紅はるかの特徴
紅はるかは、農研機構が開発し、2010年に品種登録されたさつまいもの品種です。正式な品種名は「べにはるか」で、鹿児島県や茨城県、千葉県、大分県などで栽培されています。
紅はるかが開発された背景には、従来のさつまいもよりも甘みが強く、見た目がよく、病害虫にも強い品種を求める声がありました。そこで、形状のよい「九州121号」と、味のよい「春こがね」を掛け合わせて育成されました。
「べにはるか」という名前も、食味や外観などが従来の品種より「はるか」に優れていることに由来しています。こうして誕生した紅はるかには、次のような特徴があります。
特に紅はるかの大きな特徴は、加熱したときの強い甘みと、貯蔵によって変化する食感です。ここからは、紅はるかの特徴についてそれぞれ解説していきます。
甘みが強く、貯蔵後はしっとり・ねっとりした食感になる
紅はるかの大きな特徴は、甘みの強さと、しっとり・ねっとりした食感です。特に焼き芋にすると濃厚な甘みが引き立ち、蜜がにじむような仕上がりになることから「蜜芋」と呼ばれることもあります。
実際に紅はるかは、ほかのさつまいもと比較しても糖度が高い傾向があります。
旭川市農業センターが5品種のさつまいもを比較した調査では、収穫直後と37日間貯蔵した後の糖度を測定しており、以下のような結果が報告されています。
紅はるかの糖度は収穫直後の20.4から37日間貯蔵後には35.1まで上昇しており、比較した5品種の中で最も高い数値でした。
収穫直後はベニアズマと同じ20.4で、シルクスイートの19.8とも大きな差はありません。しかし、貯蔵後にはシルクスイートやベニアズマより7.2高くなっています。
つまり、紅はるかは収穫直後からほかの品種より突出して糖度が高いわけではなく、貯蔵によって甘みが強くなることが大きな特徴といえます。
また、貯蔵によって変わるのは甘さだけではありません。紅はるかは収穫直後にはややホクホクした食感ですが、適切に貯蔵すると、加熱後にしっとり・ねっとりした食感になりやすくなります。
実際に、同じ調査で蒸し芋を食べた人による評価でも、紅はるかの甘みは5段階中2.9から3.5に、食感のねっとり感を示す評価は2.7から3.2に上昇しました。
このように、紅はるかは貯蔵によって糖度が高まるだけでなく、実際に食べたときの甘みや食感にも変化が現れます。
そのため、甘くてねっとりした紅はるかを楽しみたい場合は、収穫直後のものより、貯蔵・熟成された商品を選ぶのがおすすめです。
皮は赤紫色、果肉は黄白色で形がそろいやすい

紅はるかは、鮮やかな赤紫色の皮と黄白色の果肉が特徴のさつまいもです。皮にはツヤがあり、表面の凹凸が比較的少なく、なめらかな見た目をしています。
形は中央がふくらみ、両端に向かって細くなる「紡錘形(ぼうすいけい)」で、やや細長いのが特徴です。従来品種の「高系14号」と比べて形や大きさがそろいやすく、外観にも優れています。
果肉は生の状態では白っぽい黄色ですが、加熱すると黄色みが強く見えることもあります。赤紫色の皮と黄色い果肉の色合いは、焼き芋にしたときにも紅はるかの魅力の一つになります。
食物繊維やカリウム、ビタミンCなどの栄養が含まれる
紅はるかには、一般的なさつまいもと同様に、炭水化物をはじめ、食物繊維やカリウム、ビタミンCなどの栄養成分が含まれています。
特に、食物繊維は便秘の予防や腸内環境を整えるうえで重要な成分です。
食物繊維は小腸で消化・吸収されずに大腸まで届き、便の量を増やしたり、腸内細菌の働きを助けたりします。そのため、紅はるかは普段の食事で不足しがちな食物繊維を補う食品としても役立ちます。
また、カリウムは体内のナトリウムの排出を促し、血圧を正常に保つために重要な栄養素です。塩分の多い食事が続くとナトリウムを過剰に摂取しやすくなるため、カリウムを含む食品を取り入れることは、血圧の健康管理にもつながります。
ビタミンCには、皮膚や血管などを構成するコラーゲンの生成を助ける働きがあります。さらに、体内で発生する活性酸素の働きを抑える抗酸化作用もあり、肌や血管などの健康を維持するうえで欠かせない栄養素です。
このように、紅はるかは甘みを楽しみながら、便通や血圧の調整、皮膚の健康維持などに関わる栄養素を摂取できる食品です。
主な産地は鹿児島県や茨城県などで、収穫時期は秋が中心
紅はるかは、鹿児島県や大分県などの九州地方、茨城県や千葉県などの関東地方を中心に、全国各地で栽培されています。
主な収穫時期は9〜11月ごろですが、収穫後に一定期間貯蔵してから出荷されることも多く、冬から春にかけても購入できます。
