8月からでも出来る! 今からでも遅くない養豚場の即効暑熱対策 2026年8月号

連日の猛暑、本当にお疲れ様です!「8月に入ってしまったし、今から大掛かりな暑熱対策をしても遅いのでは…」と諦めていませんか?
いえ、全くそんなことはありません!豚は汗腺が発達しておらず、厚い皮下脂肪に覆われているため、非常に暑さに弱い動物です。特にピークを迎える8月〜9月の残暑にかけての「暑さのダメージ蓄積」を防ぐことが、出荷日数の遅延や繁殖成績低下(不妊や受胎率低下)を防ぐ最大の鍵となります。今すぐ現場で導入・見直しができる「即効性のある暑熱対策」をまとめて見ました。

1.飲水・配管管理。(まずは「冷たい水」をたっぷり飲ませること)

暑い時期、豚にとって最高の冷却手段は「水を飲むこと」です。しかし、配管内で温まったお湯のような水を豚は嫌がります。配管の「定期的な水抜き(フラッシング)」直射日光が当たる配管や豚舎内の長い配管に溜まった水は、日中40℃近くまで上昇することがあります。朝・昼・夕の見回り時に配管末端から水抜きを行い、常に井戸水などの冷たい水がニップルから出る環境を作ってください。吐出量(水圧)のチェック飲水量が増えるこの時期、ニップルの詰まりは命取りです。母豚で毎分2L以上、肥育豚で毎分1~1.5L以上の吐出量があるか、今すぐバケツ等で計測・調整しましょう。

2.クーリング・パドおよび貯水タンク周りの日差し除け。

クーリング・パドを使用している農場も多いと思いますが、夏季時期の猛暑と高い湿気の前では機能が100%発揮できず、却って加湿状態での体調不良、カビやバクテリア繁殖での体調不良に繋がる危険があります。
できるだけクーリング・パドや貯水タンクへの暑い日差しを防ぐ対策も有効となります。(寒冷紗等の設置により日陰を作る等、台風時はたためるように工夫)

3.給餌管理。(食熱「代謝熱」)のコントロールと品質保持)

餌を食べると体内で代謝熱が発生し、体温がさらに上がります。
この「食熱」をどうコントロールするかがポイントになります。
例えば、給餌時間の大幅シフト(早朝・夜間)で一番涼しい早朝(5時〜6時頃)と夜間に給餌を集中させる農場もあります。(日中の暑い時間帯に消化のピークが重ならないように設定)
また、給餌量の調整と増量(追加給餌)では、一気に与えてしまうと食べ残して傷む(カビ・腐敗)原因にもなります。
多回給餌の採用(1回の給餌量を減らし、涼しい時間帯に回数を分けて与える工夫)も有効とされます。
さらに、食欲が落ちている場合は水を入れてお茶づけ的に給餌させると食いつきが良くなることもあります。
この方法は水分量も確保できるので管理が可能な農場ではお薦めできる方法となります。

4.ホッパー・飼槽の清掃。

湿気と暑さでホッパー内や飼槽の隅に餌が固着し、カビが発生しやすくなります。
衛生管理を徹底し、飼料の鮮度を保ちましょう。

5.「風」を制する。

送風ファンの限界までファンを回していても、「ただぬるい空気を循環させているだけ」になっていませんか?
風速のチェック(体感温度を下げる)や豚の立ち位置(床面付近)で風速1.5〜2.0m/秒を感じられるかが勝負です。
風速1m/秒につき、体感温度は約1〜2℃下がります。
ファンの掃除と角度調整羽根やガードにホコリが溜まっていると、風量は20〜30%も低下します。
高圧洗浄機等でホコリを落とし、しっかり豚の胴体に風が当たる向きへ調整しましょう。

6.「水×風」で冷やす。(細霧「ミスト」)・ドリップ装置の最適化)

水蒸気が蒸発する際の「気化熱」を利用した冷房は非常に強力ですが、やり方を間違えると「蒸し風呂」になって逆効果です。
「細霧(ミスト)+送風」のセット運用が重要となりますので、ミスト単体での稼働は決して行わないでください。
風がないと豚舎内の湿度だけが上がり、豚が余計に苦しくなります。
濡らして乾かすメリハリ(ドリップコントロール)や母豚(ストール)の背中に水を落とすドリップ冷却は、「濡れる→風で乾く(気化熱で下がる)→また濡れる」のタイマーサイクル(例: 10分作動・5分停止など)を作ることがコツです。

7.超緊急時・熱中症のレスキュー(冷水浣腸)

食欲が完全に落ちて呼吸が荒い(パンティングが激しい)、起立不能になりかけているなど、「危険状態」の母豚や肥育豚を見つけた際の最終兵器が「冷水浣腸」です。
ただし、近年は最終兵器とはせず、飽食期を迎える母豚へ早めに実施して、便秘の解消につなげる農場も増えてきました。
冷水浣腸はただしく理解し、ただしく運用することが大事になります。
冷水浣腸の手順と注意点用意するものは、ホース(またはチューブ付きの注入器)と、井戸水などの冷水だけです。
方法は、豚の直腸にホースを15〜20cmほど挿入し、冷水を1〜2リットル程度ゆっくり注入します。(排泄されたら再度注入)その効果は、便秘解消もですが、豚の体の中心部(深部体温)を最も直接的かつ急速に冷却できます。
また、浣腸は内側からダイレクトに冷やせるため、命を救う緊急処置として極めて有効です。

夏場の暑熱対策は、設備投資だけではありません。「配管の水抜きで冷たい水を飲ませる」「早朝に給餌する」「ファンのホコリを払う」「緊急用の冷水浣腸を準備する」といった現場の細やかな心配りの積み重ねが、大切な豚たちの命と農場経営を守ります。8月ですが、まだできることはあります。間に合います。ぜひ今日の見回りから、できることを1つずつ実践してみてください。

(株)食環境衛生研究所 菊池雄一

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