サルモネラ食中毒とは?原因となる食べ物や潜伏期間、予防法を解説
サルモネラ属菌とは
食中毒の原因になるサルモネラ属菌は、自然界に広く分布している細菌です。河川・下水道などにも生息していますが、牛や豚、鳥などの体内にも生息しています。
引用元:内閣府 食品安全委員会「食中毒菌の電子顕微鏡写真」
サルモネラ属菌は乾燥に強いという特性があります。35度〜43度の温度域で活発に増殖し、7度未満の低温でも発育は止まりますが死滅することはありません。
つまり、サルモネラ属菌の特性を端的にまとめれば、乾燥や低温への耐性がある細菌といえます。
なお、「令和5年食中毒発生状況」では、令和5年の食中毒のうちの2.4%はサルモネラ属菌が原因であるように、食中毒を引き起こす原因として注意するべき細菌です。
サルモネラ属菌は加熱に弱いという特性もあるため、サルモネラ属菌による食中毒の予防対策として、食品を十分に加熱をすることが大切です。
サルモネラ食中毒の症状
サルモネラ属菌による食中毒の症状や潜伏期間などをまとめましたので参考にしてみてください。
生息場所 | 自然界のあらゆる場所 主に、牛や豚、鳥などの動物の体内 |
---|---|
潜伏期間 | 6時間〜48時間程度 ※72時間程度で発症するケースもある |
発症期間 | 2日〜7日程度 |
食中毒の主な症状 | ・激しい腹痛 ・吐き気 ・38度前後の発熱 ・嘔吐 ・下痢 など |
食中毒の原因になりやすい食品例 | ・鶏卵、またはその加工品 ・牛・豚・鶏などの食肉 ・うなぎ、すっぽん など |
サルモネラ属菌による食中毒の潜伏期間は、通常6時間〜48時間程度ですが、72時間程度で発症するケースもあります。食中毒が発症すると、激しい腹痛や吐き気、38度前後の発熱といった症状がみられます。
サルモネラ属菌による食中毒の症状は通常2日〜4日程度で回復しますが、1週間程度症状が続くこともあります。
症状が軽く、自然治癒するケースが多いサルモネラ属菌による食中毒ではありますが、抵抗力が弱い幼児や高齢者の場合は脱水症状によって命にかかわる状態になるおそれもあるため注意が必要です。
サルモネラ食中毒の事例
サルモネラ属菌による食中毒は通年発生しています。厚生労働省が公表しているデータを参考にすると、令和元年〜令和5年のサルモネラ属菌による食中毒の患者数と死者数は下記のとおりです。
患者数 | 死者数 | |
---|---|---|
令和5年 | 655人 | 1人 |
令和4年 | 698人 | 0人 |
令和3年 | 318人 | 1人 |
令和2年 | 861人 | 0人 |
令和元年 | 476人 | 0人 |
参照元:厚生労働省「食中毒統計資料」
サルモネラ属菌による食中毒は少量の菌でも発症するリスクがあり、令和元年〜令和5年の統計をみてもわかるように、毎年数百人もの人が発症をしています。また、サルモネラ属菌による食中毒で死者が出ている年もあります。
サルモネラ食中毒の発生時期
サルモネラ属菌による食中毒は、とくに夏場に起こりやすい傾向があります。実際に、厚生労働省が公表している5年分の統計をまとめたところ、サルモネラ属菌による食中毒の発生時期について下記のような結果となりました。
参照元:厚生労働省「食中毒統計資料」
厚生労働省が公表している令和元年〜令和5年のデータをまとめたところ、サルモネラ属菌による食中毒は7月〜9月に多く発生していることがわかります。
また、サルモネラ属菌による食中毒は冬場でも発生しています。これは、「乾燥に強い」というサルモネラ属菌の特性が関わっていると考えられます。
夏場だけでなく冬場もサルモネラ属菌による食中毒が起こるリスクはあるため注意が必要です。
サルモネラ食中毒の原因となる食べ物や発生場所
厚生労働省が公表している令和5年の統計データを参考に、サルモネラ属菌による食中毒の発生場所や原因食品をまとめましたので参考にしてみてください。
発生場所 | 食中毒の原因食品 |
---|---|
飲食店(沖縄県) | ランチビュッフェとして提供された食事 |
飲食店(宮崎県) | 子ども用弁当 |
飲食店(広島県) | 不明 |
仕出屋(和歌山県) | 提供された食事 |
老人ホーム(大阪府) | 提供された食事 |
不明(京都府) | 弁当 |
老人ホーム(三重県) | 提供された食事 |
飲食店(三重県) | 提供された食事 |
飲食店(三重県) | 提供された食事 |
飲食店(三重県) | 提供された食事 |
飲食店(愛知県) | ハラミステーキ弁当、ハラミバーグ弁当、ハラミマウンテン丼 |
飲食店(愛知県) | 提供された食事 |
