生産工程における食品安全に関するリスク管理
A. 経営の基本
番号 | レベル | 管理点 | 適合基準 | 解説(取組例・備考) | 参考帳票 | リンク |
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5.1 | 必須 | HACCPベースの システム (一般要求事項) | 経営者は、HACCPの7原則12手順及び関連法に基づく前提条件プログラムを含むHACCPベースのシステムを整備しなければならない。 HACCPシステムはコーデックス委員会のHACCP策定方法(Codex 委員会 – 食品衛生の一般原則CXCI-1969、Rev 2020)に基づいて準備しなくてはならない。 上記のシステムにおいて、農産物に悪影響をもたらし得るレベルの潜在的な微生物または化学的汚染を最小化するため、インプットが適切に管理されるように4、5章を実践している(アレルゲン対応を含む)。 上記のシステムは必要に応じ標準作業手順書と作業指示書を含む。 リスク評価の結果から農場の食品安全マネジメントが適切であることを実証できる。 | この管理点では、コーデックス委員会、NACMCFが示す手順に基づいて、HACCPに取組むことが求められている。 「HACCPの7原則12手順」を巻末図1に示す。 この管理点は一般要求事項であるため、4章および5.2~5.10の管理点が実現され、農場の食品安全マネジメントが適切に運用されていることで確認される。 | ||
5.2 | 必須 | HACCPチームの 編成 | 商品管理の責任者は、HACCPチームを編成し、 5.生産工程における食品安全のリスク管理を実施している。 HACCPチームは、食品安全にかかわる多方面の知識と経験を有する者から構成されている。 外部の有識者から助言を求めてもよい。 *団体の場合には、団体内にHACCPチームがあればよい。 | この管理点は、「HACCPの7原則12手順(図1)」における【1HACCPチームを編成する】に該当する。 HACCPチームは、安全な農産物を生産・出荷するために、複数のメンバーで構成されることが理想である。 具体的には、下記のようなメンバーで構成されることが望ましい。 ・現場が分かる人・ 栽培、肥料、農薬、資材、微生物、衛生管理等の分野に 知識の深い人・ 品質管理部門の人・ 経営側の人・ 必要に応じて外部の有識者 例えば、以下のような例が考えられる。 例1:商品管理の責任者をはじめ、栽培・収穫工程に関わる部門、 出荷・調整に関わる部門の各担当者でHACCPチームを編成する。 例2:小規模経営であるため、農場責任者が商品管理責任者、 肥料管理責任者等を全て兼務しており、HACCPチームも農場責任者のみで編成した。 例3:商品管理の責任者、肥料・農薬の責任者と微生物に詳しい取引先の 品質管理担当者でHACCPチームを構成した。 チーム編成は、経営に応じて行われるため、上記の例に限らない | ||
5.3 | 必須 | 商品仕様の 明確化 | 商品または商品グループごとに下記の内容について商品に関する仕様を文書化している。 (1)商品名または商品グループ名 (2)意図した用途に適した品質のインプット(土・水・種苗・資材等) (3)栽培方法・調製方法・出荷方法 (4)食品安全上の意図した用途・ユーザー (5)農産物の食品安全危害要因に関する許容水準 (残留農薬、放射性物質、重金属類、微生物、異物等の公的な規格・基準が明確な場合) (6)保管条件・日持ち、配送条件 (7)表示内容 | この管理点は、「HACCPの7原則12手順(図1)」における 【2 製品を記述する】 【3 意図される用途を特定する】に該当する。 農産物の安全性に関する特徴として①~⑦までの記述を求めている。 公的な規格・基準や顧客要求事項がある場合には基準を明記する。 これが、管理をする上での指標となる。 インプットが意図した用途に適した品質かどうかは管理点15.1,16.1.1、25.1.3等で確認する。 | ||
5.4 | 必須 | 生産工程の 明確化 | (1) 生産工程のフローダイヤグラムが文書化されている。フローダイヤグラムは、 生産工程のつながりと管理点5.3(2)で明確にしたインプットがどの工程で使用されるかわかるようにしている。 (2) フローダイヤグラムは、現場での検証が実施されており正確である。検証の実施結果は記録されている。 | この管理点は、「HACCPの7原則12手順(図1)」における 【4 フローダイヤグラムを構築する】【5 フローダイヤグラムの現場確認を行う】に該当する。 ①フローダイヤグラムは、管理点5.5、5.6で求められている食品安全危害要因の抽出とリスク評価のベースとなるものである。生産工程及びインプットのつながりが分かるようにする。 ②では、作成したフローダイヤグラムに漏れている工程やインプットが無いか、確認する目的で現場での検証が求められている。 | ||
