インフルエンザの出勤停止は何日?大人の基本的な考え方
大人の季節性インフルエンザでは、「必ず5日間休む」などの全国共通の法定日数はありません。季節性インフルエンザは5類感染症に該当し、感染症法による就業制限の対象ではないためです。
一方で、勤務先が独自に出勤を控える期間や復帰条件を定めている場合があります。まずは上司や人事・労務担当者に連絡し、次の点を確認してください。
- 勤務先のルール:出勤を控える期間、復帰条件、連絡方法。
- 医師からの指示:療養期間や仕事復帰について、個別の指示があるか。
- 現在の体調:発熱や強いだるさなどが続いていないか、通常の業務に戻れる状態か。
勤務先に明確なルールがない場合も、自己判断だけで復帰せず、症状の経過や医師の指示を伝えて相談しましょう。
参考:
長野労働局「労働条件ハンドブック」相談事例・賃金に関するQ6(PDF)
「発症後5日・解熱後2日」は、大人にも適用される?
よく見かける「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」という期間は、学校保健安全法施行規則に基づく学校の出席停止基準です。幼児の場合は、解熱後3日を経過するまでとされています。
この学校の基準が、大人の出勤に法律上そのまま適用されるわけではありません。勤務先が同様の基準を設けている場合は、その規定に沿って日数を確認します。
なお、学校の出席停止基準には、学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めた場合の例外があります。
参考:
厚生労働省「令和8年度冬季 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」Q18
出勤停止期間を数えるときの「発症日」「解熱日」とは?
勤務先から「発症後5日、かつ解熱後2日を経過してから復帰する」と案内された場合は、発症からの日数と解熱からの日数を、それぞれ確認する必要があります。
発症日は、診断を受けた日とは限らない
発症日は、一般に発熱などの症状が出始めた日を指します。インフルエンザと診断された日や、検査で陽性になった日と一致するとは限りません。
例えば、月曜日に発熱し、火曜日に受診してインフルエンザと診断された場合、通常は月曜日が発症日になります。発症日がはっきりしない場合や、発熱がない場合は、診察した医師に確認しましょう。
発症日・解熱日は0日目、翌日を1日目として数える
学校の基準と同じ数え方を採用している場合、発症した当日を0日目、翌日を1日目とします。解熱した日も0日目とし、翌日から数えます。
この数え方では、土日・祝日も含めて数えます。「出勤する予定だった日」だけを数えるわけではありません。
また、解熱剤によって一時的に熱が下がっただけで、回復したとは判断できません。解熱日の判断に迷う場合や再び発熱した場合は、医師に相談してください。
月曜日に発症し、木曜日に解熱した場合の計算例
以下は、勤務先が「発症後5日、かつ解熱後2日を経過するまで出勤を控える」という基準を採用している場合の例です。すべての大人に共通する復帰基準ではありません。
この表は左右にスクロールして閲覧できます。
この例では、日数条件を満たすのは日曜日です。ただし、実際の復帰日は体調や医師の指示、勤務予定なども踏まえて勤務先と確認します。
同じ月曜日の発症でも、解熱したのが金曜日なら、解熱後2日を経過するのは日曜日の終了時です。その場合、両方の日数条件を満たすのは月曜日になります。発症から5日経過したことだけで判断せず、解熱後の日数も確認しましょう。
日数の数え方の参考:
浜松市「インフルエンザ・新型コロナウイルス経過報告書」
※学校向け資料を参考に、上記の勤務先ルールを仮定して作成した計算例です。
熱が下がれば出勤できる?解熱後も感染対策が必要
熱が下がっても、すぐに周囲へうつす可能性がなくなるわけではありません。
厚生労働省によると、インフルエンザでは発症前日から発症後3~7日間、鼻やのどから感染性のあるウイルスを排出するとされています。排出期間には個人差があり、解熱後も排出が続く場合があります。
この「3~7日間」は、一律の法定出勤停止期間を示す数字ではありません。また、特定の日数が経過すれば必ず感染性がなくなる、という意味でもありません。
