ノロウイルスの出勤停止は何日?一律の期間はありません
「ノロウイルスに感染したら3日休む」「1週間休めば大丈夫」といった一律の基準があると思われがちですが、すべての人に共通する出勤停止期間が定められているわけではありません。
食品安全委員会のQ&Aでも、ノロウイルスは感染後もしばらく便中へ排出され、その期間には個人差があることから、食品事業の従業員を休ませる「一律の期間」を決めることはできないと説明されています。
厚生労働省によると、ノロウイルスの潜伏期間は24~48時間で、主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などです。通常は1~2日程度で症状が治まります。
ただし、症状が治まっても、便中へのウイルス排泄がなくなったわけではありません。症状が改善した後も通常1週間程度、長い場合には1か月程度、ウイルスの排泄が続くことがあるため、特に食品取扱者は、食品を介した二次汚染を防ぐため、より慎重な対応が必要です。
ここで重要なのは、「ウイルスを排泄する可能性がある期間」と「会社を休まなければならない期間」は同じではないということです。1週間~1か月、ウイルスの排泄が続く可能性があるからといって、すべての人がその期間ずっと出勤停止になるということではありません。仕事への復帰は、症状の回復状況だけでなく、仕事内容や勤務先のルール、食品を介した感染拡大リスクなどを踏まえて判断する必要があります。
症状が治った翌日から出勤してもいい?
症状が治まったからといって、翌日から出勤していいとは限りません。
下痢や嘔吐などの症状が治まっているか、通常業務を行える程度まで体調が回復しているかを確認したうえで、勤務先のルールに沿って復帰を判断します。
特に、下痢や嘔吐が続いている間は、本人の体調面だけでなく、トイレやドアノブなどを介して周囲に感染を広げる可能性もあるため、無理に出勤しないことが重要です。
また、症状が治まった後も、便中にノロウイルスが排泄されている可能性があります。仕事に復帰した後も、トイレの後や食事の前には石けんと流水で十分に手を洗い、手洗い後は共用タオルを避けてペーパータオルなどを使用するなど、周囲に感染を広げないための対策を続けることが大切です。
一般従業員と調理従事者・食品取扱者では仕事復帰の考え方が異なる
ノロウイルス感染後の仕事復帰を考えるうえで重要なのが、「どのような仕事をしているか」です。
事務職などの一般従業員では、本人の体調や職場内での感染拡大リスクを考慮して復帰を判断します。
一方、調理・盛付け・配膳・食品製造などを行う調理従事者・食品取扱者は、本人から周囲へ感染を広げるだけでなく、手指などを介して食品を汚染し、その食品を食べた多くの人へ感染を広げる可能性があります。
そのため、食品を直接取り扱う仕事では、本人の体調が回復しているかだけでなく、食品への二次汚染を防ぐという観点から、一般従業員より慎重に仕事復帰を判断する必要があります。
調理従事者・食品取扱者はいつ食品を扱う仕事に戻れる?
調理従事者・食品取扱者は、症状が治まったからといって、すぐに食品を直接扱う仕事へ戻れるとは限りません。
厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」は、大量調理施設を対象とした衛生管理の指針です。すべての飲食店や食品関連施設にそのまま適用されるものではありませんが、食品を取り扱う現場でノロウイルス対策を考えるうえで重要な公的資料です。
同マニュアルでは、調理従事者等に下痢、嘔吐、発熱などの症状がある場合は、調理作業に従事しないこととしています。
また、ノロウイルスを原因とする感染性疾患と診断された調理従事者等については、検便でノロウイルスを保有していないことが確認されるまで、食品に直接触れる調理作業を控えるなどの対応が望ましいとされています。
また、症状がなくても、ノロウイルスの無症状病原体保有者であることが判明した場合は、同様の対応が望ましいとされています。
「出勤停止」と「食品に直接触れる作業を控える」は同じではありません
ここで注意したいのは、厚生労働省のマニュアルが「陰性になるまで会社へ一切出勤できない」としているわけではないことです。
示されているのは、ノロウイルスを保有していないことが確認されるまで、食品に直接触れる調理作業を控えるなどの対応です。
そのため、勤務先の衛生管理方針によっては、食品に直接触れない業務へ一時的に変更する、事務作業を行う、自宅待機とするなどの対応が考えられます。
調理従事者・食品取扱者が仕事へ復帰する際は、「会社へ出勤できるか」と「食品を直接扱う業務へ戻れるか」を分けて考えることが重要です。具体的な復帰方法については、勤務先の衛生管理基準や就業規則に沿って判断してください。
食品を扱う仕事への復帰にあたり、ノロウイルスの陰性確認が必要な方へ
食環境衛生研究所では、ノロウイルス検便を実施しています。勤務先の衛生管理基準などにより、食品を直接扱う業務へ復帰する前に陰性確認を求められている方にご利用いただけます。 |
なぜ調理従事者は一般従業員より慎重な対応が必要?