また、紅はるかは産地や生産者によって独自のブランド名が付けられており、「紅天使」「紅優甘」「甘太くん」などの名称でも販売されています。代表的なブランドとその特徴は以下のとおりです。
これらは名称が異なりますが、使用されている品種はいずれも「べにはるか」です。
また、紅はるかは、ブランドによって甘さや食感に違いがあります。 これは、産地だけでなく、貯蔵期間や温度管理、出荷基準などがブランドごとに異なるためです。
例えば、「甘太くん」は40日以上の貯蔵や糖度検査などの出荷基準を設けています。一方、「紅天使」は温度管理された貯蔵庫で熟成させ、濃厚な甘みとねっとりした食感を引き出しているのが特徴です。
このように、同じ紅はるかでもブランドごとに栽培・貯蔵方法や品質管理に違いがあるため、購入する際はブランドごとの特徴にも注目するとよいでしょう。
紅はるかが甘いと言われる理由
紅はるかが甘いと言われる主な理由は、収穫後の貯蔵によってショ糖が増えることと、加熱によって麦芽糖が多く作られることにあります。
ショ糖は砂糖の主成分であり、紅はるかを適切な条件で貯蔵すると含有量が増加します。一方、麦芽糖は焼いたり蒸したりする際に、芋に含まれるでんぷんが分解されることで作られる糖です。
つまり、紅はるかは貯蔵と加熱によって甘みが強くなりやすい性質を持つ品種です。同じ紅はるかでも、貯蔵期間や加熱方法によって甘さに違いが生まれるのは、こうした糖の変化が関係しています。
ここからは、貯蔵と加熱によって甘みが増す仕組みをそれぞれ解説します。
収穫後の貯蔵によって甘みが増すから
紅はるかが甘い理由の一つは、収穫後の貯蔵によって、甘みのもととなるショ糖が増加するためです。
ショ糖は砂糖の主成分であり、紅はるかの甘みを生み出す糖の一つです。さつまいもは収穫後も内部で成分の変化が続いており、適切な条件で貯蔵することで、でんぷんや糖の代謝が進み、ショ糖の含有量が増加します。
実際に農研機構の研究では、紅はるかを13℃で2週間貯蔵したところ、焼き芋にした際のショ糖含有量が収穫直後の2.4%から4.7%へと、約2倍に増加しました。
つまり、紅はるかは収穫してすぐに食べるよりも、適切に貯蔵することで糖の含有量が増え、甘みが強くなることが分かります。
加熱するとでんぷんから麦芽糖が作られるから
紅はるかは、焼いたり蒸したりすることで麦芽糖(マルトース)が作られ、さらに甘みが強くなります。
麦芽糖は、さつまいもに含まれるでんぷんが加熱中に分解されることで生まれる糖です。この分解には「β-アミラーゼ」という酵素が関わっています。
さつまいもを加熱すると、でんぷんが水分を吸収してやわらかくなり、β-アミラーゼによって麦芽糖へと分解されやすくなります。紅はるかは、でんぷんを麦芽糖に分解するβ-アミラーゼの活性が高く、でんぷんが比較的低い温度から糊化し始める性質もあります。
そのため、加熱中にでんぷんが分解されやすく、麦芽糖が多く作られることが甘さの理由の一つです。
ただし、β-アミラーゼは60〜65℃程度で働きやすく、高温になりすぎると働きを失ってしまいます。そのため、短時間で急激に加熱するよりも、芋の内部温度がゆっくり上昇するように加熱した方が、麦芽糖が作られやすくなります。
つまり、紅はるかの甘みを十分に引き出すには、時間をかけてじっくり加熱することが重要です。
紅はるかのおいしい食べ方
紅はるかは、その強い甘みとしっとりした食感を活かして、焼き芋や蒸し芋、干し芋、スイーツなど、さまざまな方法でおいしく食べられます。
特におすすめなのは、時間をかけてじっくり加熱する焼き芋です。紅はるか本来の甘みを引き出しやすく、砂糖を加えなくても濃厚な味わいを楽しめます。
一方、やわらかくしっとりした食感を楽しみたいなら蒸し芋、甘みを凝縮した味わいを楽しみたいなら干し芋もおすすめです
じっくり加熱して甘みを引き出す
紅はるかの甘みを十分に引き出したい場合は、オーブンで時間をかけてじっくり焼くのがおすすめです。
実際に弊社でさつまいもの麦芽糖量を検査したところ、圧力鍋で蒸したものよりも、オーブンで焼いたものの方が約2倍多く麦芽糖が含まれていることが分かりました。
オーブンで焼いた方が麦芽糖量が多かったのは、圧力鍋で蒸す場合と比べて芋の内部温度がゆっくり上昇し、でんぷんを麦芽糖に分解する酵素が長く働いたためと考えられます。
この結果も踏まえ、家庭で紅はるかを焼き芋にする場合は、160〜180℃のオーブンで約1時間かけてじっくり焼く方法がおすすめです。
作る際は、紅はるかをよく洗い、アルミホイルで包んでからオーブンで加熱してください。加熱時間は約1時間を目安とし、竹串が中心まで抵抗なく通れば焼き上がりです。芋が太い場合や中心部が硬い場合は、追加で加熱しましょう。