勤務先の復帰条件を確認したうえで、咳やくしゃみが残っている場合は、不織布マスクの着用など、周囲にうつさないための配慮を続けましょう。マスクを着ければ、発熱中や療養が必要な状態で出勤してよいわけではありません。
高熱が続く、呼吸が苦しいなど、症状が強い場合は、復帰日の調整よりも医療機関への相談・受診を優先してください。
参考:
厚生労働省「令和8年度冬季 ARI総合対策に関するQ&A」Q15・Q18
インフルエンザで休んだ場合の給与は?有給・欠勤・休業手当の違い
インフルエンザで休んだ場合の給与は、利用する休暇制度や、仕事を休むことになった事情によって異なります。「インフルエンザだから必ず有給」「出勤停止だから必ず無給」とは限りません。
年次有給休暇や病気休暇を使う場合
年次有給休暇が残っている場合は、本人の申請により、療養のために取得することができます。急な発熱で休む場合も、できるだけ早く勤務先に連絡し、申請方法を確認しましょう。
会社によっては、年次有給休暇とは別に病気休暇などを設けています。有給か無給か、何日利用できるかは会社ごとに異なります。
参考:
厚生労働省「病気療養のための休暇」
会社から休むよう命じられた場合の休業手当
会社の判断で休業を命じられ、その休業が労働基準法上の「使用者の責に帰すべき事由」に当たる場合、会社には平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務があります。
ただし、病気で仕事ができないために療養する場合と、仕事ができる状態なのに会社独自の判断で休業させる場合とでは、扱いが異なります。「会社から休めと言われた」という事実だけで、必ず休業手当が支払われると決まるわけではありません。
休業の理由、医師の判断、本人の就労可能な状態などを確認する必要があります。なお、「平均賃金の60%」は、手取り給与を単純に60%にするという意味ではありません。
給与の扱いに疑問がある場合は、まず人事・労務担当者に説明を求め、必要に応じて労働基準監督署などへ相談してください。
参考:
長野労働局「労働条件ハンドブック」賃金に関するQ6(PDF)、
山形労働局「労務処理の留意点」休業手当の支払
仕事ができず給与が支払われない場合は、傷病手当金の対象になることも
業務外の病気で仕事に就けず、十分な給与を受けられない場合は、加入している健康保険の傷病手当金の対象になることがあります。
協会けんぽでは、主に次の要件を満たす必要があります。
- 業務外の病気やけがの療養のための休業であること。
- 療養のため、仕事に就くことができないこと。
- 連続する3日間の待期を含め、4日以上仕事に就けなかったこと。
- 休業期間の給与が支払われないこと。給与が傷病手当金より少ない場合は差額支給の対象になることがあります。
要件を満たす場合、待期完成後の4日目以降で仕事に就けなかった日が支給対象になります。待期の3日間には、有給休暇や土日・祝日などの公休日も含まれます。
ただし、インフルエンザと診断されただけで自動的に支給されるものではありません。加入状況や申請書類も含め、勤務先や加入先の健康保険に確認してください。傷病手当金は、会社が支払う休業手当とは別の制度です。
参考:
全国健康保険協会「傷病手当金」
仕事復帰に治癒証明書・陰性証明書は必要?
厚生労働省は、インフルエンザなどの急性呼吸器感染症から職場に復帰する際、治癒証明書や陰性証明書の提出は不要としています。
陰性を証明することが一般的に難しいことや、証明書の作成が医療機関の負担になることから、職場が従業員に提出を求めることは望ましくないとされています。
また、欠勤時の「り患証明書」「陽性証明書」についても、厚生労働省は提出を求めることは望ましくなく、不要としています。
勤務先からこれらの証明書を求められた場合は、厚生労働省の案内を共有し、担当者に確認しましょう。
なお、傷病手当金の申請などで必要になる医師の意見の記入等は、職場復帰のための治癒証明書・陰性証明書とは別の手続きです。
参考:
厚生労働省「令和8年度冬季 ARI総合対策に関するQ&A」Q19・Q20
インフルエンザの出勤停止についてよくある質問
A型とB型で、出勤停止期間は違いますか?
