豚胸膜肺炎
発病のきっかけは、常在化した豚群における不顕性感染豚は気候の急変や輸送などのいわゆるストレスや、Mycoplasma hyopneumoniaeやウイルスなどの感染が引金となって発病に至ることもあり、また発病しないままで終わることもある。未発病豚も感染源とはなり、そのことが一度汚染された農場の清浄化を妨げる大きな要因となっている。致死率は汚染豚群における発病か、それとも本病の処女地における発病かにより大きな隔たりがあり、前者では1%以下であるが、後者ではきわめて高く、100%近くなることさえある。年齢による感受性の差異は認められない。本菌に感染した豚は免疫の程度、衛生環境、感染菌量といった要因に応じて、甚急性、急性、亜急性あるいは慢性の臨床経過をとる。甚急性型では1~数頭が突然元気・食欲廃絶して横臥し、体温は41.5℃程度に上昇し、また脈拍数は著しく増加する。下痢と嘔吐が短期間認められることが多い。発病当初、呼吸器症状は顕著ではないが、末期には呼吸困難となり開口、腹式呼吸となり、鼻腔および口より血液を混じた泡沫状の分泌物が認められる。鼻端、耳、四肢および末期には全身にチアノーゼが認められ、24時間~36時間以内に斃死する。甚急性型の症状は(幼若豚の場合)、幼若豚ではときとして敗血症となるが、この場合はさしたる臨床症状なしに斃死する。急性型では1群の多くの豚が発病する。臨床症状は甚急性型とほぼ同様であるが、発熱は40.5~41℃にとどまり、2~3日の経過で斃死するもの、亜急性から慢性に移行するものなどさまざまの経過をたどる。<豚病学 第四版より抜粋>O-N101202