サルモネラ菌が死滅する加熱温度は「中心75℃で1分以上」が基本

サルモネラ菌は熱に弱く、家庭での食中毒予防では食品の中心部を75℃で1分以上加熱することが基本です。これは厚生労働省が示す加熱の目安であり、食品の表面や調理器具の設定温度ではなく、最も火が通りにくい部分が75℃に達してから、その状態を1分以上保つことを意味します。
例えば厚みのある鶏もも肉は、表面に焼き色が付いていても、中心部には十分に熱が届いていないことがあります。食品の厚さや形状、調理前の温度、一度に加熱する量によっても、中心部が温まるまでの時間は変わります。
食品用の中心温度計を使い、最も厚い部分など火の通りにくい位置を確認すると、加熱状態を判断しやすくなります。
なお、サルモネラ菌を減らすには温度だけでなく、その温度を維持する時間も重要です。厚生労働省は食肉について、75℃で1分と同等の加熱条件として、70℃で3分、65℃で15分などを示しています。
ただし、これらは食肉について示された条件であり、すべての食品にそのまま当てはめられるわけではありません。家庭での一般的な加熱調理では、中心部75℃で1分以上を基本にしましょう。
□検査担当者からのひとこと

肉の色が変わったり、刺したときに透明な肉汁が出たりしても、それだけで中心部が75℃に達したとは判断できません。食品衛生の観点では、見た目ではなく、最も温まりにくい部分で必要な温度と時間を確保できたかが重要です。
温度計がない場合は、食材の厚みや大きさをそろえるなど、中心部まで熱を通しやすくする工夫をしましょう。
サルモネラ菌は電子レンジ・冷凍・熱湯の加熱で死滅する?
まずは電子レンジ・冷凍・熱湯ごとにサルモネラ菌が死滅するかをまとめましたので参考にしてみてください。
電子レンジや熱湯でも、食品の中心部が必要な温度・時間に達すればサルモネラ菌への加熱対策になります。一方、冷蔵・冷凍は菌の増殖を抑えるための管理であり、十分な加熱の代わりにはなりません。
ここからは、電子レンジ・冷凍・熱湯別でサルモネラ菌は死滅するかについて解説していきます。
電子レンジでも死滅させられるが「600Wで○分」と一律には言えない
電子レンジも加熱方法の一つであるため、サルモネラ菌を死滅させることは可能です。ただし、「600Wで◯分加熱すれば死滅できる」のように、電子レンジでサルモネラ菌が死滅する基準は一律に言えません。
例えば同じ600W・3分でも、食品の量や厚さ、冷凍状態、容器などが違えば、温まり方は変わります。加熱ムラによって熱い部分と冷たい部分が同時に残ることもあり、それによりサルモネラ菌が死滅する・しないケースが発生してしまうのです。
冷蔵・冷凍は増殖を抑えるための管理で、殺菌にはならない
「冷凍すればサルモネラ菌が死ぬ」と考えるのは誤りです。
凍結によって一部の菌が減少する場合はあっても、サルモネラ菌を完全に死滅させる方法にはなりません。冷凍した肉を解凍して加熱不足のまま食べれば、サルモネラ菌が残っている可能性があります。
冷蔵・冷凍は、食品の保存中に菌を増やしにくくするための対策です。解凍は冷蔵庫などで行い、加熱が必要な食品は解凍後も中心部まで十分に加熱しましょう。
熱湯・100℃でも「食品中心部」が必要条件に達したかで判断する
沸騰したお湯は100℃前後になりますが、そこへ食品を入れた瞬間に食品全体が100℃になるわけではありません。そのため、沸騰したお湯に食品を入れればサルモネラ菌が死滅するとは言い切れません。
例えば厚い鶏肉を短時間湯にくぐらせても、表面と内部では温度が異なります。熱湯を使う場合も、湯温や浸した時間だけではなく、食品の最も温まりにくい部分が加熱されたかで判断するべきです。
加熱してもサルモネラ菌のリスクが残るケース

