豚胸膜肺炎
病原体は当初、Shope(1964)によりHaemophilus pleuropnumoniae と命名されたが、その後変遷を経て現在はA.pleuropneumoniae とよばれている。病原菌の詳細は球桿状を呈するグラム陰性の小桿菌であり、V‐因子Nicotinamide adenine dinucleotide :NADを要求する生物型1と非要求性の生物型2がある。莢膜は細胞毒や内素毒のようにそれ自身が病原性を示すものではないが、生体の喰作用やオプソニン化に抵抗して定着・増殖を促す働きをする。したがって、無莢膜変異体は肺に定着・増殖できず結果的に病原性を発揮することができない。豚胸膜肺炎の病原菌の細胞毒としては3種類が同定されており、細胞毒1および2は溶血毒であり1は分子量105~110kDaで血清型1・5・9および11型により、2は分子量103~105kDaで10型を除くすべての血清型菌により産生される。また、細胞毒3は分子量120kDaで、溶血性を示さずマクロファージに対し毒性を示し、血清型2・3・4・6および8型菌により産生される。本病の感染は主として感染豚の鼻汁や分泌物を含んだ飛沫を吸入したり、直接病豚の鼻端に接触したりすることによると考えられており、空気伝染や媒介動物の存在は知られていない。豚から豚へ直接感染することが多いとはいえ、飼育管理者の汚染した衣服や長靴からも間接的に伝播することもある。発生率は一様ではなく、本菌が初めて侵入した豚群ではきわめて高く、常在化した豚群では低いが、本菌に汚染された豚群では不顕性感染豚が数多く存在することは疫学上きわめて重要である。<豚病学 第四版より抜粋>O-N101202