食品取扱者を介したノロウイルス食中毒で特に注意したいのが、症状のない人がノロウイルスを保有し、手指などを介して食品を汚染する可能性があることです。
ノロウイルスでは、感染していても下痢や嘔吐などの症状が現れない「不顕性感染」がみられます。そのため、「症状がない=ノロウイルスを保有していない」とは限りません。
厚生労働省が紹介しているノロウイルス食中毒事例でも、調理従事者を介した二次汚染が大きな割合を占めています。
ノロウイルス食中毒の発生要因

この資料では、調理従事者による二次汚染が全体の85%を占め、そのうち不顕性感染の調理従事者による二次汚染が51%でした。
つまり、下痢や嘔吐などの症状がなくても、ノロウイルスを保有した調理従事者を介して食品が汚染され、食中毒につながる可能性があります。
※発生要因の割合は、厚生労働省が紹介した平成25年9月~12月のノロウイルス食中毒事例をもとにしたデータです。現在の発生割合を示すものではありません。
そのため、食品を取り扱う現場では、症状の有無だけで判断せず、健康管理や手洗い、食品への二次汚染防止などを組み合わせた衛生管理が重要です。
- 仕事復帰前にノロウイルス検便は必要?
一般従業員については、勤務先から求められていない限り、全員が陰性を確認してから復帰するという一律のルールはありません。
一方、厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、ノロウイルスの無症状病原体保有者であることが判明した調理従事者等について、検便でノロウイルスを保有していないことが確認されるまで、食品に直接触れる調理作業を控えさせるなどの適切な措置をとることが望ましいとされています。
そのため、調理従事者・食品取扱者では、勤務先の衛生管理基準などにより、食品を直接扱う業務へ戻る前に検便による陰性確認が必要になる場合があります。
- ノロウイルス検査で「陰性」なら、もう感染させる心配はない?
検査結果が陰性であっても、ノロウイルスを保有している可能性が完全に否定されるわけではありません。
ノロウイルス検査の陰性結果は、「採取した便検体から、その検査法の検出限界以上のノロウイルスが検出されなかった」ことを意味します。体内にノロウイルスが絶対に存在しないことや、他の人へ感染させる可能性が完全にゼロになったことまで保証するものではありません。
厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、ノロウイルス検査について、遺伝子型によらず概ね便1g当たり10^5オーダー(10万個程度)のノロウイルスを検出できる検査法を用いることが望ましいとしています。
ただし、検査には検出できるウイルス量に限界があります。検査結果が陰性であっても、検査の感度によってはノロウイルスを保有している可能性があるため、引き続き衛生管理が必要とされています。
つまり、仕事に復帰した後も、石けんと流水による十分な手洗いや、トイレ・調理場などの衛生管理を継続することが大切です。
ノロウイルス感染後の仕事復帰で注意したい5つのポイント
ノロウイルスは、症状が治まった後も便中にウイルスが排泄されることがあります。
そのため、仕事に復帰した後も、周囲へ感染を広げないための対策を続けることが大切です。
- 1.トイレの後は石けんと流水で十分に手を洗う
ノロウイルスは、感染者の便などを介して広がることがあります。
特にトイレの後は、石けんと流水で丁寧に手を洗いましょう。
アルコールによる手指消毒だけに頼らず、手洗いを基本とすることが重要です。
- 2.共用タオルの使用を避ける
手洗い後に共用タオルを使用すると、タオルを介してウイルスが広がる可能性があります。
職場では、ペーパータオルなどを使用し、できるだけタオルを共用しないようにしましょう。
- 3.トイレや手が触れる場所の衛生管理を続ける
症状が治まった後も、便中にノロウイルスが排泄されている可能性があります。
トイレの便座や水洗レバー、ドアノブなど、手が触れやすい場所についても、職場の衛生管理方法に沿って適切に清掃・消毒することが大切です。
- 4.食品取扱者は勤務先の衛生管理基準に従う
調理従事者・食品取扱者は、本人の体調が回復していても、食品を介してノロウイルスを広げるリスクを考慮する必要があります。
食品を直接扱う業務へ戻る時期については、検便結果や勤務先の衛生管理基準などを確認し、自己判断だけで復帰しないようにしましょう。
- 5.症状が再び現れた場合は無理に勤務を続けない
仕事復帰後に再び下痢や嘔吐などの症状が現れた場合は、無理に勤務を続けず、勤務先へ状況を伝えてください。
特に食品を取り扱う仕事では、症状がある状態で調理作業を続けないことが重要です。
- ノロウイルスに感染したら何日出勤停止になりますか?
