過換気とグレーサー病の関係 2025年4月号

過換気とグレーサー病の関係

グレーサー病はヘモフィルス・パラスイスが起因する感染症です。普段は鼻腔や扁桃に存在している常在菌でもあります。ほとんどが発病せずに不顕性感染で経過することが多いのですが、近年はその発生が多くなりつつあります。
グレーサー病と聞くとSPFに多い疾病と考える人も多いとは思います。
確かにグレーサー病は疾病感染か少ない、お嬢様的な種豚群に影響が見られやすいことは事実ですが、SPF以外での発生も昔から多く見られています。発生が目立つステージは離乳前後(20~40日齢近辺)ですが、ここも農場側の環境条件次第では、60日齢以降、90日齢以降、120日齢以降など、肥育舎、育成舎での発病も珍しくない状態となっています。
症状としては、突然死、食欲不振、貧血症状、神経症状、関節炎、肺炎、へコヘコ症状等、罹患した日齢、感染状況、他の疾病との混合感染により、様々な病態に変化します。特に乾燥した環境、塵埃の多い環境に反応しやすく、空調管理において、子豚舎の過換気及び過換気気味の環境はグレーサー病を大きく誘発する行為となっています。
又、グレーサー病はApp(旧名称でヘモフィルス)の感染が少ない農場に発生が多い傾向も見られます。
ここはグレーサー病が乾燥と過換気で発生しやすいのに対し、App(旧名称でヘモフィルス)は、湿気が多く空気が淀んだ環境(換気不足)で発病しやすいことが多いからかも知れません。
グレーサー病も川上部分である母豚群から子豚へと広がる母子感染の1つであり、生まれた腹毎に発病、不顕性と分かれるとも言われています。
グレーサー病で悩んでいる農場は今一度農場の衛生状況、換気設定、ストレスになりやすいワクチン日齢、選択ワクチン、移動と輸送の方法など、見直されてはいかかでしょうか。
 

過換気及び過換気気味の環境になりやすい行為

  • 入気口からの風当たりが強い。
  • 入気口以外の隙間風が存在する。
  • 攪拌ファンの設定位置や稼働量が間違っている。
  • 下半身、下腹部の冷えが激しい。
  • ウインドレス舎では子豚舎前半時期の設定温度に間違いが生じている。
  • 開放豚舎では子豚舎前半時期のカーテンコントロールに間違いが生じている。
  •  

    ステージ毎の必要温度(参考事例)

    離乳時  30℃~31℃
    ~30日 29℃~30℃
    ~45日 27℃~29℃
    ~60日 25℃~27℃
    ~70日 23℃~25℃
     

    体感温度と熱量指数

    体感温度と熱量指数
     

    グレーサー病が発病しやすい条件

    グレーサー病が発病しやすい条件
     
    ㈱食環境衛生研究所 菊池雄一
     
     

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