種豚能力の向上とその対応 2024年10月号
皆さんが使用している種豚の能力値は昔から比べても大きく変化しています。多産系、高繁殖など、様々な形容詞が付き、農場での生産成績や疾病状況に大きな変革を与えています。又、今現在は多産系品種と称される種豚ではなくても、その能力値は総じて高くなっており、顧客ごとのニーズにあった選択も可能になっています。今後もさらに種豚の生産性を含む改良は加速していくことと思います。
さて、多産系品種を採用している農場にとって、その能力を最大に引き出すことは経営的にも重要な位置を占めます。例え総産子数が多くなったとしても、肝心の離乳頭数、離乳体重、出荷頭数が増えない状態ではあまり意味がありません。
相談されるもの(順不同)
上記は順不同で記載しましたが、結構な農場で相談がある件を列挙させていただきました。多産系種豚を採用していても生産成績が振るわない農場では注意することも多いように感じます。又、各々の農場で飼養されている種豚品種毎に、ステージ別の栄養設計も異なることも視野にいれなくてはいけません。過肥は厳禁ですが、多産系品種では特に、アミノ酸、リン、カルシウム、ビタミン、ミネラルなどの栄養素のバランスが乱れないように飼料管理を組み立てる必要もあります。
① 今の栄養管理、ボディコン管理で大丈夫ですか
② 今のワクチン選択とプログラムで大丈夫ですか
③ 今の薬剤選択とプログラムで大丈夫ですか
④ 種豚の能力は向上しているはずなのに、肝心の分娩成績が上がっていないと感じていませんか
⑤ 使用している飼料成分内容と給餌量は農場の状態に合っていますか
⑥ 飲水量と水質は適正ですか
⑦ 農場全体でカビ毒、ハエ、ネズミなどの対応はしっかりとできていますか
⑧ 塵埃は少なく、良い空気を与える衛生概念(整理、整頓、清掃、除草、空調)は出来ていますか
⑨ 糞尿処理はしっかりと行えていますか
⑩ 給餌プログラム及び給餌量は適正ですか
⑪ ホッパーの老朽化や給餌器からのこぼし餌が多くありませんか
⑫ 産歴構成が大きく乱れていませんか
⑬ 若い母豚と高産歴母豚が多い歪な状態になっていませんか
⑭ 産歴の乱れは、出荷日齢の遅延、飼料要求率の悪化、里子管理のやりにくさ、ワクチン免疫のばらつき、事故やひねの増加などに直結していることを知っていますか
⑮ 今までと異なった雰囲気の事故や増体不良などの問題が増えていませんか
近年、母豚から子豚へ感染が成立する母子感染絡みの疾病事故が増えているようにも感じます。PRRSやサーコウイルスもその影響を大きく受けていますし、マイコプラズマ、連鎖球菌、スス病、豚丹毒、浮腫病、ローソニア、グレーサー病、サルモネラ、ヘモフィルス性肺炎なども母子感染疾病の代表格です。過肥は論外ですが、農場で一生懸命に働いた母豚が貧相な体型や傷、酷い場合は起立不能な状態で農場を去っていく姿も目にします。感傷的な意見はいらないでしょうが、とても寂しい気持ちが芽生えます。農場で一生懸命に働いている母豚に対する、日々の管理、更新管理、栄養管理(ボディコン、給餌、給水)など、今一度原点や基本に立ち戻って見直しては如何でしょうか。人間も風邪を引きやすい人、傷が治りにくい人、目のクマや毛がボサボサの人は、体の脂肪が少なく、睡眠が十分取れていない場合に目立ちます。ワクチンも薬剤も機能性資材も、最低限の体力や免疫力がないと、十分な能力は発揮されません。
㈱食環境衛生研究所 菊池雄一