日本脳炎
日本脳炎ウイルスJapanese encephalitis virus(JEV)の感染による繁殖豚の死流産と種雄豚の造精機能障害を主徴とする疾病である。JEVの宿主域は広く、哺乳類から鳥類、爬虫類に至るほぼすべての動物種に感染する。しかし、そのほとんどは不顕性感染である。一般の豚は臨床症状を示すことはほとんどないが、妊娠豚が感染すると高率に死流産がおこる。種雄豚の感染では精巣炎、精子減少症などの造精機能障害をおこす。豚はウイルス保有蚊の吸血によってJEVに感染する。内臓で増殖したウイルスは血液中に出現し、いわゆるウイルス血症をおこす。豚の場合は血液中に大量のウイルスが循環するため、感染豚は吸血蚊へのウイルス供給源となる。妊娠豚の感染では血液中のウイルスは胎盤に達し、胎盤感染をおこす。次いで、胎児感染がおこり、感染胎子が死亡する。豚は多胎のため、一度にすべての胎子が感染することは少なく、子宮内で徐々に感染が拡大し、順次胎子が死亡する。死亡胎子はすぐには娩出されず、ほぼ分娩予定日まで胎内にとどまる。そのため、娩出された異常胎子はミイラ変性胎子、黒子、黒褐子、白子、異常新生子と種々の表現型を示す。妊娠早期の感染では、まれに流産をおこすことがある。<豚病学より抜粋>KK-N091026