季節性インフルエンザのA型・B型について、型ごとに全国一律の法定出勤停止日数が定められているわけではありません。どちらの場合も、勤務先の規定や医師の指示、症状の経過を踏まえて判断します。
家族がインフルエンザになった場合、自分も出勤停止になりますか?
家族が季節性インフルエンザに感染したという理由だけで、本人に全国一律の法定出勤停止期間が生じるわけではありません。ただし、職場独自の対応がある場合は確認が必要です。
自分にも発熱や咳などが出た場合は、無理に出勤せず、勤務先に連絡して医療機関への相談を検討しましょう。
会社から出勤を求められた場合はどうすればよいですか?
発熱や強い体調不良があるときは、無理をして出勤しないことが大切です。現在の症状、発症した日、医師から受けた指示を具体的に伝え、療養と復帰の予定を相談してください。
必要に応じて、人事・労務担当者や産業医にも相談しましょう。出勤日だけでなく、欠勤・有給休暇などの扱いも確認しておくと、認識の違いを防ぎやすくなります。
参考:
長野労働局「労働条件ハンドブック」賃金に関するQ6(PDF)、
厚生労働省「令和8年度冬季 ARI総合対策に関するQ&A」Q15
職場でインフルエンザを広げないための対策
感染対策では、体調が悪いときに休めることに加えて、日常的な手洗い、咳エチケット、換気などが重要です。
- 手洗い:外出後や食事前などに、石けんと流水で手を洗いましょう。
- 咳エチケット:咳やくしゃみが出る場合は、不織布マスクを着用するなど、周囲へ飛沫を広げないよう配慮しましょう。
- 換気:職場の設備や環境に応じて、こまめな換気を行いましょう。
- 休養:十分な睡眠と、バランスのよい食事を心がけましょう。
- 予防接種:インフルエンザワクチンには、発症する可能性を低減させ、重症化を防ぐ効果が期待できます。ただし、感染を完全に防ぐものではありません。
手洗いの方法は、以下の動画でも紹介しています。
参考:
厚生労働省「インフルエンザ(総合ページ)」予防と対策
まとめ|出勤停止の日数だけでなく、勤務先の規定と体調を確認する
大人の季節性インフルエンザには、全国一律の法定出勤停止期間はありません。仕事への復帰は、勤務先の規定、医師の指示、症状の経過を踏まえて相談しましょう。
- 「発症後5日・解熱後2日」は学校の出席停止基準であり、大人の出勤に一律適用される法律ではありません。
- 勤務先が同じ基準を採用している場合は、発症日・解熱日をそれぞれ0日目として、両方の日数条件を確認します。
- 解熱後もウイルスを排出する場合があるため、熱が下がったことだけで復帰を判断しないことが大切です。
- 給与は休暇制度や休業の事情で異なり、条件を満たせば休業手当や傷病手当金の対象になる場合があります。
- 厚生労働省は、職場復帰のための治癒証明書・陰性証明書の提出は不要としています。
発症日、体温の変化、医師からの指示を記録しておくと、勤務先への説明や復帰日の相談に役立ちます。
参考資料
企業・製品開発担当者の方へ|インフルエンザウイルスの不活化試験
食環境衛生研究所では、資材・製品・設備などを対象とした殺菌・ウイルス不活化試験を実施しています。インフルエンザウイルスを用いた評価試験についてもご相談いただけます。
試験対象や評価したい性能、ご予算などに応じて試験内容をご提案します。詳しくは、殺菌・ウイルス不活化試験の案内をご確認ください。
こちらは製品などの性能を評価する試験です。個人のインフルエンザ感染の診断や、職場復帰の可否を判定する検査ではありません。