「中心温度75℃で1分以上」と理解していても、加熱したつもりで温度が不足していたり、加熱後に菌が付着したりすれば食中毒につながる可能性があります。
加熱してもサルモネラ菌のリスクが残るケースとしては下記が挙げられます。
- 中心部まで必要温度に達していない
- 電子レンジなどで加熱ムラがある
- 加熱後に手指・包丁・まな板などから再汚染する
- 加熱後の保存・提供条件が悪く、残存菌や再付着した菌が増殖する
中心部まで必要温度に達していない
鶏もも肉やハンバーグなどの厚い食品では、表面が十分に焼けても中心部だけ温度が低いままになることがあります。
調理時間を守っていても、食材を大きく切ったり、一度に入れる量が多かったりすると、想定より加熱に時間がかかります。加熱不足が疑われるときは、中心部の温度を確かめ、必要な温度・時間に達するまで追加加熱してください。
電子レンジなどで加熱ムラがある
電子レンジで温めた弁当や冷凍食品では、一部が熱くても、別の部分に加熱不足が残ることがあります。とくに複数の食材が入った食品や大きな食品では、冷たい部分が残っていないか確認する必要があります。
加熱後に手指・包丁・まな板などから再汚染する
十分な加熱で菌を減らしても、その後に生肉を切った包丁やまな板を洗わず使えば、調理済み食品にサルモネラ菌が付着する可能性があります。生肉を扱った手で盛り付けたり、肉に触れたトングを加熱後の食品にも使ったりする場合も同様です。
生の食品と加熱済み食品で器具を分けるか、作業ごとに洗浄・消毒し、手洗いを徹底しましょう。
加熱後の保存・提供条件が悪く、残存菌や再付着した菌が増殖する
加熱後の料理を長時間室温に置くと、加熱不足で残った菌や二次汚染によって付着した菌が増える可能性があります。特に作り置きや弁当、調理後に運搬する料理では、食べるまでの時間と温度などの管理状態が重要です。
調理後すぐに食べない場合は、清潔な浅い容器に小分けして速やかに冷蔵するなど、食品に合った保存を行いましょう。食品を提供する事業者は、加熱時の中心温度だけでなく、盛り付け・冷却・運搬・提供時の時間や温度、作業者と器具の動線まで確認する必要があります。
【食材別】サルモネラ菌による食中毒を予防する加熱・取り扱いポイント

サルモネラ菌による食中毒に注意したい食品としては鶏肉・卵・ひき肉が挙げられます。また、加熱済みの食品や作り置きの食べ物もサルモネラ菌の食中毒リスクがあるので注意が必要です。
それぞれサルモネラ菌による食中毒を予防するポイントをまとめましたので参考にしてみてください。
- 鶏肉:中心温度75℃以上で1分以上の加熱が基本
- 卵:半熟や生食は避けてしっかり加熱する
- ひき肉・ハンバーグ:表面だけでなく内部まで十分に加熱する
- 加熱済み食品・作り置き:再汚染と保存温度に注意する
鶏肉|中心温度75℃以上で1分以上の加熱が基本
鶏肉はサルモネラ菌の原因食品となることがあり、中心部まで十分に火を通すことが重要です。もも肉や骨付き肉など厚みのある部位では、表面と内部に温度差が生じやすいため、最も火が通りにくい部分を中心に確認してください。
唐揚げや照り焼きでは、同じフライパン・鍋で調理しても肉の厚さや大きさによって中心部の温度が異なります。大きさをそろえ、詰め込みすぎずに調理し、心配な場合は中心温度計を活用しましょう。
卵|半熟や生食は避けてしっかり加熱する
卵はそのまま生で食べる機会も多い食材ですが、サルモネラ菌による感染リスクがゼロではありません。とくに卵の殻の表面には、サルモネラ菌が付着している可能性があります。
そのため、卵は半熟や生食は避けて、できるだけしっかりと加熱して食べることが推奨されます。
卵焼きや目玉焼きなど、中心部まで固まっている状態が理想です。オムレツや半熟のゆで卵は、見た目には美味しそうでも加熱が不十分である可能性があるため注意が必要です。
ひき肉・ハンバーグ|表面だけでなく内部まで十分に加熱する
ひき肉は、加工の過程で肉の表面に付いていた菌が内部に入り込む可能性があります。
そのため、ハンバーグやミートボールは、表面を焼いただけでは十分ではありません。形や厚みが不ぞろいな場合は、同じ時間焼いても中心部の加熱状態が変わります。
特に厚みのあるハンバーグは、最も厚い部分の中心温度を確認し、75℃で1分以上を基本に加熱しましょう。牛・豚肉を使った料理では、サルモネラ菌以外の病原微生物にも注意が必要です。
加熱済み食品・作り置き|再汚染と保存温度に注意する
加熱済みの食品や作り置きでは、加熱後に菌を付けないことと、菌を増やさないことが大切です。
例えば、焼いた鶏肉を生肉用のまな板に戻したり、作り置きのおかずを室温で長時間放置したりすると、十分な加熱をした意味が薄れてしまいます。加熱済み食品は清潔な器具で扱い、すぐに食べない場合は速やかに冷却・冷蔵してください。保存後に温め直すときも、中心部まで十分に加熱しましょう。
サルモネラ菌による食中毒の発生事例から見る食品や調理工程ごとの注意点
サルモネラ菌による食中毒は、国内で毎年発生しています。厚生労働省が公表した全国の食中毒統計によると、過去10年間(2016~2025年)のサルモネラ属菌による食中毒の発生件数は以下のとおりです。
加熱や衛生管理に気を付けていても、食品の大きさによる加熱不足や、調理後の取り扱いなど、思わぬ工程にリスクが残る場合があります。実際に起きた事例を知っておくと、どこで注意すべきかを考えることにつながることでしょう。
ここからは、サルモネラ菌による食中毒の発生事例をもとに、食品や調理工程ごとの注意点を解説します。
2025年・山梨県|花火大会の豚の丸焼きで11人が発症
2025年、山梨県笛吹市の花火大会で、会場のテント下で調理・提供された豚の丸焼きが原因となり、11人がサルモネラ食中毒を発症しました。主催者はイベント前に県の衛生指導を受けていましたが、豚の丸焼きは相談対象に含まれていませんでした。
この事例で避けたいのは、イベントで提供する食品を事前の衛生確認から漏らすことです。特に豚の丸焼きのような大きな肉は、表面が焼けても中心部まで十分に熱が届いていない場合があります。提供する食品はすべて事前に保健所へ相談し、肉の中心温度と保持時間を確認したうえで、清潔な器具で切り分けましょう。
2025年・愛媛県|ハンバーグや目玉焼きが入った仕出し弁当で76人が発症
2025年、愛媛県伊予市の弁当店が製造した仕出し弁当が原因となり、76人がサルモネラ食中毒を発症しました。弁当にはハンバーグ、目玉焼き、サラダなどが入っていましたが、どのおかずが汚染されていたか、また加熱や取り扱いのどの工程に問題があったかまでは明らかになっていません。
この事例を踏まえて、複数のおかずを詰める弁当では、一品を加熱しただけで弁当全体が安全になったと考えないことが大切です。ハンバーグや目玉焼きは中心部まで十分に加熱し、生肉や生卵に使った手指・器具でサラダや加熱済みのおかずを扱わないようにしましょう。調理後の長時間の常温放置も避けてください。
2025年・茨城県|社員寮の食堂で28人が発症し、調理従事者からも菌を検出
2025年、茨城県神栖市の社員寮で、食堂の料理を食べた28人がサルモネラ食中毒を発症しました。調査では患者13人だけでなく、調理従事者1人からもサルモネラ属菌が検出されています。
この事例から注意したいのは、食材の加熱だけでなく、調理する人を介した汚染も防ぐことです。調理従事者は日々の体調確認を行い、下痢や腹痛などがあるときは食品を扱わないようにします。
また、生の食材に触れた後や盛り付けに移る前には手を洗い、調理済み食品に菌を付けない作業手順を徹底しましょう。
サルモネラ菌の原因食品を加熱不足で食べてしまったときの対処法

