家族がノロウイルスに感染したら、まず何をする?
家族にノロウイルス感染が疑われる人が出た場合、まず意識したいのが、ウイルスを家庭内に広げないことです。
ノロウイルスの感染経路は主に経口感染です。感染者の便や嘔吐物に含まれるノロウイルスが人の手などを介して口に入ることで二次感染したり、家庭や共同生活施設などで人から人へ直接感染したりすることがあります。
家族に感染が疑われる場合は、次の3点をまず意識しましょう。
1.感染者が使用するものをできるだけ分ける
家庭内で完全に隔離することは難しい場合もありますが、できる範囲で接触する機会を減らします。
例えば、タオルを共用しない、感染者が使用する寝具を分ける、食事前やトイレ後の手洗いを徹底する、感染者が触れた場所をこまめに清掃するなどの対策があります。
特に注意したいのがタオルの共用です。感染が疑われる期間中は個人ごとに分けるか、ペーパータオルなどを利用する方法もあります。
2.嘔吐物や便には直接触れない
ノロウイルス感染者の便や嘔吐物には、多くのウイルスが含まれている可能性があります。
床などに嘔吐した場合は、素手で触れたり、雑巾でそのまま拭いたりするのではなく、使い捨て手袋、マスク、エプロンなどを着用して処理します。
3.石けんと流水による手洗いを徹底する
家庭内でノロウイルスを広げないためには、手洗いが重要です。
特にトイレの後、嘔吐物を処理した後、おむつを交換した後、調理をする前、食事をする前には、石けんと流水で丁寧に手を洗いましょう。
ノロウイルスは家族にどうやってうつる?
ノロウイルスは、口から体内に入ることで感染します。
主な感染経路としては、感染者の便や嘔吐物を処理した手から感染する経口感染です。ウイルスが付着したドアノブなどに触れその手で口を触る、感染した人が調理した食品を食べる、嘔吐物の処理が不十分で飛散したウイルスを口から取り込む、ノロウイルスに汚染された食品を食べる、などがあります。
家庭内で特に注意したいのが嘔吐です。嘔吐物が床やカーペットなどに広がると、周囲にもウイルスが付着する可能性があります。嘔吐物や便は乾燥する前に速やかに処理することが重要です。
家庭内感染を防ぐ7つのノロウイルス対策
家族にノロウイルス感染者が出たときは、家庭全体で感染対策を行います。
特に注意したい7つのポイントを紹介します。
1.嘔吐物や便を正しく処理する
床などに嘔吐してしまった場合は、感染を広げないよう慎重に処理します。
基本的な流れは次のとおりです。
1. 他の家族を嘔吐した場所から離す
2. マスク使い捨て手袋、エプロンなどを着用する
3. ペーパータオルなどで嘔吐物を静かに拭き取る
4. 汚染された床などを0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液で消毒する
5. 嘔吐物があった場所とその周囲(半径2m程度)を消毒する
6. 窓を開けるなどして換気する
7. 使用したマスクや手袋、ペーパータオルをビニール袋に入れる
8. 処理後に石けんと流水で十分に手を洗う
重要なのは、ウイルスを周囲に広げないよう早く処理することです。
2.トイレをこまめに清掃・消毒する
ノロウイルスでは下痢を起こすことも多いため、トイレは家庭内感染対策で重要な場所です。便座、便座のふた、水を流すレバーやボタン、ドアノブ、蛇口、手すりなど、手が触れやすい場所を意識して清掃します。
トイレが1つしかない場合は、感染者が使用した後に便座やレバーなどを清掃するなど、共用する場所の衛生管理を意識しましょう。
3.家族でタオルを共用しない
感染者がいる間は、個人ごとにタオルを分ける、使用したタオルをこまめに交換する、ペーパータオルを使用するなどの対策をするとよいでしょう。バスタオルについても、感染者と他の家族で共用することは避けます。
4.嘔吐物や便が付いた衣類・シーツは分けて処理する
嘔吐物や便が付着した衣類をそのまま他の家族の衣類と一緒に洗濯機へ入れるのは避けます。汚物が飛散しないように処理した後、洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いします。また、85℃で1分間以上の熱湯消毒や、次亜塩素酸ナトリウムなどによる消毒が有効とされています。
次亜塩素酸ナトリウムには漂白作用があるため、製品表示や衣類の洗濯表示を確認して使用してください。
5.食器や調理器具にも注意する
感染者が使用した食器は放置せず速やかに洗浄し、嘔吐物などで汚染された場合は適切に消毒します。また、感染している本人が家族の食事を作ることも、できるだけ避けます。ノロウイルスでは、感染した食品取扱者を介して食品が汚染され、食中毒につながる場合があります。
6.ドアノブなど家族が触れる場所を清掃する
ドアノブ、電気のスイッチ、冷蔵庫の取っ手、蛇口、テーブル、トイレ周辺など、家族全員が頻繁に触る場所を優先的に清掃しましょう。すべての場所を常に消毒し続けるのではなく、「多くの人が手で触れる場所」を優先すると対策しやすくなります。
7.看病や片付けの後は必ず手を洗う
嘔吐物を処理した後、おむつ交換後、トイレ清掃後、感染者を介助した後、調理前、食事前には、石けんと流水で丁寧に手を洗いましょう。
ノロウイルスの消毒には何を使えばいい?
