世間で騒がれているPFAS(ピーファス)/水の安全について 2025年3月号

畜産分野の水質検査では、基本項目として、一般細菌数、大腸菌群数、大腸菌、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、塩素イオン、有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)、水素イオン濃度、味、臭気、色度、濁度の水質検査を行いますが(依頼状況によっては、重金属類、他のバクテリア、虫卵などが追加)、ここ最近は、PFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)という化学物質についての問題が広く注目されニュース等でも見かけるようになっています。PFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)は有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)の一種で水質汚染の主要な原因物質として注目されています。これらの化学物質は、日常的に使用される多くの製品に含まれており、私たちの健康と環境に対して影響を与えることが知られています。
 
PFAS
 
PFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)は、水や油をはじく、熱に強い、薬品に強い等の性質があり、撥水・撥油剤、界面活性剤、半導体用反射防止剤等、幅広い用途で使用されてきました。油に溶けやすい性質がありますが、合わせて水にも溶けうる性質を持ち、分解もし辛い性質を持っています。現在は日本国内では化審法に基づいて製造・輸入を原則禁止しています。
 
人においてはコレステロール値の上昇や発がん、免疫系統と関連が報告されています。しかし、どのくらい入ると影響が出るのかは解明されておりません。国際がん研究機関(IARC)では、PFOA(ピーフォア)を「ヒトに対して発がん性がある(グループ1)」、PFOS(ピーフォス)を「ヒトに対して発がん性がある可能性がある(グループ2B)」と評価しています。分解されにくく、蓄積されやすい性質から人体に入ることで、体内に長期に渡り残留し、健康リスクを引き起こす可能性があることからも調査が進められています。上記より、暫定目標値の取扱いについて、専門家による検討を進めている段階です。
水質の調査に関しては国や自治体が主導で行っておりますが、水質調査計画では全ての地域においで調査を行う事が物理的に難しい事から確認が出来ていない地域も存在します。また、昨今のPFAS(ピーファス)への注目から製造する製品に混入するPFOS(ピーフォス)、PFOA(ピーフォア)の残留についても関心が高まっており、対策について今後の課題となる可能性が高まっています。
 
測定結果については、暫定的な目標値が0.00005 mg/l 以下と定められており、他の化学物質と比較しても微量で測定を行う必要があります。更に、安定な構造をしているため環境中での残留性があり、様々な所から混入する可能性がある物質です。
人で騒がれているPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)ですが、やはり畜産業界でもその関心は高まっています。事例として、農場側では豚達が飲む水、従業員が飲む水、洗濯や洗浄後の排水、加工場及びレストランなどでは、加工や調理に使用する水、洗浄後の水などを対象に、お問い合わせが多くなっていますので、従業員の健康、購買力向上、地域とのコミュニケーション向上等に役立てていただければと思います。
 
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一
 
 

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