暑かった夏季、残暑の秋季、冬季の準備 2024年11月号

今年も猛暑の夏になりました。全国的にとても暑かったのですが、北海道地区、東北地区では、気温的には昨年よりかはやや低めの状態で推移していたようです。
しかし、昨年とは明らかに違う点として、湿度の高さがありました。異常とも言える湿気の多さで、秋季になった今でも、湿度の高い日や日中の夏日気候など、激しい気温変化に悩まされている農場は多いと思います。
確かに気温的には昨年に及ばなかったものの、高い湿度や未だ収まらない夏日の存在は、種豚群、子豚群に影響し、繁殖成績や生産成績の低迷、想定外の疾病事故などにも繋がっています。
さらに今年は、雄豚の体調や精液の状態にも苦労された農場が多かったように感じます。
例年以上の暑さが来ると想定して取り組みを行った農場でも、結構影響があったと報告がありましたので、例年と同様の対応で過ごした農場では、その影響は大きかったのではないでしょうか。
 
話は少し脱線しますが、今年は台風の接近も例年に比べると少ない年になっていました。
台風の上陸自体は少ないに越したことはありませんが、厄介な自然災害である台風でも、それが多い時期と少ない時期では農場の成績に影響する点があります。
それは水量(農場で使用できる水の量)です。農場で重要な位置を占める水に関しては、水質も大事ですが、それよりも実際に使用できる水の量(水量と水圧)が与える影響はさらに大きいとされています。
今年の特徴では、川の水をメインで利用されている農場、井戸水の利用でも浅めの位置から吸い上げを行っている農場では、水量の枯渇や水質変動、バイオフィルムの増加や想定外の剥がれなどに悩まされ、繁殖障害や発育不良、浮腫病、サルモネラ、クロストリジウム、連鎖球菌などの慢性疾病も増加傾向にあります。
 
11月になろうとしている秋季であっても、まだまだ高い日中の気温、高めの湿度、寒暖差など、管理者を悩ませ、豚達の体調が崩れやすい気候になっています。
又、例年以上に厄介な被害が報告されているものがあり、その筆頭には、カビやカビ毒の影響があります。
カビ毒は伝染病とは違い、ゆっくり、ゆっくりと体を蝕む厄介さがあり、特に今年はウインドレス舎でのクーリング・パド使用農場、細霧管理の粒度不備や直接的で濡れやすくなっていた農場では、体調不良を筆頭に、カビやカビ毒の被害報告が多くなっていました。
雄舎でも前述の細霧管理によって、却って体調を崩してしまった雄豚も出たほどです。
農場におけるカビ、カビ毒は、その被害が慢性化、マンネリ化していることもあって、被害事態にあまり気が付かないことが問題視されています。今年の暑熱や残暑が与えた影響は、秋季、冬季にその被害を引き継がせないようにしなくてはいけません。
今年は秋季が短く、すぐに冬季になる危険があります。本格的な冬季に入る前に、事前の準備とチェックは済ませておきましょう。
 
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一
 
 

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