夏を迎える前に—豚における水の重要性 2026年4月号
日本海側の地域では、今季の豪雪に頭を悩ませたことと思います。大雪が日本海側の地域に集中していた一方で、今年に入ってから雨があまり降らずに、結構な水不足に陥っている地域も出始めています。水は、豚の健康と生産性を支える最も基本的かつ重要な資源の一つであり、成績、生理、衛生、公衆衛生等、どの観点からでもその重要性はゆるぎないものとなっています。もしも農場で、水不足に陥り、水を制限しなくてはいけない状況になった場合は、生産成績や出荷豚の品質にも大きな影響を与えてしまう危険を孕んでいます。
成績および生理の観点からの水管理
豚の体の水分は成長段階によって大きく変わりますが、出生時は約80%、成豚は約50%と言われています。成長、繁殖、代謝、体温調節など、あらゆる生理機能に水が関与しています。
- 飼料摂取との相関:水の摂取量が減ると飼料摂取量も低下し、日増体重や飼料要求率に悪影響を及ぼします。
- 発育段階別の必要量:哺乳子豚では1日あたり約0.5〜1L、肥育豚では約6〜10L、母豚では約10〜20L以上の水が必要とされます。
- 温度と飲水行動1:高温環境では飲水量が増加し、熱ストレスの緩和に寄与します。
- 温度と飲水行動2:低温環境では飲水量は低下する傾向があり、特に水温自体が冷たくなると飲水量は減少します。
- 適切な飲水設備(高さ、流量、清掃性)と、常時清潔な水の供給は不可欠です。
衛生面の観点からの水管理
水質は、豚の健康と飼料効率に直結します。以下の項目が特に重要です。
- 微生物汚染:大腸菌、サルモネラなどの病原菌は、下痢や成長障害の原因となります。
- 化学的汚染:硝酸塩、鉄、マンガン、硫酸塩などの過剰は、味覚異常や中毒症状を引き起こす可能性があります。
- 水質基準の確認:飲用している水が適正か否かを確認する水質検査は、定期的に行ってチェックしましょう。
- 特に河川の水や井戸水を使用している農場では、季節や降雨量による水量及び水質変動にも注意が必要です。
疾病予防の観点からの水管理
いのしし、たぬき、きつね、ハクビシン、イタチ、アライグマ、カラス、野鳥等々、水は病原体の媒介経路にもなり得るため、以下のような対策が求められます。
- 河川、ため池、井戸等、そこから汲み上げている貯水タンクを含めた水源周りの除草、整理・整頓、害獣対策の徹底。
- 給水ラインの定期洗浄:バイオフィルムの形成を防ぐため、週1回以上の洗浄・消毒が推奨されます。
- 消毒剤の使用:次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素などを適切な濃度で使用し、残留塩素濃度を0.2〜0.5ppmに保つことが理想となります。(豚熱予防では0.5~0.8ppmを推奨している地域もある)
公衆衛生上の観点からの水管理
水は糞尿処理にも深く関わっており、適切な糞尿処理管理は農場内外の衛生環境に影響します。
- スラリーの希釈と移送:水で希釈することでポンプ詰まりを防ぎ、処理効率が向上します。
- 悪臭・病原体の拡散防止:適切な水量管理と処理方法(堆肥化、バイオガス化)により、周辺環境への影響を最小限に抑えられます。
- 水資源の再利用:処理水の再利用(例:洗浄水)も、持続可能な農場運営の一環として注目されています。
今年も暑い夏が巡ってきます。水は「見えない飼料」とも言われるほど、豚の健康と成績に密接に関わっています。日々の管理の中で、飲水量・水質・消毒・糞尿処理の各要素を見直すことが、持続可能で高収益な養豚経営への第一歩となりますので、水回りのチェックは怠らないようにしましょう。
(株)食環境衛生研究所 菊池雄一