5.5 | 必須 | 食品安全危害要因の 抽出 | 管理点5.4のフローダイヤグラムに従って、起こることが予測される食品安全危害要因を抽出しリスト化している。 | この管理点は、「HACCPの7原則12手順(図1)」における 【6 各段階に関係のあるすべての潜在的ハザードを列挙し、ハザード分析を実施、特定されたハザードをコントロールする何らかの手段を考える(原則1)】に該当する。 管理点5.4で作成したフローダイヤグラムをもとに、自分の農場の各工程で起こることが予測される食品安全危害要因を列挙する。 フローダイヤグラムで挙げた工程は、食品安全危害要因が存在するか全て検討する。 食品安全危害要因には、例えば下記がある。 ・生物的危害要因:病原微生物 ・化学的危害要因:農薬・カビ毒・肥料・油類等の化学物質、重金属類 ・物理的危害要因:ガラス片・金属片・プラスチック片・木片・石・砂・降灰等の異物・放射性物質 | ||
5.5.1 | 必須 | 農産物特有の 食品安全危害要因の抽出 | 下記に該当する農産物・品目の場合は、 下記の事項を必ず食品安全危害要因として抽出している。 (1) りんご、梨の収穫及び農産物取扱い工程におけるパツリン(カビ毒)汚染 (2) 生食用野菜の収穫及び農産物取扱い工程における病原性大腸菌汚染 (3) 環境にさらされることによって生じ、リスクとなりうる微生物汚染(低温長期保管におけるリステリア・モノサイトゲネス等) | 例えば、自己点検の結果、経営者は食品安全や労働安全に必要な資材の調達を指示し、 スタッフに必要な資格を取得させ、必要な部署に人員を配置するよう指示している。 | ||
5.6 | 必須 | 食品安全危害要因の リスク評価 | (1) 管理点5.5で抽出された食品安全危害要因のリスク評価を実施している (2) 食品安全危害要因のリスク評価は、食品安全危害要因の起こりやすさ及び健康に対する悪影響の厳しさを考慮して実施している。 また、他の管理点でリスク評価が要求されている場合はその評価結果を利用している | この管理点は、「HACCPの7原則12手順」における 【6 各段階に関係のあるすべての潜在的ハザードを列挙し、ハザード分析を実施、特定されたハザードをコントロールする何らかの手段を考える(原則1)】に該当する (2) 例えば、起こりやすさ及び健康に対する悪影響の厳しさの考慮は、数字や「大・中・小」、また、言葉(「起こりやすいが厳しさは小さい」「起こりにくいが厳しさは大きい」等)を用いて実施する。 | ||
5.7 | 必須 | 管理手段の 特定と実施方法 | (1)管理点5.6のリスク評価に応じて食品安全危害要因を除去または低減するための管理手段を特定している。 管理手段は他の管理点の管理手段を引用してもよい。 (2) 管理点5.6でリスクが高いと評価された食品安全危害要因に対応する管理手段について、食品安全危害要因を除去又は許容水準以下に低減するために必要不可欠な場合には、CCPとして特定している。 CCPとする場合は、モニタリングが可能で、かつ、モニタリングの指標とその許容限界を設定できる場合としている。 CCPは、食品安全危害要因を除去又は許容水準以下に低減できる後工程の存在を考慮して特定している。 (3)上記(2)で特定したCCPについては管理する工程、食品安全危害要因、管理手段、モニタリングの仕組み(モニタリング指標、許容限界、モニタリング頻度、モニタリング手順、 責任者、使用するモニタリング機器(使用する場合)、モニタリングの記録、許容限界を逸脱した場合の措置)を運用計画として構築し文書化している。 (4) 上記(3)で特定した管理手段が、目的とする食品安全危害要因を除去または許容水準以下に低減できるかについて、運用開始前に妥当性を確認し記録している。 | この管理点は、「HACCPの7原則12手順(図1)」における【6(原則1)】【7 CCP(必須管理点)の決定(原則2)】【8 個々のCCPについて許容限界を確立する(原則3)】【9 個々のCPPについて、モニタリング・システムを確立する(原則4)】に該当する。 | ||
5.8 | 必須 | 商標の 適切な使用 | (1) 管理点5.7で定めた管理手段を実施している。 (2) 管理点5.7(3)のCCPのモニタリングで許容限界を逸脱した場合は、CCPの運用計画に定めた方法に従って処置している。 | この管理点は、「HACCPの7原則12手順(図1)」における【10 是正措置を確立する(原則5)】に該当する。 | ||
5.9 | 必須 | 管理手段の 検証 | (1) 管理点5.8で実施したCCPにおける管理手段の実施が有効であることを検証する手順(方法、責任者、頻度、記録)を定め文書化している。 (2) 上記(1)の検証を実施し記録している。 (3) 検証の結果、管理手段の実施が有効でない場合については対策を実施し記録している。対策には管理手段とその実施方法の見直しを含む。 なお、商品の安全性に影響がある場合には、管理点8.3商品の取扱い、及び9.1商品に関する苦情・異常への対応に従っている。 | この管理点は、「HACCPの7原則12手順(図1)」における【11 検証の手順を確立する(原則6)】に該当する。 | ||
5.10 | 必須 | 食品安全に 関するリスク管理の 見直し | (1) 管理点5.2~5.9の食品安全に関するリスク管理は、少なくとも年1回、 または工程の変更等で商品の食品安全に影響を及ぼし得る変化が生じた際にHACCPチームにより見直しされ更新されている。 (2) 上記(1)の見直しの結果は記録されており、管理点2.4.4のHACCPベースのシステムの見直しのインプットとしている。 | この管理点は、「HACCPの7原則12手順(図1)」における【12文書化と記録保持を確立する(原則6)】に該当する。 |