水質検査について~農業用水(水稲)に関する基準とは?~
農業用水の要望水質(水稲)(昭和45年(1970)農林省公害研究会)
「農業用水の要望水質(水稲)」は、農林水産省が昭和44年春から約1か月間、汚濁物質別に「水稲」に被害を与えない限界濃度を検討し、学識経験者の意見も取り入れ、昭和45年3月に定めた基準で、水稲の正常な生育のために望ましい灌漑用水の指標として利用されています。項目、基準値は以下の通りです。
項目 | 基準値 |
---|---|
pH(水素イオン濃度) | 6.0-7.5 |
COD(化学的酸素要求量) | 6 ppm以下 |
SS(浮遊物質) | 100 ppm以下 |
DO(溶存酸素) | 5 ppm以下 |
T-N(全窒素濃度) | 1 ppm以下 |
電気伝導率(EC) | 0.3 mS/cm以下 |
重金属 As(ヒ素) Zn(亜鉛) Cu(銅) | 0.05 ppm以下 0.5 ppm以下 0.02 ppm以下 |
農業用水の汚濁程度別濃度分級(水稲用)
汚濁程度2及び3に該当する農業用水を灌漑に使用すると水稲の生育及び収穫に影響が認められるため、これらの汚濁された用水をやむを得ず使用する場合は、それに対応した適切な肥培管理を徹底して実施する必要があります。汚濁程度の数値と成分は以下の通りです。
(単位:mg/L)
成分名 | 汚濁程度 | |||
---|---|---|---|---|
0 | 1 | 2 | 3 | |
全窒素 | 2以下 | 2-4 | 4-8 | 8以上 |
アンモニア態窒素 | 0.05以下 | 0.5-2 | 2-5 | 5以上 |
COD | 7以下 | 7-10 | 10-17 | 17以上 |
全燐 | 0.2以下 | 0.2-0.5 | 0.5以上 | |
(注) 汚濁程度0:農業用水として汚濁の無い水質 汚濁程度1:農業用水として許容される水質 汚濁程度2:農業用水として適正な限界を超え対策が必要な水質 汚濁程度3:農業用水として著しく汚染され、対策を講じても被害を生じる水質 |
施設栽培用灌漑水の塩類濃度に関する簡易水質診断
灌漑水ちゅうの塩類濃度が高くなると、浸透圧の増加により根に吸水阻害が起こります。また、塩類の成分組成、成分濃度の不安定により作物の養分吸収に異常が起こり、栄養と代謝が阻害されます。外見としては、葉先の黒斑点、その後、その部分から下部へ白葉枯葉の外緑部の葉枯れに拡大し葉の先枯れが起こります。また、下葉は葉鞘付近から屈折下垂して流れ葉となります。以下は電気伝導率の濃度と起こりうる障害です。
EC(mS/cm) | Rph※ | 判定 | 備考 |
---|---|---|---|
-0.2 | 良 | ||
0.2-0.4 | 8≧ | 可 | 塩類に起因する問題は生じない。 |
8< | Na濃度チェック必要 | 特にRphが8.5程度のものは、必ずNa濃度をチェックする。Naが全カチオン(Na、K、Ca、Mg)に占める割合は、60%以下であることが望ましい。90%以上になると、作物によってはNaの過剰害が生じる可能性が高い。 なお、全カチオン濃度は、およそEC値(mS/cm)の10倍(me/L)と見て良い。 | |
0.4-1.0 | 要水質検査 | ECが0.4-1 mS/cmのものは、Na、Cl等の有害物質をチェックし、それぞれ70mg/L、100mg/L以上の場合は、常時使用する水としては不適切である。またK、NO3などの栄養成分の濃度を勘案して施肥量を調整する。 | |
1.0- | 不可 | 吸収阻害、活着不良などの塩類障害、Na、Clによる害が生じる恐れがある。 |
※RpH(Reserve pH、Reserved pH):きれいな大気で曝気した後のpHのことで、水中に溶存している二酸化炭素を大気中の二酸化炭素と平衡状態にした状態におけるpHです。二酸化炭素が溶け込み酸性側に傾いた水の場合、RpH>pHになる。このようにRpHの測定は、二酸化炭素の溶存量に左右されない水本来のpHと言えます。
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