一般的な感染症対策ではアルコール消毒が使用されることがありますが、ノロウイルス対策では、アルコールだけに頼るのではなく、物理的な洗浄や手洗い、次亜塩素酸ナトリウム、加熱などを適切に組み合わせることが重要です。
ドアノブや床などは約200ppmが目安
嘔吐物などを拭き取った後の床や調理器具等について、次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は塩素濃度約200ppmが目安です。家庭用の塩素系漂白剤は製品によって原液濃度が異なるため、使用する製品の濃度や使用上の注意を確認したうえで希釈してください。また、金属部分を消毒した場合は薬剤を使用した後に十分に拭き取ります。
家族がノロウイルスになったとき、お風呂はどうする?
嘔吐や下痢が続いているときは、本人の体調を優先し、無理に入浴する必要はありません。
症状が落ち着いて入浴できる場合でも、タオルやバスタオルを共用しない、下痢症状がある場合は浴室や脱衣所を清潔にする、入浴後は石けんと流水で手洗いする、体調が悪い人は家族の最後に入浴する、などに注意します。
家族がノロウイルスになったときの食事は?
ノロウイルスによる胃腸炎では、嘔吐や下痢によって水分を失いやすくなります。症状が強いときは無理に食事を取ることよりも、脱水を防ぐことが重要です。特に乳幼児や高齢者は脱水を起こしやすいため注意してください。
また、感染している本人が家族の食事を調理することは控えます。
家族への感染対策はいつまで必要?
ノロウイルスでは、症状がなくなった後も便からウイルスが排出されることがあります。
そのため、「元気になった=その日から感染対策をすべて終了してよい」とは限りません。
症状が改善した後も、トイレ後の手洗い、調理前の手洗い、タオルの管理、トイレの衛生管理など、基本的な感染対策を継続することが大切です。
この対策は、食品を扱う仕事をしている方にとって特に重要です。本人に症状がなくても、便中にノロウイルスを保有している「無症状病原体保有者」の状態が考えられるためです。
家族がノロウイルスになったら、仕事や学校は休む?
家族の中にノロウイルス感染者が出た場合、「自分には症状がないけれど、仕事を休んだ方がいい?」という疑問もあるかと思います。
感染した本人の場合
下痢や嘔吐などの症状がある場合は、無理に出勤・登校せず、体調の回復を優先します。
ただし、ノロウイルスについて全国一律に「発症後○日間は出勤停止」と決められているわけではありません。職場や学校、施設ごとのルールを確認しましょう。
症状のない同居家族の場合
家族がノロウイルスに感染したからといって、症状のない同居家族全員が一律に出勤停止になるわけではありません。
ただし、本人に症状がないか、勤務先に独自ルールがないか、食品を扱う仕事か、高齢者や乳幼児などと接する仕事か、などを確認する必要があります。
家族がノロウイルスになった食品従事者は特に注意
飲食店や食品工場、給食施設などで働く方は、家族にノロウイルス感染者が出た場合、一般的な家庭以上に注意が必要です。
ノロウイルスによる食中毒では、感染した食品取扱者から食品へウイルスが付着し、その食品を食べた多くの人に感染が広がるケースがあります。
ただし、注意したいのは「症状がある人だけ」ではありません。ノロウイルスに感染していても、明らかな症状が出ない場合があります。
特に、飲食店の調理従事者、食品製造工場の従業員、学校給食の調理従事者、保育園・幼稚園の給食従事者、病院・高齢者施設の調理従事者、宿泊施設の調理担当者など、食品に直接触れる仕事をしている方は、勤務先の衛生管理ルールを確認してください。
家族がノロウイルスになったら検査を受けた方がいい?
