基本の管理を見直そう! 分割授乳管理 2026年7月号

種豚能力の向上に伴い、多くの子豚が生まれています。
より多く生まれた子豚達をより多く離乳するために、様々な管理面での工夫と対応がなされていることと思います。
確かに、一度にたくさんの子豚が生まれるようになってきたのは非常に喜ばしいことですが、一方で「生まれたばかりの子豚全員に、いかに早く、十分な初乳を飲ませるか」という大きな課題に直面していませんか?
今回はその中の1つのツールとして存在する分割授乳管理について話をしてみたいと思います。

分割授乳管理とは?

初乳摂取をスムーズに行わせる行う1つの方法です。体の小さな子豚や、後から生まれた子豚は、どうしても強い子豚に乳頭を奪われがちです。そこで威力を発揮するのが「分割授乳(スプリット・ナーシング)」となります。
簡単に説明すると、「よくお乳を飲めている強い子豚」「先に生まれてお乳を十分飲んでいる子豚」を一時的に隔離し、お乳を十分飲めていない、体の小さな子豚や後から生まれた子豚等に、お乳を飲むチャンスを優先的に与える方法となります。
よくお乳を飲めている子豚の1つの判断材料はお腹の膨れ方や皮膚の色艶となります。お留守番する子豚の選定では、決して体の大きさだけで判断しないようにしましょう。

【子豚の生存率UP!】今日からできる「分割授乳」

多産系の管理において、最も重要と言っても過言ではないのが「生まれてから12時間以内(3時間以内が最も貴重なゴールデンタイム、~6時間以内まででより多くの初乳を飲むことが大事)の初乳摂取」です。
初乳には、病気から身を守る免疫(免疫グロブリン)や、エネルギが最も大事ーが凝縮されています。全員に公平に、しっかり初乳を行き渡らせるために役立てましょう。

分割授乳の「4つのステップ」

ステップ1:事前の準備

•保温箱(ネスト)の準備:お留守番する子豚が寒がらないよう、保温ランプやマットでしっかり温めておきます。
•分娩の観察:出産がほぼ終了した(目安として主要な子豚が揃った)タイミングでスタートします。

ステップ2:メンバーの選別

•「お留守番チーム(一時隔離)」を選びます。先に生まれてすでに体が乾いている子、お腹がふっくらしている子、大柄で元気な子(強そうな子)が候補となります。
•選んだ子豚の背中に、分かりやすく印をつけるとミスがなくなります。また、その後の効果確認も行いやすいと思います。
•母豚の乳房状態(授乳可能乳頭数)は確認してください。授乳可能な範囲内であれば実施する必要がない場面もあります。
•分割授乳実施中の授乳子豚数では、10頭以下にはならないように注意しましょう。

ステップ3:一時隔離(お留守番)

•印をつけた「お留守番チーム」を、用意しておいた保温箱へ移します。
•お留守番チームの保温管理は重要です。お留守番チームのためにブドウ糖給与、ミルク液給与することも臨機応変な対応です。
•実施回数の目安:朝一番で確認して生まれていた腹では、午前で1回、午後で1回実施。当日分娩の腹では、お産終了後に1回実施、2回目は翌日の午前で実施が1つの目安となります。
•隔離時間の目安:約1時間〜最大1.5時間。

注意! 長時間の隔離は、子豚の脱水や低血糖を招くため逆効果です。タイマーをセットして時間を必ず守りましょう。

ステップ4:VIPタイム(優先授乳)

•お乳の周りには、体の小さな子、後から生まれた子が残ります。
•スタッフが少し手伝って、お乳が出やすい前の方の乳頭へ誘導してあげるとさらに効果的です。(前多後小の原則)
•邪魔するライバルがいない状態で、お腹いっぱい初乳を飲ませてあげます。
•時間が来たら、保温箱の子豚を元に戻します。

現場で成功させるための「3つのコツ」

1.初乳の「賞味期限」を意識する 母豚の初乳に含まれる免疫成分は、分娩後6時間~12時間を過ぎると急激に低下します。
また、子豚側の腸も、時間が経つと免疫を吸収できなくなります。「生まれてすぐ、生時~3時間以内」のアプローチが勝負です。

2.「冷え」は最大の敵 隔離している間、子豚が寒さでブルブル震えているようでは意味がありません。
保温箱内は32〜34℃位をキープし、お腹が冷えないようにしてください。

3.チーム全員で時間を共有する 「何時に隔離したか」をホワイトボードや分娩柵のカードに必ずメモします。
「次の作業に熱中して、戻すのを忘れていた!」というミスを防ぎましょう。

まとめ:ひと手間の工夫が、未来の出荷頭数を変える

なぜ分割授乳を行うのか?その目的は何なのか?ここが農場内の全員で明確化されていないと長続きするこなく、3日坊主となることも多いと思います。
「やるのは自分達だし面倒でしかないよ」「今まで行ったがあまり効果が解らなかった」等、マイナスの意見を聞くこともあります。
前述して来た方法で実施してもあまり効果を感じられない農場もあるかもしれません。でも、そのときは一人で悩まずにチームとして解決することをお薦めします。
分割授乳は経験や回数にも比例して熟練されていきます。最初は少し面倒に感じるかもしれませんが、ルーティン化してしまえば現場の強力な武器になります。多産時の管理は手がかかりますが、この「分割授乳」を丁寧に行うことで、離乳前死亡率が劇的に改善し、離乳体重や活力も向上し、その後の成長のバラつき(大小)も減らすことができます。
生まれた命を1頭でも多く育てるために、ぜひ今日のお産から実践してみてください。

(株)食環境衛生研究所 菊池雄一

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