蒸し芋・干し芋・スイーツにも適している
紅はるかは焼き芋だけでなく、蒸し芋や干し芋、スイーツにしてもおいしく食べられます。
蒸し芋は、紅はるかのしっとりした食感を楽しみたい人におすすめです。
蒸し器を使って水蒸気で加熱するため、焼き芋のような香ばしさは付きませんが、水分を保ちながらやわらかく仕上げられます。作る際は、よく洗った紅はるかを蒸し器に入れ、中心まで竹串が通るようになるまで加熱してください。
蒸した紅はるかはそのまま食べるだけでなく、つぶしてサラダにしたり、裏ごししてお菓子の材料にしたりするのにも向いています。
一方、紅はるかの甘みを凝縮した味わいを楽しみたい場合は、干し芋がおすすめです。
干し芋は、蒸したさつまいもを薄く切り、乾燥させて作る食品です。乾燥によって水分が減るため、糖などの成分が相対的に濃くなり、甘みを強く感じやすくなります。
紅はるかは、貯蔵によってしっとり・ねっとりした食感になりやすいため、やわらかく濃厚な味わいの干し芋にも適しています。干し芋はそのままでも食べられますが、トースターで軽く温めると、香ばしさが加わり、違った味わいを楽しめます。
さらに、紅はるかはスイートポテトやプリン、ペーストなどのスイーツにも適しています。
甘みが強いため、砂糖の量を調整しながら、紅はるか本来の味を活かしたお菓子を作れます。また、加熱後の果肉がなめらかになりやすく、つぶしたり裏ごししたりして使いやすいことも特徴です。
紅はるかよりも甘いさつまいもはありますか?
紅はるかよりも甘くなるさつまいもはありますが、どの品種が最も甘いかは一概に決められません。
紅はるかと同じく甘みが強い品種には、安納芋やシルクスイートなどがあります。特に安納芋は、濃厚な甘みとねっとりした食感で知られています。
ただし、さつまいもの糖度は品種だけでなく、収穫後の貯蔵期間や加熱方法によっても変わります。そのため、十分に貯蔵された安納芋が紅はるかより甘く感じられる場合もあれば、反対の結果になることもあります。
紅はるかは美容によいですか?
紅はるかには、肌や腸内環境の健康維持に役立つ栄養素が含まれているため、美容を意識した食生活にも取り入れやすい食品です。
特にビタミンCは、肌のハリや弾力を保つコラーゲンの生成に必要な栄養素です。また、体内の活性酸素の働きを抑える抗酸化作用もあり、皮膚などの健康を維持するうえで重要な役割を担っています。
さらに、食物繊維には便の量を増やしたり、腸内細菌の働きを助けたりする作用があり、便通や腸内環境を整えることにも役立ちます。
ただし、紅はるかを食べるだけで肌がきれいになったり、便秘が必ず改善したりするわけではありません。美容のためには、紅はるかだけに頼らず、さまざまな食品から必要な栄養素をバランスよく摂取することが大切です。
紅はるかは家庭で熟成させられますか?
紅はるかは家庭でも熟成させることができますが、適切な温度や湿度を保つ必要があります。
さつまいもの貯蔵に適した温度は一般的に13〜15℃程度、湿度は85〜95%程度とされています。このような環境で保存すると、芋の内部で糖の変化が進み、甘みが増すことがあります。
ただし、紅はるかは寒さに弱いため、冷蔵庫などの低温環境で長期間保存すると、低温障害によって傷むおそれがあります。一方、温度が高すぎる環境では発芽や品質低下が起こることもあります。
家庭で保存する場合は、芋を新聞紙などで包み、温度変化が少なく、直射日光の当たらない場所で保管しましょう。保存中は定期的に状態を確認し、カビや腐敗が見られるものは食べないでください。
なお、市販の紅はるかはすでに貯蔵・熟成されている場合もあるため、購入後に必ず熟成させる必要はありません。 家庭で適切な環境を維持することが難しい場合は、熟成済みの商品を選ぶ方がよいでしょう。
まとめ
紅はるかは、強い甘みと、しっとり・ねっとりした食感が特徴のさつまいもです。赤紫色の皮と黄白色の果肉を持ち、焼き芋や蒸し芋、干し芋など、さまざまな食べ方で楽しめます。
紅はるかの甘みには、収穫後の貯蔵によるショ糖の増加と、加熱による麦芽糖の生成が関係しています。そのため、同じ紅はるかでも貯蔵期間や加熱方法によって甘さや食感が変わり、必ずしも同じ仕上がりになるわけではありません。
紅はるかの濃厚な甘みとねっとりした食感を楽しみたい場合は、適切に貯蔵・熟成された商品を選び、時間をかけてじっくり加熱するのがおすすめです。 品種の特徴だけでなく、商品の貯蔵状態や調理方法にも注目すると、紅はるかのおいしさをより引き出せるでしょう。