鶏肉や卵など、サルモネラ菌が付着している可能性のある食品を、十分に加熱しないまま食べてしまった場合は、体調の変化を慎重に観察することが重要です。
サルモネラ菌による食中毒は早ければ食後6時間程度、遅い場合でも72時間以内に症状が現れるのが基本です。
万が一、症状がみられた場合、医療機関を受診することを検討しましょう。とくに、「38度以上の高熱が続く」「激しい腹痛がある」といった場合などは、自己判断せず医師の診察を受けましょう。また、乳幼児・高齢者・妊婦・基礎疾患のある方は、重症化しやすいため、たとえ症状が軽くても早めの受診が推奨されます。
症状が出ていない場合でも、不安があるときはかかりつけ医や地域の保健所に相談するのもよいでしょう。同じ食事をとった人に体調不良が見られる場合には、早めに情報を共有しておくことが大切です。
サルモネラ菌は100℃なら死滅する?
食品の中心部が100℃に達し、十分な加熱時間が確保されれば、サルモネラ菌への加熱対策としては有効です。ただし「お湯が100℃だから、食品も安全」とは限りません。厚い食品を短時間湯にくぐらせるだけでは中心部が十分に温まらないため、食品内部の加熱状態を基準に判断してください。
再加熱すればサルモネラ菌は死滅する?
中心部まで適切に再加熱すれば、残存・再付着したサルモネラ菌を減らすことができます。ただし、長時間の常温放置で食品の状態が悪くなった場合、再加熱すれば必ず食べられるわけではありません。保存時間や保存温度に不安がある食品は、無理に食べないでください。
低温調理でもサルモネラ菌対策はできる?
温度と保持時間を適切に管理できれば、75℃より低い温度でも加熱殺菌は可能です。ただし、低温調理では中心部が設定温度に達するまでの時間も考慮する必要があります。自己流で時間を短縮せず、食材や機器に合った公的な加熱条件に従ってください。
まとめ
サルモネラ菌による食中毒を防ぐには、食品の中心部を75℃で1分以上加熱することが基本です。
特に鶏肉やハンバーグなど厚みのある食品は、表面に焼き色が付いても中心部に熱が届いているとは限りません。最も火が通りにくい部分の温度を確認し、電子レンジを使う場合は加熱ムラにも注意しましょう。
また、十分に加熱した食品でも、生肉を扱った手指や器具から菌が付着したり、調理後の保存状態が悪く菌が増殖したりすると、食中毒につながるおそれがあります。「中心部まで十分に加熱する」「加熱後は菌を付けず、増やさない」の両方を意識して調理することが大切です。