ノロウイルスに感染した場合、すべての人に共通する「○日間出勤停止」という一律の基準はありません。一般従業員では、下痢や嘔吐などの症状が治まっているか、通常業務を行える程度まで体調が回復しているかを確認し、勤務先の就業規則や感染症対応ルールに沿って復帰を判断します。調理従事者・食品取扱者は、食品を介した感染拡大を防ぐため、一般従業員より慎重な対応が必要です。
- ノロウイルスの症状が治った翌日から出勤できますか?
症状が治まったからといって、必ず翌日から出勤できるとは限りません。下痢や嘔吐が治まっているか、食事や水分を十分に摂れているか、通常業務を行える程度まで体調が回復しているかを確認したうえで、勤務先のルールに沿って判断してください。また、症状が治まった後も便中にノロウイルスが排泄されることがあるため、仕事復帰後も石けんと流水による手洗いなどの感染対策を続けることが大切です。
- 調理従事者はノロウイルスが陰性になるまで出勤できませんか?
「陰性になるまで一切出勤できない」という意味ではありません。
厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、ノロウイルスによる感染性疾患と診断された調理従事者等について、検便でノロウイルスを保有していないことが確認されるまで、食品に直接触れる調理作業を控えるなどの対応が望ましいとされています。
勤務先によっては、食品に直接触れない業務への変更や事務作業、自宅待機などの対応が考えられます。- 仕事復帰前にノロウイルス検便は必ず必要ですか?
ノロウイルスに感染したすべての人が、仕事復帰前に検便を受けなければならないわけではありません。一般従業員では、勤務先から求められていない限り、全員が陰性を確認してから復帰するという一律のルールはありません。一方、調理従事者・食品取扱者では、勤務先の衛生管理基準などにより、食品を直接扱う業務へ戻る前にノロウイルス検便による陰性確認を行う場合があります。
- ノロウイルス検便で陰性なら、もう感染させる心配はありませんか?
陰性だからといって、感染させる可能性が完全にゼロになったことを意味するわけではありません。
陰性結果は、採取した便検体から、その検査法の検出限界以上のノロウイルスが検出されなかったことを示します。厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」でも、検査結果が陰性であっても、検査感度によってはノロウイルスを保有している可能性を踏まえた衛生管理が必要とされています。
そのため、仕事に復帰した後も、手洗いやトイレ・調理場の衛生管理を継続することが大切です。
食環境衛生研究所ではノロウイルス検便を実施しています
食環境衛生研究所では、ノロウイルス検便を実施しています。
調理従事者・食品取扱者の仕事復帰にあたり、勤務先の衛生管理基準などによってノロウイルスの陰性確認が必要な場合や、従業員の衛生管理を目的として検査を行いたい場合にご利用いただけます。
また、複数名の従業員をまとめて検査したい場合にも対応しています。
ノロウイルス検便をご検討の方は、検査方法や料金、結果報告までの流れをご確認のうえ、お申し込みください。
[ノロウイルス検便の詳細・お申し込みはこちら]
※検査結果が陰性であっても、ノロウイルスを保有している可能性が完全に否定されるわけではありません。
仕事復帰については、勤務先の衛生管理基準や就業規則などもあわせてご確認ください。
まとめ|ノロウイルスの出勤停止期間は一律ではありません
ノロウイルスに感染した場合、すべての人に共通する「○日間出勤停止」という一律の基準はありません。一般従業員は、下痢や嘔吐などの症状が治まり、通常業務を行える程度まで体調が回復しているかを確認したうえで、勤務先のルールに沿って復帰を判断します。
一方、調理従事者・食品取扱者は、本人の体調だけでなく、食品への二次汚染リスクも考慮する必要があります。
ノロウイルスによる感染性疾患と診断された場合、大量調理施設衛生管理マニュアルでは、検便でノロウイルスを保有していないことが確認されるまで、食品に直接触れる調理作業を控えるなどの対応が望ましいとされています。
また、症状が治まった後も便中へのウイルス排泄が続くことがあります。
仕事に復帰した後も、石けんと流水による手洗いなどの感染対策を続けることが大切です。
ノロウイルス感染後の仕事復帰は、「発症から何日経過したか」だけではなく、症状の回復状況・仕事内容・勤務先のルール・食品への二次汚染リスクを踏まえて判断しましょう。
