消化器系疾患の影響 2025年2月号
2025年がスタートしました。私は正月の暴飲暴食がたたり、ダイエットを決意した1月でしたが、豚達には逆にたっぷりの餌と水と休息を取ってもらって、効率よく(飼料要求率は大事)太っていただきたいと願っています。
さて、話が唐突に変わりますが、以前から軟便、血便、黄色水様便などを呈した消化器系疾患の影響に悩まされている農場は多いかと思います。病は気からと言う言葉が昔からありますが、豚ではやはり“病は腹から”“病は消化器から”だと感じています。消化器系が丈夫であれば、利益を生む黄金級の豚になるのも夢ではないと思います。では、消化器系を丈夫にするためにはどうしたらいいのでしょうか。今回は、下痢の基本的なメカニズムと同時にそのポイントを考えたいと思います。
一般的に広く使用されている下痢と言う表現ですが、そもそも下痢は病名ではありません。下痢とは症状を指す言葉で糞便中の水分が増加した状態を表しています。(図1)(図2)
子豚は母豚の体内にいる時点では免疫を貰うことが出来ないため、生まれてすぐに初乳を吸乳することで、様々な病因から身を守る免疫を母豚から貰うことが出来ます。
しかし、同時に初乳以外の厄介なものも貰ってしまうことがあります。これが所謂母子感染であり、生後すぐの早期感染と言った形になります。
母子感染自体は、子豚が母豚の体内にいる時点でも成立する疾病群はありますが、母豚の体表面(乳房回り、お尻回り)や排泄物(糞便、尿、おりもの)、分娩舎設備(床面、壁、柵、保育ボックス、ゴム版、給水器、給餌器など)も結構な感染源となります。
子豚は生まれたときから無防備なので、数多ある危険因子からその身を守れるように、農場管理者の事前準備(危機を想定した予防衛生)、的確な衛生管理と飼養管理が重要となってきます。(図3)
2023年度の弊社データでは、消化器系疾患(病原性大腸菌、クロストリジウム、サルモネラ、ローソニア、豚赤痢、ロタウイルス、寄生虫、PEDなど)の増加の背景にはサーコウイルス、PRRSウイルスの関与も無視ができないことも解っています。
母豚群がウイルス疾病を患っていた場合、その感染下で生まれた子豚達はすでに健康豚と同じスタートラインではなく、その遥か後方に追いやられていることも1つの事実として踏まえなければいけません。
又、今までの筆者の経験でも、早い時期(特に哺乳期間中、離乳前後)に消化器系疾患に見舞われた子豚は、往々にして発育不良でのひね化や、他の疾病群(肺炎系疾患及び神経系疾患など)との混合感染誘発など、うれしくない事例に転じることが多くなっています。
消化器系を少しでも強くし、早期の予防を行うためにも、農場における川上管理はとても重要となります。
川上管理では、未経産豚(導入豚、自家生産育成豚、PS、GP)、採精及び本交配用雄豚、当て用雄豚、繁殖母豚、授乳母豚の体調管理、健康管理が重要であり、分娩舎でのお産状況、泌乳量、授乳状況(初乳、常乳)がさらに大きなカギを握っています。
母豚群のボディコン、給餌量と栄養面(成分内容)の関係、給水面の状況、消化器系疾患対応のワクチン類の使いこなし、多剤及び過剰にならない薬剤や資材の有効活用など、農場の生産成績がさらに上向きになるように、しつこいくらいに見直してみてください。
2025年も弊社は全力で皆さまをサポートさせていただきます。
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一