ノロウイルスの恐ろしい感染力と発生状況

ノロウイルスとは

ノロウイルスとは、感染性胃腸炎の原因となるウイルスです。ノロウイルスは、GⅠからGⅦのグループに分けられ、このうちヒトに感染性があるのは、GⅠとGⅡと言われています。1)ノロウイルスの潜伏期間は、1日から2日とされていて、ノロウイルスに感染すると嘔吐や下痢などの胃腸炎症状が出ます。ノロウイルスの感染経路は、経口感染です。経口感染とは、病原体に汚染された水や食べ物を口にして感染することをいいます。特にカキなどの二枚貝の生食や加熱不足は、ノロウイルス感染のリスクを高めます。ノロウイルスに感染したヒトから排出された吐しゃ物や糞便中にはノロウイルスが含まれており、症状が消失した後も患者のふん便中にノロウイルスが排出 (長い場合は 3 週間以上)されるため、二次感染に注意が必要です。2)便を介して感染するため、ノロウイルスの感染経路は、糞口感染とも言われます。

ノロウイルスの恐ろしい感染力とは

ノロウイルスの恐ろしい感染力とは、どれくらいのものなのでしょうか。過去のノロウイルスによる食中毒事件を事例にお伝えします。
 
事例1
平成20年1月。ノロウイルスを保有していた3名の従業員が作った大福もちを食べた431名のうち333名が発症しました。従業員は、3名とも症状や感染の自覚はなく、検便検査でノロウイルスが検出されました。トイレの手洗い設備には消毒液は設置されておらず、手拭きは布タオルを共用していました。この事例では、大福のあんは陰性でしたが、餅からノロウイルスが検出されたことから、製造の際の手洗いが不十分であったことが原因と判明しました。
 
事例2
平成26年1月。食パンを食べた小学校児童・教職員の1,271名の大規模なノロウイルスによる食中毒が発生しました。調査によるとノロウイルスを保有していた4名の従業員は、混入物の確認作業を行っていました。1枚1枚使い捨ての手袋を使用して作業を行っていましたが、トイレ使用後に温水が出ないため十分な時間をかけて手洗いを行わなかったことにより、手又は作業着にウイルスが残存し、使い捨て手袋にウイルスが付着したと推察されました。
 
厚生労働省, ノロウイルス食中毒の事例紹介より引用3)
この事例からノロウイルスの感染力の強さがわかります。
ノロウイルスの発生状況
 
このグラフは、平成25年9月~12月のノロウイルス食中毒の発生要因です。4)最も多い発生要因は、調理従事者の不顕性感染者からの二次汚染です。不顕性感染とは、ウイルスに感染しているが症状がない状態のことをいいます。先ほどの事例のように、不顕性感染者からの二次汚染により大規模なノロウイルス食中毒事件に繋がることを考えるとノロウイルス感染力の恐ろしさを感じます。では、なぜノロウイルスは感染力が強いのでしょうか。

ノロウイルスはなぜ感染力が強いのか

ノロウイルスは、乾燥に強く、アルコール消毒が効きません。下の図では、ノロウイルスの大きさがどのくらい小さいか、サルモネラ菌とインフルエンザウイルスと比較してみました。比較するとノロウイルスはかなり小さいことがわかります。ノロウイルスは、小さいため空気中に舞い上がる可能性もあります。また、比較的狭い空間などでの空気感染によって感染拡大したとの報告もある。5)このことから、空気の乾燥する時期にノロウイルスが発生することが考えられます。
 
ノロウイルスの大きさ
 

ノロウイルスの発生状況

弊社のある群馬県でのノロウイルスの定点あたりの発生数は、2023年11月16日現在0件6)ですが、ノロウイルスによる食中毒事件が報道などで聞くようになり、ノロウイルスの流行を感じます。

ノロウイルスを拡げないための対策

ノロウイルス対策は、予防四原則『持ち込まない』『つけない』『やっつける』『拡げない』を徹底しましょう。
 
『持ち込まない』
→二次汚染を防ぐために、下痢などの症状がある場合は、調理などに携わらないようにしましょう。
 
『つけない』
→ノロウイルスは、エタノール消毒液が効かないため、石鹸を用いて手首や爪など衛生的な手洗いを心がけましょう。
 
『やっつける』
→ノロウイルスを死滅させるために中心温度85~90℃、90秒以上の加熱をしましょう。
 
『拡げない』
→ノロウイルス感染が起こった際には、マスクや使い捨て手袋をしっかりとして、薄めた次亜塩素酸ナトリウムで汚染が考えられるところを消毒しましょう。詳しくは、リーフレットをご覧ください。
 
>>ノロウイルスリーフレットはこちら
 
ノロウイルスを拡げないためには、定期的な検便検査も有効です。弊社では、ノロウイルスを高感度で検出する検査が可能です。大量調理施設衛生管理マニュアルが推奨する感度の検査方法になります。
ノロウイルスの不顕性感染のスクリーニング検査には、リアルタイムRT-PCR法をご利用ください。
 
参考文献)
1)>>病原体検出マニュアル,ノロウイルス,病原体,はこちら
2)>>病原体検出マニュアル,ノロウイルス,臨床症状,はこちら
3)>>厚生労働省,ノロウイルス食中毒の事例紹介はこちら
4)>>厚生労働省, ノロウイルス食中毒発生要因はこちら
5)>>国立感染症研究所, ノロウイルス感染症とはこちら
6)>>群馬県病原体検査情報はこちら

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