豚の肺炎:見過ごせない呼吸器疾患 2026年2月号
現場において、呼吸器疾患は生産性に大きな影響を与える重要な課題です。その中でも「肺炎」は、発育不良や死亡率の上昇、治療コストの増加など、経済的損失を招く主要な疾患の一つです。昨年の暑かった夏季を過ぎたあたりから、この肺炎症状での事故が増加している傾向があります。今まであまり気にしていなかった農場でも、その発生が目立つようになっています。寒さ厳しい冬季ですが、肺炎症状の発生と悪化には十分な注意が必要です。
豚の肺炎は、単一または複数の病原体によって引き起こされることが多く、以下のようなものが代表的となります。
又、肺炎の症状は、病原体や感染状況によっても異なり、農場で以下のような症状が見られる場合は注意が必要です。
予防と管理
1.それぞれの診断には、臨床症状の観察に加え、病性鑑定検査、PCR検査、血清学的検査などが用いられます。怪しい病状や当確豚が居たときは、迷わずに検査診断を行ってください。
2.ワクチンが販売されている疾病は、ワクチン接種による予防が可能となります。ただし、農場毎で選択するワクチンとプログラムには、農場の飼育豚やその管理、環境条件でも、相性があり、接種タイミングも合っていないと、その効果は低くなってしまいます。
3.母豚から哺乳子豚へ早期感染が成立することも問題視されています。これらを予防するためにも、未経産管理の徹底、繁殖舎母豚の体調管理、母豚の栄養管理、ボディコン管理、産歴構成などの更新管理は重要な位置を占めます。
4.『病は腹から』とも言われます。下痢を呈した子豚は、その後の肺炎症状や、ワクチン免疫の低下にも繋がると言われます。消化器系疾患の対策は、その後の肺炎対策と密接に関係しています。
5.換気と環境管理での対応も重要です。適切な空調管理(温湿度管理)、換気は、病原体の拡散を抑制してくれます。
6.ストレスを極力与えない管理は重要です。過密飼育、給餌器調整の不備、飲水管理の不備、換気管理の不備は、急激な環境変化を促し、免疫力の低下と共に肺炎症状の増加を促します。
7. 肺炎症状の初期段階での、早期発見と早期治療は肺炎対策の1つの要となります。異常を早期に察知し、適切な抗菌薬治療(注射、飲水、飼料添加)を行うことで、被害拡大の抑制になります。
豚の肺炎は、単なる「風邪」ではなく、生産現場に深刻な影響を及ぼす疾患です。病原体の特定と予防策の徹底により、発生リスクを最小限に抑えることが可能です。獣医師や検査機関、飼育者が連携して適切な対策を講じることが、健全な豚の育成と持続可能な畜産経営につながります。
| 病原体名 | 主な症状・特徴 | 感染経路・影響 |
|---|---|---|
| PRRSウイルス | 免疫抑制、肺マクロファージ障害、呼吸困難等 | 垂直・水平感染、他病原体の重症化を助長 |
| サーコウイルス2型(PCV2) | 体重減少、免疫抑制、呼吸困難等 | 経口・経気道感染、PRRS等との複合感染で悪化 |
| M. hyopneumoniae(マイコプラズマ・ハイオニューモニエ) | 線毛破壊による慢性咳嗽、肺炎等 | 空気感染、他病原体の侵入促進 |
| M. hyorhinis(マイコプラズマ・ハイオライニス) | 関節炎、漿膜炎、肺炎等 | 垂直感染、免疫低下時に発症 |
| APP(アクチノバチラス・プルロニューモニエ) | 急性胸膜肺炎、突然死、血様鼻汁等 | 飛沫感染、急速な集団感染 |
| 豚インフルエンザウイルス(SIV) | 急性発熱、咳、鼻汁、季節性流行等 | 飛沫感染、人獣共通感染症のリスク |
| サルモネラ属菌 | 腸炎と肺炎、免疫抑制下で悪化の可能性 | 経口感染、飼料・環境由来 |