家族にノロウイルス感染者が出たからといって、無症状の家族全員が必ずノロウイルス検査を受けなければならないわけではありません。
一方、食品を扱う仕事に従事している場合は事情が異なります。本人に症状がなくても、同居家族がノロウイルスに感染した、職場内でノロウイルスが発生した、勤務先から検査を求められた、食品への二次汚染リスクを確認したい、ノロウイルス陽性後にウイルスを保有していないことを確認したい、といったケースではノロウイルス検便検査が検討されます。
無症状の場合は高感度な検査方法を検討する
ノロウイルスの検便検査には複数の方法があります。食環境衛生研究所では、リアルタイムRT-PCR法などによるノロウイルス検査を実施しています。
無症状者や食品を取り扱う方の確認では、便中のウイルス量が少ない可能性もあるため、高感度なリアルタイムRT-PCR法が選択肢となります。
特に食品取扱者では、「症状があるかどうか」だけでなく、「ノロウイルスを保有していないか」という視点も重要になります。
ノロウイルス陽性後の復帰確認にも検便が利用される
食品従事者などでは、勤務先や施設の衛生管理基準により、ノロウイルスを保有していないことを検便検査で確認してから食品に直接触れる作業へ復帰する運用が行われる場合があります。
「家族がノロウイルスになり、自分も感染していないか確認したい」「食品を扱う仕事なので勤務前に確認したい」「ノロウイルス陽性後、陰性になったか確認したい」といった場合には、勤務先のルールを確認したうえで、ノロウイルス検査をご検討ください。
ノロウイルス検査と医療機関での診断は目的が異なる
民間検査機関で行う検便検査と、医療機関で行う診断は目的が異なります。強い嘔吐や下痢、発熱などの症状がある場合や、脱水が疑われる場合は、検便検査だけで判断せず医療機関へ相談してください。
一方、食品従事者などが感染の有無やウイルス保有状況を確認する目的で、勤務先の衛生管理の一環として検便検査を利用するケースもあります。
体調が悪い場合は医療機関、食品衛生管理や保有状況の確認では検便検査というように、目的に応じて使い分けることが重要です。
こんな症状がある場合は医療機関へ相談を
特に、水分をほとんど取れない、嘔吐を繰り返している、尿の量が極端に減っている、ぐったりしている、意識状態に変化がある、強い腹痛が続いている、血便が出ている、などの場合は、自己判断せず医療機関へ相談してください。
また、乳幼児や高齢者では脱水や嘔吐物の誤嚥にも注意が必要です。
- 家族がノロウイルスになったら、同じ部屋にいても大丈夫?
同じ部屋にいるだけで必ず感染するわけではありません。
ただし、嘔吐物や便、感染者が触れた場所などを介して感染する可能性があります。
可能であれば寝室を分ける、タオルを共用しない、こまめに手を洗うなど、接触機会を減らす対策を行いましょう。- 家族からうつった場合、何日くらいで症状が出る?
ノロウイルスの潜伏期間は一般的に24~48時間です。
家族に感染者が出た場合は、自分自身に吐き気、下痢、腹痛などの症状が出ていないか注意しましょう。- 家族全員がノロウイルスになることはある?
あります。家庭はトイレ、洗面所、食器、ドアノブなどを家族で共有するため、適切な対策を行わないと家庭内で感染が広がる可能性があります。
- ノロウイルスにはアルコール消毒をすれば大丈夫?
ノロウイルスには、アルコールが効きにくいと言われています。
アルコール消毒だけではなく、石けんと流水による手洗い、洗浄、次亜塩素酸ナトリウム、加熱などを適切に組み合わせます。- ノロウイルス感染者の洗濯物は家族と一緒に洗っていい?
嘔吐物や便が付着した衣類は、汚れた状態のまま他の衣類と一緒に洗濯機へ入れないようにします。汚物が飛び散らないように処理した後、洗剤を入れた水で静かにもみ洗いし、必要に応じて熱水や適切な消毒方法で対応します。
- トイレが1つしかない場合はどうすればいい?
感染者専用のトイレを用意できない場合は、使用後に便座やふた、レバー、ドアノブ、蛇口など、手が触れる場所を意識して清掃・消毒します。
また、トイレ後の石けんと流水による手洗いを徹底してください。- 症状がなくなったら、もう家族にはうつらない?
症状がなくなった後も、便中からノロウイルスが排出されることがあります。
そのため、体調が回復した直後から手洗いやトイレの衛生管理をやめるのではなく、基本的な感染対策を継続しましょう。- 家族がノロウイルスになったら会社に報告した方がいい?
勤務先によって対応が異なります。特に食品製造、飲食店、学校給食、病院、高齢者施設などでは独自の衛生管理ルールを設けている場合があります。
本人に症状がなくても、同居家族にノロウイルス感染者が発生した場合の報告ルールがないか確認してください。- 家族がノロウイルスになったら検便は必要?
家族全員に一律で検便が必要なわけではありません。
ただし、食品を直接扱う方などでは、勤務先の衛生管理基準によってノロウイルス検査が求められる場合があります。
また、無症状でのノロウイルス保有を確認したい場合は、高感度なリアルタイムRT-PCR法による検便検査が選択肢となります。
まとめ|家族にノロウイルスが発生したら「家庭内で広げないこと」が重要
家族にノロウイルス感染者が発生した場合は、感染者の体調管理とあわせて、家庭内で感染を広げないための対策が重要です。
特に、嘔吐物や便は乾燥する前に適切に処理する、石けんと流水による手洗いを徹底する、トイレやドアノブなど手が触れる場所を清掃する、タオルを家族で共用しない、汚染された衣類や食器を適切に洗浄・消毒する、症状がなくなった後も衛生管理を継続することを意識しましょう。
また、家族にノロウイルス感染者が出た場合、自分自身に症状がなくても感染している可能性があります。
特に、飲食店、食品工場、学校給食、保育施設、病院、高齢者施設などで食品を直接取り扱う方は、ノロウイルスによる食品への二次汚染を防ぐことが重要です。
勤務先の衛生管理ルールを確認し、「感染していないか確認したい」「無症状だけれど食品を扱うため検査したい」「陽性後、ノロウイルスを保有していないことを確認したい」という場合は、ノロウイルス検便検査をご検討ください。
食環境衛生研究所では、高感度なリアルタイムRT-PCR法によるノロウイルス検査に対応しています。
