豚丹毒に注意 2024年12月号
豚丹毒(とんたんどく)は、豚丹毒菌の感染によって起こる人獣共通感染症であり、日本では家畜伝染病予防法における届出伝染病に指定されています。さらに、と畜場法においては全部廃棄の対象にもなっています。ここ数年、関東地区を中心にその発生が多く聞かれるようになりました。
豚丹毒自体は昔から存在している疾病であり、取り立て珍しいものではないのですが、ここ最近は新しい疾病なのではないかと誤解するような発生の仕方が見える地域も存在しています。この背景にはいったい何があるのでしょうか。
ここで、一旦、豚丹毒についておさらいしたいと思います。症状としては、敗血症型、蕁麻疹型、関節炎型、心内膜炎型の4つに分類されます。敗血症型では発熱、食欲不振を伴い、致死率も高くなります。
蕁麻疹型では発熱と体表面に菱形の丘疹の出現が見られます。関節炎型では関節の腫脹、疼痛、跛行が認められますが、そのほとんどは農場での確認が困難で出荷屠畜場で発見されるケースが多くなっています。
心内膜炎型は外見上の異常は見られません。この型も出荷屠畜場での発見が主となります。心内膜炎型に侵された豚は、心臓弁膜根部にカリフラワー状の肉芽組織が形成されます。豚丹毒は豚丹毒菌によって発生する疾病ですが、この菌は、豚、イノシシの他、人を含む哺乳類、鳥類に感染します。人に感染、発症した場合、敗血症や関節炎症状が見られますが、その病名は類丹毒と呼ばれています。
豚丹毒は、養豚の盛んな地域で発生しやすい傾向があり、感染経路は飼料、水、土壌、堆肥、敷材、創傷、吸血昆虫など多岐になります。意外かもしれませんが、豚丹毒菌自体はブタの扁桃に常在していることが多く、感染豚や発病豚の尿や糞便中に大量の菌が排泄されますので、これらが起因になった水平感染は要注意となります。
筆者が経験した部分で気になることは下記に列挙します。
最近は、一定の種類の注射薬の効果が低いと言った声も聞こえてきます。
抗菌剤に対する耐性菌の出現もあるようですので、かなり面倒な事態かも知れません。
いまだ発生がない農場は今後も発生させないように、発生を経験した農場では再燃がないように、この記事が一助になっていただければ幸いです。
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一