不活化ワクチンは接種回数が少ない場合や接種漏れなどがある場合は効果が半減してしまいます。

生ワクチンが関与してしまう発生にも注意
特に関節炎型が屠畜場にて発見された場合、農場内で本当に関節炎型が蔓延しているのか否かを確かめることも必要です。
接種日齢を90日齢以降(100~130日齢頃)で行っていたり、1ドース以上のワクチン量が接種されていたりすると、体内で豚丹毒生ワクチンの菌株自体が残っていて、豚丹毒以外の関節炎症だったとしても、菌検査時点では豚丹毒菌が分離されてしまうことがあります。

自農場に合ったワクチンプログラムの実施がカギ
豚丹毒の発生については、地域の事情や諸状況によっても発生数が左右されることも事実です。
ワクチン接種を行なっていない農場のみに発生が集中していることはなく、真面目にワクチン接種を行なっている農場でもその発生が多発している事実にも着目しなくてはいけないと思います。
本当の意味で豚丹毒を防除できる管理プログラムやワクチンプログラムの構築が必要なのかも知れません。
菊池雄一

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Aujeszky’s Disease

APVSにて発表しました。
Eradication of Aujeszky’s Disease from a Japanese farm using an adapted vaccination program

IntroductionSince 1991, we have been trying to eradicate Aujeszky’s Disease (AD). But, in Japan, vaccination is not compulsory, its use depends on a voluntary decision by veterinarians or farmers. We were asked to eradicate AD on one particular farm. We monitored the farm’s AD status by regularly examining serum samples for AD antibodies. Using these results, we recommended a whole herd vaccination program, advising on the choice of vaccine and its timing for piglets, sows and gilts. We finally succeeded in eradicating AD.

Materials and Methods
The farm: A typical Japanese 500-sow farrow-to-finish herd on a single site in the northern part of Japan.AD Neutralizing Test (NT): Serum samples were incubated for 1 hour with AD virus (200 TCID/ L). The maximum dilution was recorded for neutralization (CPE -ve) after five days incubation (37°, 5% CO2). Measurements >2 were taken to be positive, and those 2, negative. ELISA Test: The ADV (gI) ELISA Test Kit (IDEXX) was used which measured ADV infection, because the only vaccines available in Japan are marker vaccines. Vaccine: Porcilis Begonia, Suvaxyn Forte Vaccination Programs: Program 1. (between spring and autumn, 2005) Vaccination with AD live vaccine (gI-, tk-) Gilts: When acclimatized: 2 doses, 4 weeks apart Sows: All sows, one month before farrowing Piglets: Not vaccinated Program 2. (between autumn 2005 and summer 2006) Vaccination with AD live vaccine (gI+, tk-) Gilts: When acclimatized: 2 doses, 4 weeks apart Sows: All sows, 3 times per year, all at once Piglets: 2 doses at 60 and 90 days old Program 3. (from summer 2006 to present) vaccination with AD live vaccine (gI-, tk-) Gilts: Soon after arrival: 2 doses 4 weeks apart Sows: All sows, 3 times per year, all at once Piglets: Single dose at 90 days old

Results
Program 1: Only one sow was ELISA-positive, there were no other field infections in sows. But field infection was observed in pigs at 90, 120 and 160 days of age. Program 2: The number of AD-positive sows increased, and field infection was observed in pigs of all ages. The farmer considered that the program was failing, and asked us to improve it. Program 3: No rapid changes in field infection, but by the end of November 2008, most pigs were negative. There were only limited numbers of older sows showing AD infection.

Discussion
Though he was not confident at the start, the farmer became convinced that AD eradication was possible using this monitoring approach. Management measures, including the introduction of only AD-ve gilts, periodic monitoring and feedback to inform a proper vaccination program were effective in eradicating AD on this farm. Communication between farmer and consultant was the key to maintaining motivation. It has now been shown that, strongly motivated farmers in Japan can eradicate AD using an appropriate program of vaccination guided by regular disease monitoring.

shokukanken Y.K
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豚サーコウイルス2型汚染検査におけるリアルタイムPCR法の有用性

2009年度の獣医学会(鳥取大学)にて発表しました。
【目的】豚サーコウイルス2型(PCV2)の感染は、ほとんどの農場でみられ、死亡率の増加や増体重の低下などをもたらす。PCV2検査は、PCR法、間接蛍光抗体法(IFA法)及びELISA法が用いられている。しかし、これらの検査では正確な汚染度を明らかにすることができないため、ウイルス量を定量できるリアルタイムPCR法(rPCR法)が推奨されている。そこで、農場の離乳後事故率(事故率)とrPCR法及びIFA法の結果を比較し、rPCR法の有用性を検討した。
【方法】関東地域にある事故率が5%、10%及び20%の各3農場で、平成20年に採材したPCV2ワクチン未接種の血清を用いた。検体数は各農場で母豚6頭、30、60、90、120及び150日齢の肥育豚3頭ずつを基本とした。rPCR法による血清1mL中のPCV2量及びIFA法による抗体価の測定を行い、その結果を比較した。
【結果】事故率5%群のPCV2量は6.0×102~7.6×103 copies/mLで、90日齢で最高値を示した。事故率10%群及び20%群では6.0×102~3.8×104 copies/mL及び3.1×103~2.4×105 copies/mLで、60日齢で最高値を示した。事故率5%群は20%群と比較して母豚、30日齢、60日齢、150日齢で有意に低かった。また10%群との比較では60日齢で有意に低かった。事故率10%群は20%群と比較して母豚、150日齢で有意に低かった。IFA抗体価は、いずれの日齢においても群間に有意差はみられなかった。
【総括】事故率5%群のPCV2量は全ての日齢において104 copies/mL以下であったことから、このレベルが事故率改善の一つの指標となることが示唆された。また、日齢ごとにPCV2量を測定することにより、PCV2の増殖時期が明らかとなるため、対策を講じる上で有用な情報となると考えられた。
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日本獣医学会(秋) M.N