飲食店(岐阜県) | 提供された食事 |
飲食店(長野県) | 卵とじかつ丼 |
飲食店(神奈川県) | 提供された食事 |
飲食店(東京都) | 提供された食事 |
仕出し屋(東京都) | オムライス弁当 |
飲食店(東京都) | 提供された食事 |
飲食店(東京都) | 提供された食事 |
飲食店(東京都) | 提供された食事 |
不明(埼玉県) | 不明 |
飲食店(埼玉県) | 鶏チャーシュー及び生卵(まぜそば) |
飲食店(宮城県) | 提供された食事 |
不明(青森県) | 弁当 |
令和5年の統計データを参考にすれば、サルモネラ属菌による食中毒のほとんどが飲食店で発生していることがわかります。
また、サルモネラ属菌は牛や豚、鳥などの腸内に生息している細菌であるため、「鶏卵」「牛・豚・鶏などの食肉」といった食べ物がサルモネラ属菌による食中毒の原因になりやすいです。
サルモネラ食中毒の予防法
サルモネラ属菌による食中毒は、鶏卵や食肉が主な原因食品になりやすいです。また、さまざまな動物が保菌しているため、ペットや害虫・害獣に触ることで感染するリスクもあります。
これらを踏まえて、サルモネラ属菌による食中毒の予防法には、下記が挙げられます。
- 食材を十分に加熱する
- 食材を取り扱った後は必ず手を洗う
- 生肉や卵を扱った調理器具はよく洗浄をする
- 卵の取り扱いに注意する
- ペットに触れた際には必ず手を洗う
- 害虫・害獣の対策を実施する
食材を十分に加熱する
サルモネラ属菌は、加熱に弱い細菌です。そのため、調理をする際には食材を十分に加熱することが、サルモネラ属菌による食中毒の予防法となります。
サルモネラ属菌には種類があり、それによって十分といえる加熱の温度は変わりますが、あくまで目安としては中心温度が75度以上で1分間加熱することを目安にしてみてください。
調理前や食材を取り扱った後は必ず手を洗う
サルモネラ属菌は自然界に広く分布する細菌です。手にサルモネラ属菌が付着している可能性もあり、その際に調理をすると食中毒が起こる可能性があります。
そのため、調理をする前には手洗いを徹底することがサルモネラ属菌による食中毒の予防法になります。
また、とくに鶏卵や食肉はサルモネラ属菌による食中毒の原因食材になりやすいです。ほかの食材でも原因食材になる可能性があるため、食材を取り扱った後にも手洗いを徹底するようにしましょう。
生肉や卵を扱った調理器具はよく洗浄をする
鶏卵や食肉はサルモネラ属菌による食中毒の原因食材になりやすいため、手洗い以外にも調理器具の洗浄も大切です。
サルモネラ属菌による食中毒を防ぐためにも、生肉や卵を扱った調理器具はよく洗浄をするように心がけましょう。
卵の取り扱いに注意する
鶏卵はサルモネラ属菌による食中毒を起こしやすい原因食材です。そのため、とくに生の鶏卵、ウズラ卵、アヒル卵には注意が必要です。
「殻にヒビが入っている卵を食べる」「賞味期限が過ぎている卵を食べる」といった行為は、サルモネラ属菌による食中毒を起こすおそれがあります。そのため、「殻にヒビが入っている」「賞味期限が過ぎている」といった卵は食べないように注意しましょう。
ペットに触れた際には必ず手を洗う
サルモネラ属菌はさまざまな動物が保菌する細菌であるため、犬や猫といったペットが保菌している可能性もあります。
そのため、ペットに触れた際には、必ず手洗いをすることもサルモネラ属菌による食中毒を予防する方法になります。
害虫・害獣の対策を実施する
ネズミやゴキブリもサルモネラ属菌を保菌している可能性があるため、とくに飲食店の場合には害虫・害獣の対策を実施することも大切です。「害虫や害獣が侵入しないための対策を講じる」「害虫などの駆除を業者に依頼する」といった対策を実施しておきましょう。
まとめ
サルモネラ属菌は自然界に広く分布し、さまざまな動物が保菌しています。乾燥や低温への耐性があるため、夏場だけでなく冬場でもサルモネラ属菌による食中毒が起こるおそれがあるため注意が必要です。
サルモネラ属菌による食中毒が起きた場合、「激しい腹痛」「吐き気」「38度前後の発熱」といった症状がみられます。通常は2日〜7日程度で症状が治りますが、7日以上症状が続くこともあります。
通常は軽度の症状ですが、死者が出た報告もあるため、とくに抵抗力が弱い幼児や高齢者はサルモネラ属菌による食中毒に注意する必要があります。
熱に弱い特性があるため、食材を十分に加熱することがサルモネラ属菌による食中毒の予防法になります。また、「手洗いを徹底する」「鶏卵や食肉の扱いに注意する」といった予防法も実施しておくことが大切です。